No.545000

Sweet & Mint / GIFT FOR YOU.

佐倉羽織さん

まどかマギカでバレンタイン。2つめのお話しはきょうこちゃん。

2013-02-16 15:12:49 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:347   閲覧ユーザー数:347

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○GIFT FOR YOU.

 

あたしがあいつ等に押し切られて学校に通い始めたのは、でもよく考えたらまだ一ヶ月ぐらい前なんだよな。なんか不思議な感じだ。

相変わらず魔女退治は続いていたし、もちろんそれも命がけだって言うことには変わらない。さやかやまどかははっきり言ってまだまだひよっこだ。ほむらやマミはずいぶんこなれてはいるけれど、あたしに言わせりゃまだまだ気迫が足りねえ。

だけど、そんなあたしでも学校に行けばただの娘。いや、なんだ。常識ってものが欠けてる分ひよっこだってことは認めるよ。あたしは小学生の時、世間から切り離されて生きてきたからな。

 

がっこで頼りになるのは断然さやかだ。まどかは堅っくるしくてなんだかチョットな。マミは三年だから、忘れ物とか調達するのには向いてねえしな。あ、二人とも共通するのはテストのヤマとかは教えてくれねえってことだな。

その点さやかは快く、ああ快くだな。一言二言文句を言った後は快ーく貸してくれるからな。テストのヤマとかも教えてくれるしな。当たらねえけど。

 

ま、別にうちのクラスの連中とうまく言ってねえ訳じゃねえ。こっちもそれなりに楽しくやってはいる。けど、あたしたちは放課後へらへら遊んではいられねえから、どうしてもがっこだけのつきあいになっちまうな。まあ悪いとは思ってるよ、あきらめずに何度も誘ってもらってるからな。

 

そんなわけで帰り道は、いつもさやか、ほむら、そしてまどかとつるんでる。なんかあったときも一緒にいればすぐに動けるからな。

 

 

その日、あたしがいつものようにさやかのクラスに鞄を担いで顔を出したんだ。

あいつらは帰る支度もしねえでなんだか盛り上がっていやがる。そういえばうちのクラスも、ここのクラスもなんだか全体が浮き足立った感じなんだよな。なんなんだこれは。

 

「じゃあ、クラスのみんなへは三人で共同ってことでいいかなぁ?」

「ええ、私はまどかの案に賛成よ」

「わたしも異議なし」

「あと、私は、残念ながら本命はいないから……マミさんに贈ろうかな」

「そうね。まどかは手作りしたりするの?」

「え?えへへ、毎年チャレンジしてみるんだけど、あの、失敗を――」

「そうね、巴マミへのチョコ。私と一緒に作りましょうか」

「え?ほむらちゃん手伝ってくれるの?」

「ええ。私もものすごくうまいわけではないけれど」

「わー心強いなあ」

「なんか盛り上がってるね。わたしも混ぜてもらおうかな、マミさんチョコ」

「美樹さやか」

「な、なによ」

「あなたはもっと大事な人を忘れてるんじゃないかしら」

「へ?ええ、えと、それはどういうことさ」

「文字通りの意味よ。贈るべき人に贈りなさい。そう言っているだけ」

っていうかさっきから後ろに立って聞いてるのにだれも気が付きやがらねえ。

「それはだれだよ」

まどかの後ろからあたしはさやかに話しかけた。

「うわぁ、びっくりした。杏子じゃん」

本気でびっくりしてやがる。

「おまえらずっとここで待ってんのにあたしに気がつきもしないでだな」

「あ。杏子ちゃんごめん」

まどかは振り向いて謝ってくれたけど。ま、後ろの人に気がつかないのは仕方がないような、魔法少女としては気づいてほしかったような……。

「まあ、まどかは真後ろだからしょうがねえな」

まどかはってとこ、強調ね。

「なによ。それは正面にいるわたしが気がつかないのはアホだってこと?」

「よくわかってんじゃん」

「なんだかムカつく……」

くくく。からかいがいのある奴め。

「佐倉杏子。あなたは準備しているの?」

びっくりした。なんだほむらかよ、唐突だな。でもビビったとこなんか表には出さねえけど。ってか準備って何の準備だよ。

「バレンタインだよ、杏子ちゃん」

「バレンタイン?」

「仲のいい友達やお世話になっている人にチョコを贈るんだよ」

「ま、あんたは人気なさそうだから」

なんだよさやか!

「はぁ?あたしはクラスで大人気だっていってんだろ、いつも」

「どうだか」

「まあまあ。杏子ちゃんはお世話になっている人とかいないの?」

「いねえ」

「即答ね」

「あたしはずっと一人で生きてきたからな」

「あー、はいはい。中二病中二病」

「おまえねえ。あたしは先輩なんだぞ、魔法少女の――」

「わわわーーーっ!杏子ちゃんだめだよ」

まどかはあわててあたしの口をふさいだ。

「本当にあんたは不用意だな」

さやかの発言はむかつくからスルー。あたしはまどかの手をふりほどく。

「ぷはぁ。誰も聞いちゃいねえって。大げさだなあ」

「壁に耳あり障子にメアリーだよー杏子ちゃん」

メアリーってなんだよ。

「何かチョット違うわよ、まどか」

「あれ、何かな。障子?将棋?」

いや、そこじゃなくて。目あり、だろ常識的に考えて。まあいいか。

「何でもいいけど。あたしは別に誰かに感謝するような生き方はしてねえから」

きまった。カッコイイあたしっ!

「それではあなたは買い物には来ないのね、佐倉杏子」

「ん?なんだよ。ほむらはいくのかよ」

「当然」

「え、一人だけのけもの!おいまて。プレゼントは買わねえけど、時、自分の分は買いに行くんだよ」

なんだよさやか、変な目で見んな。

「はいはい。わかりましたわかりました。じゃあ、四人ね。そろそろ出かけないとやばいよね」

 

 

なんかうまそう何いっぱいあったから買いすぎちまったな。

「……」

「な、なんだよ」

「杏子。あなたそんなに全部食べるの?」

「え?なんで?」

「それ、何年分だよ」

おいふざけんな。年な訳ないだろ。

「こんなの一週間持たねえよ」

「あはは……。でも何となく納得できる、かな」

まどかも以外と失礼だな。

「なんだよ。普段の買い物とそんなに量変わってねえぞ?マミに聞いて見ろよ!」

いや、まあ、ちょっとぐらいは多いって言われるかもだけどさ。

「はいはい。考えてみたらあんたとお菓子を買いに行ったことはなかった」

「そうだね。でも、幸いこの季節なら別に目立たないから」

「別にあたしは恥ずかしくないぞ?」

「私らが恥ずかしいんだよ!」

ガラスのハートだな。

「なんでだよ。意味分かんねえ」

「胃袋魔神と、一緒にされたくないの」

胃袋魔神?失礼な!

「なんか気分わりぃ。帰る!」

「あれ、杏子ちゃんうちに寄っていかないの?」

「こんだけ言われて、はい、そうですかって一緒にいられるかよ」

「え?杏子ちゃん、ちょっとまってよ!」

なんだかまどかの引き留める声が聞こえたけど、あたしも引っ込みがつかなくて、そのまま振り返らず、マンションへの向かって歩いていった。

 

 

「ただいまー」

「おかえ――なにその包み!? 今週のおやつは昨日買ってきたでしょ?」

出たな小姑。

「なんだよ。バレンタインフェアーに行ってきただけじゃんかよ」

「え?」

なんだよおまえもかよ。どいつもこいつも失礼だな。

「な、なんだよ何驚いてんだよ。おまえも失礼だな」

「違うわよ。明らかに手作り用の材料には見えなかったから」

マミは取り繕う感じでもなく自然にそう言って、あたしの抱えている紙袋を指した。ってか、なんだって?

「手作り?」

「手作り」

「なんでそんなことするのさ、あたしが」

「え?だってバレンタインでしょ?」

「バレンタインだよ?」

「手作りするんだよね?」

「は?だれが?」

「杏子ちゃんが」

「なんで?」

「お世話になった人に渡すため」

ん?ん?なんか前提が食い違ってっぞ?

「ちょちょっとまてマミ。意味分かんねえ、ちゃんと説明しろ」

 

 

な、なるほど……。恐ろしい話だ。

「恐るべしバレンタイン……」

「別にそんなにたいしたことではないと思うわよ?」

いや、あんただってよく知ってるだろ。

「マミさあ。あたしが料理したところ見たことあるだろ」

「あ!」

あ、じゃねえの。

「そう言うことだよ」

全く言わせんなよ。

「ああ……」

そのため息は確かに正しい反応なんだけど。なんかムカつく。

「じゃあ私が教えてあげるわ。そんなに難しくないから」

まじ?

「ほんとに?難しくないの?」

「ええ」

なんだよ、早く言ってくれよ。難しくないのかよ。ビビって損したぜ。

 

 

どういうことだ、おい……。

「だまされた!」

あたしはボウルのチョコを湯煎しながらつぶやいた。これでいったい何個目なんだ?

「あの、その。ごめん。そこまで大ざっぱだと思ってなかったの、って、だめまっすぐ持って!」

あ!

「あああ、またお湯がぁ」

「だんだん手作りでなくてもいい気がしてきたわ」

む、なんだとぉ!

「何言ってんだマミ!このまま負けた状態で追われるわけ無いだろ常識的に考えて!」

「えっと、勝ち負けでは、無いと思うんだけど」

おおお、おまえがけしかけておいて何引いていやがるんだおい!

「ええい、うるさい。次だ!次のチョコっ」

「はい。これが最後よ」

 

 

あ――……。だめ、だっ……た……。

「……ぐすん」

あたしは盛大にお湯が入り込んでしまったボウルのチョコを呆然と見つめていた。もうできあがってお湯から引き上げようとしたときだったのに……。マミも言葉を失っている。何より、材料になりそうなチョコはもう使い切ってしまっている。終わった。完全に終わった。

「やっちまった。わーーーーん!!」

あたしは悔しくて悔しくて泣いた。なんでお菓子の一つも作れないのか。殴り合いの喧嘩だってこんなに悔しい思いをしたことはない。マジ泣きなんてかっこわるいと思うけど、なによりこれまで無駄にしてきたチョコに、申し訳ないと思った。

「くそっ、これで最後だったのに。あたしに買われさえしなければ、あいつ等もおいしく食べてもらえたはずなのに……。あたしはっ!なんでっ……うわーん」

そのとき、肩に優しい重みを感じた。マミの手だった。振り返ると、少し困り顔だけれども優しい笑顔でこちらを見つめていた。

「もう。しょうがないわね。私が作ったときの残りの材料を分けてあげる。だから泣かないで」

悔しいけど、マミが姉のように感じた。あたし達はいつも平等にやってきた。あたしは肉親に対する感情をどこかに置き忘れてきた女だから、こういう気持ちになったは本当に久し振りだった。

「ほんと!ほんとにいいの?」

あたしは思わず、キャラには会わないとは思うけど、まるで幼い妹の、何年も前に死に分かれたモモのようにマミに飛びついて甘えた。

「ちょ、ちょっとチョコべたべたの格好で抱きつかないでよ!ほんとにもう、こう言うときは子供なんだから……」

あたしの頬の先にあるマミの顔は、きっとまんざらではなかったはずだ。あたしはそう考えるととてもうれしくてこう言うのもたまには悪くないな、って、そう思っていた。

 

 

「で、できまし、た?」

「はい、よくできました」

おおお!本当だ。おそるおそる開けた冷蔵庫の中の茶色い物体は、本当にあたしが作ったのかと思うほどきれいに「チョコ」になっていた。

「ちゃんと出来てる、出来てる」

なんだかうれしいな、これは。

「まあ、遠回りしたけど。でも最後はきちんと手際よく出来ていたわよ」

「ま、まあ。あたしにかかればこんなもんよ」

「それほど自慢できるようなメニューでもないけど」

「じゃあ、型からだしてラッピングしましょうか」

「へ?」

ラッ、ピン、グ?ラッピングってなんだ?

「へって。ねえ、そのままむき身で渡すわけ?」

あ!あはははは……。

「……ですよねー」

だまされた!ぜん、ぜん、簡単じゃ、ねえ!

 

 

翌朝。一晩中チョコを作ってたから、なんだか朝から変なテンションだな。一限は英語かぁ。あの先生じゃ寝られねえじゃんか。そんなことを考えながらあたしは廊下を歩いていた。廊下でいきなり聞く声が後ろからした。

「せ、せせ、先輩!佐倉先輩!」

振り向くとそこには女子生徒が三人。徽章は一年生のものだ。

「ん、なに?」

あたしは怪訝な表情を浮かべながら聞いた。

一人、真ん中の子が周りに後押しをされて進み出る。両手で差し出した小さな包みは丁寧にリボンで飾られていた。

「これ?あたしに?」

「あ、あの、バ、バレンタインなので。う、受け取って下さいっ」

なんだかよくわからないけれどその娘が余りにも一生懸命だったので、あたしはちょっと微笑ましく感じた。

「えっと、あんた名前は?」

「そそそそ……そんななな名前なんて!」

「何言ってんの。名前聞かなきゃお礼言えないだろ?」

「おおお、大島なぎさ、です」

赤くなった。かわいい。

「おう、ナギーありがとな。んじゃあ、これ、お返しだ」

そう言って今まさに封を切ろうとしていたROCKYを渡す。自分用だから何にも飾ってなくて申し分けねえけど、ほかに手持ちもないし、しょうがないよな。

「ひぇぃ!い、いいんですか?私、お返しなんてもらっていいんですかぁ」

声にならない叫びに続いてテンションの高い問い返し。何をそんなに興奮しているんだか。

「ああ、こんなんで悪いけどな」

「あああああああ、ありがとう、ごございますっ大切にします」

「いや、大切にしないで食べてよ。その方がそいつも喜ぶだろうし。このもらった奴も今日、早速食べさせてもらうからさ」

「あ、は、はい!ゆっくりかみしめながら食べますっ」

その後、泣きながらお礼を言ったその子は、付き添いに抱えられるように少し先の階段を曲がって消えた。と同時に三人の歓喜声が響きわたってきた。なんだかな。そんなにROCKY好きだったら人数分あげりゃよかった。

ってか、このもらったチョコうめえな。

 

 

「てなことがやたら今日はおきるんだけど、こいつはいったいどういうことなんだ……」

あたしは放課後、いつものようにさやかのクラスに来て、今日の戦利品を見せながらつぶやいた。

「あはは。杏子ちゃんモテモテだねぇ」

モテモテェ?おい、どういうことだまどか!

「まあ、あたしはROCKYと引き替えにうめえチョコもらえるからいいんだけどさ。なんか釈然としないんだよね……。べつにあたしはなんか世話した覚えないしさ」

ほむらはおもむろに髪をかきあげて、まどかからあたしに視線を移した。

「佐倉杏子。罪な女ね」

「どういう意味だよそれ」

「文字通りの意味よ」

は?その意味がわかんねえんだよ、タコ。

「どいつもこいつも奥歯にごま塩がはさまったような言い方をしやがって」

あたしはさやかを見る。おまえならスカッとする回答をくれるだろ。な。頼むよ。

「てか、一年の子もそんなにライバルが居るってわかったらしょんぼりするよね」

「さやか、おめえも訳の分からないこというのかよ。ライバルってなんだよライバルって」

あたしはぶちぎれそうになって立ち上がった。

「まあまあ。あ、そうだ。これ」

まどかがすかざず腕をつかんであたしを座らせた後、机の上の紙袋からきれいにラッピングした小さな包みを出した。受け取ったあたしは光にかざして中身を見てみた。小さい四角い物が二つ。

「なんだこりゃ。一〇〇円チョコ?」

「わたしとほむらちゃんから。友チョコだよ」

なんだなんだ、なんか呪いにでもかかっちまったのかこの街は?

「おまえたちもかよ……」

「あはは。私たちのはいつも仲良くしてくれているお礼だから大丈夫」

お。確かにお世話してるわ。ってなんか忘れて……お?

「なにが大丈夫なんだか。おい、さやか。これ」

あたしは鞄をごそごそしながら相づちを打つと、中からきれいに――あたしとしてはきれいにラッピングした小箱を取り出した。

「なにこれ」

「あたしが手作りしたチョコ」

「おお?」

「杏子、あなた……」

お?何目を輝かせてんだよ!ほむら!そしてまどか!

「何言ってんだよ。世話になったから渡すんだろ?」

「ははは。まあ、この流れならそうだろうね。うん、わかった。じゃあこれお返し」

さやかはさっと手に持っていた紙袋をあたしに渡した。

「?」

「ありがたくももったいなくも、さやかちゃんの手作りチョコレートだぞ」

「おお」

なんだ?なんだ?なんかうれしいぞ?

「今年本命いないから。何にも作らないのは寂しいし、どっかのがさつなお嬢さんに私のテクを見せつけようかと」

「なんだよそれ、ちぇー」

くそ、喜んで損した。自慢かよ!

まあ、でも。

こういうものたまには良いな。ありがとう、みんな。そしてさやか。


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