No.503390

真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』 其の七

雷起さん



得票数5の思春のお話です。
懐妊発覚後、愛紗の冒頭シーン思春視点から+おまけ三本です。

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2012-11-02 09:31:29 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4710   閲覧ユーザー数:3634

 

 

第二章  『三爸爸†無双』 其の七

 

 

本城 後宮庭園

【思春turn】

 蓮華様のご懐妊が確認されて七日か・・・・・。

 華琳殿と桃香殿も同じ日に確認され、三国が・・・いや、晋全土が慶事に沸き立っているというのに・・・・・・。

 

「・・・・・ハァ・・・ハァ・・・・・」

 

 その様な時に・・・・・この身体のダルさと胸のムカつき・・・・・数日前の蓮華様が訴えていた症状とおなじ・・・・・しかも月の物も今月はまだ・・・・・これは・・・多分そうなのだろう・・・・・。

「ちっ!北郷め・・・・・戦乱の頃から今まで孕む者がいなかったから・・・・・」

 いや、これは言い訳か・・・・・私自身が隙を見せなければ良かったのだ・・・・・。

「・・・せめて後ひと月でも後であれば・・・・・」

 私は何を言っているのだ!?

 気分が悪い所為か、妙な事を口走ってしまう・・・。

 今考える事はこの現状をどうすべきか・・・・・つわりは私の方が後に来たが、万が一産まれるのが蓮華様より先になってしまったら・・・・・華佗が蓮華様に説明していた時、必ずしも十月十日で産まれるという訳ではないと言っていた・・・・・早まる事もあれば、遅くなる事もあると・・・・・北郷の・・・皇帝の子を産むという意味を考えればそれは決してしてはならない。

 皇帝の子という事を抜きにしても、私と北郷の関係に心を痛め、手を尽くして下さった蓮華様に・・・・・恩を仇で返す様なものではないか・・・・・。

 

「思春!このような所に居たのか。」

 

 愛紗!?何故ここに!?

 つわりで苦しむ様を見られぬよう、建物の陰に来たというのに・・・・・。

「なるほど、流石は思春♪このように死角になる場所を確かめておったのだな。」

 うん?何を言っている?

「この後宮の警備は針の穴程の隙も在ってはならんからな。」

 そういう事か・・・愛紗は上手く勘違いをしてくれている訳だ。

「う、うむ・・・・・やはりこういう物はしっかり見て回らねばな。」

 うまく話を合わせなくては・・・・・。

「だが雲行きが怪しくなってきている。もう切り上げるか、続けるなら傘を用意した方が良いのではないか?」

 愛紗が空を見上げ雲の流れを見ている。

「雨の降る時こそ賊に警戒せねばならん。ここの警備をする女兵士は未熟だ。上に立つ者が雨に濡れるのも厭わぬ姿を見せておかねば、いざという時役に立たんぞ。」

「なるほど、確かにその通りだ。」

 私は愛紗と会話を続けながら、頭の中では先程のからの問題を考えていた。

 まだ私が孕んだことに誰も気が付いていない今なら・・・・・いっそ堕ろす事も・・・。

 

「だが華佗が妙な事を言っていてな。おぬしの体調に気を配れと・・・」

 

 なっ!?華佗は気が付いて・・・・・・くぅっ!!

「うぐっ!!」

「し、思春っ!?」

 なんだ!?急につわりが!

 嘔吐を止められん・・・・・。

「がっ・・・はぁ・・・・・」

 からだのちからがぬける・・・・・・・反吐を詰まらせて死ぬなどみっともなくてできるかっ!

「華佗を連れてこいっ!大至急だっ!!」

 愛紗の声が篭ってきこえる・・・。

 右の肩に硬いものが当たる・・・・・これは地面か?

 いかん・・・平衡感覚もおかしくなっている・・・・・とりあえず・・・・・・・自分の反吐を避けることは・・・・・・・・・・できたか・・・・・・・・・・・。

 

「すまぬ・・・愛紗・・・・・この甘興覇ともあろう者が・・・うっ!」

「思春っ!しっかりしろっ!!華佗はまだかっ!?誰でもいい!早く連れてこい!!」

 

 意識が薄れる・・・・・・・・。

 

「あいしゃ・・・・・あとを・・・たのむ・・」

 

「ししゅううううううううううううううううううんっ!!」

 

 愛紗の私を呼ぶ声も遠くなっていく・・・・・・・。

 

 

 

 

 

後宮個室

【思春turn】

「・・・・・だから思春は私に気兼ねして言い出せなかったと思うの・・・」

 朧げに覚醒しつつあった意識を、蓮華様の声で完全に取り戻す。

「それだけでは無いわね。思春は密偵として漢王朝の頃から権力争いの暗部を見て来たのでしょう?自分の懐妊が世を乱すと考えたのじゃないかしら。」

 意識は取り戻したが、下手に動かず寝たふりを続ける。

 華琳殿にそこまで私の考えを読まれては・・・・・やはり迷ってなどおらずに腹の子を堕ろしてしまえば良かった。

 今となっては蓮華様がそれをお認めになるまい。

 しかしこのままでは晋という国の未来は漢と同じ道を歩む事になる。

 それでは蓮華様の・・・・・あの懐妊が判った時に笑顔で語った未来が・・・・・。

 最早・・・・・・・・・・・自害するしかあるまい!

 今この部屋には・・・・・気配は蓮華様、華琳殿・・・あと一つは桃香殿か。

 隙を見て城外に出れば・・・。

 

「思春さんにもご主人様の事を話しておいた方がよかったのかなぁ?」

 

 !?・・・・・今更桃香殿は北郷について何を語ると言うのだ?

「そうね、そうすれば思春も悩まずに済んだでしょうに・・・・・」

 蓮華様まで・・・。

「そうかしら?私は思春が懐妊前では理解出来ない・・・と言うより素直に話を聞かなかったと思うけど?」

 華琳殿も・・・一体何の話をしておられるのだ、この方たちは?

 

「という訳で、話を聞いて貰うわよ、思春♪」

 

「ひやあっ!!」

 突然胸を鷲掴みにされ声を上げてしまった・・・・・。

「思春!起きていたの!?」

 まずい・・・いや、ここは話を合わせ方がいいか。

「・・・申し訳ありません・・・・・私が孕んだことを見破られただけでは無く、心中まで察していただいた事に恥じ入って動けませんでした・・・・・」

「思春・・・・・」

「思春さん・・・」

「心中を察した・・・ねぇ・・・・・」

 華琳殿は疑っておられるか・・・・・では。

「華琳殿はお気付きの様ですので白状いたします・・・・・・私は・・・子を流すつもりでした。」

 私の言葉に蓮華様と桃香殿は目を見開かれ、華琳殿は呆れの溜息を吐く。

「だ、ダメです、思春さんっ!!」

「思春!何故そこまで・・・・・一刀の子を産むのは雪蓮姉さまが王だった頃からの命令じゃない!私が王を継いでもその命令は撤回させてはいないのよ!」

「蓮華様!私の考えは既に華琳殿がおっしゃいました!私の子がお三方のお子より後に生まれるなら問題は有りません。ですが現状では私が先に産む可能性もあるのです!もしそうなった場合、十年二十年後に次期皇帝を決める時、私の子を担ぐ者が必ず現れます。そうなれば国は乱れこの平和は消え去り、また戦国の世が来てしまいます・・・・・あの当時とは事情が違うのです。」

 

 パンパンと手を叩く音が私と蓮華様の話し合いに割り込んだ。

 

「はいはい、蓮華は落ち着いて!思春の思いはよく理解したわ。取り敢えず私の話を聞きなさい。それからもう一度、貴女の考えを聞くわ。いいわね。」

「はい。承知しました。」

 ここで観念して大人しく話を聞いておく振りをしておけば、安心して私を一人にしてくれるはず。

 それからここを抜け出せばいい・・・・・・北郷についての話など・・・聞き流せばいい・・・・・。

 

 

 

 聞き流すつもりでいた話は、私に強く興味を抱かせた。

 外史云々という話は、初め上手く理解できなかったが、北郷が悪夢を見るというのは知っていた。

 私が北郷を夜中に見張っていた時に何度か目にしていたからだ。

 それは三人とも・・・・・・うなされ飛び起きるのを。

 そしてその朝は必ず三人で集まり夢の話をしていた。

 話している事の意味がよく理解出来なかったのは外史についての話だったからだろう。

 

「ねぇ、思春。汜水関の頃から一刀が変わって来たのを覚えている?」

 

 蓮華様が私に問いかけた。

「はい。北郷が変わったとはっきり感じたのは洛陽の時ですが・・・・・あの官僚共の暴虐に怒り、しかしながらも被害にあった庶人への救済を最優先に指示を出した時です。あの時は北郷が戦を経験した事で成長したものと思っていましたが・・・成程、記憶が蘇った事で軍の指揮の勘も取り戻していたのですね。」

「そうね・・・・・一刀は前の外史で一国を率いていたから。でもそれだけでは無いと思う・・・・・あれは一刀たちの覚悟の現れだったではないかしら?」

「覚悟?」

「味方はもちろん敵の命も救いたいという、私達の常識からすれば甘いのを通り越しているその想い。戦場では余り前には出なかったけど、あれはみんなの邪魔にならない為だったのは思春も気付いていたでしょう?けれど雪蓮姉さまが美羽を追った時は真っ先に飛び出すし、麗羽達の時も戦場の中を一刀たち三人だけで駆けて行ってしまう。きっとそれは一刀たちの中に、普段は思い出せない覚悟が・・・・・」

 蓮華様が一度目を閉じて胸の前で固く拳を握る。

 

「己の理想のために、決して運命から逃げ出さないという覚悟があるのよ。一刀は。」

 

 運命から逃げ出さない・・・覚悟・・・・・。

 何度繰り返しても愛する者を助けられず・・・目の前でその死にゆく姿を見せ付けられる・・・・・そんな事に耐えられるのか?

 先程の華琳殿の話でも北郷は泣いて謝っていたと・・・!

 そうか・・・だから北郷は逃げ出していない・・・私は戦場で北郷が運命に立ち向かっていた姿を見ていたのか。

 それを知らず私は・・・甘い理想を言う世間知らずの男と決め付けていたのか・・・。

 そんな北郷から見て私は・・・・・。

 私が子供を堕ろしたり、自害しようと思うのは運命から逃げているだけではないか!

 だが今は・・・・・。

 今の私は・・・・・北郷の子を産みたいと・・・思ってしまった・・・・・。

 例えどのような過酷な未来が待っていようと・・・・・北郷の子供が欲しいと。

 

 今こそ私は本気で北郷に惚れたのだな・・・。

 

「さあ思春、ここで貴女に素敵な情報を教えましょう♪」

 華琳殿が和やかな笑顔で語りかけてくる。

「次の皇帝は試験で選ぼうと考えているの。」

「し、試験・・・・・ですか?」

「一刀の志を継げる人物でなければ、先に生まれても皇帝にはなれない様にするわ♪」

 あの北郷の意志を継ぐ者・・・・・。

「ふふ・・・それはまた大変な条件を・・・・・それを支える者は我々と同じ苦労をするのでしょうね♪」

 産まれてくる子供たちを皇帝にさせようと教育すれば、民の平和を願う指導者が増えるという事。

 例え皇帝になれずとも良き太守となるのは明白、しかも互いに争う事も無いだろう。

 よく考えておられる。

「では我が子は将来の皇帝を支える武将にさせましょう。」

 私の言葉に蓮華様がクスクス笑っている。

「苦労をすると言ったそばから、自分の子供にそれを押し付けるのね♪」

「無論私も死ぬまで一線を退く気はありません。このような苦労なら母子でするのもまた楽しいでしょうから。」

「良かった。思春も子供を産む覚悟が出来たみたいで・・・」

「そうね。さっきまでは堕ろすどころか自害まで考えていたみたいだし。」

 やはり華琳殿には見抜かれていたか・・・・・。

「自害って・・・思春!あなたっ!!」

「ご安心下さい、蓮華様。今は心底この子を産みたいと思っております。」

「本当なのね・・・・・」

「はい・・・・・思えば私が倒れる直前、堕ろす事を考えていました・・・きっと、この子が私を諌めたのでしょうね。」

 私が自分の腹に手を当てて言うと、その手に桃香殿の手が重ねられた。

「思春さん・・・それはね、この子が媽媽に爸爸、兄弟姉妹に会わせて下さいって言ったんだと思う。」

 その顔は優しくも力強いものだった。

「そうですね・・・・・今はつわりがかなり楽になっています。この子も分かってくれたのでしょう。」

 蓮華様と華琳殿も手を重ね、しばし四人で微笑み合う。

 この四人のお腹にいる子は兄弟姉妹なのだと思うと何か不思議な安心感に包まれた。

「ところで・・・」

 蓮華様が笑顔で切り出された。

「生まれてくる子は男の子と女の子、どちらだと思う?」

「元気な子だったらわたしはどっちでもいいなぁ♪」

「それはそうでしょうけど・・・」

 桃香殿の答えに蓮華様は苦笑される。しかし、華琳殿が難しい顔をし始めた。

「そう言われて考えてみたけど・・・男の子だったら一刀みたいに女の子に対して・・・・・」

「「「・・・・・・・・・・・」」」

 誰も否定出来ない・・・全員考える事は同じ・・・・・。

「で、では女の子なら・・・」

「年頃になってきたら一刀たちの行動に気を付けないといけない気がしてきたわ・・・」

 眉間に深いシワを刻んで華琳殿が溜息混じりに呟いた。

「まさか・・・いくらご主人様でも・・・・・」

「そ、そうよねえ・・・・・」

 桃香殿も蓮華様も、言っていてあまり自信が無いようだ。

「・・・そこは私がしっかりと北郷たちを見張るように致しましょう・・・・・」

 どんなに信頼される様になっても、下半身の信用は零だな。あの男たちは♪

 

 

 

 

後宮個室

【赤一刀turn】

 思春が倒れたと聞いて慌てて飛んできたのに、俺たち三人は愛紗に通せんぼをされてしまった。

 桃香、華琳、蓮華の命令という事で、愛紗も申し訳なさそうにしているのでそれ以上無理は言えず、しょうがないので入口前に有る部屋で待つことしばし。

 待っている間に華佗がやって来て思春の容態を教えてくれた。

「「「思春が・・・・・・懐妊したっ!?」」」

「あぁ、実は孫権の懐妊を確認した時に気付いていた。部屋の中の人数より一人だけ氣の数が多かったからな。それが甘寧のお腹からだとすぐに判ったんだが、どうも本人が隠そうとしているようだからその場では何も言わなかった。今日は特に無理をしていたから、関羽に甘寧の体の具合に注意をしてくれと頼んでおいたんだ。」

 華佗の話で気になったのは、何で思春は懐妊したことを黙っていたのか・・・・・

 色々と推測はできるけど、根本は俺が思春を安心させられるだけの力が無かったという事にたどり着く。

 待たされている間、俺たちは散々三人で悩みまくった。

 そしていよいよ思春に会うことを許されたけど、考える時間が有り過ぎたせいで逆に入室するのに躊躇ってしまう。

 蓮華も華琳も桃香も「頑張って♪」としか言わないんだもん。

 せめて一体何をどう頑張るのか教えて行ってくれよ・・・・・。

 とにかく意を決して扉を叩く。

「どうぞ。」

 短い返事に俺たちは頷きあってから静かに扉を開けた。

 寝台の上で上体を起こした思春と目が合う。

 髪を下ろして寝巻き姿の思春・・・・・なんだかいつもの凛々しさが影を潜め・・・・・まるで病弱な令嬢とでも言うか・・・・・。

「北郷!」

「「「は、はいっ!」」」

 三人揃って声が上ずってしまった。

「これから私が見せる姿、話す事は偽らざる私の本心だ。だが、今日だけ・・・・・二度と同じ事はせんから心しておけ。」

 なんかいきなり宣言されて、頷く事しか出来ない。

 

「・・・・・北郷・・・子供を・・・授けてくれてありがとう・・・・心から礼を言う。」

 

「「「え?」」」

 深々と頭を下げる思春の姿に、俺たちの頭の中はパニック状態だ。

「三人とも手を・・・」

 顔を上げた思春に促されるまま俺たちが右手を差し出すと、思春はその手を全て自分のお腹の上に導く。

 

「この子は私の誇りだ。必ず強い武将となる様育てる・・・・・愛しているぞ・・・一刀。」

 

 この一言だけで俺たちの頭の中は真っ白・・・しかも思春は俺たちに・・・順番に口づけまで-してくれた・・・・・。

 あまりに衝撃的な事の連続・・・・・・・・・でも、何も言わない訳にはいかない。

 

「・・・思春・・・・・その・・・俺たちの子供を身籠ってくれて・・・・・俺たちこそお礼を言わないと・・・・・ありがとう・・・思春・・・」

 

 なんとかそれだけ口にして、俺たちは思春に身を寄せた。

 暫くは誰も口を聞かず、只温もりを共有していた。

 

「思春・・・蓮華達との話で何かあったの?」

 俺が静寂を破り問い掛けると、思春はそのままの姿勢で答える。

「内緒だ♪今はこうして一刀たちを独り占めできる時間を堪能させてくれ。」

「それは俺たちとしても嬉しいんだけど・・・・・もう一つだけ質問。」

「うん?」

「今みたいなことは本当にもうしてくれないの?」

「ふふ・・・その通りだ。明日からはまたいつもの私だ・・・・・ただ。」

「只?」

「この子が生まれた時に、もう一度くらいは見せてやってもいいかと思えて来た♪」

「「「そんなに先ですか・・・」」」

 このあとはまた誰も話さず、温かく静かな時間を、思春の呼吸が寝息に変わるまで過ごした。

 

 そして翌日は、思春の宣言通り『いつもの思春』に戻っていた。

 但し、俺たちの呼び方が『北郷』から『一刀』に変わっていた事を除けば。

 

 

 

 

おまけ 壱

後宮個室

【思春turn】

「ちょっと、なに?思春!あんたそんなことで悩んでたの!?」

「しぇ、雪蓮様・・・・・・」

 私が自害まで覚悟した悩みを『そんなこと』の一言で片付けられてしまった。

「だから言ってあったでしょ。一刀はあんたたちの夫になる男だって。一刀が気に入ったのなら早い者勝ちでさっさと・・・」

「いえ!私はあの当時そこまで気に入っていた訳では!」

 いかん!このままでは孫呉の王族ともあろう方が、下品な事を言い出しそうだ。

「はあ?一刀を気に入ってないのに子供が出来たって言うの?・・・・・まさか一刀が無理やり・・・」

「そのような事は有りませんっ!!」

 むしろ初めての時は私の方が・・・・・いやいや!そうではない!

「まぁ、そりゃそうよねぇ。もしそうなら今頃赤一刀はこの世に居ないし。」

 ・・・・・確かにそうだ・・・この子を授かる時も殺さないまでも逃げるのは容易かったはずだ・・・・・・。

 つまり私はあの頃から一刀を受け入れていたという事か・・・・。

 

「もう逸そのこと、思春が一番最初に産んじゃいなさいよ。で、汜水関の時みたいに『甘寧一番乗りー』って」

 

「絶対にお断りしますっ!!」

 

 

 

おまけ 弐

本城内 占術の間

【赤一刀turn】

 占術の間。それは炙叉の為に用意された部屋である。

 俺的には占いというと街中のビルに何人かの占い師さんが集まって、女の子相手にする商売というイメージ。もしくは夜の街に机を出してる辻占いとか。

 実際、この部屋には桃香や沙和がよく来ているらしいし。

 まあ、この時代なら占いが世界レベルで重要視されていたのは承知している。

 現実世界でもアメリカ大統領なんかが占い師に相談するなんて話もきくしね。

 華琳はあまり気にして無かったみたいだけど。

 もっとも、この『占いの間』は表向きの名前で、その実態は『対妖術特務室』なのだ!

 ・・・・・なんか厨二っぽくてカッコイイ♪

 妖術を目の当たりにして、攻撃までされた経験があればこんな部署も必要になる・・・・・はずなんだけど、この部署って出来てからした仕事って『天下一品武闘会』や『象棋大会』、それに赤壁でやった模擬戦の中継・・・・・・。

 

 ここはテレビ局か!?

 

 いかん、話がズレてきた。

 話を戻すと、今日の用事は本当に占いをしてもらうため。

 その要件は思春の子供の真名の候補を占ってもらう事だ。

 

「長々説明お疲れ様♪赤御子様♪」

 

「いや、楽屋オチはいいから・・・・・で、結果はどう?」

 まるで説明してなかったけど、緑と紫も一緒にこの部屋に来ている。

 雰囲気を出す為か、薄暗くした室内には燭台の明かりだけが灯り、水晶玉を置いたテーブルを囲むように俺たち三人と炙叉が座っていた。

 俺たちは三人で炙叉の手元を見ると、そこには真名候補であろう文字が書き連ねられた竹簡が有った。

「うん、中々いい感じ。やっぱり御子様三人いると『場』が良くなるね♪流石天の御遣い♪」

 自覚の無いところを褒められても微妙だなぁ。

「ただ・・・・・ちょっと気になるのが一つ混じってるのよねぇ、この西洋風の・・・」

 

「「「なになに・・・・・・・・・?・・・・・『芽亜里(メアリ)』??」」」

 

 確かに俺の頭にも何か引っかかる物が有るんだけど・・・・・これは絶対にダメだという警鐘も同時に鳴り響いていた。

 炙叉も困惑顔で眉を顰めている。

「なんだかこれだけは、やたらと大声で叫ばれているような感じで頭に入って来て・・・」

 どうやら繋いではいけない外史に繋がった様だ・・・・・。

 

「「「これは却下で。」」」

 

「じゃあ、これは削除・・・・っと。」

 炙叉は小刀でその部分を削り取った。

 たったそれだけの事なのに、何故かこの外史を守った様な気分がする。

 

 さて、気を取り直して他の候補も見てみるか♪

 

 

 

 

おまけ 参

思春の長女 甘述 真名 烈夏(れっか)

六歳

【赤一刀turn】

「爸爸・・・・・烈夏、かくれんぼがしたい・・・」

 今日は仕事が早く片付いたので、俺たち三人は子供達と遊んでやろうと中庭にやって来た。

 普段は眞琳達に追従するばかりで、自己主張しない烈夏が真っ先に手を上げたのだ。

 俺としては烈夏に積極性が出たのが嬉しいので賛成してあげたい。

「お、かくれんぼか?いいな♪爸爸もやりたいな♪」

 俺が言うと、緑と紫も頷き協力してくれる。

「緑爸爸も一緒にやるぞ♪」

「当然、紫爸爸もな♪」

「うわぁ~い♪」

 両手を上げてはしゃぐ烈夏。

 いや、もう、こんなに喜ぶ姿を見ると仕事の疲れなんか吹っ飛ぶね♪

「かくれんぼ・・・・・するの?」

 声の主は眞琳だった。

 何やら浮かない顔で俺たちを見上げている。

 よく見ると子供達の内、香斗、蓮紅、愛羅などの年長組は似たような表情だ。

 なんだ?かくれんぼが嫌いなのかな?

「烈夏がオニね♪烈夏がオニね♪」

 そんな事を気にせずはしゃぐ烈夏・・・・・って、烈夏がオニなの?

「烈夏ちゃんがオニならまだ・・・・・爸爸たちもいるし・・・」

 何か意味深な・・・・・眞琳・・・本当にキミ六歳?俺の知らない所で加速世界に行ってないよね?

「それじゃあ、ひゃくかぞえるね♪」

 烈夏が一本の木に向かって立ち、目隠しをして数を数え始める。

「い~ち、に~い、さ~ん・・・・・・」

 それに合わせて俺たちと子供達が隠れ場所を探しに動き始めた。

「爸爸たちも本気でかくれないとダメだよ!」

 眞琳は真剣な顔で俺たちに忠告すると走って行ってしまった。

「・・・・・え~と・・・」

「どうする?」

「いくら眞琳がああ言っても、本気で隠れるなんて大人気無いしなぁ・・・・・」

 結局俺たちは別々の、それほど難しくない場所に隠れる事にした。

 俺が隠れたのは東屋の陰で、烈夏の居た木からはそれほど離れていない。

 烈夏の数を数える声も聞こえ「ひゃく!」という声も聞こえて来た。

「まあ、少したって見つけられない様なら少し移動して・・・」

 

「赤爸爸みつけたっ♪」

 

「へ!?」

 いつの間にか背後に烈夏が立っていた・・・・・うそぉ・・・。

「紫爸爸のところにいくから赤爸爸もいっしょにきて♪」

 烈夏は有無を言わさず俺の手を引いて走り出した。

 そして木の陰にいた紫を捕まえ、またすぐ壁の陰に居た緑も見つける。

 なんと開始後二分もかからず俺たち三人は見つけられてしまった。

「みんなはどこにかくれたかな~♪」

 これは・・・やはり思春の娘だけあってマンサーチ能力が高いという事か?

 なんて思ったが、それから暫くは誰も見つからない。

「ねえ、緑爸爸。むこうがみたいからおんぶして♪」

 緑の背中で辺りを見回し。

「紫爸爸、だっこして♪」

 紫に抱えられ、低めの仕切りを覗き。

「赤爸爸、かたぐるま♪」

 今は俺の頭を掴んで庭の一番離れた場所を見ていた。

「みんなはどこ行っちゃったんだろうねぇ?」

 俺がそう呟くと小屋の影から子供達が飛び出してきた。

 

『烈夏ちゃんズルい!爸爸たちをひとりじめしてるっ!!』

 

「「「え?」」」

 それは眞琳たちを見つけられないから・・・・・・・まさか!

「眞琳・・・もしかして烈夏はかくれんぼ上手いのか?」

「うん!烈夏ちゃん見つけるのもかくれるのも上手なの。いつもならとっくにみんな見つかってるよ!」

 なるほど、子供達がかくれんぼを渋る訳だ。

 やっぱり思春譲りの隠密能力とマンサーチ能力なんだろうな。

 眞琳達にしてみればチート相手に戦いを挑むようなもんだ。

 当の烈夏は俺の頭にしがみ着いて放してくれそうにない。

 

「だって・・・・・爸爸たちと一緒にいたかったんだもん・・・・・・」

 

 う~ん、こう言われちゃ怒るに怒れない・・・・・・・でも、みんなにごめんなさいは言わせないとなぁ。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

愛紗の冒頭シーンとこれでリンク!

思春の考えていた事に引いた方もいらっしゃると思いますが

蓮華第一主義者の思春ですし

体調不良のため情緒不安定で思考が暴走している所為です

 

結果はご覧の通り

まさか思春がここまでデレるとは!

・・・・・鈴の音が聞こえた気がしたのでここで止めておきます・・・

 

 

おまけの壱と弐は

かの有名動画『中華武将祭り』を雷起が今頃になってようやく見た所為ですw

再開しないのかなぁ・・・

 

おまけの参

烈夏のスキルは皆様予想されていたと思われます

明命の娘が出たら今度は缶蹴りでガチンコバトルをさせたいですねw

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆恋  5票

同票ですが1票目が先だった恋が次回となります。

そして蒲公英と翠もセットに致します。

翠が蒲公英のおかげでジャンプアップ!

蒲公英の翠に対する愛か・・・何かの罠か♪

以下、現在の得票数です。

 

雪蓮+冥琳5票

蒲公英+翠5票

美羽   4票

紫苑   4票

凪    3票

麗羽   3票

蓮華   2票

朱里+雛里2票

猪々子  1票

桂花   1票

穏    1票

 

※「雪蓮と冥琳」「朱里と雛里」「蒲公英と翠」は、一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

リクエストに制限は決めてありませんので、何度でも何人でもご要望いただけるとありがたいです(´∀`)

よろしくお願い申し上げます。

 

 


 
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