No.493248

G×S!夕陽が紡ぐ世界~十一話目~

さん

お久しぶりでしゅ。
何とか後編の更新が出来ました。

2012-10-07 15:17:34 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:4006   閲覧ユーザー数:3760

 

――貴女(あなた)のせいでボクは死ぬんだ――

 

 

体を襲う苦しみに耐えきれずに遂に言ってしまった言葉。

 

ボクの名前は時雨亜沙。

 

お父さんは人族だけど、お母さんは…あの女性(ひと)は魔族。

それもただの魔族じゃ無い、人為的に魔力を増強させられた魔族。

その強力すぎる魔力は娘のボクにも受け継がされて、ボクは何時もその強力すぎる魔力に苦しめられている。

 

 

何故ボクは普通の体に生まれて来なかったんだろう?

何故ボクはこんなに苦しまなければならないんだろう?

何故ボクは……お母さんの………あの魔族(ひと)の娘なんだろう?

 

そんな思いから出て来た言葉だった。

あの魔族(ひと)は申し訳無さそうに俯いていた。

凄く辛そうな、悲しそうな顔だった。

 

でもそれが何だって言うの?ボクの方がずっと辛くて苦しいんだ!!

 

ある日、あの女性(ひと)が買い物に出かけている隙に家を抜け出した。

お父さんが『元気になったら皆で旅行に行こう』と買ってくれた服を着て。

 

でもボクは一人ぼっち。

遊ぶ約束をしていた友達が居る訳が無い。

遊んでくれる友達が居る訳でも無い。

ただ、一人ぼっちで歩いていた。

ふと気付くとボクは大きな木がある空き地に来ていた。

 

 

『……何してるんだろ、ボク?』

 

そう呟きながら大きな木を見上げていると後ろから誰かが話しかけて来た。

 

『どうしたの君、迷子?』

『え?』

 

振り向くと其処には額に包帯を巻いて、帽子を被った男の子が居た。

 

『何でボクが迷子だと思ったの?』

『だって何だか後ろ姿が寂しそうだったから』

 

そう言う彼は「浜菊忠夫」と名のった。

だから自分も「時雨亜沙」と自己紹介をした。

 

その後、しばらくいろんな話などをした。

忠夫くんも今は友達が居なくて一人ぼっちらしい、でも何だか一緒に居ると暖かい感じがする。

 

『で、亜沙ちゃんは何で一人で居るの?』

『家に居てもベットで寝てばかりだからつまらないんだもん』

『亜沙ちゃん、病気なの?』

『病気じゃないよ!お母さんのせいで体が弱いの。そうよ、お母さんのせいで』

『お母…さんの、せい?』

『そうよ、お母さん……、あの人のせいでボクは苦しんでるのよ!あの人の子供なんかに生まれたせいでボクは…”コチンッ”…!?』

 

そう叫んで居たら突然頭を叩かれた。

 

『…痛い、何で?何で叩くの?』

『お母さんの事、そんな風に言っちゃダメだよ』

『何でよ!』

『お母さんがいない子だって、お母さんに会えない子だっているんだよ。それに子供が嫌いなお母さんなんかいない筈だよ。きっと亜沙ちゃんのお母さんだって亜沙ちゃんの事が大好きな筈だよ』

『そんな訳ないよ、あんな酷い事言ったんからお母さんだって私の事…『あ~ちゃ~ん』…え?』

 

お母さんの声がした、悲しそうな、今にも泣き出しそうなそんな声が。

 

『あ~ちゃぁ~~ん、何処にいるの~~』

『あーちゃんって亜沙ちゃんの事?あの人亜沙ちゃんのお母さん?』

『うん……、私の…お母さん』

 

何故だろう、あんなに怒ってたのに、あんなに嫌いだと思ってたのに、今はあの声がとても優しくて温かく聞こえる。

 

『ほら、亜沙ちゃんのお母さんは亜沙ちゃんの事が好きじゃないか』

 

『あ~~ちゃ~~ん、あ~~ちゃぁ~~~ん。ぐすっ、どこ~~?』

 

あの人……、お母さんがボクを呼んでる。本当にボクの事を心配してくれてるんだ、あんなに酷い事言ったのに。

 

『ボクってバカだ。お母さんはあんなにボクの事を心配してくれてるのに、ボクの事、こんなに愛してくれてるのに』

『さあ、早く行ってあげて謝りなよ。きっと喜ぶよ』

 

ボクの目から涙がどんどん零れて来る。

気が付いたらボクはお母さんに向かって駆け出していた、両手を広げて、その胸に向かって。

 

『お母さ~~ん』

『あーちゃん?…あ~ちゃ~~ん!!』

 

お母さんの胸に飛び込むとお母さんは優しく抱きしめてくれて、頭も撫でてくれた。

 

『よかった、あーちゃんが無事でよかったよ~』

『ごめんなさい、お母さんごめんなさい』

 

お母さんの胸の中で一頻り泣いた後、お礼を言おうと振り向いて見ると何時の間にかあの男の子は居なくなっていた。

姿を捜しながらキョロキョロしているとお母さんが「どうしたの?」と聞いて来た。

 

『黙って出て来た私の事怒って、お母さんに謝れって言ってくれた男の子が居たの。……お礼、言おうと思ったのに……』

『お友達?』

『ううん、知らない子。また会えるかな?』

『きっと会えるわ。そしたら皆でお菓子食べましょう』

『うん!』

 

 

そして、亜沙と亜麻の親娘は手を繋ぎ笑顔で家路についた。

忠夫はその姿を木陰からそっと眺めていた。

 

 

 

それより数日後、三世界平和宣言のその日。

亜沙が再会を願っていた相手。

忠夫は人知れずこの世界から消える事となる……

 

 

 

 

 第十一話「せめて人として、されど人として」(後編)

 

 

 

「おまたせー」

 

水着に着替えた横島はそう叫びながら駆けて来た。

さすがに楓やネリネなどの女性陣と一緒に着替える訳にはいかず、一人別の場所で着替えて来たらしい。

 

「遅いわよヨコシマ」

「本当に待ったのですよ。具体的に言えば一年以上」

「危険な発言禁止ーーーっ!!」

 

 

 

「はははははは…、皆綺麗だナー、いい眺めだナー」

 

樹は体育座りで女性陣の水着姿を眺めながらぶつぶつと呟いている。

普段ならその目は血走るように爛々と輝き、鼻血も流している筈なのだが、今の彼のその目は空ろで色もくすんでいた。

 

「ど、どうしたんだ樹?」

「ああ、稟さんじゃないですカ。何でも無いですヨ、ただ……」

「ただ?」

「ほっといて下さイ。僕の夏は終ったんデス」

 

そう言うと樹は顔を伏せ、膝を抱えながら声を殺して泣き出した。

 

「忠夫、樹の奴はどうしたんだ?」

「ほっときなさい。私の着替えを覗こうとしてたからちょっと”使えなく”しておいたのよ」

「つ、使えなくって…、まさか」

「そのまさかよ」

 

横島はそう笑いながら空中に指で”不能”と書いた。

 

「まあ、自業自得なのですよ。暫くは静かでいいじゃない」

「それもそうか」

「稟お兄さん、早く早く遊びましょう!」

 

それからは皆で楽しく遊んだ。

昼頃になると相変わらず黒いオーラを噴き出しながら俯いている樹がうっとおしかったので文珠の効果を消しておいた。

まあ、その反動は凄まじいものだったが……

 

 

 

「あはは、まったく緑葉君はしょうがないわね~」

「もう少し、封印しとくべきだったかしら?」

「ヨコシマが言う事じゃないでしょう。向こうではヨコシマもあんな感じだったし」

「言わないでよタマモ、けっこうヘコんでるんだから。他人の振り見て我が振り直せとはよく言ったものよね。はぁ~」

 

さすがの横島も、外側から自分と同じ行動を取る樹を見る事でかつての自分が周りからどんな目で見られていたのか分かった様だ。

 

「あはは…、は…ぐ、ぐぅ!」

 

笑っていた亜沙だが、突然胸を押さえながら苦しそうに蹲る。

 

「亜沙ちゃん!?」

「「亜沙先輩っ!?」」

 

突然の事にカレハや忠夫達は亜沙に駆け寄る。

シアが咄嗟に癒しの魔法を使おうとするがそれを亜沙は拒む。

 

「や、止めてシアちゃん。だい…大丈夫だから…」

「で、でもそんなに苦しそうなのに」

「お願い!…すぐに…収まるから」

 

余りにも拒絶するので魔法による治療は出来ず、横島達はただ見守る事しか出来ないでいた。

幸いにもすぐに治まった様だが横島は怪訝な表情で亜沙を見つめる。

彼は感じ取っていた、苦しむ亜沙が押さえ込んでいた魔力の波動を…。

 

そして夕食後、横島は亜沙を一人砂浜へと呼び出した。

其処までして魔法を拒む理由を聞き出す為に。

 

 

「な~に忠夫ちゃん?もしかして愛のこ・く・は・く?や~~だ、ボク困っちゃうな♪」

「……真面目な話なんです。ちゃんと答えて下さい」

 

横島は亜沙の目を見ながらそう言うが、亜沙はその目から逃げる様に目を逸らす。

 

「何を聞こうとしてるかは何となく分かるけど…、その事には触れないでほしいな。ボクは大丈夫だから」

「あんな今にも破裂しそうな魔力を無理やり押さえ込んでおいて何が大丈夫なんですか?}

「 !! 」

「今更ごまかしは聞きませんよ。答えて下さい、何故ですか?」

 

亜沙はそれでもなんとかごまかそうとするが、自分を見つめる横島の目を見ると諦めたかの様に溜息を吐くと静かに語り出した。

 

「ボクのお母さんはね、人間じゃないんだ。魔族なの」

「亜麻さんが?」

「うん。それもただの魔族じゃない…、人為的に魔力を引き上げられた……、人工生命体の、一号体」

 

――お母さんは親のいない、天涯孤独の少女だった。問題だったのはその体に秘められた常人を上回る魔力。

  其処に目をつけられた科学者達に捕まり、実験動物としての扱いを受け、その魔力を日々増大させられていった。

  ある日、実験の最中にお母さんの魔力は暴走を始め、研究所を跡形も無く消し去った。

  でもお母さんは不幸中の幸いにも次元を飛び越えて人間界へとやって来て、そんなお母さんを助けたのがボクのお父さん。

  そして二人は何時しか愛し合うようになり、ボクが生まれた。

  ……お母さんの巨大な魔力を受け継いで。

 

「後は解るよね、小さな子供にそんな巨大な魔力に耐えられるわけが無い。ボクはその魔力に体を(さいな)まされ、何時も苦しんでいた。そしてその憤りをすべてお母さんにぶつけていた。そして遂に言っちゃったんだ」

 

――貴女(あなた)のせいでボクは死ぬんだって。

  あの時のお母さんの顔は今でも忘れなれない、とても悲しそうな顔を。

  あの後出会った男の子のおかげで仲直りは出来たけど、それでもボクの罪が消える訳じゃない。

  だからボクは誓ったんだ、お母さんは魔族じゃない、人間だって。

  そう、ボクも人間だ。人間は魔法を使えない、だからボクは魔法を使わない。

 

――どれだけ苦しくても、人間で居る為に……

 

「分かってくれるよね、ボクは人間でなくちゃいけないの。お母さんの為にも。だから…」

 

そう言いながら横島を見た亜沙の顔は驚きの余り一瞬固まった。

自分を怒りの篭った瞳で睨み付ける横島の表情に。

 

「ふ…ざけ、るな…」

 

 

 

横島視点~

 

 

「ふ…ざけ、るな…」

「ただ…お、ちゃん?」

「ふざけるんじゃねえっ!この馬鹿野郎ぉーーーっ!!」

「え?…きゃっ、ぐぅっ!!」

 

気付いたら俺は思いっきり亜沙先輩を殴っていた。

一瞬しまったと思ったが後から後から押し寄せて来る怒りがそんな後悔をすぐに押し流した。

 

「人間だから、人間でいる為に魔法は使わない?亜麻さんの為に魔法を使わない?そんな馬鹿げた理由で自分で自分の命を縮めてるのかあんたはっ!!」

「!!……馬鹿げた理由って何よ、忠夫ちゃんに何が分かるっていうのよ。ボクは子供の頃に酷い事を言ってお母さんを傷つけた…だから…ボクがお母さんにしてあげられる事と言ったら…」

 

亜沙先輩は俺に殴られた左頬を手で押さえながらも俺の言葉が気に入らなかったのか涙目で言い返して来る。

 

「してあげられる事?…亜麻さんは…あんたの大事な母親は……棺の中で冷たくなった娘に『お母さんの為に人間として死んでくれてありがとう』なんて、笑って言える様な人なのかっ!?」

「………え…?」

 

俺が叫んだ言葉に亜沙先輩の体は固まり、顔色もだんだんと青くなっていく。

 

「俺達はどうだ?『亜沙先輩は凄い』『亜沙先輩は立派だ』『亜沙先輩は頑張った』なんて葬式で誉めたたえる様な(くず)だと…、そんな風に俺達の事を思っているのか!?」

「あ、ああ…ああ……」

「苦しいんなら、魔法を使えばいいだけじゃないかっ!! それだけでこれからも生きていけるし笑っていけるじゃないかっ!! …生きて…いけるじゃ……」

「た…だおちゃん?」

 

亜沙視点~

 

 

今、目の前で忠夫ちゃんが泣いている、とても辛そうに……。

何故?何で忠夫ちゃんはそんなに辛そうなの?

 

「亜沙先輩には後に残された人間の気持ちが分からないのか?生きていたくても生きられなかった女の子の気持ちは?助けたいと思っていても、助けると約束しておきながら結局助けられなかった馬鹿野郎の気持ちは?…あんなのはもう嫌なんだ、生きていて…生きていてくれよ」

 

忠夫ちゃんのその言葉で私は以前、学園の屋上で夕陽を見ながら泣いている忠夫ちゃんを思い出した。

そして解った、忠夫ちゃんは誰かを亡くしているんだと。

それもとても大事な人を、もしかしたら世界よりも大事な女性(ひと)を……。

だとしたら忠夫ちゃんがこんなに怒るのも当然だ、生きられるのに…魔法を使うだけで、それだけでこれからも生きていけるのに自分から死を選ぶような真似をした私の事を。

 

そして叩かれた…怒られた事で幼い頃の事を思い出した。

お母さんに黙って家を抜け出し、困らせたボクを怒ってくれた男の子の事を。

あの時彼が名乗った名前は浜菊忠夫。そう、忠夫ちゃんだったんだ。

ボクとお母さんの仲直りのきっかけをくれたのは、ボクの初恋の相手は……。

 

「ごめんなさい…」

 

私は泣き崩れている忠夫ちゃんの頭を包み込むように抱きしめた。

 

「俺はもう…誰にも居なくならないでほしいんだ」

「ごめんね、ごめんね、忠夫ちゃん……」

 

忠夫ちゃんを抱きしめながら泣いていると砂浜を踏みしめる足音が聞こえて来た。

顔を上げると其処に居たのはカレハだった。

 

「カレハ?何で此処に……」

「亜沙ちゃん……私は今から亜沙ちゃんを叩きます」

 

涙を流しながら、悲しそうな顔をしながらカレハはそう言った。

だからボクは頷く事しか出来なかった。

 

「うん…」

「だから……、魔法を使ってその頬の怪我を治して下さい。流石にその怪我の上からは叩けません」

 

そう言われてボクは自分の頬に手をやった。

泣いている忠夫ちゃんを見てから忘れていた痛みがじんじんと湧きあがって来た。

 

癒しの魔法を使って頬の傷を治す。

体からは魔力の光が粒となって湧き上がり、ボクの髪の毛は魔力を使った反動で腰の長さまで一気に伸びる。

そして傷の癒えたボクの頬をカレハが思いっきり叩いた。

痛かった、叩かれた頬よりも叩かせてしまった心の方が。

 

「亜沙ちゃん!亜沙ちゃん!亜沙ちゃん!」

 

ボクを叩いたカレハは泣きながら抱き付いて来た。

ボクもそんなカレハを抱き返す。

 

「ごめん、ごめんねカレハ」

「馬鹿っ!亜沙ちゃんの馬鹿ぁ!」

 

泣きながら抱き合うボク達を忠夫ちゃんも泣きながら見ていた。

だからボクは忠夫ちゃんの胸の中に飛び込んで心の底から謝った。

 

「ごめんね、ごめんね、忠夫ちゃん。本当にごめんなさい」

「もういいんだ、俺の方こそ思いっきり殴ってごめん」

「いいの、叩かれて当然だったんだから」

 

忠夫ちゃんはそんなボクを抱きしめながら優しく頭を撫でてくれる。

 

……ヤバイ、癖になるわね、コレ。

 

「忠夫さん、ありがとうございました」

「へ、何が?」

「亜沙ちゃんが魔法の事で何か苦しんでいる事は分かってました。でも、それが何かなのは分からなかったし教えてもくれませんでした」

「ごめんね、カレハ。今日忠夫ちゃんに怒られるまで、この事がどれだけ馬鹿な事だったか分からずにいたから」

「もういいんです、ともかくこれで亜沙ちゃんは苦しみや拘りから解放されたんですから。これもみんな忠夫さんのおかげです、これからも亜沙ちゃんの事をよろしくお願いします」

「あ、ああ。うん、分かったよ」

「カ、カレハったら」

 

そんなカレハの言葉に亜沙は顔を赤くし、

 

「それと…」

「それと、何っスか?」

「私の事もよろしくお願いしますわ」

 

そう言いながらカレハは横島の腕に抱き付く。

 

「ぬ、ぬわぁ~~~~!カ、カレハ先輩の柔らかな双丘がワイの腕にぃ~~~っ!」

「あーー、こら、カレハ!」

「独り占めはダメですよ、亜沙ちゃん。忠夫さんは皆の忠夫さんなのですから」

「それもそっか♪」

 

そう言いながら亜沙もまた、横島の腕に抱き付いた。

 

「ぬおぉ~~~!罠や、これは危険な罠や!この罠に飛び付いたが最後、楓達によるお話死(はなし)が待っとるんや~~~!ああっ、しかしこの罠の餌は極上に美味そうや~~~~!」

「あらあら、まままあ♪」

「我慢する事なんて無いのよ、た・だ・お・ちゃ・ん。ふ~~」

「おが~~~~~~んっ!!」

 

耳に息を吹きかけられた横島の、血の涙を噴出しながらの叫びが夜空に木霊した。

 

 

 

 

そして翌朝、集まってもらった皆の前でボクは事の真相を語った。

結果、皆に怒られた。

それはもう、思いっきり。

 

特にタマモちゃんは怖かった。

何しろ知らなかったとはいえ忠夫ちゃんの心の傷を思いっきり抉っちゃった訳だし。

それと……

 

 

特に特に、楓は特に怖かった!

本当に怖かったから三回重ねたわ。

だって、あの眼で迫って来るんだもん!

 

「反省してるようなのでもうこれ以上は言いませんが…。忠夫、せめて俺達には事前に説明してくれても良かったんじゃないか?」

「そこは悪いと思ってるがな、大勢で問い詰めても返って(こじ)れただろうから」

「まあ、事情が事情だからね、ヨコシマの判断は正しかったと思うわよ。とにかく亜沙の体の心配はいらなくなったんだからこれで良しとしましょう」

 

と、これで終わっていれば良かったのだが、生憎とこの世界はちょっとばかし横島に意地悪だった。

 

「それにしてもあの時の忠夫さん、激しかったですわね」

「へ?」

「そうそう、いきなり思いっきり来られたからボクもビックリしたよ。それに痛かったし」

 

亜沙とカレハがそう呟くと辺りの気温は一気に氷点下まで下がった。

 

「ヨコシマ…」

「タダくん…」

「忠夫様…」

 

横島がビクッと肩を震わせながらギギギギと振り向くと其処にはあの眼をした三人が居た。

 

「ち、ちょっと餅付け三人共!!」

「君もだよ、忠夫」

「大体、亜沙先輩達も先輩達っス。たしかに思いっきりやっちゃったし、痛かっただろうし、血も出ていたけど、そんな言い方されたら楓達が誤解するじゃないっスか!」

 

 

ひゅ~~~~~~~~~~~~~

 

 

辺りをそんな風に冷たい風が流れた。

 

 

 

「あ~~、あのね忠夫ちゃん。忠夫ちゃんの言い方の方が更に誤解を呼ぶと思うな、ボクは」

「あ……」

 

亜沙にそう言われ、楓達に視線を向けると其処には……

 

「のわあああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」

 

何処ぞのブチ切れた神鳴流剣士の様に瞳が白黒反転した楓達がいたとさ。

(ちなみに、ネリネのみ赤白反転)

 

「さあヨコシマ、向こうでゆっくりO・HA・NA・SI・しましょうね」

「そうですね、幸い時間はたっぷりとあるわけですしね、忠夫さま」

「嫌や~~~~~、O・HA・NA・SI・は嫌や、お話死は嫌や~~~~~~っ!!」

「いいから来なさい」

「おが~~~~~~んっ!!」

 

そんな叫びも虚しく横島はネリネとタマモにドナドナされて行く。

 

「あはは、頑張ってね忠夫ちゃん」

「何言ってるんですか亜沙先輩」

「へ?」

「亜沙先輩も一緒に行くんですよ」

「えええ~~~~!」

 

そんな叫びも虚しく亜沙も楓にドナドナされて行く。

そして……

 

 

 

「「アーーーーーーーーーーーッ!!」」

 

 

 

横島と亜沙の二人は楓達の誤解を解くのにかなり苦労したといふ。

 

 

 

それから後、亜沙とカレハの二人も横島ラヴァーズ入りを認められ、ツボミも土見ラヴァーズ入りする事となった。

 

「良かったですねお姉ちゃん。私もとってもとっても嬉しいです」

「私も嬉しいですわツボミちゃん。ねえ、亜沙ちゃん」

「えへへ~~。初恋って叶うモノなんだね」

 

そんな乙女な三人を見ながら樹はと言うと……。

 

「忠夫、稟。殴っていいかい?大地が赤く染まるまで」

「「自分の血の涙で赤く染めてろ」」

 

 

 

そして迎える新学期。

バーベナ学園はとある二人の左手薬指に光る指輪を見た男共の絶叫と血の涙に包まれるのであった。

 

ちゃんちゃん。

 

 

 

 

続く。

 

 

《次回予告》

 

新学期、タダくんに亜沙先輩とカレハ先輩という婚約者が増えて学園は今日も大騒ぎ。

大変だけど、こんな毎日が続いてくれたらいいな。

何時までも…。

こんな風に笑っていたい。

 

次回・第十二話「そんなバーベナの日常」

 

今日は登校日なんだ、今日は登校日なんだ。

まだまだ続くよ夏休み。

皆で行こうよ青い海。

 

真弓ちゃん、それじゃ別のお話だよ。

 

 

 

あとがき

 

(`・ω・)ずいぶんと間が開いてしまいましたがようやく後編の更新が出来ました。

横島が女性に対して暴力を振るう、らしくないでしょうがあえてこの描写をいれました。

というのもゲーム本編やアニメ版でも稟は説得をあっさりと諦めすぎ。

しかも亜沙の目を覚ます為とはいえ目の前でリストカットって……

 

亜沙も亜麻の為と言いつつ、やってる事は結局『お母さんのせいでボクは死ぬんだ』を実践してるだけと言う。

 

という訳で横島には本気で怒ってもらいました。

 

亜沙と横島は幼い頃に出会っていて、フラグを立てていました。

カレハも横島に惹かれつつ、今回の事で完全に堕ちてしまいましたね。

ツボミははっきり言って顔見世程度の出番でした。

学校も違うし絡ませ辛いので。

 

この話で横島のセクハラが少ないのはごらんの通り樹という反面教師が居たからと言う事で。

 

さて、次回こそ早めの更新が出来る様に頑張りたいです。

 

でわっ!(・ω・)ノシ

 

 


 
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