No.534452

現代に生きる恋姫達 目指すは恋姫同窓会 一刀の後編

狭乃 狼さん

現代に生きる恋姫達、その一刀の後編をお送りします。

話のメインとしては、一刀こと一登に出会った時の、星、朱里、雛里、その三者三様の様子と。

そして、その時の華琳の胸中なんかを描いております。

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2013-01-21 03:24:08 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3275   閲覧ユーザー数:2645

 注:【今回は諸事情により、お話を三人称にて進めます】

 

 

 現代に生きる恋姫達 一刀の後編

 

 

 「……一刀が見つかった、ですって?」

 

 耳に当てるケータイの向こう側から聞こえてきたその言葉に、華琳は思わず絶句した。その日、カズトと次の恋姫探しに関する話をし終え、一人帰宅しようとしていた彼女にかかって来た一本の電話。その相手は桂花だったわけなのだが、電話口のその向こうで、その桂花は相当に興奮しているような口ぶりで、最初はどこか要領を得ない、彼女にしては珍しいあわてぶりの話し口調だった。

 そんな彼女を何とか落ち着かせた華琳が、桂花の改めてしたその話を聞いていくに連れ、華琳自身もまた、その思考を真っ白にさせて行き、桂花の言葉をその頭が理解するのに、ほんのわずかに時を要したほどであった。

 

 「……本当に、一刀、なの?」 

 『はい、華琳さま!もう、間違いありません!あ、ただ」

 「ただ?」

 『……いえ、会っていただければ分かると思いますから、ともかく、今から来ていただけませんか?これから他の者たちとも連絡を取りますから。あ、場所は何時もの執事喫茶じゃなく、彼が、一刀がバイトしている店の方に』

 「……ええ、分かったわ。……大丈夫、その店なら私も知ってるから。それじゃ」

 

 話を終え、ケータイを切る。それを鞄にしまい、華琳はふと、空を見上げた。まだまだ日の高い時間、クリスマスイブに世間が盛り上がりを見せるこの日の空は、何時も以上にましてくっきりとした蒼さを、彼女の頭上一面に広げている。

 雲一つとしてない晴天の空の下、華琳の心は少々、複雑な心持ちであった。

 

 「……一刀が見つかった、か。……魏ルートから転生した桂花がそう判断したのなら、紛れも無く彼であることには違いが無いんだろうけど……何故、かしら……どうして、私は……」

 

 素直に、喜びの感情が、湧き上がって来ないのだろう。

 

 初め、自身が前世の記憶を取り戻した時。自分はあれほどに一刀を探し、そして出会ったカズト、本剛夏守斗が北郷一刀で無かったことに、あれだけ落胆したというのに。その、北郷一刀が見つかったという桂花の報せに、確かにそれに対する嬉しさはあるはずなのに、もう一つ、心底から喜べていない自分がいるのは何故なのだろう、と。

 華琳はその理由を自身の中に探すが、結局のところ、理由はたった一つだけしか、彼女の脳裏には浮かんでこなかった。

 

 「……やっぱり、あれ、かしら、ね。ここにいる私が、魏に居た、一刀と直接交流した、曹操孟徳じゃあないから、なのかしらね……」

 

 桂花、そして華雄こと雄を除く、自分と朱里、雛里、星に七乃、そして蓮華という、これまでに再会することの出来たかつての知己たちは、須らく、ゲームの恋姫†夢想、その中の蜀がメインとなるシナリオから転生した来た者たちだ。

 それゆえ、他のルート、魏と呉に一刀が降り立ったシナリオ内にて、彼と、北郷一刀と直接接したのでは無い自分は、彼に対するその思い入れが薄いのだろう、と。そう、華琳はこのとき、己の心を一人納得させていた。

 もっとも、これは後になってから彼女も自覚するのだが、先のような理由、それ以外にも、彼女から一刀に対する執着心、それを薄れさせている要因が他にあった、というより、居た分けであるが、それはまた、もう少し未来においてはっきりすることになるので、ここでは割愛することにする。

 それはさておき。

 桂花からの電話を受けた華琳は、すぐさまカズトにもそのことを伝え、自身はその足で件の店へと向かった。この現実世界における北郷一刀がどういう人物として存在しているのか、わずかの期待とわずかの不安をその胸中に抱えつつ。

 

 

 

 一登のバイトする件の喫茶店は、その日、珍しく終日貸切の札がドアにかけられていた。世はクリスマス一色であり、こういった店にとってはまさしくかきいれどきであろうに、店主である桂花のおじは姪の頼みに快く、自らの店を彼女らの会合のための場に提供した。

 

 「時期はうちには関係ないからな。閑古鳥が鳴いてるのもいつものことだし」

 

 そんな風に冗談めかして笑うおじに、桂花は少しあきれていたが、大して理由も聞かずに姪の頼みを聞いてくれたその彼には、心底からの感謝の念を、その胸中にてのみ向けていた。その桂花は、今は一登を相手に昔談義に花を咲かせていた。

 そして、そうして話をしていくにつれ、彼女の中で、北郷一登=北郷一刀であるという図式は、もはや揺るぎのないものとなっていた。ただゲームをやったことのあるだけの別人の狂言、という線は、彼女の頭の中には端からなかった。常人であるならば、ただ姿形が同じというだけで、自分たちがゲームの世界から転生した存在だなんていうことを考えるはずなどが無く、ましてや堂々と、そして確信を持って、その口になど出来るはずもない。

 そして、他の、呼び出した面子が集まるまでにと始めた、かつてのあの世界での“日常”の話を振り返るにつれ、一登はゲーム中では描かれることの無かった、あの世界での“本当の日常”をつらつらと語り、桂花の話すそれらにもすべて同調して見せたのだ。

 そうして話しているうち、間もなくみなが集まろうという時間が近づくと、桂花は一登に対しとある点を注意をした。

 

 「……一登。みんなが来る前に、これだけは言っておくわ。これから来るみんなは、ゲームで言うところの蜀のルートしか、記憶として知らないわ。だから、華琳さまと蓮華、七乃と華雄は、あんたのことは蜀の王の一人だった男、としか認識していない。……それだけは、覚えておいて」 

 「……そう、なのか……」

 「それと」

 「それと?」

 「……これは私も、いまだに!認めたくないんだけど……朱里と雛里、見て、吃驚しないように。……まあ無理でしょうけど」

 「?」 

 

 桂花のその最後の一言に一登が首をかしげたその時、店内に高い金属音がチリリンと鳴り響き、ドアが勢い良く開け放たれた。そしてそこに居たのは、息を切らせる高校生ほどの歳と思しき二人の少女だった。

 

 「け、桂花しゃん!ご、ご主人様が見つかったって本当れしゅか?!はわっ!」

 「しゅ、朱里ちゃん落ち着こうよう……その、桂花さん、ご主人様はどこに……?」

 「……言ったそばから来たわね……あんたたちが一番乗りよ、朱里、雛里」

 「……え……朱里……雛里……この、二人、が?」

 

 まさしく愕然、というのが一登の素直な反応だった。さもありなん。なにしろ、一登の知る朱里こと諸葛亮と、雛里こと龐統の二人といえば、小学生と言っても差し支えの無い、幼児のような姿をしていたからだ。

 それなのに、今目の前に居るこの二人は、十分に歳相応なスタイルをしているのである。そんな二人の容姿に、先ほどの桂花の台詞を思い返しつつ驚く一登を他所に、朱里と雛里は店の中をかつての敬愛する主だったその人の事を探してきょろきょろしている。

 

 「はわわ!け、桂花さん、ご、ご主人様はどこにいらっしゃるんですか!?」

 「あわわ……その、どこにもそれらしい人は見当たらないんですけど……?」

 「……まあ、無理も無いけどね……私だって、最初は気付けなかったわけだし……目の前に、居るでしょ」

 『え?』

 

 桂花のその台詞で、朱里も雛里もようやく、目の前に、桂花と相対して座っているその人物へと、意識と視線を向けた。そんな二人の目に見つめられた一登は、わずかに不安げに、同時に少し照れくさそうな顔をして、二人にその声をかけた。

 

 「……えっと。こういう場合も、久しぶり……って言うべきなのか、な?……元気そうだね、朱里、雛里。とっても見違えたよ。二人とも、綺麗になった」 

 「……ご、しゅじんさ、ま……?」

 「あわわ……その、声……確かにご主人様の……で、でも、顔も、その、あの、あわわ」

 「それは……」

 

 朱里と雛里のその予想していた通りの反応に、一登はわずかに悲しげな表情を浮かべる。そこに。

 

 「桂花!主が見つかったと言うのは本当か?!」

 「星」

 「はわわ、星さん」

 「あわわ」

 「星……」

 

 文字通り、ドアを破壊しそうな勢いで店の中に飛び込んできたのは、白バイ隊員の青い制服を着たままの、常山星子こと星だった。そして店の中を見渡し、一登の事を見るなり、彼女はつかつかと彼へと歩み寄って、その顔をまじまじと見つめだした。

 

 「せ、星さん……?」

 「あわわ……」

 「……ある、じ……ですな?貴方が、我が主、北郷一刀、なのですな?」

 「っ!分かるの、あんた。こいつが、一登があの北郷一刀だって」

 「当たり前だ!この趙子龍、例え姿がどれほど違っていようと、我が槍を預けた主を忘れる事などありはしない!朱里!雛里!お前達もそうだろう!あれほどにご寵愛を受けた主の事、よもや姿が少々違うだけで分からないなどとは言わせんぞ!」

 「はわわっ!?しょ、しょれは勿論っ!ご主人様のお声、私が忘れる筈がないでしゅっ!はわっ?!」

 「あわわ……も、もちろんでしゅっ!優しいあの目も、わしゅれなんかしましぇんっ!あうっ、噛んじゃった」

 「星……はは、変わってない、な……朱里も雛里も、成長はしたみたいだけど、やっぱり、俺の知ってる朱里と雛里だ……久しぶり、三人とも」

 「主……っ!」

 「ご主人様~!」

 「ご主人様~!ふええええ」

 

 感極まったのだろう。一登が一刀であるという確信を、星の促しも後を押して出来たことで、朱里と雛里は一登に胸に抱きついて号泣し、星もまた、一登の頭を抱きしめて静かに感激の涙を流したのだった。

 

 「……私が居る事、忘れてないわよね、こいつら……っ!」

 

 

 

 そんなやり取りが店内で繰り広げられているとき、店の外、ドアの傍で中の様子を窺っていた者達が居た。華琳、蓮華、七乃、華雄。そして、カズトである。

 

 「……どうやら、本物のようね」

 「そーみたいですねー。流石に私は一度、反董卓連合の時にしか会った事ありませんからなんとも言えませんけど、あの三人の様子から判断すれば」

 「間違いなく、北郷本人、か」

 「?……どうした、華琳?なにやら複雑な表情をしているが」

 「……なんでもないわよ」

 

 そう、自分に問うてきたカズトに対し、華琳はそっけなく答えはしたが、実際のところ、華琳の心中は複雑なものだった。桂花やかつての蜀の面子だった者達が認めた紛う事なき北郷一刀が、こうして、扉一枚を隔てた場所に居る。それはそれで、とても喜ばしい事には違いが無い。

 だのに、完全に、彼らのことを第三者的視点で達観している自分が、ここに確かに居ることが、彼女の心を戸惑わせていたのである。

 

 「まあ何時までもこうしていた所で仕方が無い。そろそろ中に入るとしようか」

 「そうね。この世界の彼とは、初対面。まずは、ゆっくり話を聞かないとね」

 「ほら、いくぞ華琳」

 「……分かってるわよ」

 

 そうして、どこか足取りの重い華琳をカズトが促し、店内へと入って行く蓮華らの後に二人も続いていく。ドアを開け、中に入った蓮華や華琳たちの姿に驚喜の表情を浮かべた一登が、かつてのあの世界での自分の容姿と瓜二つな姿をしたカズトと相対した瞬間、とても複雑そうな気まずい笑みを零し。カズトはカズトで、北郷一刀である所の北郷一登と出会ったことで、なんとも言えない気持ちで笑みを零す。

 それでも最後には、二人揃って照れくさそうに笑いながら握手と挨拶を交わし、一登のこの世界での半生から、かの世界へ渡った後の話しなどで、その場は盛り上がって行くのだった。

 

 だが。

 

 この時、彼らの内の誰か一人でもその事に気付いていれば、そのすぐ後に起こる騒動を、予め回避することが出来ていたかもしれない。

 

 店のドアに、初めは掛けられていた筈の『本日終日貸切』の札が、先ほど、星が勢い良くドアを開けたその瞬間に外れ、地面に落ちてしまっていたことに。

 

 そしてさらには、華琳やカズトらが店の中へと入って行く、その少し後方から歩いて来ていた数人の男女が、その件の店を目に止め入る事にさえしていなければ、世界を越えての再会と出会いを喜び合う今日この日の彼らに、その事態は起こらなかったのかもしれない。

 

 しかし結果的に、その、最悪の事態が起きなければ、そこでの新たな再会が巡ってくる事もやはり無く。そしてその数人の男女の中に、艶やかな黒髪をしたその少女が居た事が、その事態をとんでもない方向へと向かわせることになる。

 

 その少女の名は……。

 

 

 

 「おーう。そろそろ飯にしようぜー」

 「そうだなー。あ、あそこに喫茶店があるぜ」

 「クリスマスだから何処も満員かと思ったけど、あそこはどうやら空いてるっぽいよー」

 「あは。あたしらラッキーだねー。ねー。あんたもあそこでいいでしょー?」

 「あ、ああ。構わない。皆に任せるよ……クリスマス、か。(……“皆”も今頃、この雪の降る下、それぞれにクリスマスを楽しんでいるのだろうか……ご主人様……貴方は一体何処に……)」

 「おーい!なにぼさっとしてんだよー。はやくしろよなー」

 「そうだよー。早くおいでよー、“愛紗”-」

 「あ、ああ、分かったー!」

 

 愛紗。

 

 関長愛紗(せきながあいしゃ)

 

 そして、かつての前世での名を、『関羽雲長』。

 

 蜀の五虎将筆頭にして、武神と呼ばれた少女も、やはり、皆と同様この世界にその生を受けていた。

 

 だが、齎された再会の舞台は、最悪のそれとなる。

 

 そしてそれはもう間も無く、一堂のその前に訪れる事になるのである……。

 

 『一刀の後編・了』

 

 

 

 さて、現代に生きる恋姫達、一刀こと一登編はこれにて幕。

 

 そして続いては愛紗で行かせていただきます!

 

 MiTiさんやルサナさんには確認を取ってはおりませんが、どうしても彼女を書きたくなりましてw

 

 と言うわけで、愛紗編を書いて、その後、予定していた二喬編に入るつもりです。

 

 リアルの事情が色々あって、なかなかss書きをすることが出来ませんが、

 

 これからも皆さん、寛大なる心でもって、作者めのことをお見守りくださりませ。

 

 では今回はこのあたりで。

 

 再見~!www

 


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