No.529714

黒物語  闇の魂を持つ者の旅路の記録  あいキャッツ

BLACKさん

今回の話は去年の大みそかに「猫物語(黒)」を見た影響で書いたものです。そのため、その作品の部分的なネタバレがあることをご了承下さい。
今回の話はその話に出てくるキャラクターをオリジナルキャラにしたのに加え、作者の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)がメインとなっているものです。

ちなみに投稿した理由は投稿日が作者の誕生日だったからです。

2013-01-09 08:36:23 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1096   閲覧ユーザー数:1070

 

「ねえねえ、秋山お兄ちゃん」

「うん?」

 

ある家の居間では家主が出かけているために留守番をしている修道服のような服を着た少女とその世界で一応作った仕事をさぼっている白くて長い髪をした男がいた。

 

「別の世界のお話聞かせて」

「別の世界のお話ね~」

 

男は考える。

 

「じゃあ、俺がお前が里帰りしている間に行ったことのあるとある1つの世界で体験したことでもいいか?」

「うん」

「それじゃあ、語るぞ。あの世界で起こった出来事、あれはある意味ではお前達よりも数倍恐ろしかったな……」

 

男、秋山総司郎はその異世界で体験したことを語り始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

黒物語  闇の魂を持つ者の旅路の記録  あいキャッツ

 

 

 

 

 

 

 

俺はある世界へとやって来た。その世界は夜だったな。

その時の俺はノーマルモードで黒髪短髪、黒くて薄い上着に白いシャツ、長い黒ズボンの格好だ。

 

「この世界は……」

 

俺はすぐに世界の情報を得ようとした。

 

「あまり大きなことはない、変哲な世界だな……。俺が介入していい度合いは90%、やけに高いな。

とりあえず面白い反応は……」

 

俺は何か面白い反応を探した。けれど……。

 

「感知ができない? いや、わずかにできるようだが、この世界の力でジャミングされてるようだな。

まあいいさ。適当にあるけど、この世界や俺にとって面白いものに出会えるだろ」

 

俺は歩いた。

歩いて十数分くらいだったかな。

 

「?」

 

俺の目の前には倒れている人がいたんだ。

 

「大丈夫か?」

 

俺が倒れている人を抱えて見た。

 

「生気を吸い取られてる感じだな。これは……」

 

そんで俺は目の前を見てみると同じように倒れている人が一人とその上に乗っている少女が一人いたんだ。

ただそいつの見た目が普通じゃなかった。

その少女の髪は白くて長く、猫の耳が生えており、格好も黒い下着しか着用してないというものだった。

おまけに胸もでかい。

 

「……誰にゃ?」

「俺か? 今、名乗る気はない。けど、すんげえ格好してるなお前……」

 

俺は指摘したよ。

 

「季節的にはその格好、まだ少し寒いだろうに。

おまけに胸がでかいから男が見たら、興奮するぞ。現に俺だって少し興奮してるぜ」

「この変態!」

「変態じゃない。男としての性(さが)だ。許せ」

「まあそれはどうでもいいにゃ!」

 

その猫女は俺に飛びかかって来た。

そんで猫女は俺の背中にのっかかって来る。

 

「くらえにゃ!」

「? なんだ?」

 

猫女は何をしたかったんだって?

それはすぐに教えてやる。

とにかく猫女は自分がやろうとしたことが出来なくて驚いた。

 

「なんでにゃ?」

「俺のエネルギー吸収しようとしても無駄だぞ。

俺はエネルギー吸収できないようにしてあるからな。それにやろうとすると逆に……」

「ふにゃ!?」

 

猫女はすぐに俺の体から離れる。

なんでかって?

 

「俺のエネルギーを吸収しようとしたら逆に吸収されるぞ」

「そんにゃ……」

「まだいい方だぞ。俺の闇を注がれなかっただけな。もっとエネルギー吸収の力が強かったら、自動的に俺の中の闇が入り込んで発狂。そのまま死んじまうからな」

「一体何者にゃ……」

「『邪悪なる闇の神の魂』を持った異世界人、そして人間だ」

 

そんな時近づいてくる足音が一つあった。

猫女はそれに気が付いて、すぐに逃げて行った。

俺はその気になれば猫女を追えたが、やめた。

 

「あ、あんた……」

 

そこに来たのは一人の少年で息切れしてた。

一体どこから走ってきたんだ?

 

「なんだ?」

「今、猫のような女の子に襲われなかったか?」

「襲われたが、返り討ちにしてやった」

「それで女の子は?」

「お前さんに気が付いて、逃げたよ」

「……あんたは?」

「俺か? 俺は秋山総司郎。詳しいことは後で話してやるさ。

それよりも、お前、あのいい体してる下着姿の猫女のこと知ってるのか?

知ってるなら教えろ。俺のこともその時に教えてやるからよ」

「……わかった。ただ、ここだとな……。場所を変えたい。それともう一人話に入れさせていいか?」

「いいぜ」

 

俺はその少年と一緒に移動した。

 

 

俺はその少年と一緒にある場所にやって来た。

見る限りもう使われなく廃校舎のようだった。

俺が案内された場所は明らかに学校の教室だし、机やいすが散乱していた。

いや、正確には散乱していた机やいすが重なってたんだ。

一体どうやればあんな風になるんだろうな。

まあいいさ。その机といすの山にはアロハシャツのチャラそうな男がいた。

 

「やあ、枢木君。その男の人は誰かな? 君は委員長ちゃんを追ってたんじゃないのかな?」

「確かに俺は恋川を追ってたよ。…けど、こいつはその恋川を返り討ちにしたらしいんだ」

「へぇ、委員長ちゃんをね……」

 

そのチャラそうな男は机といすの山から下りた。

 

「君、名前は?」

「秋山総司郎。この世界の人間じゃない」

「?」

 

少年の方は何を言い出してるんだこいつという顔をしている。

まあそれが普通の反応だ。

 

「この世界の人間じゃない?」

「平行世界ってのはわかるか?」

「無数にあるこの世界とよく似た世界って事か?」

「端的に言えばそうだな。世界によってはこの世界とは全く別の歴史や状況になっていたりするけどな。

まあ、そういうことは別にいいか。とにかく俺はその平行世界の人間だ。

とは言っても俺が生まれ育った世界、そして俺自身は特になんの力もないものだった。

だが全く別の平行世界からやって来た『邪悪なる闇の神の魂』ってのが俺の中に入ってな。

俺はそれ以来、滅茶苦茶な能力を手に入れた。平行世界移動能力がその一つだ。

そして俺はその『闇の魂』の対になる魂の力を持った存在ない限り、滅びることのないほぼ不死で完全な不老、そしてその力の存在であろうと封印することも出来ない存在となった」

「「…………」」

 

男も少年もなんといえばわからない顔をした。

 

「まあ、俺が普通の人間じゃないと言うのはこれを見てもらえばわかるかな」

 

俺は自分が訪れた世界で知り合った奴に自分が普通の人間じゃないとよく見せる方法をとった。

それは左手を右手で思いっきりぶった切ることだ。

 

「へぇ……」

「手だけで簡単にもう片方の手が切れやがった……」

「そしてこれをな……」

 

俺はその後、右手で左手部分を空を切り、左手を治した。

ああ、切って落ちた左手は消滅するんだよな。俺の意思で残そうとしない限りな。

 

「これで俺が普通じゃないってのがわかったかな?」

「ああ、十分わかった」

「まるで吸血鬼みたいだ」

「俺は吸血鬼じゃない。俺はこんな力を手に入れても人間だ」

「じゃあ枢木君と一緒だ」

「そいつと一緒?」

「そこにいる枢木君もさ、吸血鬼に血を吸われたのが原因でね、君ほどじゃないけど人間にはない治癒能力があるのさ」

「ふぅ~ん」

「驚かないのか?」

「世界によってはそんな奴普通にいる場合がある。まあ驚いたとしたなら、吸血鬼が血を吸われたら吸血鬼じゃなくてゾンビじゃないのか?」

「漫画の読み過ぎだよ」

「あっそ」

「……そう言えば自己紹介がまだだったな、俺は枢木礫(くるるぎ れき)」

「僕は東雲仁(しののめ ひとし)。ちなみにここにはもう一人、さっき言った吸血鬼の女の子もいるんだけどね。

夜はいつも起きてるんだけど、今日は寝ているようだね」

「この建物にもう一つ魂の反応があると思ったが、そういうことか」

「わかるのか?」

「ああ。人間かそうでないのかという判断もな。人間じゃない反応だなとは思ったがな……」

「そこまでわかるなんてすごいね」

「その気になればこの世界全体も探知できるが、そこまで探知すると気がめいるから普段は半径5メートルくらいだな。

さてと、俺のことを知りたかったらこんなもんだな。いいかな?」

「ああ、悪かったな」

 

さてと、世界の記憶からさっきの女の子のことを探せばいいが、めんどくさい。

俺もこいつらからさっきの女の子のこと聞いておくか。

 

「俺も聞きたいことがある」

「君を襲った女の子のことだね。枢木君、教えてあげなよ」

「俺が知ってるのは名前くらいだぞ」

「充分だろ? 名前くらいは君が教えなよ」

「仕方ないな。お前を襲った女の子は恋川愛(こいかわ あい)。俺の学校のクラスメイトで委員長なんだよ」

「だから委員長ちゃんか」

「そういうこと。そんで今の委員長ちゃんは障り猫になってるんだ」

「障り猫?」

「名前の通りさ。怪異に憑りつかれたのさ」

「怪異?」

「この世界には少しばかり不思議なことがあってね。ちょっとした化け物が存在するのさ」

「この世界ではさっき言った吸血鬼も怪異になるのか?」

「ああ、なるね。それでその障り猫の特徴はエナジードレインだ」

「エナジードレイン。エネルギー吸収か。まあさっきそんなことしたらあいつは酷い目に遭ったんだな」

「酷い目?」

「俺の体からエネルギーを吸収しようとしたら逆にエネルギー吸収されるのさ。そんでそのサービスとして俺の中にある闇を送られることがある。

ただその闇を送られたら基本的に発狂死する」

「何故だ?」

「俺の中の闇があまりに変質すぎるからだ。それに闇も濃い。俺とは別の闇の濃さがない限りは確実に死ぬ。

まあ俺は今までむかついたやつの何人かは俺の闇をかなり薄めた状態で送って発狂させたことはあるけどな」

 

そうだな。何人だったかな。忘れたけどとりあえずむかついたのは確かだ。

 

「そんで、なんでそうなったんだ? 理由がないわけじゃないだろ?」

「理由はあるよ。委員長ちゃんは数日前に道端で死んでいた猫を供養したんだ」

「それだけか?」

「それだけだよ」

「? その猫は呪われた猫だったのか」

「まあそんなようなものだね。その猫は自分を哀れんだり、供養した者に取り憑いて障り猫としてしまう能力があったんだよ」

「いやな猫だな。他人のことを考えない胸糞悪い猫だな」

 

俺がその猫を見つけたら血祭り安定だな。

 

「ただその猫は委員長ちゃんの体に入って悪さをしてるんだよね」

「ああ、猫が操っているのか」

「そうでもない可能性があるんだよね、これが」

「どういうことだ?」

「昔の言い伝えでね、障り猫に取り憑かれた人間を何とか捕まえたけど、実はその人間は憑りつかれてませんでしたっていうオチだよ」

「なんだよそれ。俺もそんなこと聞いてないぞ! 東雲!」

 

礫という奴も怒鳴り声を上げるように言うなぁ。

どうやら礫にも知らされてない事実だったようだ。

 

「つまりはあの女……恋川愛は自分の意思で人を襲っていると……」

「そんなはずは……」

「ないって言いきれるかい? 枢木君」

「…………」

 

礫は黙ってしまった。

 

「まあ何にせよいい加減にどうにかしないと……」

「警察も動くだろうな。さすがに化け物の力があっても、警察とかが本気出せば不死の力がない限りは死ぬだろうな」

「…………」

「しかしこうなった以上、仕方ない。俺が捜してきてやる」

「いいのか?」

「俺が関わった以上、付きあってやるさ。暇だしな。

ただ今日はやめてくれ」

「なんでだ?」

「眠いからだ」

 

そう言って俺は空間を切り裂いて俺がよく寝床にしているその世界の狭間の世界に行った。

 

「おやすみ」

 

 

礫視点

 

 

あの秋山をいう男は信用できると思う。

けれど、あの男は他に何かを隠している可能性もある。

それに俺にとっては恋川のことはすぐにでも解決したいこと。

あいつのように寝て次の日まで待つことなんてできない。

だから俺は出ていこうとした時であった。

 

「彼を待たないのかい?」

「待てない」

「それじゃあ、一つ忠告するよ。もうわかってるだろうけどさ、君じゃ委員長ちゃんをどうにかすることはできないよ」

「……それでもだ」

 

俺は東雲塾を飛び出した。

だけど俺には恋川を探す術なんて持っていない。

手がかりになるものはないかと思って恋川の家にやって来た。

だが恋川の今の両親は恋川が障り猫になって、最初の被害者となった。

エナジードレインをくらって入院中のためにこの家には誰もいない。

だから俺は不法侵入した。

 

「…………」

 

俺はその家でとんでもないものを見た。

 

「マジかよ……」

 

俺は恋川の家から出て、思わずそうつぶやいた。

そして恐怖した。その恐怖のあまりに大人しく家に帰って寝た。

その次の日、俺は長い休日の始まりで誰もいないだろう学校に来ていた。

 

「…………」

 

俺には恋川を探す術なんてない。

けれど手がかりがあればいいと思ってきた。

いや、そのために学校に来たんじゃないな。

 

「これが恋川の使ってる机か」

 

俺はいつのまにか自分や恋川が使っている教室に来ている。

そんで俺が座っているのは自分の使っている椅子ではなく、恋川の使っている椅子。

そして目の前には恋川が使っている机がある。

 

「恋川……」

 

俺は思わずその机に顔をうずめた。

 

「なにしてるにゃ? この変態」

 

教室の扉は完全に閉じていたはずなのにいつの間にか開いており、そして教壇には障り猫の姿となった恋川がいた。

 

「恋川! ……いや、障り猫って言った方がいいのか」

「お前、とんでもない変態だにゃ。そうやってご主人の机に顔をやって、あまずさえ舐めようだなんて……」

「舐めようだなんて……」

 

あの障り猫の言ってることは否定できない。

何故ならあいつに言われてなかったら、舐めようと思っていたからだ。

 

「まあそんなことはどうでもいいにゃ。しかしお前、ご主人の家に不法侵入なんていい度胸だにゃ」

「なんでそれを?」

「猫は犬ほどじゃにゃいけど鼻が利くんだにゃ」

「なるほど。……それで俺が近づいた時に逃げてたってことか……」

「そういうことにゃ」

「言いたいことはそれだけか? 障り猫」

「いいにゃ、他にもあるにゃ」

 

恋川はそう言いながら、俺の前までやって来る。

その豊満な胸を見せびらかすような下着姿で……。

俺は思わず唾をのんだ。

 

「何見てるにぃや、変態!」

「仕方ないだろ! 男なんだからさ!」

「……そこは大目にみてやるにゃ。それでいいたいことは一つにゃ。

お前、もう追うなにゃ」

「へ?」

「聞こえなかったかにゃ? もう吾輩を……ご主人を追うなにゃ」

「なんでだよ」

「知らなかったかにゃ? 今まではご主人の力でお前やあの男を生かしてることをだにゃ」

「何!?」

「こっちは障り猫で相手は人間。吾輩がその気になれば一発で死ぬにゃ。

けど死ななかった。それはご主人がやめろと命令してるからにゃ」

 

命令だと?

 

「やはりお前は恋川を完全には支配してない」

「少し言い過ぎたかにゃ。まあそうにゃ。こうなっていてもまだご主人はわずかにだが意識を保ってるにゃ」

 

東雲の言ってた通りだな。

あいつは恋川を追う時に言っていたな。

 

(君がその程度で済んだのは委員長ちゃんがまだ意識を保っていたからだよ)

(恋川の意識がまだある?)

(ああ。どうしてかは僕も知らないけど、障り猫は委員長ちゃんを完全には支配してない。

だからその程度で済んでいる。じゃなきゃ君は最初の一撃でお陀仏だよ)

(……どうすれば恋川を助けられる?)

(まだ委員長ちゃんの意識がある状態で障り猫と分離させればいい。

まあそれは簡単じゃないし、僕も100%出来る方法は知らない。

でも、可能性があるとしたら障り猫を気絶させる。僕が知っている方法はそれだけだね)

 

そう言って東雲は恋川を探しに行って、24回戦って敗北した。

確かに24回もやって死ななかったのはおかしいと思っていたさ。

 

「それがどうした?」

「なに?」

「俺はそれでもお前と恋川を分離させて、恋川を救う!」

「無理無理にゃ」

 

するといつの間にか恋川は消えていた。

否、教室の扉まで移動していた。

 

「言っておくが、このまま追ってみろにゃ。

お前を殺すだけでなく、ご主人も殺すにゃ」

「何だと……それじゃあお前も死ぬんじゃ……」

「それでもお前が苦しむならいいにゃ」

「ちぃ……」

「安心するにゃ。吾輩はご主人のストレス解消をしたいだけにゃ。

それが終わればこの体は返してやるにゃ。まあ後2,30人は襲わなきゃ、ご主人のストレスは解消されにゃいけどにゃ」

「そんなことしても、またあの家に戻ればあの両親と一緒に暮らさなきゃならないんだぞ!」

 

俺は見た。

あの家での惨状を。

あの家には恋川愛の部屋がなかった。

もう17を過ぎた少女にだぞ。

いくらなんでもおかしすぎるだろ。

部屋がないだけならよかった。

だが恋川の勉強机はないだころか、寝床は廊下というあまりに悲惨なものだ。

その上に父親からの暴力。

ストレスはたまるのは無理はない。

だけど、それでもその両親と一緒に暮らしていかないといけない。

 

「それでもにゃ」

「くっ!」

 

俺は駆け出した。

いや、駆け出したと思ったけど、実際は1ミリも動いていない。

 

「それでいいにゃ」

 

恋川はその場から姿を消した。

 

「くそ」

 

 

礫視点終了

 

 

 

 

俺が礫の魂を感知して挟間の世界から出てきたらそこは教室で、机に顔をつけている礫がいた。

 

「何してるんだ、お前」

「秋山……」

「とは言っても、俺は世界の記憶で何が起こったのかはわかるけどな」

 

俺は世界の記憶が書かれた本を出してみる。

 

「猫娘と一悶着あったようだな」

「……一悶着ってほどじゃねえよ」

「まあ俺には関係ないか。だがむやみに人を襲うと言うのはいただけないな」

「どうするんだ?」

「障り猫と分離させる」

「できるのか?」

「俺はな、基本的にこの闇の魂のせいで闇の魂が元居た世界以外ではイレギュラー、異物扱いでな。

世界に関わり過ぎるとその世界を崩壊させてしまうんだ」

「世界を……崩壊……」

「その世界がきれいさっぱりとなくなっちまうんだ」

「じゃあお前が恋川を助けたりなんかしたら……」

「大丈夫だ。この世界だと少し特殊なようでな。90%くらいは介入してもいいようだ。

その90%には助けてもいいってある」

「そうか。助けてくれるんだな」

「まあ手助け程度なら、いつも他の世界でもやってることだけどな」

「それで具体的にどうすればいいんだ?」

「その前に俺から一つ質問がある」

「なんだ?」

「お前はあの少女を助ける気があるか?」

「ある!」

 

礫のやつは力強く答えた。

 

「じゃあなんでだ?」

 

そして俺はほぼ愚問と言うべき質問、なぜ助けるのかと尋ねる。

 

「あいつがな……俺の初恋ともいうべき人だからだ」

「そうか……うん?」

「どうした?」

「いや、なんでもない」

 

俺はそう言ったが実はその時気がかりなことがあった。

 

(こいつから出ている言葉に嘘はない。

だがそれとは別の感情もあるな。好きの反対も持っているとはな。

そこは俺は嫌だな……。まあいいさ)

 

今は気にすることではないと俺は思った。

 

「でだ、俺が直接探してやるか? それともお前が餌になってあいつを呼ぶか?」

「なんで俺が餌になるんだ?」

「お前は自分を餌にあいつをおびき出す方法を思いついているんだろ?」

「ああ……。だがそのためには一つだけあるものが必要になる」

「俺が用意してやろう」

「いや、これは俺自身が用意しないといけない」

「覚悟があるんだな。だったら俺はあいつがこれ以上人を襲わないようにちょっかいをかけてくるは。

お前の準備が出来たら、俺に知らせてくれ」

「どうやって?」

「ほらよ」

 

俺は礫にインカムを渡した。

 

「それで適当に知らせろ。念じれば俺に伝わる。じゃ」

 

そんで俺は恋川愛を追う。

 

 

「またお前かにゃ」

 

恋川愛が人を襲う直前に俺がそいつの前に立ち、恋川愛を阻む。

 

「俺が相手では不服か?」

「お前じゃ、エナジードレインできないどころか逆に吸い取られるにゃ。

それじゃあ消化不良でご主人のストレスは解消どころか溜まるだけにゃ」

「本当にそうか?」

「どういう意味にゃ?」

「俺と戦えばいいさ。そうすればわかると思うぞ」

「わからないにゃ!」

 

恋川愛、めんどくさいから愛でいいか。

愛が俺に向かって爪をたてて襲ってきた。

 

「せい!」

 

俺も同じように爪をたてた。

それで爪と言うか指と指がぶつかる。

 

「なんて力にゃ……」

「はあああああ!!」

 

俺は思いっきり指に力を入れて愛を後ろに吹っ飛ばした。

 

「にゃにゃにゃ!!」

 

だがさすがは猫と言うべきか。

壁にぶつかりそうになったときにきちんと体を回転させて受け身をとったか。

 

「なんて奴にゃ。指先だけにあれだけの力を込めるにゃんて……」

「悪いな。俺はそれが出来る人間なんだ。

だが気づいていないか? お前が自動でやるエナジードレインとその逆に吸収されるのがなかったことを……」

「…………は!?」

 

愛は言われて気付いたようだ。

 

「俺がお前のそれと俺の逆吸収をコントロールしてるんだよ。感謝するんだな」

「感謝なんか……」

「そうかい」

 

気付いているか? お前、ぶれてるぞ。

俺は気付いていながら指摘せずに笑う。

 

「何がおかしいにゃ!」

「いやいや……。しかしこのままではお前は俺に倒される。そうは考えないか?」

「考えないにゃ!」

 

そう言って愛はその場を離れようとした。

お前のスピードは確かに人間じゃ追いつけないよ。

けどな、それはあくまで普通の人間じゃ追いつけないだけなんだ。

もう普通ではない俺ならな……。

 

「どこへ行くんだ?」

 

追いつくどころかお前の前に立ちはだかることだってできるんだよ。

 

「い、いつの間に……」

「お前のスピードはあくまで人間と猫が混ざったようなスピードだ。

だが俺は色んなものを見てきたせいで時を止めなくても高速移動が出来るんだ。

お前の動きは止まって見えるとまでは言いすぎだが、スローすぎてあくびが出たりするぞ」

「ぐぬぬぬ」

「とりあえず俺はこれ以上どうしようかとは思ってない。あくまでお前がこれ以上人を襲わせないように止める。それだけだ」

「けど、お前にずっと一緒にいられるのは窮屈にゃ」

「いいだろう。距離はとってやろう。だが俺はいつも見張っているからな」

 

俺は去った。

まあ襲う直前に止めることなんて俺には造作もないさ。

ひとまず俺は礫の奴のところに行くか。

こいつを常に魂で監視しながらな……。

 

 

で、俺が礫の魂を探知したら、あいつはどうも塾とか言ってた場所にいた。

まあそれはいいんだけど、俺がそこに言ってみたものは……。

 

「なに土下座しとるんだ?」

 

礫が見知らぬ少女に土下座している場面だった。

 

「こうでもしないと恋川を助け出すことが出来ないんだ!」

「あの子を助け出す……」

 

俺は目の前の少女を見る。

 

「…………」

 

まあ魂感知してたから正体はわかってるさ。

目の前にいる少女は純粋な吸血鬼だ。

となると昨日言ってたここにいる吸血鬼はこの子だな。

 

「なんじゃ? そなたは?」

「始めまして、秋山総司郎だ。吸血鬼の嬢ちゃん」

「よくわらわが吸血鬼だとわかったのぅ」

「吸血鬼がいるってことは聞いていた。そんで俺には魂感知があるからな。

それで人かどうかの判断も出来る」

「普通じゃないの、そなた」

「ああ、普通じゃない。だが俺は普通じゃないだけの人間だ。誰が何と言おうとな」

「ふぅ~ん」

「そんでこいつはなんでお前に土下座してるんだ?」

「考えも読めないのか?」

「その気になれば頭の中や心の中を読むことは出来る。だが俺はそれはしたくない人間だから余程のことがない限りはしない」

「変わった奴じゃの」

「よく言われる。それで同じことを聞くが、なんでこいつは土下座している?」

「わらわの力を借りたいそうだ」

「おいおい、土下座がお前の覚悟かい。ま、いいけどな」

 

俺は狭間の世界への入り口をつくる。

 

「しばらく寝ているから、お前の方が準備出来たら適当に俺の名前を呼んでくれればいい」

 

そんで俺は狭間の世界に入って寝た。

そんで次に俺が目を覚ましたのは2日も経ってた。

それで狭間の世界から戻って来てみたら、礫の奴が鞘のないバカに長い刀を持ってた。

 

「なんじゃそりゃ?」

「これが恋川を助けるためのものだ」

「まさかその子にそんなものがあるなんてね……」

 

東雲って奴がいつの間にかいた。

 

「お前も知らなかったと?」

「ああ。僕も全部知ってるわけじゃないからね」

「…………」

 

礫はその長い刀を持って部屋を出ていこうとする。

 

「忠告を3つほどしようと思ったけど、2つでいいか」

「忠告?」

「その1、仮に助け出したとして委員長ちゃんはその後どうするのかな?」

「その後?」

「僕も委員長ちゃんの親御さんの見舞いに行ったけど、見る限り荒れていたし、看護師達にも文句を言ってた。

傍から見ても褒められた人間じゃない。まあああなった理由はともかくとして、委員長ちゃんに暴力を振るった理由はわかるかな」

「なんでだ?」

「委員長ちゃんは正しすぎるからさ」

「正しすぎる?」

「ああ、あれほど正しい人間を見るとひがむ人間もいる。ましてや自分の娘がそんな人間だとね……」

「まあ正論言われ続けるとむかついてくるわな。俺だってそうさ。

俺からしたら正論が完全に正しいなんて思わない。正論はあくまで正しい論であって、言われた奴の心に納得とかを生むものかと言われればそうじゃないからな」

「なんだよ、そんな屁理屈」

「屁理屈か。俺は自分の意見を言ってるだけなんだが、どうも言い訳とか屁理屈扱いされるんだよな。

闇の魂の力が手に入る前までは言い訳だとか言われると心の中で怒ってたけどな。まあ、今の俺はおおらかだからそんなことはあまりないけどな」

「君の話はいいさ。それで親御さんはもうすぐ退院するらしいよ。もしこのまま委員長ちゃんが戻ったとしてもあの両親も戻る。

それじゃあ、今まで通りになるじゃないか」

「それでも恋川は親と暮らさないといけない! それが子供と親、…家族ってもんだろ!」

 

礫は何か思ってることがあるようだな。

 

「とにかくこれが忠告その1だ。その2については言うのをやめる。

だからその3だ。君は自分の命を大事にしないのか?」

「あ?」

「前に言ったよね。君と障り猫の相性は最悪だって……。

君がどんな方法で委員長ちゃんを助けようとしているのか分からないけど、僕の見立てだとどんな方法をとっても君は確実に死ぬ。

いいのかい?」

「…俺はあいつのためなら死ねる。それだけさ」

 

礫はそう言って部屋を出て行った。

 

「誰か一人のためなら死ねるか。嫌いな言葉ではないが……」

 

俺も出ていこうとする。

 

「君も行くのかい?」

「ああ。嫌いな言葉ではないが、命を投げ捨てるのは好きじゃないしな」

 

俺も出て行った。

 

 

礫視点

 

 

もう夜になった。

俺は塾の近くの廃屋で恋川を待つ。

俺が待って数分もしないうちに恋川は窓ガラスを破って入って来た。

 

「やっぱり来たな、障り猫。いや、恋川!」

「なんのことかにゃ?」

「とぼけるなよ。そんなキャラ設定したってもうバレてるんだ。

お前が障り猫に憑りつかれてるんじゃなくて、恋川自身だってな……」

「…なぁ~んだ、枢木君にはばれてたんだ」

 

恋川の口調が完全にいつもの感じになった。

俺の読み通りだ。

 

「それで、いつから気づいてたの?」

「その姿になったお前を最初に見た時だよ」

「最初っからってことか……」

「何故だ、なんでお前は自分の親を襲っただけじゃなくて他の人まで襲ったんだ!?」

「言わなかった? 親を襲っただけじゃ、私のストレスは完全には解消されないって…」

「だけど、それでもお前はあの親と暮らしていかないといけないだろ!」

「だったら、あの親達は私が殺す。今度こそ、この手で……」

「それはダメだ! 子供が親を親が子供を殺す、どちらもやってはいけないことなんだ!」

「…枢木君なんで? そこまで私を止めようとするの?」

 

簡単だよ、恋川。

 

「俺はお前が嫌いだからだよ」

「…………」

「確かにお前のなんでも知ってるような口ぶりに性格、俺にとってはそれは好きと同時に嫌いだった」

「奇遇ね。私も枢木君のことは嫌いよ」

「ああ、互いに嫌っていたんだな。…だけどな、俺はお前の為に死ねる。それは嘘偽りないぜ」

「変わったこと言うのね、枢木君は」

「今のお前に言われたくないね」

 

勝負は一瞬。

そう思った瞬間既に恋川は動き出していた。

 

「!!」

 

恋川が立てた鋭い爪が俺に襲い掛かることはなかった。

何故なら俺の横にはいつの間にかあの吸血鬼の少女からもらった刀が俺の体から出ていたのだから……。

 

「あぎゃああああ!!」

 

恋川は苦しむ。

 

「なんでだ? なんでこの刀が俺の体から出てるんだ?」

「お節介だったか?」

 

そして俺の後ろにはいつの間にか秋山がいた。

 

 

礫視点終了

 

 

 

 

まったくこいつは自分の体を犠牲にする気だったとはな。

 

「秋山! なんであんたが?」

「俺が隠れてたことに気づかないとはな。まあ気配は完全に絶ってたし、姿も消していた。魂感知レベルじゃないとまず見つからないようにはしてたけどな」

「じゃあ、秋山、この現象はお前の仕業か?」

「この現象とは?」

「とぼけるな! 俺が体の中に隠してたこの刀『霊斬』を体から出したのはおまえだろ!」

「ああ、俺だ。あのままだとあの女がああやって苦しむのはいいが、お前の上半身は確実に吹っ飛んでた」

「それが俺の作戦だった。それなのにお前は……」

「あのな、誰かのためなら死ねるってのは俺は嫌いじゃない。だけどな、簡単に自分の命を投げ出そうとするな。

お前の再生能力だってあの女の前じゃほぼ無意味だろ? ましてや上半身吹っ飛ばされちゃな……」

「…………」

「とにかく、命は大事だ」

「あなた達……枢木君、この苦しみは一体……」

 

礫の奴は苦しむ愛を見て言う。

 

「やっぱりお前も知らなかったんだな。この刀は『霊斬』って言ってな、怪異だけを斬る刀なんだ」

「怪異だけを……」

 

愛の奴は刀に触れた自分の手を見た。その手からは血は流れてないが、斬られた感覚があるようだな。

まあ人間としての部分じゃなくて、その怪異としての部分を見てみれば、その猫の片手は吹っ飛んでるけどな。

俺はそれを見ることが出来るけど、こいつに見せる必要はないな。

 

「そんなものがあるなんて……」

「もしもお前が知ってたら、迂闊に攻撃は出来ないだろうな。お前は知っていれば必ず警戒する」

「くぅ……」

 

愛の奴は苦しんでいる。

だがその苦しみ方は尋常じゃない。

 

「なんだ?」

 

俺と礫が愛を見ると、愛を侵食していた障り猫の部分がさらに増えているじゃないか。

猫の皮膚に猫の耳、おまけに髪まで伸びてるな。

 

「まさか……」

「障り猫を傷つけたことで、恋川が抑えていた障り猫が暴走して、恋川を侵食している!?」

「にゃああああああああ!!」

 

愛が礫に襲い掛かろうとし、爪をたてやがった!

そんで愛は礫を襲い掛かる直前に俺が手で防いでやった。

愛を吹っ飛ばしたのはよかったが、力が前にやりあった以上に上がってたから俺の左腕が吹っ飛んじまったよ。

 

「秋山!」

「この程度、問題ない。それよりもあっちだ」

「ふしゃああああああ!! あ、ああ……」

 

本当に障り猫に憑りつかれかけてるな。必死に抵抗してるのがよく分かる。

 

「後は俺がやるわ」

「俺がやるってどうやって」

「見ておればいいぞ、お前様」

 

そこに吸血鬼の少女もやって来ていた。

そんでそいつは自分が礫に渡した霊斬を口から飲み込みやがった。

グロすぎだろ。鞘がない理由は自分が鞘だったって事か。

 

「それってどういう……」

「こういうことだな」

 

俺が苦しむ愛に近づく。

そんで暴走しかけてた愛はまた俺を攻撃しようとして、今度は右足が持ってかれた。

 

「仕方ねえな」

 

俺は仕方ないから右手をそいつの頭に乗せる。

そんでやった事と言えば……。

 

「はあああああああああ!!」

 

エナジードレインの逆吸収に加え、アレンジを加えた俺の闇のプレゼントだった。

 

「きゃああああああああああ!!」

 

愛は悲鳴をあげたよ。そんで悲鳴と同時に猫の部分は完全に消えていって、髪の毛も少し短くなって黒くなったな。

 

「どうだ? 俺の闇による障り猫除染は」

「除染だと?」

「そうだ。エネルギー吸収だけじゃ、障り猫のその時の力はなくしても時間が経てばまた現れる。

だからこうやって闇の力で障り猫の部分だけを除染、いや吸収だな。そんで……」

 

俺はもう一度、愛の頭に手を置く。

何をしてるかって? 送った闇を回収したんだよ。

 

「これで除染完了だ。ついでにこいつの抱えてた闇もあらかた吸収しておいた。

次、目を覚ました時は心はすっきりしてるだろうぜ。っても闇ってのは必ず生まれてくるものだ。

俺がこうしてやってもこいつはまた闇を作り出すだろうな」

 

そう言って俺は立ち去ろうとする。

 

「お前、怪我は……」

「心配無用だ」

 

そんで俺はいつものように右手でさするように失くした部分を空ぎる。

それで右足と左腕は完全に再生した。ちなみに切れた部分は消えている。

 

「じゃ」

 

俺はその場から立ち去った。後のことにあまり興味がなかったからな。

 

 

「ということが前にあったことの一つだ。俺からしたらある意味では人間が一番恐ろしいと思うよ」

「そんなことがあったんだ。それでその後、その人どうしたの?」

「うん? 一応は両親と和解したみたいだけど、やっぱりどこか肩身が狭いと感じてたらしい。

高校卒業したら、一人暮らしするとか言ってたな」

「それで秋山お兄ちゃんは別のところに行ったの?」

「いや、まだその世界に残って、ちっとしたトラブルに何度か付きあったよ。

けど、今話す物語はここまでにしておくぜ」

「え~」

「また今度な」

 

そして秋山はその世界の狭間の世界に帰っていくのだった。


 
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