No.516425

Zone Of the Altanative -終末の女神と白銀の英雄-

第二話 イレギュラーと英雄と魔女の会談

2012-12-08 21:53:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4303   閲覧ユーザー数:4048

 

 

 

 俺達グレイ小隊は突然進路を変えたBETAの原因を探るためにBETAの後を付いて向かっている。

 

 どうやら、俺達が比較敵近いらしい。全く・・・迷惑な事だ。

 

 ちなみに所属はアメリカ軍のF-15C小隊だ。

 

 祖国も少しぐらい手を貸してやらないと世論が沸騰しかねないだろうと思ったんだろうな。

 

『た、隊長・・・本気ですか?あの大軍に近寄るなんて俺はごめんですよ?』

 

『なんだグレイ3、怖じ気づいたのか?』

 

『当たり前だグレイ6!データリンクを見ろよ!マップがBETAで埋め尽くされてるだろ!?』

 

「静かにしろグレイ3、6。俺達はただ与えられた任務を遂行するだけだ。なに、俺達の任務はただの偵察だ」

 

『ですが隊長・・・この状況で不安を覚えない奴はいませんよ?』

 

 砲撃支援(インパクトガード)のグレイ7が言う。

 

 グレイ7の不安は分からんでも無い。俺だって怖いさ。

 

 今こうしてBETAの後を500m離れて追跡しているのに、こっちには見向きもしない。

 

 この現象に不安を覚えない奴がいたら、俺の前に連れてきて欲しいぐらいだ。

 

「それでも、だ。ただ任務を遂行する・・・それだけだ。」

 

『CPからグレイ小隊。もうすぐ奴等が集結している地点だ。注意しろ』

 

「こちらグレイ1、了解した。これより偵察をhっ!?なんだあれは!?」

 

 俺が偵察を始めようとした時、目に入ったのは異常な光景だった。

 

 見慣れない戦術機がたった2機で地平線を埋め尽くすBETAに戦っていた。

 

『グレイ1、どうした?』

 

 CPが何か言ってる気がするが、俺は答えるよりも異常な光景に目を見開いていた。

 

「あ、ありえない・・・。」

 

『な、なんだよありゃあ・・・・』

 

『・・・俺は夢でも見てんのか?』

 

 グレイ2と4が口々に言っている。

 

 そう、あり得ないのだ。

 

 戦術気乗りなら誰もが知っている、操作後の硬直時間・・・それが全く無いのだ。

 

『グレイ1!報告しろ!』

 

 それだけでは無い。

 

 突然、何も無いところから大型の武器を取り出して、小さな針のような光が、BETAを細切れにしているのだ!

 

 俺は一瞬、夢でも見ているかと思ったぐらいだ。

 

『グレイ!どうした!?応答しろ!』

 

「何なんだあいつは・・・?」

 

 だが、これから俺達が本当に恐怖のどん底に突き落とされることになるとは思いもしなかった。

 

 それは・・・やっと我に返り、CPに報告しようとした矢先のことだ。

 

「っは!?グ、グレイ1よりCP!目標地点に到達した!だが、BETAの大軍に見慣れ―――」

 

 ドカァン!!

 

「なんだ!?」

 

 突然後方から爆音が響いた。

 

 その爆音は最後尾にいるグレイ5の所からした。

 

 俺達全員がそっちを見ると、無残にも爆散したグレイ5の残骸だけがあった。

 

『グレイ5!?』

 

 グレイ4が声を上げた。

 

『こちらCP。どうしたグレイ1!?』

 

「こ、こちらグレイ1!グレイ5がやられた!」

 

『BETAか!?』

 

「いや、違う!突然やられた!BETAならとっくに気付いている!『うわああああ!!』グレイ4!?」

 

 今度はグレイ4が胴体を真っ二つにされてやられた。

 

『くそっ!なんだってんだよ!?』

 

「お、落ち着け!円陣を組め!襲撃にそな『ぎゃあああ!!』っ!くそったれ!」

 

 今度はグレイ8だ。

 

 もう訳が分からない。

 

『な、なんだよあいつは・・・・?』

 

 だが、幸運にも敵の姿を見た奴がいた。

 

「グレイ3!敵を見たのか!?」

 

『いきなり何も無い所から現れて・・・グレイ8をやりやが―――』

 

 だが、彼の言葉は続かなかった。

 

 突然紅い光の玉のような物がグレイ3の胴体部コックピットを撃ち抜いたからだ。

 

『グレイ3!?く、クソォ・・・姿を見せやがれぇえええええ!!!』

 

 そして、グレイ7が突撃砲を乱射する。

 

『あ、危ねぇ!?』

 

『や、止めるんだグレイ7!同士討ちになるぞ!?』

 

 グレイ7を止めようとするグレイ2と6。

 

 だが、それは何かに遮られた。

 

 グレイ3が言った通り、本当に・・・いきなり何も無い所から現れた。

 

 現れた奴は勿論BETAでは無かった。しかし、俺達の常識を越えたモノである事は明白だ。

 

 先ず、その姿はどの戦術機とも似ても似つかないものだった。

 

 脚部は異様に細く、体を支える足が無く浮いていた。

 

 頭部はまるで犬のような形をしている。

 

 なによりも異常なのは奴の背後にある翼のようなものだ。

 

 何が異常かって?・・・浮いてるんだよ。

 

 それは奴の背中に・・・まるで翼の様に浮いてるんだ!

 

 あり得ない!一体どういう原理で浮いてるんだ!?

 

『な、なんだこいつ――――』

 

『グレイ6!?こ、この野郎ぉ!!』

 

 グレイ2が突撃砲を撃った。だが擦ることすら無かった。

 

『グレイ1!何が起きているんだ!!応答しろ!状況を説明するんだ!』

 

 この状況をどう説明しろと言うのだ?

 

 そして、突然それは消えたかと思うと、突然グレイ2が爆散した。

 

「なんなんだ・・・こいつは?」

 

 グレイ2が居た方を見ると、奴が細い槍みたい物を持っていた。 

 

 そして、また消えたかと思うと、今度は俺の目の前に現れた。

 

「ひぃっ!?」

 

 俺は恐怖で体が竦み、動けなかった。

 

「本当に・・・何なんだよ・・・?」

 

『グレイ1!応答しろ!』

 

「お前は・・・何だ・・・?」

 

 そして、奴が槍を上げて――

 

『何が起きているんだ!グレイ1!!』

 

「一体何なんだよぉおおおおお!!?」

 

 ――振り下ろした。

 

 それが俺の最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し戻る。

 

 

[13時の方向に8機の戦術機を探知したわ]

 

「・・・・・やっぱり来たわね」

 

 私こと疾風は零に与えられた役目を果たす為に姿を隠して行動している。

 

 いつもの口調は戦闘になると一変してこんな風になってしまう。

 

 それもこれもあのノウマンの変態(途中で和解したよ?)のせいだが、零はこんな私を変な目で見ること無く接してくれている。

 

[それにしても、あっちに参加しなくても良かったのかしら?本当は一緒に行きたかったのでしょう?]

 

「・・・私はただ、零に与えられた任務を遂行するだけ。零の為に・・・」

 

[はいはい、ごちそうさま。で、急がないと報告されるわよ?]

 

「・・・分かってる」

 

 私はゼロシフトを起動する。

 

 そして、最後尾にいた敵を斬り裂いて、すぐにステルス機能を使用する。

 

 次に斬り裂いた機体の近くにいた機体を斬り裂く。

 

 そしてもう一機をショットで撃ち抜いて爆散する。

 

 敵は酷く混乱しているようだ。

 

 だが一つ小さなミスがあった。

 

 それは敵の1人に攻撃する瞬間を見た奴がいた。

 

 ギリギリの所で私はそいつが通信で何かを言う前にショットで撃ち抜いた。

 

「・・・危なかった」

 

[もう、油断大敵ですわ]

 

「ごめん」

 

 次々と撃墜していく。

 

 そして、最後の一機が残った。

 

 どうやら、コイツが隊長機らしい。

 

 私はゼロシフトで肉迫し、槍で斬り裂いた。

 

「ターゲット撃墜。ヘル・・・他にいる?」

 

[ええ、今度は7時の方向に5機だわ。まだ遠いけど、もうすぐ到着するわ]

 

「まったく・・・忙しいわね」

 

 私は鬱陶しそうに言うが、その実・・・楽しかった。

 

[疾風・・・顔が嗤ってますわよ?]

 

「そう・・・?」

 

 いけないいけない・・・。あまりにも久しぶりの戦闘だから、ちょっと高揚してるみたいね。

 

[そうよ。ほら、しっかりしないとダメですわよ?]

 

「うん・・・それじゃ、行こっか?」

 

[了解]

 

 そして、私は零に近づこうとする敵を狩りに行った。

 

 

 

 

 

 

「・・・どう思う?白銀?」

 

「う~ん、信じても良いんじゃないですかね?」

 

 私は白銀を連れて白陵基地まで来た。

 

 そして、今は司令部にいるの。

 

 え?どうやって白銀を入れたかって?

 

 そんなの、私の権限でどうにかしたわよ?

 

 私の特別な秘蔵っ子という扱いでね。

 

「っ!(ぶるぶるっ!)」

 

「どうしたの白銀?」

 

「いや・・・なんか寒気がしたもので・・・」

 

 変な白銀ね。

 

「ところで、彼等の話でしたね?」

 

「ええ。正直、私も信じて良いとは思ってるわ。彼が乗っている機体・・・この世界の何処にも存在しない機体だったわ」

 

「まぁ、夕呼先生がそう言うならそうなんでしょうね」

 

 この私の情報網に引っかからない機体なんて存在しない。

 

 だから、嘘はいっていないし、嘘を言う意味も無い。

 

 実際に、彼等は今現在、私の命令を聞いて実行してるんですもの。

 

「となれば、彼等の目的の事だけど」

 

「はい・・・アイツ等、俺の事を知っていました。それに、俺と俺の周りに居る奴を守るって・・・どういうことなんでしょう?」

 

「さぁね、因果律の彼方から来たと言ってたけど・・・まさかね?こればっかりは本人達に聞かないと分からないわ。兎に角、先ずは彼等と会う事ね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう!次から次へとキリが無いわね!!』

 

「文句言ってる暇があったら手を動かせ、イレギュラー2!」

 

『分かってるわよ!』

 

 俺達がBETAと戦闘を始めてから20分が経過した。

 

 BETAは次々と現れ、光線級や要塞(フォート)級まで現れた。

 

[3時の方向に要塞級2,要撃級10、戦車級40]

 

「了解!」

 

 俺は先ず、要塞級を取り巻いている要撃級と戦車級にHレーザーを撃つ。

 

 それで要撃級は全滅、戦車級は半数が沈黙する。

 

「先ずは一体!」

 

 俺は要塞級の懐に潜り込む。

 

 すぐに触手で反撃してくるが、それを難なく回避する。

 

 そして、ブレードで触手を両断。攻撃手段の無くなった要塞級の関節を切断し、無力化した。

 

 SWも使いたいが、あまり多用するとエネルギーの回復速度が追いつかなくなる。

 

 また、使用しなくても切り抜けるので、今は使わない。

 

「邪魔だ!」

 

 二体目の要塞級を撃破した後、群がってくる戦車級を斬り裂く。

 

 くそっ!本当にキリが無い。

 

 ベクターキャノンでも撃ってやろうか?いや・・・使わないけどさ、こうも次から次へと湧いて出てくるといい加減頭にくる。

 

[香月博士からの通信です。応答しますか?]

 

 やっとか・・・。正直うんざりしていたところだ。

 

『本当に三機で食い止めているなんてね・・・』

 

「信じていなかったのか?というより、今忙しい。用件を手短に聞きたい。まぁ、概ね撤退準備が整ったんだろうが・・・」

 

『ええそうよ。撤退準備が完了したわ。もう引き上げていいわよ』

 

 さっさと引き上げたい。

 

「それは有り難い。で、どうする?」

 

『どうせステルス機能が付いてるんでしょ?それで大島(東京)から北東に20km地点に大型輸送船を一隻手配してるわ。三機ぐらいなら入るから、そこへ行きなさい。そこから港で積み替えて、白陵基地に運ぶわ』

 

 やっぱり知られてたか・・・。

 

「了解した。しかし、白陵基地にはまだ90番格納庫が無かったと思うが?」

 

『そこまで知ってるのね・・・。心配無いわ。私が研究用に確保してある格納庫があるから。戦術機12機なら入る大きさよ』

 

 それでも結構大きいのだが・・・。

 

「了解。イレギュラー1、これより帰還する。全機、合図と共にHミサイルをぶちかませ!」

 

『イレギュラー2、了解』

 

『イレギュラー3、了解』

 

 俺を含めた三機がHミサイルを展開する。

 

 その数、およそ70強。

 

「今だ!!」

 

 俺の合図と共に放たれるHミサイル。

 

 それは自動的に追尾し、次々とBETAを屠っていく。

 

「全機離脱!」

 

 そうして俺達は指定された場所に向かって飛んだ。

 

 

 

 俺と桜はクロークモードで、疾風はステルスを使って現在、島根県の松江市上空を時速1800kmで飛行中だ。

 

 勿論、低高度で山沿いに飛んでいるから、探知される可能性は低い。

 

 この世界ではあり得ない速度だ。

 

 例え探知されても何かの見間違いと思って無視されるだろうな。

 

 ただ、少し不安要素がある。

 

 それは、香月博士が俺達を信じてくれるかだ。

 

『零、どうしたの?考え事?』

 

「まぁ・・・な。香月博士が俺達を本当に信用してくれるか心配なんだ」

 

 基地に到着した瞬間、ズドンは無いよな・・・?

 

『きっと大丈夫ですよ零さん!この子達を見たら絶対に信じてくれますよ!』

 

 お?疾風はスイッチが切れたのか?

 

『まぁ、確かにフレイヤ達を見たら信じるしか無いでしょうね。何せ、一機で一国を墜とせるぐらいだからね』

 

 いや、数ヶ国を同時に相手できるんじゃないか?

 

 ベクターキャノンを使えば戦艦やHSSTなんか一撃で消し飛ぶだろうし。

 

 それでなくともHレーザーで無力化は可能だしな。

 

[間もなく目標へ到着します]

 

 おっと、そうこうしている内に大島に着くな。

 

「全機減速。速度を400kmに落とせ」

 

『了解よ。やっと地面に足を着けられるわね』

 

『でも、今度は船だから、地面はもう少し後じゃ無いかな?』

 

『あー、そうだったわ・・・』

 

 俺達は速度を落とし、目標の輸送船を捜す。

 

 すると、通信が入った。

 

『はぁい、無事に着いたようね。でも、思ったより早いわね?』

 

「性能が良いからな」

 

『そっ。それじゃあ、着いたところで悪いんだけど、輸送船で港に着いたら夜になるまで待ってちょうだい。夜中じゃないと搬入する際に見られる可能性があるから』

 

「そう言うと思ってたよ。なら、輸送船にはもう乗り込んでいいんだな?」

 

『ええ、いいわよ。それじゃ、また夜中にね』

 

 香月博士が通信を切ると、桜が文句を言ってきた。

 

『え~!?夜中まで待たないといけないの!?』

 

「みたいだ。ま、それまで輸送船のベッドで我慢しろ」

 

『ふぇ~ん・・・』

 

『あはは・・・桜さん、我慢して下さい』

 

 そして、何だかんだで夜になる。

 

 ん?桜はどうしたって?

 

 船室で不貞寝しているぞ?

 

 今、疾風に起こしに行って貰っている。

 

 因みに、俺は絶対に起こしに行かない。

 

 何故かって?碌な事が起きないからだ!

 

 俺が前の世界で親切心で起こしに行ったとき、何故か着替え中だった。

 

 それも二回もだ。あれか?嫌がらせなのか?

 

 俺だって好きでそんなことした訳じゃ無い。

 

 それなのに、あいつは・・・・拳銃を撃ちやがった。

 

 しかも俺の頬を掠めてだ!

 

 あと数㎝ずれていたら俺は死んでいたんだ!

 

 因みに、それを知ったディンゴは肩を叩いて同情し、ケンは苦笑していた。

 

 察するにどうやら、彼等も似たような事があったらしい。

 

 とまぁ、過去話はこれくらいにしよう。

 

「作業急げ-!」

「輸送車の点検もしておけ!」

「傷一つつけんじゃねぇぞ!」

「よーし!つり上げろー!!」

 

 今、俺の機体が大型の輸送車に積み込まれている。

 

 それと平行してニュクスも積み込み準備を始める。

 

 あまり人手が無い為、時間は多少掛かる。

 

 それでも彼等、作業員達は好奇心をあまり現さずに自分の仕事をやる。

 

 恐らく彼等はいずれ、90番格納庫での整備員候補なのだろう。

 

 だが全く好奇心が無い訳では無い。

 

 時々、俺達をちらちら見ているのを俺は気付いている。

 

 まぁ外見が外見だから仕方ないだろうが。

 

 何せ、俺達の肉体年齢は18歳なのだから。

 

「零・・・移動するの?」

 

 おっと、桜と疾風が来たな。

 

「ああ、今俺のネメシスが終わった所だ。今、ニュクスの積み込みに入ってる」

 

「そう・・・。」

 

「零さん、私達は輸送車で移動ですか?」 

 

「本当はヘリで行きたい所だが、贅沢はできん」

 

 俺達が公式に軍人になったら出来るかもしれないがな。

 

「ま、仕方ないだろう。さて・・・そこの上等兵、少しいいか?」

 

「はっ!何でしょうか?」

 

 ちなみに、彼等は俺達の事を何も知らされていない。

 

 香月博士から客人扱いするように言われてるからだ。

 

「いや、俺は軍人じゃないから、敬礼はしなくていい。」

 

「はぁ・・・。」

 

「で、だ。機体の積み込み作業完了の予定時刻は?」

 

「はっ!2200時を予定しております!」

 

 となれば、出発を10分後にしても白陵基地に到着するのが2300時か。

 

「分かった、ありがとう。作業中にすまなかったな」

 

「いえっ!それでは、私は作業に戻ります」

 

 また敬礼をして去って行く作業員。

 

 敬礼はしなくて良いって言ったのになぁ・・・。

 

 

 

 そして、無事に積み込み作業が終わり、俺達は予定通り2210時に出発した。

 

 道中も何の問題は無く白陵基地に到着し、表とは違った搬入口に誘導される。

 

 そこには、香月博士直々に出迎えに来てくれた。

 

 ・・・白銀武と一緒にな。

 

 俺達は輸送車を降りて作業員に指示を出し終えた博士に敬礼をした。

 

「直接では初めまして、かな?」

 

「ええ。待っていたわ。知ってると思うけど、私が香月夕呼よ。ここの基地の副司令っていう地位に就いてるのだけど、まぁそれはいいわ」

 

 いいのかよ・・・。

 

 それと、白銀が来ているのは護衛の為だろうな。

 

 一瞬だけ視線が俺達3人の腰と懐に向いたのを見た。

 

 それぞれが持っている拳銃の場所だからだ。

 

 少しでも妙な真似をするとすぐに制圧に掛かるだろう。

 

 ま、俺らはそう簡単にやられはしないがな。

 

「こっちのは知っているわね?」

 

「白銀武って言います。階級は・・・ありません。白銀とでも武とでも呼んで下さい」

 

 警戒してもきっちり挨拶するところは好感が持てる。

 

「貴女達の事は私の部屋で聞くとするわ。ついてらっしゃい」

 

 そういって香月博士が先に行く。

 

 俺達は2人の後について行き、進むにつれてセキュリティのレベルが上がっていく。

 

 そして、しばらくした後、ようやく到着した。

 

「ここよ」

 

 部屋の中に入ると、疾風と桜は硬直する。

 

 理由?よくは分からないが多分・・・・

 

「また夕呼先生はもぅ・・・・」

 

「・・・汚いわね」

 

「あぅ・・・片付けましょうよぉ」

 

 部屋が資料やらなんやらで散らかっていることだろう。

 

 俺はあまり気にしないが・・・。

 

「・・・うっさいわね~。忙しいから仕方ないじゃないの!」

 

「いや、それでも少しは片付けましょうよ・・・夕呼先生」

 

「・・・分かったわよ。まぁいいわ。そこに座ってちょうだい」

 

 ま、まぁ・・・話を進めよう。

 

「それで、アンタ達の事を教えてくれるのよね?」

 

「ええ」

 

 俺達3人は一度立ち上がって敬礼する。

 

「改めて・・・、初めまして、国連軍極東支部、白陵基地副司令、香月夕呼博士。私は火星軍所属、第8492独立特務OF小隊隊長の龍崎零少佐です」

 

「同じく、四宮桜大尉です。」

 

「お、同じく、神崎疾風大尉です!」

 

 それを見た2人は一瞬呆けていたが、すぐに我に返った。

 

「・・・え?火星軍?だって火星は・・・人が住める場所じゃ無い上に、BETAに占拠されてるじゃ・・・?」

 

「そうね・・・火星に人が住んでいるのはあり得ないことだわ。でも・・・アンタは因果律の彼方から来たって言ってたわね?つまり・・・」

 

「そう、俺達は香月博士が思っている通り、こことは違う世界から来た」

 

「やっぱりね。まぁ、それしか無いでしょうね」

 

 因みに、白銀はそこまで驚いていない。

 

 多分、香月博士が前もってその可能性を言っておいたのだろう。

 

「それより、いい加減座ったら?それに、敬礼はいらないから」

 

「ああ」

 

 俺達は言われるままに座った。

 

「そうね・・・先ず、アンタ達はどうやってこの世界に来たのかしら?」

 

「・・・」

 

「あら、言えないのかしら?」

 

 俺は何て説明しようか迷った。桜達も困った顔をしている。

 

 だって、いきなり神様に頼まれて来ましたー、なんて言ったら実験材料にされて殺されそうだ。

 

「いや、そういう訳じゃない。ただ・・・・何て説明したら良いか・・・」

 

「私はただこの世界に来た方法を聞いてるのよ?だいたい、アンタ達の出した条件を呑む代わりにこっちも要求したのだけれど?」

 

「・・・はぁ。分かった。ただ、俺達が言うことを笑ったりしないでくれよ?」

 

「?ええ、いいわ」

 

 説・明・中・・・・・。

 

 

 ん~、やっぱり香月博士の表情が思わしくない。

 

「アンタ達はもう死んでいて、二度目の人生であの機体を手に入れて戦い、そこでまた死んでこっちに来たなんて・・・正直、バカにしているとしか思えないわね。アンタが来た世界の科学力で平行世界を渡ったって言う方がまだ信じられるわよ」

 

 ・・・だから説明したくなかったんだ。

 

「でも、先生」

 

「なに?白銀」

 

「俺、ループする前に・・・変な夢・・・っていうか、声が聞こえたんですよ」

 

「声?」

 

 ん?何の話だ?

 

「たしかあれは・・・そうそう!俺が虚数空間を漂っている時に、聞こえたんだ。おっさんの声だったんですよ」

 

 ・・・もしかして?

 

「武・・・その声は何て言ったんだ?」

 

「え?たしか・・・『汝が願い、確かに聞き届けた』って言ってた気がするんだけど・・・?」

 

「・・・オーディンだな」

「でしょうね」

「多分、そうですね」

 

 やっぱりオーディンだな。

 

「オーディン?それって、北欧神話に出てくる主神ね。まさか本当に・・・・いやでも・・・・・ぶつぶつ。」

 

 武が言っても半信半疑って所か?だが、武の言葉を信じない訳にはいかないだろう。

 

「・・・いいわ。アンタ達の言ってた事は信じてあげるわ。で、あの機体は何か教えてくれるかしら?」

 

 ふぅ・・・何とか信じてくれたな。

 

 まぁ、ここも説明が大変なんだが。

 

「OF・・・俺達はそう呼んでいる」

 

「オービタルフレーム?こっちで言う戦術機って所かしら?」

 

「まぁ・・・そうだな。しかし、理論や武装なんかは根本的に異なるけど」

 

 戦術機は宇宙空間では活動できないしね。

 

「へぇ・・・面白そうね。まず、機体の事について教えて貰おうかしらね。格納庫に行くから、色々吐きなさい」

 

 ・・・『教えなさい』の間違いだろ?

 

「分かった」

 

 ま、いいか。 

 

 

 

「へぇ~・・・これがOFね。全高は同等か僅かに戦術機より大きいところかしら?それに、随分滑らかな装甲ね。コックピットが腰部にあるのも変わっているわね」

 

 俺達は今、香月博士が私有している格納庫に来ている。

 

 外は衛兵と装甲車や撃震(F-4)によって厳重に守られ、内部は博士が選抜した選りすぐりの整備兵がいる。

 

「まず装甲からだな。疾風、頼む。」

 

「は、はい!えっと、この装甲に使われている金属はメタトロンという特殊な金属です。メタトロンとは21世紀初頭の無人探査計画において、木星の衛星カリストの巨大クレーター『ヴァルハラ』から発見された鉱石です。シリコンをベースとした高分子金属の複合体で、水素吸蔵合金や超伝導素材としての特性を持っています。

 装甲、動力源、量子コンピュータなどの素材に応用でき、それらの産物としてオービタルフレームが実用化されたのです。2093年には、エネルギーとスピンを加えると周囲の空間を引きこむように圧縮する性質も発見されており、宇宙船射出装置のウーレンベック・カタパルトや格納装置のベクタートラップ、エネルギー兵器や実体弾を逸らす障壁、耐G緩衝機構、ステルスシステムの一種に応用されています。『高純度で大量に集中使用すると、人間の精神に反応し「魔法」としか思えぬ既存の物理法則を無視した力を出すが、その強大な「魔力」が使用者の精神を歪め、歪められた狂気がさらに「魔力」を増大させる悪循環を引き起こす』という副作用が存在し、強靭な精神の持ち主でないと、その力は使い熟せないとされています。」

 

「なるほど・・・『魔法』ね。まさか科学者が魔法という言葉を使うとは。本当に・・・・面白いわ」

 

 香月博士・・・目が危ないぞ。それに見ろ・・・兎のように武が震え上がっているぞ?

 

「まぁ、超伝導ならどうにかなるけど、空間圧縮は流石に無理ね。まったく、そんな夢のような金属がこっちにもあったらねぇ・・・。」

 

 香月博士が遠い目をして言ってる。

 

 まぁ、気持ちは分からんでも無いが・・・。

 

「それで、武装は?さっきので何となく予想はついたけど、ベクタートラップっていうのを使ってるのよね?」

 

「ええ、さすがは香月博士です。桜さんのフレイヤと零さんのネメシスは全部で12。武装は―――」

 

 香月博士、かなり真剣に聞いてるな・・・。科学者としての血でも騒いでいるのだろうか?

 

「次はゼロシフトというSWなのです。これは自機の周囲の空間をベクタートラップで圧縮、復元する際の反動で亜光速移動を行うシステムです。ゼロシフトによる機体の移動速度は光速に限りなく近いため、その移動時間を認識、知覚することはまず不可能です。この機能による擬似的瞬間移動を実現したことで、この子達はロックオン対象から瞬時に接近、離脱することが可能になっているのです。」

 

「でも、それだけの武装を運用するには当然莫大なエネルギーが必要になるはずよね?それはどうやって得ているの?」

 

「はい、それは全てこの子達の動力から得ています。」

 

 香月博士の頭の上に?マークが浮んでいるのが見えるくらいに首を傾げているなぁ・・・。

 

「・・・どうやって?」

 

「だから、この子達の動力からです。この子達の動力は反陽子生成炉(アンチプロトンリアクター)と言って、メタトロン製のリアクターによって反陽子を生成、これを陽子と衝突させることで対消滅を起こし、それによって発生したエネルギーを動力や電気エネルギーに変換する半永久機関なのです。これを動力源とすることで、OFは超高出力と小型化を実現したんです。」

 

「・・・もう驚かないわ。驚くのも疲れるし・・・。」

 

 香月博士が溜息を吐いた。多分自分の予想したことより、規格外の技術が詰まっていたためだろう。

 

 序でに、武は・・・

 

「それなんて言うアニメ?」

 

「いや、ゲームだ」

 

 

 

 

 

 

「・・・はぁ、アンタ達の技術が凄いって言うのは分かったわ。しかも、転用も出来ないしね」

 

「それで、これからの事なんだが・・・。」

 

「ああー、そうね。取りあえずアンタ達はもう私達の私兵って事になってるし、戸籍も改竄しておいたから」

 

 ・・・・・いつの間に?

 

「そ、そうか。しかし、機体はどう説明する?」

 

 まさか異世界から来ましたーって言う訳にもいくまい?

 

「そうね・・・今はあまり知られたくないのだけど、何れバレるから時期を見て発表するってのも良いかもね」

 

 って!言うつもりかよ!?

 

 ま、まぁ確かに香月博士の言うことも分かるが・・・。

 

「私の因果律量子論で無理矢理納得させるわ。それはともかく、アンタ達に紹介しないといけない子が居るわ。・・・どうせ知っているのでしょうけど」

 

「ん?トリースタ・シェスチナ・・・または社霞の事か?」

 

 トリースタ・シェスチナという名前は昔、被検体時の名前らしい。

 

 この知識、中途半端にオーディンが与えているから、あまりベラベラ喋るものじゃないかもしれない。・・・今更だけど。

 

「・・・はぁ、そうよ。社、こっちにいらっしゃい」

 

 香月博士が呼ぶと、ドアが開いて社が出てきた。

 

「・・・社霞です。・・・よろしくお願いします」

 

 ・・・気のせいだろうか?何故か彼女が俺達・・・特に、俺から距離を取っている気がするんだけど?

 

「・・・こちらこそ」

 

「よろしくね、霞ちゃん」

 

「よろしくなのです!」

 

 俺達は挨拶を交わす。

 

「それにしても、龍崎っていったわね?アンタ、本当に人間なの?霞がリーディング出来ない人って普通は居ないのだけど?」

 

「・・・・はい。色が・・・見えませんでした。全く・・・」

 

「いや、人間ですけど?」

 

 色が見えない?何でだ?

 

 ってか、それが原因で俺から距離を取っているのか?

 

 今も微妙に武の後ろに下がっているのだが。

 

「まぁ、いいわ。それじゃあ早速、あと数ヶ月で始まBETAの本土上陸に備えないといけないわ」

 

「あ、夕呼先生、その前にXM3は・・・?」

 

「ああ、それね。それならもう出来てるわよ?」

 

「はやっ!?」

 

 ほぅ・・・もう作っていたか・・・。

 

「霞と私で可能な限り再現したつもりだけど、やっぱりあれはアンタが居ないと完成しないわ。後で霞と一緒にやってちょうだい」

 

「分かりました!」

 

「それと今回、XM3の出し惜しみはしないわ。最初は帝国と国連に配布するわ。これからはいくら衛士が居ても足りないしね」

 

 確かに、XM3があれば半数の衛士が助かるだろう。

 

 俺もそのことについては賛成だ。

 

「それじゃ白銀、アンタには国連軍に入って貰うわ。階級は・・・・そうねぇ・・・・・少佐でいいんじゃない?」

 

「・・・・って、ええーーーーー!?」

 

 いきなり少佐ですかい。

 

 まぁ、今の武なら経験も実力もあるから大丈夫だろうが。

 

「なによぉ~、不満なの?」

 

「いや、不満って言うか、俺なんかのガキには身に余る階級ですよ!せめて少尉や中尉から「却下」なんでー!?」

 

 即答だな。もちろん、俺も却下だ。

 

「アンタねぇ・・・今の人類に良い人材を遊ばせる余裕なんて無いのよ?それに、今の白銀ならそれくらいの実力もあるでしょうに」

 

「いや、でも・・・」

 

「はぁ~・・・分かったわよ。それじゃあ、大尉にしておくわ。はい決定。異論は認めないわ」

 

「う~ん・・・伊隅大尉と同じかぁ・・・。何か複雑ですね」

 

「仕方ないじゃないのよ。さっきも言ったけど余裕なんて無いのよ。それと、言っておくけど本土侵攻が終わったらすぐに階級は上げるわよ?」

 

「うぅ・・・はい」

 

 ・・・ドンマイ、武。

 

「香月博士、質問があるのだが?」

 

「何かしら?」

 

「俺も戦術機の訓練をした方がいいのだろうか?」

 

 万が一ということもある。乗れないに越したことはないが・・・。

 

「そう・・・ね。万が一と言うこともあるし、アンタ達にもXM3のテストパイロットと言うことにしておきましょ」

 

「分かった、武・・・是非お前に教えを請いたい」

 

 三次元機動の概念も体験も十分に理解しているし、やってもいるが、如何せん経験が無い。

 

 武に鍛えて貰うのが一番だろう。

 

「おう!任せてくれ零!」

 

「ああ」

 

「期待してるわ、白銀」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

 さて、これから忙しくなりそうだ。

 

 

 

 と、思いきや・・・

 

「・・・・・・あーーーーーーー!!?」

 

 武が大声で叫んだ。

 

「っ~~~・・・なによ、うるさいわね。一体どうしたって言うのよ?」

 

「先生!俺、この世界の今ではまだ生きてましたよね!?」

 

「それが何よ?」

 

「俺、この世界の俺が突然消えたりして騒ぎになってないですか!?親父や母さんが驚くんじゃ・・・。」

 

 ・・・言われてみればそうだな。この場合、前の世界の武とこの世界の武が融合してるのだろうか?

 

「ああ-・・・それは盲点だったわ。はい、そこにある電話を貸して上げるから連絡しなさい」

 

 そう言って武が連絡したのは自宅の様だ。

 

『・・・もしもし?』

 

「あ、純夏か?」

 

『た、武ちゃん!?もう!!急に居なくなって心配したんだよ!!今何処にいるの!?』

 

「へ?あー・・・白陵基地なんだけど?」

 

『ええ!?何で白陵基地なんかにいるのさ!!』

 

「えーと、ちょっと事件に巻き込まれてな。色々あって国連軍に入ることになったんだわ」

 

『な、なんで!?』

 

「わりぃ・・・それは言えないんだ。でも大丈夫だから。今すぐは難しいかもしれないけど、必ず会う時間を作ってやるから・・・な?」

 

『うぅ~・・・わかったよぉ。武ちゃん、頑固だもん』

 

「ごめんな、純夏。ところで、親父達はどうしているんだ?」

 

『へ?おじさん達なら今そっちで勤務してるよ?』

 

「白陵基地に?そっか・・・わかった。それじゃあな」

 

『うん・・・またね、武ちゃん』

 

 

 どうやら話は着いたみたいだな。

 

「終わったかしら?」

 

「はい、夕呼先生。・・・・・先生、ちょっとお願いがあるんですけど」

 

「何かしら?」

 

「親父達に・・・会わせてくれませんか?」

 

「・・・・・・それは、こっち側(・・・・)に引き込むって事かしら?」

 

 こっち側・・・ループを知る者達側って事か?

 

「はい・・・後でバレて混乱するより、今言った方が良いですから・・・」

 

「そう・・・。ま、態々アンタが言うまでも無くもう呼んでいるけどね」

 

「へ?それはどういう・・・「香月博士、白銀影行大尉及び白銀陽奈(ひな)中尉、ただ今出頭しました!」・・・はい?」

 

「来たわね・・・入ってきていいわよ。」

 

 ・・・白銀?ってことは・・・・まさか!?

 

「へ?お、親父ぃ!?」

 

「「た、武!?」」

 

 武の両親だと!?は、初めて見た・・・。

 

 体格は父親、目や髪の色は母親似だな。

 

 桜と疾風も驚いているようだ。

 

「こ、香月副司令、これは一体どういうことですか!?」

 

「な、何故武が副司令の部屋に・・・?」

 

「はいはい、アンタ達落ち着きなさい。先ず、白銀武がここにいる事ね」

 

「・・・。」

 

 流石は軍人だ。すぐに冷静になって静かになったな。

 

「そうね・・・今、ここにいる白銀武は、武であってそうでない存在よ」

 

「・・・言っている意味が解りませんが?」

 

 まぁ、それだけじゃ分からんわな。

 

「分かったわ。一から説明するから質問があったらその都度聞いてちょうだい」

 

 説・明・中・・・・・

 

「ループねぇ・・・・・にわかには信じられないわね」

 

「しかし、私達が知っている武はこんなに大きくはない。だが、間違い無く武だと言うことも分かる」

 

「ええ、それは確かだわ。間違い無く、この子は私達の息子よ。ちょっと大きいけど」

 

 ふむ、感動の場面だな。

 

「か、母さん・・・親父・・・(ガシッ)へ?・・・お、親父?」

 

 ん?影行さん・・・何故、武の後ろに回り込んで腰を掴む?

 

「武よ・・・・・理由は分かったが、親に心配を掛けた事には変わりない。これは分かるな?」

 

「え?あ、ああ・・・」

 

 影行さん、何故そんなに笑みを浮かべている?

 

「ならば・・・罰を受けるのは当然だな?」

 

「え゛!?ちょっ!?まっ!!」

 

「今!此処で!お仕置きだぁああああああ!!!」

 

「理不尽だぁあああああーーーーごべっ!?」

 

 おおおお!?後ろから腕を腰に回し、しっかりホールド。そして相手をそのまま後方に投げてブリッジを作ったままのホールド!何という立派なジャーマンスープレックスなんだ!

 

 素晴らしいが絶対に受けたくない。

 

 そして香月博士、腹を抱えて爆笑してないで何とかしてあげて下さい。

 

 陽奈さんもニコニコしてないで止めてあげて下さい。

 

 武・・・・大丈夫か?何か嫌な音が聞こえた気がする。

 

 

 

 

 

「はいはい、お仕置きするのは良いけど、まだ説明することは残っているわよ?」

 

「む?申し訳ありません、副司令」

 

 武が国連軍に入ることか?

 

「白銀武は今から大尉になるわ。所属は私直属の衛士よ」

 

 ん~、両親はあまり気が進まないみたいだな。

 

「・・・副司令、正直に言うと私の息子を戦場に送り出すのは反対です」

 

「ですが、せめて武が実力のある衛士だという所を見せてもらえませんか?」

 

 なるほど、そういうことか。

 

 彼等の気持ちは分からんでも無い。彼等にとっては最大限の譲歩なのだろうな。

 

「いいわよ?白銀、アンタはアレを使ってハイブ突入のシミュレーションをやりなさい」

 

「え?まだバグを取り終わっていないんですけど?」

 

「構わないからやりなさい」

 

「は、はい」

 

 武はそう言ってシミュレータールームに向かった。

 

 


 
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