No.52322

08クリスマス

駿木裕さん

絶チル。クリスマス小説。なんとなく賢木×紫穂

2009-01-15 18:12:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1748   閲覧ユーザー数:1667

「わ…我が国の宝がああああああああああああああああああ!」

部屋内に局長の叫び声が響いた。

「いや、そこまでひどい怪我でもありませんから…。」

「黙れ貴様!そうだ貴様だ!なぜ我が国の宝のチルドレンが怪我する羽目になるのだ!?」

ぎりぎりと力任せに首を絞められ、皆本はすでに半分意識を失いかけていた。

「ごめんなー紫穂…。」

薫が申し訳なさそうに謝った。

今回は予知されたビル爆発を食い止めるという任務で、大参事には至らなかったが最後に残った爆弾の処理中にそれが爆発したのだ。

薫がとっさに超能力で防御したが、その衝撃はすさまじく四人とも吹き飛ばされたのだ。

葵もその最中テレポートしたのだが、なだれ込むように入ったヘリで紫穂がみんなの下敷きになったのだった。…と言ってもその下に皆本がいたのだが…。

「大丈夫よ。ちょっと肩打ったくらいだし。それよりも早く帰りたいわ。」

紫穂が急ぐのには訳があった。

今日は世間で言うクリスマス。以前から皆本達と準備をしていたのだが、そこに今回の事件だ。

世間が浮かれてる最中に事を起こしたがるのはいつものやつらの手だ。かといってそんなやつらのために楽しみにしていたクリスマスパーティを中止にするのも悔しい。

「賢木はどうしたー!あの給料泥棒が!!」

「それが…携帯が通じなくて…。」

柏木一尉が困ったようにうつむいた。

「賢木先生なら無理でしょう。今日はデートだって楽しみにしていたもの。」

昨日賢木を透視んだら、今日は都内のホテルで一泊の予定と見えた。前々から狙ってた彼女らしいので気合が入っているらしい。

「呼び出せー!必要なら撃ってもかまわん!!!」

「かわいそー賢木センセ。」

薫が呟いた。

「まあ、頭打ったわけでもないしな。紫穂が大丈夫っていうなら大丈夫なんちゃう?」

「そうよ。それに待ってたら日付変わっちゃうわ。」

「それも困るなあ。」

「いやでも一応検査した方がいい。何かあってからじゃ遅いからな。」

こういう融通の利かないところが皆本だと思う。

それに賢木がこんな呼び出しで来るわけがないと思う。誰が聞いても軽いケガだ。いや怪我のうちにも入らないかもしれない。それよりも意中の彼女を落とす方が大事だろう。

 

…考えると腹が立ってきた。

 

このまま賢木と連絡が取れずクリスマスパーティも流れてしまうようなことになれば…。

「紫穂?あんたすっごい悪い顔してるで?」

葵に言われはっと顔を上げた。

「賢木センセイの事考えてたん?」

「そうよ。みんなで楽しみにしてたパーティが駄目になったらどうやって懲らしめてやろうか考えてたの。」

「うわ、こわーー!でもあんたの事だから賢木センセイの居場所知ってるんちゃう?なんで言わへんの?」

「BABELの携帯で通じないんでしょ?じゃあ、無理よ。」

今日を楽しみにしてたのは賢木も一緒だ。それに自分の事で呼び出して断られるのもそれはそれで嫌だ。

「でもなー…。」

葵が言葉を紡ごうとしたら急に扉の外が騒がしくなってきた。

「賢木―!なぜ連絡が繋がらない!」

「すみませんって。バイクに乗ってたんですよ。さすがに運転中に携帯は出れませんよ。来たんだからいいでしょう。」

ばたばたと人の気配がして、見知った顔がひょいと顔をのぞかせた。

「よ、怪我したって?見せてみな。」

そう言うと白衣を身にまとい紫穂の前に座った。

「なんで…?」

「ん?部屋についてたテレビで事件知ってさ。もしかしたらと思ってこっちに来たのさ。」

賢木は軽く言うが、事件の速報を見たというなら自分が怪我をする前だ。それなのにこちらに来たということか。

「うん。痣にもなってないし、大丈夫そうだな。」

「大丈夫って言ってるのに誰も信用しないのよ。センセイも電話に出れれば来なくてもよかったかも知れないのにね。」

精一杯の皮肉を言うと賢木は困ったように肩をすくめた。

「そう言うなって。電話も来るか来ないかもわからなかったし、なんともなかったらすぐ帰る予定だったけどなんせクリスマスだろ?道が混んで混んで…。」

はは。と明るく笑う顔に紫穂もつられてほほ笑んだ。

「なあなあ、なんともないんだろ?じゃあ早く帰ろう!」

 薫が嬉々として二人の間に入ってきた。

「そうね。今日はパーティだもんね!」

「俺も混ぜてくれよ。今日という日に男一人なんてわびしくてさあ…。」

「えー?総務の子はどうするんですかー?」

にやりと笑いながら賢木を見る。

「おま…性格わる!!!わかって言ってるだろ!」

分かってますよ。その子より私たちを選んだんでしょ?という言葉はかろうじて飲み込んだ。

「いいけどプレゼントないと混ぜてやんないよーだ!」

「そやそや。いいもんやないと承知せんでー?」

「マジかよー!」

賢木は頭を抱えながらも二人の後をついていった。

「皆本さん、私たちも帰りましょ。」

「あ…ああ。」

紫穂もどこか軽やかな様子でその後を追いかけた。


 
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