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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第三十七話 運動会、始まります

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-01-04 03:53:55 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:35700   閲覧ユーザー数:31692

 「宣誓ーっ!我々、生徒一同は…」

 

 本日は年に一度行われる海小の運動会当日だ。天気は快晴で気温も丁度良く、絶好の運動会日和だと言えよう。

 

 「遂に始まるんだね。頑張るぞー!!」

 

 「レヴィ、まだ宣誓中だから静かにしとけって《せめて念話で叫んどけ》」

 

 朝から気合入りまくりのレヴィは若干興奮気味である。俺達長谷川家の中で今日という日を一番楽しみにしていたからな。しかし…

 

 「《…運動会が始まったんですね》」

 

 シュテルだけが何故かあまり運動会に乗り気じゃないんだよなあ。

 

 「《シュテル、何でそんなに乗り気じゃないんだ?》」

 

 「《いえ、少し…ハア…(ユウキと二人三脚の練習をしてた時間が私の至福の一時になっていたんですよね。それも今日の本番が終わればもう…)》」

 

 溜め息まで吐いて…。体調が悪いのか?

 

 「《うーん…あまり無理するなよ?》」

 

 「《はい…心配してくれてありがとうございます》」

 

 本人は大丈夫と言ってるがホントに大丈夫なのか?

 

 「《それにしても保護者の数が多いですね》」

 

 「《そりゃ、自分の子供が頑張る姿を見るためだろ?》」

 

 カメラとかは当然持ってきてるだろうし。メガーヌさんもルーを連れて見に来ると言っていたから何処かにいるのだろう。

 

 「《去年の運動会もこんな感じだったのか?ユウキ》」

 

 「《ああ、去年どころか俺が小学校に入学した年から毎年ずっと運動会は盛り上がってた》」

 

 この学校、意外に負けず嫌いが多いのか応援にも凄く熱が入るからな。

 

 「《そういえばなのは達の聖祥も今日が運動会でしたよね?》」

 

 ユーリが思い出したように言う。

 

 「《ああ、初等部は今日だった筈だぞ》」

 

 運動会の日付が被らなかったら応援しに行ってやるんだがな。ちなみに聖祥では『運動会』じゃなくて『体育祭』らしい。……俺の前世では『体育祭』と言ってたのは高校からだった。ホント、進み過ぎだろあの学校。

 

 『それではラジオ体操に移りますので生徒の皆さんは周りの人にぶつからない様に広がって下さい』

 

 …っと、いつの間にか宣誓は終わってたみたいだ。

 俺達はアナウンスの指示に従い、周りの人と距離を取る。

 

 『ラジオ体操第一用意…』

 

 そして体操を行い身体を適度にほぐす。

 

 『これにてプログラムナンバー01、開会式及びラジオ体操を終了します。生徒退場。続いてプログラムナンバー02、100メートル走を行いますので100メートル走に参加される生徒の皆さんは入場門前に集まって下さい。繰り返します。100メートル走に…』

 

 ついに始まった運動会。目指すはやっぱり優勝だろう。初めて参加シュテル達には良い思い出にしてほしいからな………。

 

 

 

 100メートル走が始まった。1周が200メートルのトラックなので半周すればゴールだ。既に第4走者までが走り終わった。今年は青組に運動神経のいい連中が集まっているのか赤組、白組よりも点数が高い。そして第5走者目。レヴィの出番がやってきた。その瞳は燃えている。レヴィがトラックのスタートラインに立った瞬間

 

 「「「「「「「「「「レヴィちゃーーーーーーーん!!!!!頑張れーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 味方だけではなく、敵からもレヴィを応援する声が飛ぶ。

 

 「見ててねーーーーユウーーーーー!!!僕、1位を取るからーーーー!!!」

 

 俺の方を見ながら手をブンブンと振って大声で答える。

 

 「「「「「「「「「「長谷川ゴルァーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 そして敵味方問わず男子達からの怒声が俺に浴びせられる。一つ上の6年生や同い年である5年生だけでなく年下の1~4年生も俺の事を呼び捨てで。

 …俺にとっては敵地に一人佇んでいるようで居心地が悪い。俺は悪くないのに。

 そんな事してる間に100メートル走が始まる様だ。レヴィと走る組のメンバーは全員が運動部所属の男子だった。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 一斉に走り出す。が、コーナーを回り始める時点ですでにレヴィがトップに躍り出ていた。

 

 「「「「「「「「「「うおおおおおおおおーーーーーーっっっっ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 凄く盛り上がる男子達。ホントに足が速いな。他の連中をグングン引き離し、もうコーナーを回り終えている。

 

 「このままあっ……フィニーーーーッシュ!!」

 

 何か声を発しながら1番にゴールテープを切るレヴィ。敵味方から沸く大歓声。…敵は応援しちゃ駄目なんじゃないか?

 当の本人はこっちに向いてピースしている。

 

 「よくやったぞレヴィ」

 

 隣のディアーチェも褒めている。まあ、ここからじゃ声が届かないからレヴィには聞こえないだろうけど。

 

 「ぶっちぎりで一位でしたね。流石です」

 

 「そうね。運動では私もレヴィに勝てそうにないわ」

 

 ユーリも椿姫もレヴィの活躍を満足そうな表情で見ながら口にする。

 

 「次は亮太が走る番か。相手は…直博がいるな。トップを取るのは難しいかも」

 

 「直博も運動神経が良いんですよね?」

 

 「ああ。俺でも直博に足の速さではやや劣るからな」

 

 シュテルが俺に直博の事を聞いてくるので応えてやる。水泳だけじゃなく競争で直博相手に勝った事は無いからなあ(勿論魔力で身体強化は行わず)。

 

 そんな事を話している間に第6走者の100メートル走が始まった。

 ……やっぱ直博速いな。レヴィ同様にすぐにトップに出た。しかし亮太も負けじと直博に食らい付いて行く。

 だが、直博と亮太の距離を縮める事は出来ず1位は直博、2位は亮太という結果になった。

 

 「亮太、惜しかったわね」

 

 「ああ。でも直博相手に善戦してたし2位でも充分な戦果だ」

 

 これで多少は青組との差を縮められるだろう。ちなみに直博のクラスは白組だ。

 それからは他の学年の代表者もそれなりに頑張ったおかげで青組を僅差で抜いて赤組がトップになった。白組とは差があるがまだ一つ目の種目が終わったばかり。この後の競技の結果次第では簡単にひっくり返る事もあるだろう。特に綱引き、玉入れのクラス全員参加の競技は得点も高いから油断は出来ない。

 

 『次は二人三脚です。二人三脚に参加される生徒の皆さんは入場門前に集まって下さい。繰り返します。二人三脚に参加される生徒の皆さんは入場門前に集まって下さい』

 

 アナウンスが流れる。俺とシュテルの出番か。

 

 「シュテル、行くぞ」

 

 「はい」

 

 開会式の時よりは元気が出てるな。体調が戻ったと見るべきか。

 俺達は入場門の方に向かう。

 そして入場門前につき、先生が参加する生徒の確認と点呼をとっている。

 

 「……はい!全員揃っていますね。ではこれから皆さんには入場門を潜ってそのままトラックのスタートラインまで言って下さい。そこにいる先生が足に括る紐を持っていますので、紐が外れない様にしっかりとお互いの足を縛って下さい」

 

 先生が説明してくれる。

 

 『これよりプログラムナンバー03、二人三脚を行います。参加する生徒の皆さんは入場して下さい』

 

 アナウンスが流れ、俺とシュテルは先に入場していく生徒の後に続き、スタートライン付近まで駆け足で寄っていく。

 そこで先生から紐を受け取り俺の右足とシュテルの左足をしっかりと結ぶ。

 

 「シュテルどうだ?痛くないか?」

 

 「は…はい。大丈夫です//」

 

 「そっか。なら良かった」

 

 シュテルの顔が少し赤いのだが『またか』と内心で思う。

 今日の本番が始まるまでの間、ずっとシュテルと練習してきたがその度に顔を赤くしてた。理由を聞いたところで本人は『何でもない』の一点張りだったが。

 …今回も同じ返答が返ってきそうだし無理そうなら棄権したらいいか。

 それから間もなく俺達の番がやってきた。二人三脚も100メートル走と同じトラックを半周するだけだ。スタートラインに立った瞬間

 

 「「「「「「「「「「長谷川なんて死んでしまえーーーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 男子達の妬みの声がそこら中から飛んでくる。誰も俺の応援をしてくれる者はいない。

 二人三脚に参加する生徒も同性同士で組んでるし…。男女で組んでるのは俺とシュテルだけだ。

 …周りの声は気にしないで集中集中。

 俺は右手をシュテルの右肩に手を回す。途端に周りからの怒声の音量も跳ね上がるが無視だ無視。

 

 「////////」

 

 顔を更に赤らめたシュテル。

 

 「シュテル。早く肩組んでほしいんだけど?」

 

 「は、はい//////」

 

 恐る恐るながら俺の左肩に手を回す。

 

 「練習通りにやれば絶対勝てると思うから1位を目指そうな」

 

 「そ、そうですね(うう…この密着している間が私に至福の一時を与えてくれます。ユウキの体温が直に伝わってきて…)//////」

 

 俺はしっかりと前を見据える。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 俺達は一斉に走り出す。

 

 「「「「1…2…1…2…」」」」

 

 掛け声と共に呼吸を合わせる。

 練習の時と変わらない速さで走る俺と顔を赤らめているシュテル。練習の成果がちゃんと出ている様で他の参加者よりも先を走っている。このままのペースを維持出来ればトップでゴール出来る。コーナーを回り終えた時点でチラリと自分の背後を確認するがどのペアも追いついてくる様子は無い。

 案の定、俺達がトップでゴールテープを切った。

 

 「お疲れ様シュテル」

 

 「はい。ユウキこそお疲れ様です(ユ、ユウキの顔が近いです)////」

 

 「ありがと。紐外すな」

 

 「……お願いします(もう離れなければいけないのですね)」

 

 何故かシュンとした表情になりながら肩に回していた左手をどけてくれる。俺もシュテルの右肩に回していた右手を解放し、しゃがんで紐を外す。

 それから残りの二人三脚が消化されていくのを見る。…やっぱり青組は強い。

 二人三脚が終わってみると赤組で1番を取れたのは俺達だけで残りは白組、青組に持っていかれた。

 青組、そして白組にも僅差で抜かれ、一気に最下位に転落。

 

 「…まだ逆転は可能だし、悲観するのは早いな」

 

 得点ボードを見ながら俺は呟く。

 

 「ユウキ。退場しましょう。次の障害物競争が始まります」

 

 「ん?あ、ホントだ。行くか」

 

 俺はシュテルと共に退場門の方へ向かう。次は障害物競争……ディアーチェの出番だな。

 退場門を抜けた後、俺とシュテルは赤組内の自分のクラスの場所へ戻って来たが

 

 「よお、お疲れだなリア充…死ね」

 

 「1番取るなんてやるじゃねえかリア充…死ね」

 

 「逆転されたけどまだ希望はあるから気にすんなリア充…死ね」

 

 「随分良い思いしてたよね…女誑し」

 

 「シュテルと二人参加出来て楽しかったですか?…女誑し」

 

 皆、褒めた後に罵声を付け加えてくる。レヴィとユーリもだ。

 ……ここに俺の味方はいない。悲しくて泣きそうだ。

 

 「ユウキ」

 

 隣にいるシュテルが声を掛けてくれる。

 

 「私は貴方の味方です。だからそんな悲しそうな表情(カオ)をしないで下さい」

 

 俺を慰めてくれる。その言葉に

 

 「うう…シュテルー!!」

 

 ギュウッ!!

 

 感極まって思わず抱きしめてしまった。

 

 「「「「「「「「「「なああああああああっっっっ!!?」」」」」」」」」」

 

 レヴィ、ユーリ、男子共が揃えて声を上げる。

 

 「ユユユ、ユウキ!?いいい、一体なな何を!!?(ユ、ユウキから抱き着いてくるなんて!!)////////」

 

 「シュテルだけだよ。俺の味方は」

 

 「……私達は家族なんですよ。貴方の味方になるのは当然じゃないですか(こ、こんなに強く抱きしめられたらに、二人三脚の時よりもユウキの体温が私に伝わって…そ、それに首筋にユウキの吐息が……)////////」

 

 一人でも味方になってくれる人がいるって言うのは嬉しい。

 

 「あら?私も勇紀の味方なんだけど?」

 

 ギュッ!

 

 シュテルを抱きしめている俺の背中に椿姫が抱き着いてくる。

 

 「「「「「「「「「「テメエ長谷川!!!何してんだゴルァーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」」

 

 「ユウ!!シュテるんから離れなよ!!(シュテるんズルいよ!!!)」

 

 「シュテルも惚けてないで離れて下さい!!椿姫もです!!(まさかユウキの方から抱き着くなんて…私もユウキの味方をしていれば……)」

 

 周りの状況が騒がしくなったがしばらくの間、俺はシュテルを抱きしめていた………。

 

 

 

 「悪かったなシュテル。感極まってつい抱きしめてしまった」

 

 「い、いえ。気にしないで下さい。……むしろもっと抱きしめていてくれても……(今日は最高の一日です)//////」(ボソボソ)

 

 後半が聞こえなかったがどうやら迷惑だとは思わなかったようだ。ただ恥ずかしかったんだろう。顔が真っ赤になっている。そりゃそうだよな。こんな大勢の人前で抱き着いたりしたら人目を集めてしまうのは当然だし。

 

 「「むう~~~」」

 

 レヴィとユーリは物凄く鋭い視線を俺に向けてくるし。

 

 「「「「「「「「「「殺ってやる殺ってやる殺ってやる殺ってやる殺ってやる殺ってやる殺ってやる殺ってやる…………」」」」」」」」」」

 

 男子共も物騒な事呟いとるし。

 

 「本当に貴方の周りは賑やかね」(ニヤニヤ)

 

 椿姫は相変わらずいらん事してくるし。

 

 「……………………」

 

 亮太は傍観してるし。親友なんだから助けてくれてもいいじゃねえか。

 

 「……………………」

 

 謙介は鼻血出して倒れてるし。さっきので何想像したんだよ…。

 唯一の救いはここに担任(ロリコン)が居なかった事だな。肝心の本人は開会式が始まる前、全学年の女子の体操服姿を見た瞬間鼻血を噴き出して倒れ、現在は医療テントで治療中だ。

 そしてそんな事が起きている間に障害物競争も最後の番になっていた。ディアーチェもいる。

 

 「ディアーチェー!頑張れよー!」

 

 とりあえず声援を送る。

 

 「ば、馬鹿者!!大声で言うな!!恥ずかしいであろうが!(ユ、ユウキが我の事を応援してくれている)//」

 

 怒られた。

 

 「うーん、悪い事したなあ」

 

 「そうでもないんじゃないかしら?」

 

 「そうか?」

 

 「ええ。ディアーチェ、嬉しそうな表情してるわよ」

 

 椿姫に言われて再び見て見ると確かに表情がやや緩んでいる。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 最後の障害物競争が始まった。障害物競争はいくつかの障害を越え、100メートル走や二人三脚と違いトラックを1周しなければならない。

 まずスタートラインからすぐのところに置かれている木製バットを立て、ヘッドを地面に、エンドの部分に自分の額をつけてバットを軸に10回だけ回らなければいけない。回り終えた後は目が回り、上手く前に走れなくなる。

 ディアーチェは出だしが3位、そしてバット障害物を終えるがやはり真っ直ぐ走るのが難しいみたいで結構フラついているな。

 

 「むう…(思ったよりも目が回ってるな)」

 

 他の生徒もフラついている。しかし次の障害物に着くまでにディアーチェは4位と一つ順位を落としていた。

 

 「次は…網潜りか」

 

 俺はフラフラしながら走っているディアーチェの先にある障害物を見て呟く。

 コースの途中に広げて置いてある網を潜って進んでいく障害物。

 ディアーチェが辿りつき先に網に潜っている連中の後を追いかける。現在トップの生徒はディアーチェが潜り始めた頃には網の四分の三近く進んでいた。他、ディアーチェの前を走っていた生徒二人も意外に前進するのに苦戦しており、半分ぐらいまでしか進んでいない。

 

 「ここで一気に抜いてやるわ!」

 

 網を掴みあげ一気に潜っていくディアーチェ。凄い勢いで進んで行き網を潜っていく生徒を次々に抜いて行く。

 トップの生徒が網を潜りぬけた頃にはディアーチェは他の生徒を追い抜き、2位に浮上していた。

 網を潜り終えたディアーチェ。第3の障害物、平均台が置かれている場所に着いた。

 平均台は2本並べられており、その内1本を渡り切ればいい障害物。勿論渡っている途中で落ちたりしたらやり直しだ。普通にわたるだけならそう難しくはないが平均台の外側から係の生徒六人がボールを投げつけバランスを崩させ、平均台から落とそうと妨害してくる。先頭を走っていた生徒もここで苦戦し、2回程落ちてやり直している。

 ディアーチェは平均台の前に着いてから顔を俯かせ、何故か進もうとしない。

 

 「ユウ。ディアーチェ、どうしたんだろうね?」

 

 いつの間にか睨むことを止めていたレヴィが聞いてくるが

 

 「さあ?」

 

 そう言い返すしか出来なかった。しかしすぐにディアーチェは顔を上げ男子達の方を向き

 

 「貴様等も…我をそのボールで狙うのか?そんなのが当たったら我、怪我をしてしまう」

 

 上目使い+涙目のダブルコンボでボールを投げる係の生徒達を見つめる。ちなみに係の生徒は全員男子だ。

 

 「「「「「「どうぞディアーチェさん。お通り下さい(か、可愛すぎる)////////」」」」」」

 

 …係の生徒を味方にしやがった。

 

 「すまぬな。恩に切る」(ニコッ)

 

 「「「「「「~~~~~っっっ!!!(ディ、ディアーチェさんが俺に笑顔を向けてくれたあああああっっっ!!!)////////」」」」」」

 

 ボールを投げようともしない係の男子達、そこへ

 

 「よっしゃ!今の内だ!!」

 

 さっきから平均台で苦戦してる生徒が平均台を渡ろうとする。しかし

 

 「「「「「「死ねええええええっっっっっっ!!!!!!!」」」」」」

 

 その生徒に向かって一斉砲撃が始まる。

 

 「ちょ!?痛っ!?痛たたたた!!!」

 

 平均台から落ちてもひたすらボールを投げつけられる生徒。……ひでえ。

 そしてその間にディアーチェは平均台を渡り終える。

 

 「(ふっ…ちょろいな)」(ニヤリ)

 

 ディアーチェの奴が悪どい笑みを浮かべてる。…あんな一面持ってたのかアイツ。

 そんなディアーチェが第4の障害物に到着。次はパン食いだ。メロンパン、ジャムパン、クリームパンといった菓子パンが吊るされている。手を使わず口で取らないといけないが

 

 「はむっ」

 

 ジャンプして簡単にパンを取った。

 

 「いいなあディアーチェ。僕にパンくれないかなあ?」

 

 「戻ってきたら聞いてみ?」

 

 「うん。そうするよ」

 

 パンを咥えているディアーチェを羨ましそうに見るレヴィ。

 最後の障害物は麻袋だ。競技者は麻袋の中に両足を入れて両手で袋を持ちジャンプをしながら特定の距離を進まなければならない。

 ディアーチェは早速ジャンプして進み始める。後続の生徒達は平均台を終えたようだがパン食いの所で苦戦してる。

 

 「ふっ…ふっ…」

 

 ピョンピョンと飛び跳ねて前進する。

 

 「「「「「「「「「「(飛び跳ねてるディアーチェさん、可愛い)//////」」」」」」」」」」

 

 何か男子一同が見惚れてるけどアレは見惚れる程の光景か?

 

 「これで…終わりだな」

 

 指定場所まで進み終えたディアーチェが麻袋から両足を出して駆け出し、ゴールする。ぶっちぎりの1位だ。

 ……平均台で随分アドバンテージ得たからなあ。

 

 「ユウキ。次は私の番ですので行ってきますね」

 

 「おう、頑張れよユーリ」

 

 ユーリが立ち上がると同時に『借り物競争に参加される生徒の皆さんは……』とアナウンスが流れる。

 そのまましばらくするとディアーチェが帰ってきてユーリが入場し始める。

 

 「戻ったぞ」

 

 「お疲れ」

 

 「ディアーチェ、僕にパン頂戴」

 

 「む?ほれ」

 

 「ありがとう……はむっ」

 

 労いの言葉をかける。レヴィはディアーチェがパン食いで取ったパンを貰い、食べ始める。

 

 「次はユーリが出るのだったな?ユウキ」

 

 「ああ、借り物競争だ」

 

 ディアーチェの言葉に頷きながら答える。

 借り物競争はトラックを半周したところに、地面に落ちている大量の封筒から一つを開封し、中に書かれている物を持ってゴールする競技だ。物を持ってきたら一旦封筒が散らばっている場所まで戻ってそこからトラックの残り半周を走らなければならない。

 ユーリもディアーチェ同様1番目の様だ。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 一斉に走りトラックの半周場所にある封筒を拾う生徒達。ユーリも皆に遅れながら封筒のある場所に来てランダムに一つ拾い上げ開封する。

 ユーリは中身を確認した後、保護者のいる方に向かっていく。

 

 「何が書かれていたんでしょうか?」

 

 「カメラの類ではないのか?保護者のいる方に向かうぐらいだからな」

 

 「…っていってる間にユーリ戻ってきたよ。シュテるん、ディアーチェ」

 

 ユーリが持っている……というよりおんぶしてるのはルーテシアだった。他の生徒達はまだ探しているのか戻ってこない。そのままユーリはゴールまで誰にも追い付かれる事無くゴールした。

 

 「これで貴方達は家族全員がトップでゴールしたわね」

 

 「ん?言われてみたらそうだな」

 

 椿姫に指摘されて気付く。長谷川家全員は1位を取っている。これは赤組の優勝に大きく貢献してるな。

 借り物競争は借りる物次第でゴール出来る時間が変わるからあまり足の速くない赤組の生徒達もユーリ以外に四人程1位を取っていた。

 最後の借り物競争が終わり、これで午前の競技は終了。これから昼食を食べようと思った所でユーリがルーテシアと手を繋ぎながら戻って来た。

 

 「おにーーーちゃーーーん」

 

 俺を視認するとユーリから手を離し、こっちに走ってきて抱き着いてきたのでそのままルーテシアを抱き留め、抱っこする。

 ユーリも少し小走りでこっちにやってくる。

 

 「ユーリ、お疲れ様」

 

 「ありがとうございますレヴィ」

 

 「良くやったぞユーリ。しかし何故ルーを連れて行ったのだ?」

 

 労うレヴィに疑問をぶつけるディアーチェ。

 

 「はい。封筒に書かれていたのが『幼女』でしたので」

 

 ……それって『物』じゃないだろ。

 

 「わたし、ゆーりおねーちゃんのやくにたったんだよ。すごい?」

 

 「ええ、ルーのおかげでユーリは勝てたんです。凄いですよ」

 

 抱っこしているルーテシアの頭をシュテルが優しく撫でる。『えへへ』と気持ち良さそうにシュテルの手の感触を堪能してるルーテシア。

 

 「クソ!!長谷川の野郎!!また新しい子を手籠めにしやがって!!」

 

 「しかもメッチャ可愛いし。将来相当有望じゃねーか?あの子」

 

 「むしろ俺は今のままでも全然オッケー!!今すぐ俺の義妹にして家に連れ帰りたい!!」

 

 何か好き勝手言いやがって。手籠めになんかしてねーよ。後、最後の奴は危険だからルーテシアに手を出させない様にしとかないと。

 

 「でもここにルー連れてきていいの?」

 

 「もう昼休み入るからいいだろ」

 

 俺が言うと同時に昼休み開始のアナウンスが流れる。

 

 「ではメガーヌと合流しましょうか」

 

 「「「「ああ(そだね)(うむ)(はい)」」」」

 

 俺達はシュテルの言葉に同時に頷き、メガーヌさんが待っているであろう場所に向かって歩き出した………。

 

 

 

 メガーヌさんと合流し、昼食を摂った後は午後の競技に移る(ルーテシアはメガーヌさんに引き渡した)。

 まずは騎馬戦…。三人が騎馬役、一人が騎手役の四人で構成。各学年から2騎、合計が12騎で競い合う。

 そして今グラウンドでは赤組、白組、青組の代表者達がそれぞれ壮絶な戦いを行っている。

 

 「うおおおおおおっっっ!!!」

 

 「もらったあああっっっ!!!」

 

 「抵抗すると無駄死にするって何で分からないんだああああっっっ!!!」

 

 「アンタ達はあああああっっっ!!!」

 

 「左舷、弾幕薄いぞ!!何やってんの!!!」

 

 戦場で様々な声が飛び交う。…途中から何やらおかしな掛け声が入っていたが。

 結局、この騎馬戦を制したのは白組だった。

 

 「…流石誠悟だな。的確で見事な指示だ」

 

 今回白組の騎馬戦に誠悟が騎手で参加していた。的確に白組の騎馬に指示を出しながら自分は上手く立ち回り、最後まで残ったのだ。

 この騎馬戦で負けたのは少々痛いな。現在の順位は1位白組、2位青組、3位赤組となっている。今の騎馬戦で白組がトップになってしまった。残る競技は綱引き、玉入れ、クラス対抗リレーだ。特に綱引き、玉入れは絶対に勝ち取っておきたい。

 

 『これより各学年毎による綱引きを行います。まず1年生の皆さんは入場門前に集合して下さい。繰り返します。これより…』

 

 まずは1年。各学年1クラスが約40人なので二つのチームに分け、

 

 赤(A) 赤(B) 白(B)

  VS   VS   VS

 白(A) 青(A) 青(B)

 

 という風に3試合を一気に同時進行で行う。なお、綱引きは一本先取なので負ける事は許されない。

 

 「よーい…」

 

 パアンッ

 

 「「「「「「「「「「オーエス!オーエス!」」」」」」」」」」

 

 試合が始まった。どのチームも大声をあげながら綱を必死に引く。

 最初はそれ程動かない綱も徐々に片側のチームに引っ張られ均衡が崩れて行く。全試合が終われば次の学年と交代する。そして4年生まで終わった結果…

 

 1年

 赤=1勝1敗 白=2勝0敗 青=0勝2敗

 

 2年

 赤=1勝1敗 白=0勝2敗 青=2勝0敗

 

 3年

 赤=1勝1敗 白=0勝2敗 青=2勝0敗

 

 4年

 赤=2勝0敗 白=1勝1敗 青=0勝2敗

 

 以上である。

 4年生が全勝、1~3年生が1勝1敗と、全敗が無いとはいえここで俺達5年生が全勝しなきゃかなりキツい。

 俺達は必ず勝つために

 Aチームに俺、謙介、レヴィ、ユーリ。

 Bチームにシュテル、ディアーチェ、亮太、椿姫。

 と分けた。後は出来るだけ腕力の強いのをBチームに譲り、Aチームには腕力が低いのを集めた。

 俺は同年代で腕力が高い方なので多少低い子が集まっていても問題無い。そして

 

 「よーい…」

 

 パアンッ

 

 試合が始まった。

 

 「たりゃああああああっっっっ!!!!」

 

 レヴィの声が響く。グングンと綱を引き寄せる。

 

 「くそおっ!!負けるなあああ!!!!」

 

 「「「「「「「「「「うおおおおおおおっっっっ!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 相手チームのリーダーであろう直博が必死に鼓舞し、チームの連中も気合を入れるが

 

 「であああああああっっっっ!!!!」

 

 俺も声を張り上げ綱を手繰り寄せる。腕力なら直博にも余裕で勝てるからな(身体強化は勿論していない)。

、結果、俺達Aチームは腕力の低い子を集めたにも関わらず相手チームを相手に圧勝した。

 Bチームの方は腕力の高い子ばっかりなので言わずもがなだ。

 これで後は6年生の綱引きの結果次第だ。俺達5年生は自分達の席に戻る。

 

 「お前等あっ!!1~5年がこれだけの結果を出したんだ!!俺達も最上級生として恥ずかしくない結果を出すぞ!!!」

 

 「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 凄い気合の入りようだ。これならいけるかもしれない。

 俺の期待通り先輩達はA・B両チーム共に試合開始早々から物凄い勢いで綱を引き、1試合10秒かからずに相手を秒殺した。

 俺達5、6年生が全勝で終えた事により順位が2位に繰り上がり、1位の白組との差もかなり無くなっている。

 

 「ユウキよ。このまま逆転は出来ると思うか?」

 

 「次の玉入れ次第だな」

 

 「具体的に分かりますか?」

 

 「そうだな…。最低でも三学年が1位を取るのが最低条件だ。もし三学年で1位取れなきゃ最後のクラス別対抗リレーで全学年が1位取らないと優勝は厳しい」

 

 ディアーチェとユーリが尋ねてきたので答えてやる。玉入れも綱引き同様の高得点競技。是が非でも押さえておきたい。

 

 6年生が退場してすぐに玉入れが始まる。制限時間が90秒の玉入れ。1年生、2年生はコントロールの良い子があまりいない様で他の組に比べてカゴに入っている玉の数が少ない。

 結果、白、青組に負けた。しかし次の3年生、4年生が怒涛の勢いで玉入れを制し、トップを取る。

 さて、俺達5年生の番だ。

 

 「ここで勝たねば赤組(我等)が優勝する可能性がかなり低くなる。貴様等、死に物ぐらいでトップを狙いに行け!!」

 

 「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 ディアーチェの鼓舞に男子達が応える。

 

 『これより5年生の玉入れ合戦を行います。生徒の皆さんは入場して下さい』

 

 「行くぞ者共!!我に続けーーー!!」

 

 「「「「「「「「「「っしゃあああああああっっっっっ!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 砂塵を巻き上げる様な勢いでグラウンド内に入って行くディアーチェとレヴィ、赤組(クラス)の男子達。俺、シュテル、ユーリ、亮太、椿姫、赤組(クラス)の女子達は呆れた表情を浮かべながらその後を追っている。

 …ここにきてディアーチェの性格変わってきてないか?クラスの連中を鼓舞する様な熱血キャラでは無かった筈なんだが。今日はディアーチェの意外な一面が見れてばかりだな。

 …まあクラスの指揮は上がったんだし別にいいか。

 

 「よーい…」

 

 パアンッ

 

 一斉に玉を拾い上げカゴに向かって投げ始める。

 

 「おらあああああっっっっ!!!!!」

 

 「死ねえええええっっっっ!!!!!」

 

 「消え失せろおおおおおっっっっっ!!!!!」

 

 ……ただカゴに玉を入れるだけで『死ね』とか『消え失せろ』はないだろう。気合が入ってるのは良い事なんだけどね。

 

 「ユウキ。私達も参戦しましょう」

 

 「…そうだな」

 

 俺達もカゴに向かってたまを投げ始める。しかし玉入れ開始から20秒足らずで足元に落ちていた玉を全てカゴの中に放り込み、この勝負は赤組の圧勝で終わった。…ホント、シュテル達や椿姫が絡むと規格外の実力発揮するなあ…ウチのクラスの男子共は。

 まあこれで3,4,5年がトップを取り、最後の競技クラス対抗リレーの結果次第で優勝出来る可能性が増えた。6年生は玉入れで青組には勝てたが白組に負けた。

 現在の順位だが

 

 1位 白組(450点)

 

 2位 赤組(430点)

 

 3位 青組(420点)

 

 となっている。

 学年別クラス対抗リレーは1位が10点、2位が5点貰え、3位は0点だ。

 

 「つー訳で頼んだぞ謙介(アンカー)

 

 「任せてくれ。今だけは真面目に頑張らせてもらうさ」

 

 他の四人も気合が入っている。泣いても笑ってもこれが最後の競技。白組は直博が100メートル走に出場したからアイツ以上に足の速い生徒がいる事は無いだろう。そして入場門の方へ向かい、そこから出て来る生徒達がグラウンドに。

 

 『これより最終種目、学年別クラス対抗リレーを行います』

 

 いよいよ始まるな。まずは1年生だ。クラス対抗リレーは第1~第4走者がトラックの半周、アンカーが1周走る事になっている。1年生の皆は必死に走ってるな。途中でバトンを渡し損ねたり、走ってる途中で転び、泣きながら走ったりとハプニングが多い。

 結果1位が青組、2位が赤組、3位が白組と出だしはまあまあである。

 

 続いて2年、3年、4年と行われ

 

 2年 1位=赤組 2位=白組 3位=青組

 

 3年 1位=赤組 2位=白組 3位=青組

 

 4年 1位=赤組 2位=白組 3位=青組

 

 と、赤組が三連続トップである。しかし白も三連続2位で5点をちゃっかり獲得してるので現状は

 

 1位 赤組(465点)

 

 1位 白組(465点)

 

 3位 青組(430点)

 

 赤組と白組が同率1位である。

 

 次は俺達の学年。もう青組の優勝は無い。運動神経の良い奴等が多かった筈だけど、まさかの最下位だ。しかしこれで赤組と白組の事実上の一騎討ちと言っても過言ではない。

 ここで赤組が1位、白組が3位だった場合は赤組の優勝へかなり近付く事になる。

 

 「変態!!ここでトップを取れぬようなら明日の朝日はもう拝めぬと思え!!」

 

 暴君と化しているディアーチェ。……もはや何も言うまい。アンカーの謙介はその言葉を聞いて『ビクッ』と身体を震わせる。プレッシャーかけてやるなよディアーチェ。後、名前で呼んでやれ。

 そしてスタートラインに生徒が並ぶ。

 

 「位置について…よーい……」

 

 パアンッ

 

 始まった。

 第一走者の赤組女子は出だしから好調でトップをキープ。その後を白組が追いかけて来る。差を開く事は出来ないが縮まる事も無い。

 

 「走れーーー!!死ぬ気で走れーーーー!!!さもなくば貴様も明日の朝日を拝ませぬぞーーーー!!!!」

 

 ……ディアーチェ。

 その言葉に反応した女子が更に必死になって走る。少しだけ距離が開いたな。

 そして第2走者の男子にバトンを渡す。彼はウチのクラスのバスケ部だ。運動部である以上、頑張ってもらいたい。

 

 「うおおおおおおっっっっ!!!!!ディアーチェさんに優勝を捧げるんだああああああっっっっっ!!!!!!!!」

 

 気合一杯の男子生徒が叫びながら走る。そういや彼はディアーチェのファンクラブの一員だったな。憧れの女神に応援されて力が漲っているのだろう。

 

 「走れーーー!!!走って我の為に死ねーーーーーー!!!!!」

 

 …………応援…ですよね?

 白組の第2走者との距離は変わらず。そのまま追い抜かれる事無く第3走者の男子にバトンを渡す。

 

 「このまま逃げ切ってやらあああああっっっっっ!!!」

 

 バトンを受け取った男子。しかし白組の第3走者もバトンを受け取って赤組を追いかけてくる。白組の男子の方が若干速いようで開いていた距離の差が少しずつ縮まっていく。

 

 「貴様ーーーー!!!逃げ切ると言っておきながら追い抜かれたら地獄を見せるからなーーーーー!!!!!」

 

 ディアーチェは追い付かれてきてるのにご立腹の様で。男子も必死に頑張って逃げ切ろうとしてるんだからもう少し優しい言葉で応援してやれよ。

 第4走者の女子に渡す頃には結構距離を詰められている。

 そしてバトンを受け取った第4走者の女子。受けとって走り出した頃には白組も追い付きバトンを手渡す。もう赤組と白組の走者の間は1メートル程だ。

 

 「AAAAALaLaLaLaLaLaLaLaie!!!」

 

 白組の第4走者である男子は凄い雄叫びを上げながら走る。更に差が縮まっていく。このままだとアンカーにバトンを渡す前に追い抜かれるかも…。

 赤組のアンカーは謙介、白組の女子は陸上部で短距離走のエースだった子だ。同学年の女子の中ではレヴィの次に速い。

 第4走者の女子も奮闘したがついに白組に追い付かれアンカーでバトンを渡したタイミングはほぼ同時だった。

 

 「「「「「「「「「「謙介負けるんじゃねえぞーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 クラスの男子達が声を揃えて応援する。

 流石は変態でも運動神経抜群なだけはある。相手は短距離走のエースだというのに肩を並べるどころか徐々に差を開いて行く。

 

 「クッ!!あんな変態に私が追い付けないなんて」

 

 白組の女子が苦々しい表情を浮かべ言葉にする。当の本人はその言葉が聞こえたのか走りながら顔を振り返らせ

 

 「……………………」(ニヤリ)

 

 挑発的な笑みを浮かべた。そして再び前を向くと走る速度を更に上げた。

 トラックを半分過ぎた辺りでそこそこの距離は開いたが白組の女子も必死に食らい付く。だがそれでも謙介との差は開いていき、最終コーナーを謙介は回り始める。

 

 「「「「「「「「「「謙介!!そのまま逃げ切れーーー!!!!」」」」」」」」」」

 

 男子達が叫び、謙介もそれに応えるかの様にラストスパートをかける。そして………。

 

 

 

 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」

 

 「この程度では済まさぬ。あと1時間は続けてやれ」

 

 「「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」

 

 運動会が終わり、制服に着替えた俺達。そして教室に一旦集まり、HRを終えてもう帰ってもいいのだが現在教室では一人の生徒に対しての拷問が行われている。

 

 「変態!貴様が我に犯した罪は重罪だ!!その身を持って償え!!」

 

 怒り心頭のディアーチェ。何故なら俺達赤組は白組に負けたからだ(・・・・・・)

 ……あのラストスパートをかけた後、ゴール直前で謙介がまさかの転倒。その間に白組の子に抜かれ、逆転を許してしまったのだ。更にはそれなりに距離が開いていた筈の青組にも抜かれ俺達5年生の赤組は点数が増えなかった。その後、6年生に最後の望みを託したのだが今一歩及ばず

 

 1位 白組(480点)

 

 2位 赤組(475点)

 

 3位 青組(435点)

 

 という僅差で負けてしまったのだ。

 最後の最後でやってしまった謙介は現在うつ伏せに組み伏せられながらクラスの男子達による拷問『全身くすぐり地獄の刑』を執行されている。靴と靴下は脱がされ服の裾は上げられ、くすぐられる場所は無防備な状態に晒されている。

 

 「変態よ。勝利を目前にしておきながらそれを横から掻っ攫われた我の今の気持ちが分かるか?」

 

 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」

 

 「我にとって初めての運動会……『優勝』という結果で終わらせたかったのだ。それを貴様は…」

 

 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」

 

 「言い訳があるなら聞いてやらん事もないぞ?」

 

 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」

 

 「ええい!!笑ってばかりいないで少しは何か言ったらどうなのだ!!」

 

 くすぐられている奴に喋らせるのは酷というものだろう。

 

 「ユウキ。もうディアーチェを止めたらどうですか?」

 

 「そうだよユウ。僕、お腹空いたから早く帰りたい」

 

 「メガーヌとルーも一緒に帰ると言っていたので多分正門前で待っていると思いますよ?」

 

 「…お前等がアイツを止めるという選択肢は無いのか?」

 

 「「「ありません(無いね)」」」

 

 コイツ等……。

 まあ、ここにいるのもなんだしメガーヌさんとルーテシアを待たせるのもアレだしな。

 

 「なあ、ディアーチェ…」

 

 「何だ?」(ギロリッ)

 

 目が据わってらっしゃるディアーチェさん。怖えぇ。

 

 「もう帰ろうぜ。遅くなるのもアレだし買い物もしないといけないんだからさ」

 

 「ユウキ、お前も我に何か不服なのか?」

 

 コイツ、聞いちゃいねえ。もう強引に連れ出すか。俺はディアーチェの手を握り

 

 「はいはい。メガーヌさんとルーも待ってるんだから今日はもう帰るぞ」

 

 そのまま引っ張って教室を後にする。一応クラスの皆には『またな~』と挨拶しておいて。ディアーチェがいなくなってもなお、教室の中からは謙介の笑い声が止む事く無慈悲にも刑が実行されていた。

 

 「…で、いつまで我の手を握っておるのだ?」

 

 「あ、悪い。今離すから」

 

 手を離そうとするが

 

 「…ディアーチェさん。力を緩めてくれないと手が離せないんですが?」

 

 「わ、我は力など入れておらん。ユウキが離さぬだけだ(手を離すなんて惜しい事出来る訳なかろう)///」

 

 「いや、俺じゃなくて…」

 

 「お・ま・え・が・は・な・さ・ぬ・だ・け・だ!」

 

 俺のせいにしてきやがる。

 

 「ディアーチェ、ユウキが嫌がってるじゃないですか」

 

 「早く離してあげなよ。ユウが可哀相だよ」

 

 「そうですよ」

 

 不機嫌そうなシュテル、レヴィ、ユーリがそれぞれ俺を援護してくれるがディアーチェは聞く耳持たずといった感じでいる。

 正門前でメガーヌさん、ルーテシアと合流し全員でそのままスーパーに直行する。

 

 「ねえユウ」

 

 「ん?」

 

 俺の前を歩いていたレヴィがこちらに振り返って話し掛けて来るので視線をレヴィに向ける。

 

 「あのね…来年は僕と二人三脚に出てほしいな///」

 

 「「「!!?」」」

 

 「…悪いが俺は来年こそ障害物競争に出るんだ。だからその申し出は断る」

 

 「ぶう、何でそんな事言うのさ。いいじゃん、一緒に出てくれても」

 

 頬を膨らませて文句言うレヴィだが、俺にだってコレばかりは譲れないな。

 

 「そうですよレヴィ。ユウキと組むのは私なんですから///」

 

 「話聞いてたユーリ!?俺は障害物競争に出たいんだよ!!」

 

 「何を言っておるのだ!我とユウキが組むに決まっておろうが!!///」

 

 「ディアーチェ、お前もか…」

 

 「三人共何を言ってるのですか?私とユウキの阿吽の呼吸を見たでしょう?来年も私とユウキが組んでトップを取るんです///」

 

 「……………………」

 

 もうやだこの子達。俺の意見聞いてくれないんだもん。

 メガーヌさんは俺達の会話を聞いて楽しそうに笑ってるし、ルーテシアは会話の内容についていけずキョトンとしてる。

 それ以前に6年生に進級した時に行われるクラス替えで必ずしも俺と同じクラスになれるか分からないという事をコイツ等は理解してるんだろうか?

 

 「来年は僕とユウが組むの!!」

 

 「私です!!」

 

 「シュテルは今年組んだからもう充分であろうが!!我だ!!」

 

 「違います!!私がユウキと二人三脚に参加するんです!!」

 

 ギャーギャー言い合ってる四人。ホント、『俺の意見を尊重して下さい』と願わずにはいられなかった俺だった………。

 

 ~~あとがき~~

 

 挨拶が少し遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。当作品を執筆しているカルピスウォーターです。にじファンから移転して早半年。自分は健康に気を付けてマイペースに執筆しています。

 読者様の中には、にじファンから当作品を追いかけてこられてる方もいらっしゃる様で執筆する側の自分としては非常に嬉しい限りです。

 本年度、そしてこれからも頑張って執筆していきますので当作品『魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~』を温かく見守ってやって下さい。これからもよろしくお願いいたします。


 
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