No.524278

真・恋姫†無双 想伝 ~魏†残想~ 其ノ一 序章ノ一

出来るだけ迅速な更新を心がけたかったので早めの更新を。
とはいえ短い間隔での投稿なので短めでっす!

まだまだこの作品は序章です。
両立出来ているので今はまだモーマンタイ!

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2012-12-28 17:25:35 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:11698   閲覧ユーザー数:8177

 

 

 

『今宵月はどこを照らすの――』

 

 

昔どこかで聞いたことのある曲。

アニメかなにかの主題歌かと思うが、よく覚えていない。

 

「はぁ……」

 

一つ溜息を吐いて立ち上がる。

 

 

目を瞑り、酔いながら歌う奴。

他の友達とだべっている奴。みんな思い思いのことをしている。

 

今の俺にはそれが少し眩しかった。テーブルの上に時間分の料金を置く。

 

「……ん?なんやかずぴー、帰るんか?」

 

「ん、ああ。悪いなせっかく誘ってくれたのに。ちっと調子悪いから今日は早めに帰るわ。じゃな、及川」

 

及川の返事を待たずに、俺はカラオケボックスの個室を後にした。

 

 

 

 

 

 

『なんか北郷のやつ最近付き合い悪くね?』

 

隣に座ってドリンクを傾けるクラスメイトが独り言のように話しかけて来る。

 

「かずピーが付き合い悪いんは最近のことやないやろ。一年くらい前からずーっとこうやし」

 

『いやまあそうだけどさ……。どうしたんだろうな、あいつ』

 

「さあなー。せやけどここしばらくはずーっとああやん?なんつーか……覇気が無いっちゅうか」

 

『覇王色?覇王色?』

 

「うっさいわボケ。真面目な話や」

 

ふざけながら話に入ってくるやつに不快感を覚えた。

少なくとも北郷一刀ならしっかり場を弁える。真面目な話をすれば誠実に答えてくれる。

 

「はぁ……なにがあったちゅうんや、かずピー」

 

本音で話せる数少ない親友の変化。気にならない訳が無い。

だがそれを自分がどうにも出来ないということも分かる。どうしようもない自分に無性に腹が立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果だけで言うなら俺は現代に帰って来た。

死ぬわけでもなく、ただあの世界に飛ばされる前の日常に戻ってきただけ。

 

現代での最後の記憶。及川の部屋でゲームをして寝た。

俺が元の世界で目覚めたのはその次の日。そこまでの驚きは無かった。

 

記憶はもちろんのこと、あの世界であの世界で得た物は残っていた。

あの世界の知識や経験。慣れない馬から落馬して作った傷。護身用に持ってた短剣。

 

 

 

……残っていたんだ

本当に大切なものだけを除いて。

 

 

 

 

(ん……なにやってんだろうなぁ、俺)

 

 

 

聖フランチェスカ学園。

理事長の頭がおかしいのか裏でなにか悪いことをやっているのか、まあどうでもいいことだが。

この学園はあり得ないほど広大な敷地を有している。

 

敷地の広さに物を言わせて学園内に資料館建てたりとか、これまたデカイ公園作ったりとか。

正直、バカっぽいな、と思ったのは内緒だ。手を抜かない辺りが、特に。

 

公園は夜になると……まあ当たり前だが滅多に人を見なくなる。

それが今の俺にとっては有り難い。

 

手にした木刀を振りながら鹿児島の爺ちゃんの言葉を思い返す。

 

『鍛錬の時、剣の先に在るは自身の写し身。

剣を振るう時、それは己の弱き心を両断する時じゃ』

 

……今の俺の前には何も無かった。

 

無心で振っていると言えば聞こえは良い。

だけど俺が感じているのは無心でなく、空虚。

 

(こんなん爺ちゃんに見られたらボッコボコにされんな……はは)

 

剣に於いては一切の半端を許さない祖父。

西日本ではかなり有名らしい。なら俺は間違い無くその顔に泥を塗っていることだろう。

 

弱気が鎌首を擡(もた)げる。

あの世界から戻って来て何度目だか分からない、その名を口にする。

憎らしいほどに冷たい光を放つ『満月』に向かって。

 

 

「華琳……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ふん。なんだその腑抜けた面は」

 

 

 

誰もいないと思っていた空間に自分とは違う、少年の冷たい声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

静かな夜。

虫の鳴き声さえもしない深夜。

 

コトリ……

竹簡の上に走らせていた筆を置き、椅子の背もたれに寄り掛かった。

 

疲労を取ろうと、閉じた瞼の上から目を揉む。

再び目を開け、それほど効果が無かったことを確認して私は席を立つ。

そのままキィ……と扉が閉まる音を背に、部屋を出た。

 

近くの手すりに寄り掛かり空を見上げる。

空には灰色の雲が掛かっていて今にも雨が降りそうな様子だった。

 

それでも私は毎日のように雲の先にあるだろう月に向かって、語り始める。

今日一日あったことを。……昨日は色々あって報告をしなかったから昨日のことも。

 

 

(昨日は三国の主(おも)だった者達がここに来たわ。もちろん、戦なんかじゃなく私が招待して、ね。孫策も劉備も、皆笑っていたわ。乱世の世では考えられなかった各国の交流が実現しているのよ。凄いでしょう?)

 

 

そのことを少し自慢げに報告する。

自分でもこの心境の変化には驚いていた。

昔ならば『この程度のこと』なんて言っていただろうから。

 

昔の自分と今の自分を頭の中で比べて見た。

考えてみれば昔の自分にはなんと余裕が無かったことだろう。

不遜とも取れる覇王然とした威厳は余裕が無いことの裏返し。それが今やこうだ。

 

……少し苦笑しながら報告に戻る。

 

 

(あなたの提案した立食ぱーてぃー、だったかしら。あれもかなり好評だったわ。孫策も劉備も誰が発案者なのか知りたがっていたけど。さすがは天の……そういえばこれは昨日話したわね)

 

 

ふふっ、と微笑みが零れる。

その笑みは楽しげでもあり、また、どこか寂しげでもあった。

 

そしてふと気付く。雲が流れ始め、月が徐々にその姿を現そうとしていることに。

しかし、普段であれば綻ぶその表情は険しく、冷たさを感じさせるものに変わっていた。

 

 

月の光によって影が現れ始める。

自身の影と、もう一人分。月明かりに照らされ徐々に明るくなっていく背後の暗がりに、私――曹孟徳は問い掛けた。

 

 

「……あなたは何者?賊を招待した覚えは無いのだけれど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『賊というものは招待を受けない、故に賊……と持論を言っても仕方ありませんね。それにしても……ふふ、曹孟徳という存在はどの外史でも根本は変わりませんか』

 

 

 

暗がりの影が二ヤリ……と笑みを浮かべた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき的な駄文的な?>

 

 

 

 

はーい。

とりあえず更新できました。

 

短いなぁ。そして中途半端やなぁ。

ま、これからの伸びしろに期待かな(個人的にも)

 

 

【 追伸 】

もしスト-リーに関する疑問がありましたら答えられる範囲内で補足致します。

 

年内更新……あってもあと一回かな?

 

 

 

 

 

 


 
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