No.524069

大徳が舞う3

tumutaさん

史実の劉備玄徳が恋姫の世界に行った場合のお話です。
今回は玄徳君と妹さんのお話です。
感想とかいただけると嬉しいです(0w0)

2012-12-28 00:26:07 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1395   閲覧ユーザー数:1294

大徳が舞う3

 

 

 

 

 

 

 

〜出立〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ 第二話以前にてご注意下さった方、ご指摘ありがとうございました。

修正可能な点は、作品向上のため随時直していきたいと思います。

 

 

また、玄徳君は所謂チートであり、そういった事が嫌いな方は左上にある左矢印のボタンを押してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孫権視点

 

兄様・・・

 

どうしていつも私を避けるの?

 

昔はそんなんじゃなかったじゃない。

 

兄様は優しくって、強くって、頭もよくって・・・

 

女の私から見てもすっごく綺麗な人だった。

 

物心ついたときから傍に居て、何をする時も一緒だった。

 

勉強する時も、鍛錬する時も、お昼寝する時も、食事する時も、いつも一緒だった。お風呂だって一緒に入ってたじゃない。

 

誰にだって優しい兄様。子どもの頃はそんな兄様が私の誇りで、いつも兄様の後ろを追いかけていた。

 

そうだ、偶に転んじゃって泣いちゃった時とかもあったよね。あの時もすぐに駆け寄ってきて、私を優しく抱きしめてくれて・・・

 

思えばあの頃からかな、兄様を兄として見なくなったの。

 

そして、代わりに男性としてみるようになった。

 

そこからは、まるで転がり大きくなる雪だるまのように兄様を恋慕する気持ちが強くなった。

 

朝起きてすぐ頭に浮かぶのは、喜ぶ兄様の顔。

 

夜寝る時に思い出すのは、笑う兄様の顔。

 

兄様をいつも考えるようになっていった。

 

笑う兄様、悲しむ兄様、困る兄様、怒る兄様、楽しむ兄様、眠たそうな兄様、寝ている兄様、幸せそうな兄様、食事をしている兄様、鍛錬をしている兄様、書物を読んでいる兄様、考え事をしている兄様、話をしている兄様、笛を吹く兄様、睨んでいる兄様、服を着ている兄様、裸の兄様、厠に行こうとしている兄様、物を拾おうとしている兄様、叱咤激励する兄様、泣いている兄様、感動している兄様、花を愛でている兄様、散歩する兄様、馬に乗っている兄様、剣を構えている兄様、走っている兄様、歩いている兄様、立っている兄様、座っている兄様、料理を作っている兄様、水を飲んでいる兄様、恥ずかしそうにしている兄様、勉強している兄様。

 

兄様・・・兄様・・・兄様・・・兄様・・・兄様・・・兄様・・・

 

兄様が大好き。兄様を愛している。兄様の全てが欲しい。兄様に全てをあげたい。

 

兄妹だからって、愛しちゃダメなんて道理は無い。国がそれを拒絶したって、私はそれを押し通す。

 

兄様だって私の気持ちに応えてくれるはず。いいえ、たとえ最初は拒否したって、いつかは振り向かせてみせる。絶対に、あきらめないわよ、兄様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのに・・・

 

 

 

 

 

 

孫霊「孫権殿、おはようございます」

 

・ ・・え?

 

孫霊「孫権殿、私は只今鍛錬の最中故、話しかけないでいただきたい」

 

おかしい・・・

 

孫霊「分からないのですか?近寄るな、と言っているのです」

 

なんで・・・

 

孫霊「・・・邪魔です、孫権殿」

 

違う、おかしい、どうして、なぜ、

 

 

私は、まだ、自分の気持ちを、言ってすら、いないのに、

 

 

孫霊「・・・ ・・・ ・・・」

 

なんで、遠ざかるの?なんで、拒絶するの?

 

私が何かしたの?兄様を怒らせるような事を言ったの?

 

お願い、教えて。すぐに直すから、謝るから。

 

兄様がしろって言う事、何でもするから。もう我が侭だって言わないから。困らせる事絶対に言わないから。

 

お願いします、前の兄様に戻ってください。

 

どれだけ祈っても、どれだけ懇願しても、兄様は許してくれない。

 

最近では廊下ですれ違っても、簡単な挨拶すらせずに通り過ぎて行ってしまった。

 

理由が、分からない。息ができない。頭が痛い。兄様の姿が見えなくなった後に戻してしまった。

 

苦しい

 

悲しい

 

痛い

 

辛い

 

人間が感じるであろう負の感覚、その全てが私を襲っていた。

 

どうしてなの、分かんないよ、嫌だよ、離れないでよ。

 

兄様分かる?私今、すっごく寂しいんだよ?

 

兄様だけ、まるで違う世界に行ってしまったようで。

 

温かい家族やお家があっても、兄様がいなくちゃ、どうしようもないよ。

 

寂しいよ

 

寂しいよ兄様・・・

 

不安で不安でたまらないよ、助けてよ、兄様・・・

 

 

 

・・・ ・・・ ・・・ 不安?

 

 

 

 

 

 

そっか・・・アは・・・

 

 

 

分かった。

 

分かったよ、兄様。

 

試してるんだね?私を。

 

本当はもう知っているんでしょ?私の気持ち。

 

だから、試しているんでしょ?

 

不安なんだね、この気持ちが本当かどうか。何があっても揺るがないのか。

 

えへへ、だから、こうやって私を突き放すんでしょ?

 

こんなに私を苦しめるんでしょ?

 

フフ、兄様も可愛いなぁ。そうならそうと素直に言ってくれれば良いのに。

 

大丈夫だよ、どんなに苦しめられても、どんなに無視されても、私は兄様だけを見続けるんだから。

 

証明してあげる、私が絶対に兄様以外の男の人なんて見ないってこと。

 

ずっと見ててあげる、兄様の全て、今まで以上に、永遠に。

 

 

 

 

 

 

それから私は、兄様をいつも見るようになった。

 

兄様がいつ、どこで、何をしているのか。

それを理解し、兄様にとって自分が最もふさわしい女であるために、今まで以上に努力し続けた。

 

だから、今回だって、私だけ分かったんだよ?

兄様誰にも言わないで出て行くなんて、みんな心配するよ?

 

皆は誤摩化せたとしても、私をだます事なんてできないわよ?

私には分かるんだから。

 

自分でも気付かなかったみたいだけど兄様、何日か前から少し挙動不審だったわよ?

部屋に入る時には、周りを確認する時間が少し多かったし、家具の配置も微妙にズレていた。

 

そして、そのズレによってできた、中々見られない様な空間に、見慣れない道具があった。

よく分からないけど、少なくとも屋敷で使う様な道具じゃない事は分かる。

 

それに、全く使っていない自分で稼いだお金、ずいぶん貯まっているようだけど、何に使うつもりなのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

フフ・・えへへ・・・ねぇ?兄様・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

孫霊視点

 

我が妹であり義弟の仇である孫権仲謀。

 

彼女を敵として見るようになってから何十日か経ったある日、彼女の雰囲気はおかしくなった。

 

前は、私の事を「おにいちゃん」と呼びいつもすり寄ってきたが、今は私を「兄様」と呼び、いつも私をジロジロと見てくる。

 

それが気味悪く、この前も邪険に扱ったというのに、今も私の事を凝視してくる。あの人形の様な冷たい笑みを浮かべて。

 

もし彼女が、今までの様に寄って来ていたならば、適当に追っ払ってしまえばそれ済むのだが、一定の距離を保ってこちらを見ているのだからタチが悪い。

 

なぜ私がこんな目に合わなくてはならないのだ。

そもそも、本当になぜ私は孫家に生まれたのだろう?

 

しかも私は男のままで、呉の面々が皆女性である事もおかしい。一体どういったものなのか・・・妖術の類か?私を欺くための?

 

いや、だったらもっと効率のいい方法があるはず。

・・・、考えるだけ無駄か。

 

どうやらこの世界は女性が文官や武官を勤める事が普通で、男は比較的冷遇されているようだ。だからこそ、私の様な、文武ともに秀でた男が必要以上にもてはやされているのであろう。

 

しかし、たとえ怨敵であろうとも、女人を相手に剣を振るうのには、最初はかなり違和感があった。確かに尚香殿のように、女性で勇ましい人もいたが、全員がそうであったという訳ではない。

 

だが、それももう慣れた。今なら、その事に関して何の抵抗も無い。

現に今、怨敵は女性の姿をして目の前にいるが、何も感じない。

孫権の首をすぐにでも落とす事ができる。

 

・・・だが、それは今ではない。今は耐える。あえて放る。

 

彼女は、孫権だけはただ殺すだけでは許さない。

 

かつてのようにはさせない。

必ず彼女を出し抜き、全てを奪い、痛感させてやるのだ。信じていた者に、家族を奪われる悲しみというものを。

 

・・・分かっている、彼女はあの孫権ではない。私がやろうとしている事はただの八つ当たりだ。

 

だが、全くの無関係であるという訳でもない。

 

名前だけではない。彼女から感じるのだ、あの男の風格を。我が蜀と同盟を結び、赤壁にて共に魏を負かしたあの男の、「王たる風格」を彼女から感じ取ったのである。

 

彼女は、今は幼い子どもであったとしても、将来大国を治める英雄になる。

だから、捨て置く事などできなかった。

 

・・・とにかく、今は彼女をまだ殺さない。我が復讐を終えた後に絶望させ、苦しませながら殺す。

 

それに、私が一番気にしている事は怨敵などではない。

 

今、最も優先すべきなのは最愛の義弟達に出会う事である。

 

おそらくこの世界では女人になっているのであろう、覚悟はできている。

それにきっと私の事など分かりはしないだろう。

それでもいい、義弟達とともに旅ができるのなら、どのような姿であろうと関係ない。

 

それに、もしかしたら前の世界の彼等も、この世界に舞い込んでいるかもしれない。

もし、私のように姿や身分が変わってしまっていたら、お互いを理解する事は絶望的ではある。

だが、それでも心は繋がっている。

だからこそ、この世界にいるのならば、必ず巡り会えると信じている。

 

そのためにも、早くこの屋敷から抜け出し、第二の人生を始めなくてはならないのだ・・・

 

 

そして今現在、私は屋敷の出口で怨敵と対峙している。

 

いつもあの顔だ。

目は光を宿していない。

口を裂けるように歪ませ、こちらを見てくる。

容姿端麗であるからこそ、余計不気味に見える。

 

孫権「フフ・・・兄様、何をしているのです?こんな夜更けに、散歩をするにしても遅すぎですよ?」

 

直感した。

彼女は分かっている、気付いていたのだ。

いつから?どうやって気付いたというのだ。

全て誰にも知られないように、念入りに計画を練っていたというのに。

 

孫霊「五月蝿い、貴殿には関係のない事だ。早くそこをどいてもらおう」

 

孫権「・・・ねえ、兄様。もう分かってると思うけど、私、ずうっと兄様の事好きだったんだぁ。だから、兄様に無視されるようになってすっごく傷ついたんだよ?」

 

・・・この女は何を言っているのだ?

 

孫霊「貴殿が私に対してどのような感情を抱いていたかなど知らん。興味も無い」

 

孫権「フフ、素直じゃないんだから・・・ まあ、いいわ。それよりも、兄様。なんでお外に出ようとするの?」

 

孫霊「何度も言っているだであろう。貴殿には関係ないこ「関係あるわ」・・・」

 

孫権「分かってる?兄様は私の全てなの。離れるなんてできないし、分かれるなんて論外。それに、兄様は孫呉にとって将来有望な捨て難い人材。そんなに易々とお外に出てはみんな心配します」

 

・・・、孫権が私にどのような感情を抱いているかは、ある程度理解できた。

かなり衝撃的ではあったがな・・・

 

だが、「これ」は使える。

 

孫霊「それだ、孫権殿。皆私の事を有望な存在としか見てない。道具として使われる事にウンザリしたのだ」

 

今彼女に私の事情を知られるワケにはいかない。

伝えたとしても理解されるとは思えないが、それでも言う事はできない。

なればこそ、彼女の言動を利用しもっともな理由を彼女に押し付けた。

 

そして、

 

孫霊「それに、私はまだ世界を理解していない。いずれ多くの人間を守る存在になるのであれば、必須の事であろう。・・・、孫権、君を守るためにも、ね」

 

あえて言い方を柔らかくして、彼女に都合良く聞こえるように言った。

自分でも分かる。今、自分がやっている事は最低の行為だ。

たとえ敵であったとしても、自分を信頼し、愛していると勇気を持って伝えた女人に対して、自らの誠を示さず、嘘を伝えたのだ。

 

自分で自分に嫌気がさす。だが、ここで止まる訳には行かない。揺らいではいけない。今度こそ、私は、勝つのだ。この女に、孫権に。全てをこの手に持って。

 

私は決意を今一度固め、彼女を見た。正直、私は芝居は上手くない。屋敷への脱出を見破った彼女なら、きっと見破るだろう。

 

どんな顔をしているだろうか、怒っているだろうか、悲しんでいるだろうか、失望しているだろうか・・・

 

しかし、彼女は以外にも、いつもの表情であった。「いつもの」といっても、あの薄気味悪い笑みを浮かべているのだが。

 

 

孫権「・・・、分かったわ兄様」

 

 

孫霊「え?」

 

孫権「貴方の外出をお見逃しします。そんな志があったなんて、私の考えが至りませんでした。申し訳ありません」

 

孫霊「・・・そうか、ではな」

 

なぜだ?気付かれなかったのか?

 

そう思いながら、私は門の外に出ようとする。その時

 

孫権「兄様」

 

孫霊「・・・なんだ」

 

孫権「私は・・・どうなっても兄様の味方ですよ」

 

孫霊「・・・」

 

決意はすでに固い。

そんな言葉、響かんぞ。決して惑わされん。

お前はいつか、私の義弟の命を脅かす存在になるのだ。

 

絶対に、追いつめてやるからな。

 

私はそう思い、乱世へと至る荒野へと身を乗り出した。

 

 

 

 

孫権視点

 

「フフ・・・、兄様ったら最後まであんな嘘をついて誤摩化すなんてね」

 

兄様の姿が見えなくなった後、私は思わずそうつぶやいてしまった。

 

一瞬で看破した。

兄様の言っている事は全て嘘だ。

でも、それでいい。今は。

 

私は、兄様が出て行くまでに、兄様の信頼を得られなかった。

これは私の失態だ、どうしようもない。

 

だから兄様、「今は」許します。

今だけは離ればなれになる事を、受け入れます。

身が切れそうな思いですが、我慢します。

 

唇を噛み、血が滲む。

拳も、強く握りしめすぎて少し白くなり、血が滴り落ちて来ている。

涙が出そうなのを、必至にこらえる。

いつか、絶対受け入れてくれる。そう思う事で、かろうじて自分を保っていられた。

 

幾許かの時が流れた後、私は冷静さを取り戻し、兄様の事を考えた。

 

結局、私は兄様の秘密を知る事ができなかった。

兄様が何を考え何をしようとしているのか、やっぱり分からなかった。

でも、これだけは言える。

 

私と兄様は、いずれまた会える。絶対に、この事は曲がらない。

事実と言っても良い程に、確信している。

 

孫権(信じているわよ、兄様。そして、また会えた時には・・・、えへへ・・・、その時には私をどうか、受け入れてね?)

 

私は、兄様の未来を想像しながら、満面の笑みで自分の寝室に戻り、布団に潜った。

 

孫権(アはぁ・・・兄様・・・兄様・・・兄様・・・)

 

そして、情事に耽りながら、夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、孫家の屋敷は今までに類を見ない程の慌ただしさであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

大徳が舞う 孫家転生編 了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なかがき

 

R-18な内容ってどこまでアウトかよく分かりませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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