No.541162

魔法少女リリカルなのは -九番目の熾天使-

第十二話『皆でお買い物』

2013-02-07 18:40:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3660   閲覧ユーザー数:3193

 

 

 ヴォルケンリッター達が現れて二ヶ月が経った。

 

 俺達はそこそこ仲良く出来ていると思う。特に……ちびっ子のヴィータにアイスを買って上げたらすぐに懐いたな。

 

 あ、本人の目の前でちびっ子と言ったら殺されるので実際には言わないよ? 

 

 シグナムは礼儀正しく、冷静な人だ。一応彼らの中でリーダーなのだそうだ。彼女には本当に良くして貰った。まるで俺を弟のように扱っている。それが少し心地よいと俺は感じていた。

 

 シャマルも優しいお姉さんという雰囲気で、料理は最初こそ壊滅的だったが、今は普通に食事出来る程度の腕になっている。ただし、八神の監督下限定だがな。

 それと医療担当らしく、怪我や病気に詳しい。ただ、一つ残念というかなんというか……彼女の作る『えいようドリンク★』がちょっとね……?

 

 効き目は確かに凄いぞ? すぐに疲れが吹っ飛ぶし、体調も改善される。ただ……味と臭いが…………ね?

 

 あまり思い出したくないが、ゴーヤとビールとミントを合わせたような味だったな。それと臭いは湿布の臭いを十倍にしたような刺激臭だった……。

 

 アレはもうドリンクじゃない。限りなく毒薬に近い薬だ。

 

 そして最後にザフィーラだ。彼は唯一の男ですぐに俺と気が合った。彼も冷静で真面目な人だ。家族で兄が居たらきっとあんな風だったのだろう。俺は一人っ子だったからよく分からんがね。

 

「おーい煉! 早く行くぞー!」

 

 おっと、ヴィータが呼んでいる。今日は皆で街のデパートに買い物に行くんだったな。

 

「ああ、すぐに行く!」

 

 俺がすぐに玄関に行くと、八神達が待っていた。

 

「何してんだよ遅ぇじゃんかー」

 

「忘れ物は無いか、煉?」

 

「ああ、大丈夫だよシグナム」

 

「ほな、はよ行こ!」

 

 そしてデパートに着いた。今日はショッピングを楽しむのが目的で必要な物を買うという事は無い。ま、欲しい物があれば買う程度のものだ。

 

「…………」

 

 そして今ヴィータがおもちゃコーナーでとあるぬいぐるみを見ていた。

 

 ウサギ……みたいだが、お世辞にも可愛いとは言えない物だ。だが、彼女には惹かれるものがあったのだろう。

 

 ふむ……買ってやるか。

 

「ヴィータ、それが欲しいのか?」

 

「うえっ!? あ、いや……別に欲しいなんて……」

 

 口ではそう言っているが、チラチラとこちらとぬいぐるみを見比べていると、十中八九欲しいのだろう。

 

「無理するな。欲しいのだろう? 買ってやるからそれをレジに持って行くぞ」

 

「え……ほ、本当か!? 買ってくれるのか!?」

 

 俺が買うと言うと途端に顔を輝かせるヴィータ。かなり長い年月生きているらしいが、本当に見た目通りの精神だな。

 

「ああ」

 

 俺はぬいぐるみをレジに持って行き、会計を済ませた後にヴィータに渡した。

 

「ほれ」

 

「あ、ありがとう煉! ~~~♪」

 

 本当に嬉しそうだ。

 

 あ、お金はこの前、月村忍に頼んで少しだけ貰った。彼女との盟約は月村すずかの身に危険が迫った時、その助けをするということだ。今のところ、そういった事件はない。

 

 ま、偶に様子を見るときはあるがな。

 

 そして今度は食品コーナーでアイスを見つめているヴィータを発見した。

 

 ……またか。仕方の無い奴だ。

 

「ヴィータ……どれがいいんだ? 買ってやるから選べ」

 

「っ! ほ、ホントか!? いいのか!?」

 

「ああ」

 

「ありがとう、煉!」

 

 俺が買ってやると言ったらヴィータは再び顔を輝かせた。尻尾があったら盛大に振っていたことだろう。

 

「あんまり甘やかすとアカンで煉君?」

 

「そうだぞ煉。お前はヴィータを甘やかしすぎだ」

 

 だが、ヴィータにとって思わぬ伏兵が潜んでいた。はやてとシグナムがダメと言ったのだ。

 

 それを訊いたヴィータは『がーんっ!』という様な表情で落ち込んだ。見るからにもの凄い落ち込みようだったことは言うまでも無い。

 

「大体、物欲などで心を動かされてどうする? 騎士はそのようなものでは務まらんぞ」

 

 さらに追い打ちを掛けるシグナム。

 

 流石に可哀想だったので、俺はヴィータに念話で話した。因みに、念話はシグナム達に教えて貰った。結構便利だ。

 

「(ヴィータ、また今度俺が買ってやるよ)」

 

「(ほ、本当か!?)」

 

 途端にヴィータは顔を上げて輝かせた。

 

「(ああ。だから元気を出せ、な?)」

 

「(うん!)」

 

 よし、これで餌付けは成功だ。単純だな、くくくっ。

 

「まったく、ヴィータ……お前という奴はいつもそうだ。食べ物ばかり目が行って他の事が厳かになるのは騎士として恥ずかし……く……」

 

 しかし、未だに説教をしているシグナムの様子が変わった。俺は疑問に思い、シグナムの視線の先を見ると……

 

「………………ごくっ」

 

 デザート食品があった。ショートケーキ、エクレア、シュークリーム、チーズタルト、パフェetc……。

 

 しかも喉まで鳴らしていた。 

 

 おいおい、思いっきりデザートに心を動かされているじゃないか! 騎士はどうたら言ってたのは何なんだよ……。

 

 だから、俺は少し意地悪をしてやった。

 

「物欲に心を動かされちゃ騎士は務まらないんじゃ無かったか?」

 

「こ、これはだな煉……そ、そうだ! 学習だ! 最近のデザートはどういった物なのか学ぼうと思ってだな?!」

 

 ほう……どの口がそれを言うか?

 

「喉まで鳴らして見ていたくせに?」

 

「ぐっ!?」

 

「ヴィータにはあれだけ説教しておいてそれを言うか?」

 

「うぐっ」

 

「へぇ~? 騎士道ってのは随分立派なものなんだな? 偉そうに説教しておいてそれを言うんだからな」

 

「ぬ、うぅ……」

 

 ちょっと楽しい。シグナムは顔を真っ赤にして動揺していから。だが、少し涙目になっていたのは気のせいだろうか?

 

「もう……煉君、そこまでにしとき? あまり追いつめるとシグナムが可哀想やで?」

 

「くくくっ、わかったよ」

 

 そして家主様から注意されたので俺は引き下がった。

 

「シグナム、別に無理せんでもええんよ? 好きな物があったら買ってええから、な?」

 

「っ! で、では主はやて! 今しばらくお待ち下さい! すぐに選んで参りますので!」

 

 だが、主の言葉を頂いてシグナムの理性は崩壊した。思いっきり物欲にまっしぐらだったのだ。

 

 ってか、葛藤ぐらいしたらどうだ? あまりにも情けないぞ、お前?

 

「~~♪」

 

 そしてシグナムは嬉しそうにデザートを選びに行った。その際、微妙にスキップしていたのは気のせいだと思いたい。

 

 勿論、この後ヴィータにアイスを買ってあげた。

 

 さて、買い物はまだまだ続く。

 

 だがこの後に悪夢が待っている事を俺は知らなかった……。

 

 

 

 

「煉、そういえばお前の服も新しく買わなければならんだろう?」

 

 始まりは買い物が終盤に差し掛かり、シグナムが唐突に切り出した事だった。

 

「お前、数着しか服持ってないだろう? 黒のTシャツと黒のズボンに白の上着。しかも全部無地だ。少しぐらい着飾ってもいいんじゃないか?」

 

 ああ、そういえば必要最低限に買ってそのままだったな。だけど、俺は着飾るのは好きじゃないんだよなぁ……。

 

「いや、別にいいよ。今のところ不自由はないから」

 

「そういう訳にもいかないだろう。お前程の歳なら普通はもっとオシャレというものをしても良い筈だぞ?」

 

「あ、ウチも思った。煉君って歳の割には落ち着いているというか、大人っぽいんよな~。もっとオシャレしたほうがええと思うんやけど……」

 

 そりゃ大人ですから……精神だけな。

 

「ほら、主もこう言っている。兎に角一緒に来い。私が服を選んでやる」

 

「え? あ、ちょっ! 引っ張るなシグナム! 俺は別にオシャレなんて必要無いから!」

 

「いいやダメだ。ほら、暴れないでこっちに来い。私が着せ替……着させてやるから」

 

 おい待て! 今なんて言いかけた!? っていうか言い直してもあまり意味が変わって無いから!!

 

 だから腕を引っ張るな! くそっ、握力が無駄に強ぇ!? お、おい! HA☆NA☆SE☆!

 

 い、いやぁあああああああああ!!?

 

 

 

「ねぇ、ヴィータ」

 

「ん、なんだシャマル?」

 

「シグナムってショタコンだったっけ?」

 

「いや、違うと思うけど? ってか、ショタコンって何だ? 食えるのか?」

 

「……………………ヴィータちゃんはそのままでいてね?」

 

「……?」

 

 

 …………もう御婿に行けない……しくしくしく……。

 

 

 


 
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