No.462141

Ib ~絵画の世界~

Yuukiさん

 ほぼ未完製作です。
 7月21日に、Ibのコンテストを知り、バタバタ、作品を書いて、29日に終わらせたが、結局、間に合わず。最後の部分とかほとんどぐっだぐっだにしてしまいました。しかし、後悔はしておりません。この大好きなIbを、二次作で、書けて、それを一応完成させた事が、僕にとっては、とても満足です。
 この小説は、文が稚拙で、ぐだぐだですが、もし、良ければ、さらっと読んで上げてください。ほとんど未完ですがw
 あと、遅れましたが、この作品は、Ib原作を忠実に再現(?)している作品なので、ネタバレのワンダーランドになっております。お読みになる場合は、一度ゲームをプレイし、クリアするのを推奨致します。それと、この作品は、かなり文がぐっだぐっだで、未完上等な作品なので、先に謝っておきます。
 こんな未完成作品を投稿して、誠に申し訳ございませんでした!!

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2012-07-29 23:58:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2961   閲覧ユーザー数:2944

 

昼下がりの空の下……イブと呼ばれる少女とその両親は、父の持っている車で美術館に向かっておりました……

 

 「忘れ物、ないわよね?、イブ」

 

 今年9歳になった少女Ibは、心配性な母の問いに、こくりと頷いた。

 

 「そうだハンカチは持ってきた?誕生日にあげたやつ」

 

 「うん」

 

 母は、思い出したかのようにイヴに聞く、もちろん彼女は、肌身離さず白い色をしたハンカチを持っており、それを母に見せる。母は、満足したようにニッコリするが、それでもイブに再度注意するのを怠らなかった。

 

 「ちゃんとポケットに入れておくのよ?なくさないようにね」

 

 それから何分間か経ち、車は目的地の美術館に到着。車から降り、イブとその両親は、美術館の大きな扉を開き、中に入った。

 

 「さぁ、着いたわよイヴ……イヴは美術館、初めてよね?」

 

 「今日、観に来たのは『ゲルテナ』っていう人の展覧会で……絵のほかにも、彫刻とか……色々と面白い作品が、あるらしいから」

 

 「きっと、イヴでも楽しめると思うわ」

 

 イヴは、母の言葉を聞き、最初はあまり興味が無かったが、ここに訪れた事で、少しだけ胸に期待を膨らませた。すると、父は、そんな娘に気を利かせたのか、母に振り向くと、「受付済ませてしまおうか」と微笑みながら言った。

 

 「そうね、あとパンフレットも、もらいましょ」

 

 両親は、受付に向かい、イヴもそれについて行く。そして、父と母が受付の人と何かの話しをしているのをじっと眺めた。しかし、イヴは、両親と受付のおじさんが、三人で話しをしたり、紙に何かを書いているのを見るのが退屈に感じ、母の裾を引っ張った。

 

 「先に観てるね」

 

 「え?先に観てるって?もーイヴったら……仕方ないわね」

 

 母は、少し困った笑顔をしたが、すぐに真剣な表情になりイヴに注意をした。

 

 「いい?美術館の中では、静かにしなきゃダメよ?」

 

 「……ま、アナタなら心配ないと思うけど」

 

 「他の人の迷惑にならないようにね」

 

 母からの許可をもらい、イヴは、さっそく受付右の、柵に囲まれた作品の方へ向かう。

 

 「うわぁ……」

 

 柵に囲まれた作品は、地面に描かれた絵だった。背景は深く暗い藍色に包まれており、その中には一際大きな魚が描かれており、小魚を捕らえようと大きな口を開けている。目の部分はまっ黒に窪んでいて、背景の暗さと、そのなんとも不気味な姿が、絵の雰囲気を醸し出していた。

 

 「……」

 

 イヴは、1分ぐらい眺め、その絵に関する説明を書いた台を読んでみた。

 

 「タイトル……深海の?(なにこの字?)ヒトが立ち入ることは、許されない。その世界を、??するため、私は、キャンパスの中に、その世界を?った」

 

 (所々むずかしい字があって読めない……後でママに聞こう)

 

 イヴは、とりあえずその絵を後にし、今度は大きな赤いバラの彫刻が置いてある通路へ向かった。大きなバラは、人間の身長以上もあり、彫刻とは思えないような美しさを誇っていた。イヴからだと少し見上げるような感じだったが、その大きさと美しさに少しだけ魅入る、すると、突然隣の男が、独り言みたいなのをつぶやき始めた。

 

 「これ、ちょっとした衝撃であの茎の部分が、折れちゃったりしないのかな……もし、そうなら一体いくら、弁償するんだろ……うわーっ、コワイなぁ……」

 

 イヴは、彼のその独り言に苦笑し、また作品の方へ顔を向けた。だが、今度は、彼女よりも少し年が幼い子供が、バラの近くで何かをしようとしているのを見てしまう。

 

 (あの子……何してるんだろう?)

 

 気になったイヴは、少年の方へ向かう。すると、少年は近づいてみた彼女に気づき、目を輝かせながらイブにとんでもないことを言った。

 

 「あの、落ちてるの、とりたい!」

 

 イヴは、子供の無邪気な頼みにちょっと困ったが、すぐに「ダメだと思う……」っと返した。

 

 「えー、何で?落ちてるなら、いいんじゃないの?」

 

 「ダメ」

 

 「ケチー!」

 

 少年は、そのまま走り、止まった後に彼女に向かい、べーっと舌を出して、再び去っていった。

 イヴは、彼の行為に苦笑した後、バラの作品をもう一目だけ眺め、別の通路に向かった。

 

 『個性無き番人』

 

 『??と星の?めき』

 

 『??の精神』

 

 などなど……一階の作品を一通り観終わったイヴは、次に受付の近くの階段へ向かった。

 

 (そういえば、ママとパパは、受付に居なかったなぁ……まぁ、歩けばその内見つかるか……)

 

 階段を上り終えると、最初に目が入ったのは、窓ガラスで、横に視線を向けると、絵の他に、首のないマネキン等が飾られている。さっそく、イヴは、そこに足を運んだ。

 

 『無個性』

 

 「???」

 

 どう言う意味か全くわからない……イヴは、しきりに「なるほど……」っと感動している男性客に、少しだけ聞いてみる事にした。(ちなみに『無個性』を見ている客は、目の前に居る男性客だけだった)すると、その男性は、丁寧に優しく彼女に説明してくれた。

 

 「僕が思うに……ゲルテナの言う個性っていうのは、表情だと、思うんだよね。だから、この像には、頭が、ないんじゃないかな?」

 

 そして彼は、微笑み、彼女に「そう思わない?」っと言った。

 しかし、イヴは、彼の説明をあまり理解できず。「うーん……?」っと曖昧に答えた。

 

 「う……やっぱり君みたいな、小さな子には、まだわからなかったか……ごめんよ」

 

 彼は、頭に?マークを浮かべているイヴから、そそくさと目を離し、作品の方へ再び視線を戻した。

 

 (お邪魔するのも悪いから今度ママに会ってから聞いてみよ……)

 

 イヴは、彼に「ありがとうございました」っと一礼し、ペコリと頭を下げて、そこから去る。男性は、そんな彼女に、顔を破顔させて、「バイバイ」と言い、手を振ってから、再び作品へ目を移した。

 『指定席』

 

 『テーブルに置かれた??』

 

 の2つを順番にイヴは、観て回った。今度は、一際大きな絵画が置いてある通路に向かう。

 

 『???の世界』

 

 (……むずかしい)

 

 大きな絵画には、自分の作品などをいろんな色とごちゃ混ぜにしたように描かれており、いままでの絵とは、また違う趣があった。イブは、じっと絵画を眺め続ける。すると、突然美術館の電灯が途絶え、辺りが暗くなる。

 だが、電灯の光は一秒も満たずに戻り、また、美術館の中を明るく照らし出した。しかし、イブは、何かがおかしい気がした。

 

 (なんだろう……何か……変?)

 

 イヴは、胸騒ぎがし、すぐに元来た道を戻る。しかし……今までそこに居た人は、皆一様に姿を消しており、彼女は、呆然と立ち尽くした。

 

 (皆は……?)

 

 彼女は、忽然と消えた人々と、自分のママとパパを探すため、今いる階を探し続ける。だが、結局そこには誰ひとりも居なかった。

 

 (一階の受付の人はたぶんだけど居るはず……)

 

 イヴは、すぐに階段へ向かう。そして、一段ずつ早く降り、最後の段になったその瞬間……

 

 「!!」

 

 突然、電灯の光が落ち、辺りを闇が包み込む。そして、何かが歩くような音さえも聞こえてきた。

 

 「……」

 

 彼女は、ちらっと受付の方を見たが、やはりというか、先程まで居たおじさんは消えており、誰もいる気配がない。

 

 (この歩いてる音はどこから?)

 

 イヴは、誰かが居ますようにと念じながら、一階の探索を始める。まずは、最初に見た『深海の??』を囲んである柵がある通路。次に、バラの方へ向かう。

 

 「げほっ!」

 

 バラの通路を通り過ぎようとした時、どこかから、咳をするような声がし、イブは振り向く。しかし、そこには当然、誰も居ない。

 

 (気のせい?)

 

 その後、一階を全部探索したが結局。自分の両親はおろか、ここには誰も居なかった。イヴは、心細さと不安で、胸を押しつぶされそうになるが、それでも、誰かが見つかるまで探し続ける事をやめなかった。

 

 (もういっかいだけ……二階を調べてみよう。)

 

 イヴには、気になることがあった。それは、自分が見た瞬間、異変が始まってしまった。

 

 (『???の世界』)

 

 決心がついたイブは、階段を上る。上り終えると、そこには、窓ガラスがあり、そこを横切る人影が……

 

 (ここ二階だよね……?見間違いかな?)

 

 イヴは、窓ガラスに近づき、ドアの取っ手に手を掛けた。しかし、鍵は掛かっていないのに、なぜか開かない。彼女は、ため息をつき、その場から離れようとし、背中を向けたその時……

 

 バンバンバン!!!

 

 窓ガラスを叩く音がし、素早く振り向くと、そこには、さっきまで無かった手形みたいなものがガラスにくっきりと付いていた。イヴは、パニックを起こしそうになるが、すぐに、深呼吸をし、落ち着く。

 

 (早くここからママとパパを見つけて出なきゃ……)

 

 イヴは、両親を見つけるという、強い決意を固め、すぐに、『???の世界』のある通路へ向かった。

 

 「……」

 

 彼女は、目的地に着いて、すぐ絵画を見つめた。額縁からは青い液体が流れている……それを見ると、突然文字のようなものになり、こう書いてある。

 

 「したに、おいでよイヴ。ひみつのばしょ、おしえてあげる」

 

 通路の床には、赤い液体で「おいでよ イヴ」の文字。イヴは、不安を払い除け、すぐに下へ向かう。

 

 一階

 

 イヴは、一階の柵に囲まれた『深海の?』の場所に進む。柵は、一箇所だけわざとらしく外されており、そこには、青い足形が付いていた。

 彼女は、地面に描かれた絵の方へ進み、柵の先へ入る。

 

 「わっ!」

 

 まるで、柵の先の絵は水のようになっており、イヴは、そのまま絵の中に飛び込んでしまった。

 

 ~赤いバラ~

 

 目が覚めると、そこは、全体が青いいろをした通路だった。通路には、左に赤、右に青の大きな絵が飾られており、通路は、右と左が繋がっていた。

 

 (ここ何か変?)

 

 通路は、至って普通に見えるが、彼女は、何かがおかしいと感じた。何がおかしいとは、具体的にわからないのだが、それでも、イヴは、不安でいっぱいだった。

 イヴは、とりあえず、何もしないよりは、ここがどんな場所なのか調べる必要があるかもしれないと思い、まず、赤の絵が飾られてる、左の通路へ向かう。

 そこには、『???模様の魚』と書かれてある絵と、一個の扉があった。さっそく、扉の取っ手に手を掛けるが、鍵が掛かって開かない。イヴは、仕方ないと思い、次に、右の青い絵が飾られてる通路へ向かう。

 

 (気味が悪い……)

 

 通路の壁には、いくつも「おいで」と青い液体で書かれており、とても不気味だった。奥には、左の通路と同じく、扉があるが、扉の前には、花瓶が乗ってるテーブル置いてあった。花瓶には、綺麗な赤いバラが活けてあり、イヴは、不思議と手を伸ばし、それを手に取ってしまう。

 何も無くなった花瓶を置いてるテーブルを、イブは、少し動かして、扉の前から離し、彼女は、扉の取っ手に手を掛ける。今度は開いた。

 部屋は、大きな、額縁をはみ出すほどの髪の長い微笑んでる女が描かれた絵が飾られており、目の前には、鍵が置いてあった。

 

 (向こうの扉の鍵かな……?)

 

 イヴは、おそるおそるその鍵を拾ってみる。鍵は青い色をしているだけで、至って普通の形をしていた。彼女は、ふと、誰かに見られたような気がするが、目の前には、目を見開き、口を開けてよだれを出す髪の長い女の絵しか……

 

 (あれ?)

 

 記憶力の良いイヴは、確か最初入ったとき、この絵は、微笑んでいるだけだったはず……そこまで考え、背中にヒヤリとしたものを感じた。

 

 (早くここから出なきゃ)

 

 イヴは、扉を開き、通路に出る。通路には、前は「おいで」と青い液体で書かれていたはずだが、今度は、赤い液体に変わり、「かえせ」に全部なっていた。嫌な予感がする彼女は、通路を走る。しかし、突然自分の目の前に、「か え せ 」の文字が浮かび上がり、目を瞑り、一心不乱に走った。

 通路は、長く感じた。ひたすら走ったような気がした。たぶん、返せという物は、花瓶から拾ったバラのことだろうけど、それでも、離そうとはしなかった。一体なぜだろう?

 イブは、自分自身の行動に訳が分からくなってきたが、それでも、自分の両親を見つけるまで帰らないと、心の中で思い、鍵の掛かった扉へ足を進める。

 鍵穴に鍵を差込み、回すと、「カチャッ」という、鍵の開く音が鳴り響き、扉が開くようになった。イヴは、取っ手を回し、扉の先に進む。

 

 扉の先は、緑色をした通路になっており、通路には、前と右しか、道が無かった。とりあえず、先にイブは、前の方へ、進むことにする。

 通路には、真ん中に柱が建っており、そこには、何かの張り紙が貼ってあり、それを読んでみる。

 

 「はし に ちゅうい」

 

 はしにちゅうい?どういうことだろう……?しかし、これはちゃんと守った方が良さそうだ。

 イヴは、柱を後に、先に進む。通路は、至って何もない感じだったが、先程の注意書きの通りに、真ん中に歩いてみる。彼女が、何歩か進んだその時……

 

 「!」

 

 突然、通路の壁から、黒い手みたいな物が伸び、彼女に触れようとする。しかし、長さが足らないのか、悲しいかな手は虚空を掴むような感じで、手を握り締め、そのまま、また、壁の中に戻っていった。

 

 (危なかった……あの張り紙が無かったらどうなってたんだろう……?)

 

 彼女は、真ん中が安全なのがわかり、次から次へと出てくる手を気にせずに先へどんどん進む。すると、右のつきあたりに、大きなアリの絵と、次のドアを発見し、イブは、そこへ向かおうとした。だが……

 

 「あ!」

 

 目の前の壁から、突如として出てきた、黒い手は、イブの手を握り、その手に持っていたバラの花を一片だけ、むしり取られてしまう。

 

 「痛い!」

 

 バラをむしり取られた瞬間。同時に、彼女の体に全身に痛みが走った。イブは、すぐにその場から逃げるように、脇道の扉へ駆ける。

 

 (一瞬だけど体中がすごくいたかった……もしかして、このバラがむしり取られたから?)

 

 イヴは、扉に寄りかかりながら、花びらを一片だけむしられた赤いバラを見つめ、自分が先ほど襲われた場所を見る。そこには、花びらが一枚地面に落ちていた。それを数秒見て、なぞるように壁を見る。そして、思い出したかのように、彼女はあっ!と声を上げた。

 

 (あそこも端だった……)

 

 彼女は、もう驚異は去っただろうと思い、忘れていた。壁とは端であることを……

 イヴは、赤いバラを守るように握り締め、寄りかかっていた黄色い扉を開こうとした。

 

 ガチャガチャッ

 

 (閉まってる……)

 

 (そういえば、まだ行ってないところがあるんだ……たぶんそこにあると思う……)

 

 イヴは、そこまで考え、はあ……っと溜息を吐く。また、あの通路に戻らないといけないからだ。通路の距離は、長さ的にかなり短いが……それでも、あの黒い手のおかげで慎重に歩かないといけない、彼女は、ゆっくり……ゆっくりと、端に気をつけながら、歩みを進めた。

 

 3分後

 

 通路を渡り終えたイブは、深呼吸をして、今度何が来てもいいように、心を落ち着けさせてから、いろいろな虫の絵が描かれている通路へ向かう。通路の奥には、扉が一個あり、彼女は、そこまで早歩きで向かい、たどり着いたら、すぐに、扉の取っ手に手をかける。今度は、ちゃんと開き、部屋の中に、イブは、入っていった。部屋は、かなり狭く、何もない。しかし、先の方には、イヴが入った扉とは、別の扉があり、そこから先に進めそうだった。だが、そこに行くことは出来なかった。なぜなら、そこに向かう為の道が、なぜか、壊れたように地面に大穴が開いてるからだ。

 

 (どうしよう……?)

 

 イヴは、いつまでもここに居ても仕方ないと思い、途方に暮れながら、扉を開け、元来た道へと戻っていった。

 

 ☆ 

 

 彼女は、虫の絵が飾られている部屋で、このままどうするか、考えた。黒い手のある通路を超えた先の扉は、鍵が閉まっている。そして、虫の絵が飾られている通路の先は、道が寸断されている。寸断されている道を飛び越えるという方法があるにはあるのだが……

 

 (無理……かな……?)

 

 イヴは、自慢ではないが、運動が苦手である。それを自分が何よりも分かっており、そんな事をしようものならあっけなく落ちてしまうかもしれない……そこまで考え、俯いて、深く溜息を付いた。すると、視線が下に行った瞬間に、自分の足元で何かがチョロチョロしているのが目に入る。

 

 「ぼく、アリ」

 

 喋った!

 イヴは、小さいアリが喋るのに驚きが隠せなかったが、よくよく考えればここは、全部が変なのだと思い出し、一気に興奮が冷める。

 しかし、このアリ君(勝手に命名)は、イヴの内的葛藤に気づくこと無く、話しを続ける。

 

 「ぼく、絵、だいすき。ぼくの、絵、かっこいい」

 

 「ぼくの、絵、見たいけど、ちょっと、遠い、とこにある」

 

 (アリの絵?そういえば、あっちの通路にあったはず)

 

 イヴは、自分が襲われた通路に、黒いアリの絵が飾られているのを覚えていた。しかし、またあの通路に戻るのは嫌だなぁ……しかし、彼は絵が見たいと言っている。困った人(?)を見捨てるなんて出来ない。

 彼女は、意を決して、アリ君の為に、すぐに、取りに通路を渡る。

通路は、相変わらず黒い手が、イヴに向かって壁から伸びてくるが、彼女はすでに慣れ、あっさりと、絵のところまでたどり着いた。

 

 (あ、この絵外れそう)

 

 イヴは、アリの絵に両手を伸ばし、額縁の部分を掴み、ぐっと力を入れると、あっさりと取れてしまう。彼女は、すぐに、黒い手に気をつけながら、元来た道を戻り、さっそくアリ君へ、絵を見せた。

 

 「あ、それ、ぼくの、絵」

 

 「やっぱり、かっこいい」

 

 「うっとり」

 

 (一応見せたけど、これだけ?)

 

 (でも、この絵もしかしたらあそこに使えるかも?)

 

 彼女は、心の中で、アリ君ごめんと謝り、そそくさと、その場から離れ、他の虫の絵が飾れている通路へ向かった。

 

 5分後

 

 彼女は、アリの絵を持ちながら、例の道が寸断されている部屋に入り、アリの絵を置く。すると、見事にすっぽりとはまり、道が渡れるようになった。

 

 (これで先に進める!)

 

 彼女は、心の中でガッツポーズを取り、アリの絵を踏みながら先に進む。アリの絵は、まるで、潰れて赤い液体みたいなものを出し、少しだけ形が崩れる。イブは、それを見て、微かに嫌な予感がした。

 

 (あと一回渡ったら壊れるかも……)

 

 イヴは、微かな不安を胸に抱き、新しい扉を開ける。扉の先には、鍵が落ちてあり、目の前には、『無個性』のマネキンが立ってあった。

 彼女は、早速鍵のところまで早歩きで向かい、そして、手に取る。だが、その瞬間……

 突然、首のないマネキンが動いた!彼女は、マネキンが一歩進んだら、彼女も一歩下がる。そして、無個性が走ってきた。すぐに、彼女は、後ろを向いて走り、目の前の扉を開け、アリの絵に渡る。その時、アリの絵は、踏むと同時に、破れてしまったが、彼女は、そんなことを気にせず、すぐに、次の扉を開け、通路を走った。

 走るとき、後ろからガシャーンっと割れるような音がしたが、関係なく、走り続け、いつの間にか、鍵の掛かってる扉まで走っていた。彼女は、疲れで、肩から息をし、全身に倦怠感が出る。正直、黒い手に捕まらずに、良く、ここまで、走ったものだと、ゾッとしながら考えた。

 

 (少し休憩してから開けよう)

 

 イヴは、少しだけ、扉の横の壁に寄りかかり、体操座りで座って、少しだけ休憩を取ることにした。

 

 ☆ 

 

 先に進んだ部屋は、やはりというか、仕掛けがいろいろあり、イブは、謎を解いたり、逃げたりしながら、なんとか、仕掛けを解き、新しい通路へ足を踏みいれた。しかし、その前に、イヴは仕掛けを解く前に、部屋を調べるとき、重要なことを発見した。それは、花のない花瓶があって、そこで、彼女はちょっとした気まぐれに、自分のバラを活けてみた時だった、すると、バラが急激に花の花弁が、たちまち元通りになったのだ。

 新しい通路も、扉の謎や、嘘つきたちの部屋、猛唇注意などの仕掛けがあり、イブをいろんな意味で苦しめたが、彼女は、四苦八苦しながらも、なんとかそれらを解き明かし、先へ進んだら、突然上からギロチンが落ちてきて、イヴは、肝を冷やした。

 ギロチンの通路を抜け、次に、赤い通路を抜けると、イブを待ち構えていたのは、全体が赤い広間だった。左に、青い巨像と、右に赤い巨像が向かい合うように並べられ、他にも、いろいろな絵画が、壁に立て掛けられていた。

 そして、目の前にすぐ、扉を発見し、扉の下まで行き、取っ手に手をかける。だが、ここも、他と同じように、仕掛けを解かないけないのか、鍵が掛かっていた。

 

 (また……でも、ここで諦めたら、パパとママに会えない……きっとこの先に、居るはず。)

 

 イヴは、何かが無いか、作品を観て回る。

 

 『うん』

 

 『あ』

 

 まず、最初に目に入った二つの巨像だが、作品の周りを隈無く探しても、何も見つからなかった。

 

 『心の傷』

 

 『赤い服の女』

 

 (これといって、何もないね……)

 

 イヴは、絵画から、離れ、次の作品を向かおうとした瞬間。何かが、ドサッと落ちる音がし、振り返る。そこには、絵画から、体だけ飛び出した。『赤い服の女』が、今正に、イブを追いかけてるところだった。

 

 「!!」

 

 イヴは、すぐに逃げ、振り返る。しかし、まだ絵画は執拗に、彼女を追いかけていた。

 『赤い服の女』は、必死にイブを追いかける。しかし、動きがトロイせいか、全然捕まえそうになかった。イヴは、その時、逃げながら、『赤い服の女』が飾られていた場所に向かう。

 

 (あった!)

 

 絵画が飾られていたところは、今は、何もないが、そこの地面にキラリと冷たく光る鍵が、あった。

 イヴは、すかさずそれを拾い上げ、扉の方へ走り、鍵を差し込む。扉の鍵が開くと、すぐに、開いてから扉を閉じ、内側から鍵をかけた。扉は、外から強い力でドンドンっと叩く音が鳴り響くが、扉は微動だにしない。イブは、ホットし、振り返る。

 部屋は、小さな図書館のように、いくつも、本棚が並んでいた。先にドアがあり、確認のために手をかける。しかし、鍵は閉まっていた。イヴは、とりあえず本棚を見て回り、そして、その中でも一冊だけ、異色な本を発見し、それを手に取る。

 

 「うごくえほん うっかりさんと ガレッド・デ・ロア」

 

 絵本は、その名のとおり、開くと、まるで、映画のように動き始め、そして、物語が始まった。

 

 「お誕生日おめでとう!」

 

 「ありがとう!」

 

 「今日は、あなたのために」

 

 「ガレッド・デ・ロアを作ったの!」

 

 赤い少女と他二人は、青い少女の誕生日パーティーをしているようだった。イヴは、パーティーを開いた優しい友達に、心が温まるのを感じながら、それを見続ける。

 

 「このパイの中にコインが入っていて、食べたパイの中にコインがあったら……」

 

 「その人は、幸せになれるのよ!」

 

 「おもしろそう!」

 

 「でしょ?」

 

 「じゃあ、切り分けるよー」

 

 物語は一度閉じ、すぐに開く。すると、そこには、四つに切り分けられたガレッド・デ・ロアが、机の上に並べられた。

 

 「さぁ、好きなの選んで!」

 

 「いただきまーす!」

 

 全員が唱和すると同時に、物語はまた閉じ、そして、すぐに開いた。ガレッド・デ・ロアは、綺麗に食べられており、その中で、青い少女が、何かに驚いた。

 

 「あっ……!」

 

 「どうしたの?」

 

 「なにか、固いもの……」

 

 「飲み込んじゃった!」

 

 「あはは、うっかりさーん!」

 

 これには、釣られてイヴも、少し笑ってしまう。

 

 「きっと、コインだ!」

 

 「どうしよう……」

 

 「コイン小さいから、大丈夫よ」

 

 「じゃあ、片付けてくるね!」

 

 そして、場面は変わり、赤い少女のお母さんらしき人が、困っているようだった。そこに、片付けに向かった少女が、お母さんに話しかける。

 

 「ママ、どうしたの?」

 

 「書斎のカギを、知らない?」

 

 「しょさいのカギ?」

 

 「それならいつも、そこのテーブルに……」

 

 少女が、指差したテーブルには、鍵とは違うものが乗っていた。それは……

 

 「……あれ?」

 

 「コインだ……」

 

 「このコイン、たしか、パイの中に入れたハズなのに……」

 

 「もしかして……」

 

 「どこいったのかしら?お父さんに、怒られちゃうわ」

 

 「どうしよう……」

 

 少女は、パイの中に入れたのは、鍵と知り、しかも、友達がそれを食べてしまった。そこまで考え、困り果てたその時、食器を斜めにしてしまったことにより、上に乗せていた包丁が落ちてしまった、少女は、それに気づいて、場面が変わる。

 

 「わたしってば、うっかりしてたわ」

 

 少女は、怪しく光る包丁を片手に、何処かへと向かう。そして、悲鳴が上がり、物語が閉じた。

 

 「カギ、みつけたよ!」

 

 「今ドア、開けるね」

 

 読み終わったイヴは、最初こそ、心が温まる良い気分になれたのに、最後で、背中に冷水を浴びせられたかのように、背筋がゾクッとした。正直、絵本が嫌いになりそうだ……

 怖い話を読まされたような気分になったイブは、本を元あった場所に戻す。すると、部屋の鍵が開き、先に進めるようになった。

 

 扉の先は、花瓶の絵が飾られており、その隣に花瓶が設置されている。そして、右と左に道が分かれていた。イブは、今のところバラが傷つけられては無いので、先に探索を始めようとした。

 

 「う、うう……」

 

 突然、右の通路で、人のうめき声らしきものが聞こえ、イヴは、足を止める。すると、もう一度うめき声が、右の通路から響き渡り、彼女は、パパかママかもしれないと思い、すぐに走った。

 通路を走ると、倒れている人影が目に入り、イヴは、さらに、足を早める。倒れている人間が、近くに行くことでくっきりと見えてきた。コートがボロボロで、髪は長く、前髪まで垂らしている男。彼は、なぜか、息を荒げ、苦しそうにしている。手には、何かの鍵を握っていた。

 イブは、そっと彼の手から鍵を取り、声を掛ける。

 

 「大丈夫?」

 

 彼は、苦しそうに「痛い……」っと呻いている。イブは、彼の状態に、思い当たりがあった。それは、自分が、黒い手に、自分のバラを一片だけむしり取られたとき、体全体に感じた痛み……

 

 (早く助けないと……)

 

 イブは、倒れてる彼から、離れ、男のバラを取り戻すために、まだ行っていない反対の通路へ走った。通路を走り、目の前の扉を開き、部屋に入る。部屋の地面には、青いバラの花弁が、無残にもちぎられており、次の扉へと、ちぎられた花弁が、続いていた。彼女は、すぐに、その扉へ走る。扉を、

開こうとしたが、鍵が掛かっていて入れない。しかし、イブは、男から手に入れた小さな鍵をすぐに扉へ差込み、あっさりと中に入った。

 部屋の奥の方に、青いバラをちぎっている、絵画『赤い服の女』の青いバージョンを発見し、すぐに、イブは、取り戻そうと、絵画の方へ走った。すると、青い服の女は、イブに気づき、襲いかかる。

 

 「それを返して!」

 

 イブは、絵画に捕まりそうになるが、ぎりぎりかわし、地面に捨てられた青いバラをさっと拾い上げ、後ろを見ずに、すぐに入った扉から出て、鍵を閉めた。しかし、青い服の女は、部屋のガラスを突き破り、イブを追いかける。彼女は、ギョッとし、すぐに、通路の扉へ走った。

 今度こそ、逃げ切ったイブは、ホッとし、胸を撫で下ろす。右手に持った青いバラは、ちぎられすぎて、枯れているような感じで、しおれている。彼女は、すぐに、花瓶に青いバラを活ける。すると、青いバラは、どんどん元気になっていき、綺麗に花弁も生え揃った。

 

 (よかった……)

 

 イブは、生けた青いバラを早く男に渡すため、走りながら戻った。

 

 「……うーん……」

 

 「…………あら?苦しく、なくなった………ん?」

 

 「うわっ!」

 

 男は、イブに気づき、驚いて、一気に後ずさった。

 

 「な……今度はなによ!もう何も、持ってないわよ!!」

 

 彼は、イブを作品と勘違いしているのか、警戒心を募らせていた。しかし、彼は、じーっとイブを見て、何かに気づく。

 

 「あ……あれ?アンタもしかして……美術館にいた……人!?」

 

 男は、彼女が人間とわかり、徐々に顔が喜びに満ち溢れる。

 

 「そうでしょ!あぁ良かった!アタシの他にも、人がいた!」

 

 その後、二人は自分達がどうやってここに来たのかを話し合った。

 

 「そっか……じゃあアンタも、何でこんな事になってるのかは、分からないワケね」

 

 イブの話しを全部聞いた、男は、しんみりとした口調で、話し出す。

 

 「アタシの方も、大体同じ感じよ」

 

 「おまけに、この薔薇……花びら、ちぎられると自分の身体に痛みが、出てきてさー」

 

 「さっきは、死ぬかと思ったわ……取り返してくれて、ありがとね」

 

 「うん」

 

 二人は、会話を終え、すこしだけ沈黙する。

 何分間か経ち、彼は、何か決心がついたのか、イブに提案した。

 

 「………で、とりあえずさ………ここから出る方法を、探さない?」

 

 「こんな、君の悪い場所、ずっといたら、おかしくなっちゃうわ」

 

 「そういえば、まだ、名前聞いて、なかったわね」

 

 「アタシはギャリーっていうの、アンタは?」

 

 「イヴ」

 

 「イヴ……イヴって言うのね」

 

 ギャリーは、一歩足を踏み出し、声を少し大きくして喋った。

 

 「子供一人じゃ、危ないからね……アタシも、一緒に付いてってあげるわ!」

 

 彼は、イヴの方に振り返り、手を差し出す。

 

 「行くわよ、イヴ!」

 

 イヴは、差し出された手を、おずおずと、握り、一緒に歩く。だが、数歩と経たないうちに、絵画の液体を吐き出す攻撃に驚いて、ギャリーは、尻餅を付いた。

 

 「ぎゃーっ!」

 

 「大丈夫?」

 

 「…………」

 

 口を開けて、硬直した彼は、ハッと我に帰り、すぐに立ってから、イヴに振り返り、少し額に汗を浮かべながら、必死に喋る。

 

 「い……今のは、ちょっと驚いただけよ!、本当よ!」

 

 彼は、少し顔を赤らめながら、言葉を続ける。

 

 「とにかく!こういう、変なのがいるから気をつけて、進むわよ!」

 

 イヴは、とりあえず頷き、彼の手を再び握った。

 

 ☆

 

 ギャリーは、最初はあまりわからなかったが、とても頼もしかった。力があるので、扉を遮るマネキンを押したり、読めない字を代わりに読んでくれたり、謎も解いてくれる。襲ってくる作品達からは、手を引いて一緒に走ったり、抱っこして、走ってくれたりする。それに、なにより、隣に居てくれることで、一人の時より、ずっと安心できた。

 ただ、リアクションが大きいのと、以外に血の気が多く、突然現れた、作品を蹴り飛ばそうとするのは、やめてほしい……

 そんなこんなで、襲い来る作品達を回避しながら、カギ入手。

 次の扉を開くと、部屋は、どっかで見たことあるソファと、左側の奥に本棚、窓を少し遮ってる本棚と、中央に、大きな絵画があった。

 二人で、『ふたり』というタイトルの絵画を見てみると、イヴは、絵を見て驚愕した。作品には、夫婦が描かれており、その夫婦は、イヴが知っている……いや、知っているどころか、いつも、一緒に暮らしていて、厳しいけど優しかった母や、いつも忙しそうにしている父……

 その二人にあまりにも似ていた。

 開いた口が、塞がらない。

 

 「どうしたの、イヴ?」

 

 ギャリーが、心配そうにイヴに聞く。

 イヴは、何とか、言葉を紡いで、彼に、説明した。

 

 「え?!この絵の人、イヴの、パパとママなの?」

 

 「パパ……ママ……」

 

 「へぇ……たしかにイヴに、似てるかも……」

 

 「でもなんで、こんなところに、そんな絵が、あるのかしら?」

 

 イヴは、いままで、必死に押さえつけてきた、両親に会いたい気持ちが、一気に流れ込む。

 

 「二人はどこにいるの……?」

 

 「え?二人はどこかって?うーん……それは、ちょっとアタシにも、わからないわ」

 

 「パパとママはどこに居るの?もしかして、もう二度と会えないの!?」

 

 イヴが、一気に感情を爆発させると、ギャリーは困ったように、必死に彼女を宥めた。

 

 「だ、大丈夫よ、きっと、どこかに、いるって!」

 

 イヴは、ギャリーが、困っているのに気づき、我に返る。

 

 「……ごめんなさい」

 

 「………………」

 

 (結構、気丈な子だと思ってたけど、さすがに、参ってきてるわね……)

 

 ギャリーは、彼女を哀れに思い、なおのこと、イヴを必ず現実世界に連れて帰ることをこの時、強く思った。

 

 二人は、この部屋に何もないことを確認すると、手を繋ぎながら、扉に手をかける。だが……

 

 ガチャッガチャッ

 

 「え……ウソでしょ?カギは、開けっ放しのハズだけど……」

 

 ドンドン!!

 

 突然、どこかから、音がし、二人は驚く。

 

 「な、なに、この音……外から?」

 

 また、ドンドンっと、今度は扉からし、ギャリーは、真剣な顔をした。

 

 「ドアの前に、誰かいるわ……イヴ……注意して」

 

 「うん」

 

 二人は、握っている手にギュッと力を込め、時を待つ、すると、窓が突然割れ、中に、青い服の女が入ってきた。続いて、壁からも穴が開き、どんどん他の作品が流れ込んでくる。

 ギャリーは、すぐにイヴの手を引きながら、自分達の持ってるバラを奪おうとする作品から、彼女を守るため、近くにあった本棚を一つ、力を込めて倒し、本棚に押しつぶされた作品を、踏み越え、穴の開いた壁に向かってダッシュし、部屋から這い出る。すると、ここの場所にある、作品が全て動き出し、猛然と、彼女たちを追いかけた。

 ギャリーは、逃げながら、目の前に、開いてるドアを発見し、すぐに駆け込んだ。

 長く続く通路を走り抜け、ギャリーは、作品が、追ってこないことを確認すると、一息つく。

 

 「はぁ……はぁ…………こ……………………」

 

 「ここまでくれば……大丈夫、でしょ……」

 

 「ザマぁ、みなさい!」

 

 「さてと…………」

 

 ギャリーは、言いまくってから、気分がスッキリした後、イヴに振り向く。

 

 「それじゃあ、先に……って、イヴ?」

 

 振り向くと、イヴは、うずくまっていた。

 

 「どうしたの?大丈夫?」

 

 ギャリーは、心配そうに、イヴに話しかける。しかし、彼女は、そのまま倒れてしまった。

 

 「イ、イヴ!?ちょっと、しっかり!」

 

 「イヴ!イヴッ!!」

 

 ☆

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 何かが後ろに来ている。私は、必死に扉を開けて逃げていた。

 扉を開けて、逃げども逃げども、後ろに何かが追いかけてくる。

 そして、扉が開かなくなる。

 私は、必死にノブを回し続けた。すると、突然扉が開き、私はすぐに中に駆け込んだ。

 中に入ると、様々な作品が私を取り囲む。

 

 (怖い……たすけて……)

 

 言葉にしようとするが、口が開かない。

 すぐに、扉を開けようと後ろを向き、ドアに手をかける。しかし、扉は開かず、そして……

 

 「!?」

 

 「あ」

 

 ギャリーは、起きたイヴに、駆け寄り、同じ目線になる様に、膝を曲げ、話しかけた。

 

 「おはよ、イヴ、気分はどう?」

 

 イヴは、怖い夢を見て、泣きそうになった。だから、ギャリーに正直に離した。

 

 「……怖い夢を見た」

 

 彼は、目を伏せ、イヴを労わる。

 

 「そう……かわいそうに、まぁ、無理もないわね……」

 

 「あんな、怖い目にあっちゃったら……ね」

 

 「起こせば、良かったかしらね。ごめん、気がつかなくて……」

 

 「んん……別にギャリーは悪くないよ……」

 

 「………………」

 

 ギャリーは、イヴを見つめ、そして、微笑んだ。

 

 「イヴ、そのコートの、左側のポケット、探ってごらん?」

 

 「?」

 

 イヴは、言われた通りに、コートのポケットを探る。すると、手に何かがあたり、それを拾い、手を広げてみる。すると、それは、小さなアメ玉だった。

 

 「それ、あげるわ、食べてもいいわよ」

 

 そう言うと、彼は立ち上がる。

 

 「じゃ、もうちょっと休んでから、出発しましょ」

 

 (ギャリー……)

 

 イヴは、自分をやさしく気遣ってくれた彼に、心の中で感謝し、もう一度だけ、横になって眠ることにした。ギャリーが、近くに居てくれるおかげか、今度は、良い夢が見れる気がする。彼女は、まどろみに身を任せ、そのまま、やさしい眠りについた。

 

 ☆

 

 十分な休憩を取ったイヴは、ギャリーに、コートを返し、いろいろ彼と会話し終わったあと、部屋から出る。薄暗い通路を抜け、現在、謎解き中

 

 「ゲルテナ展にある、床に描かれた大きな絵、タイトルは?」

 

 「げ……もしかして、暗号?あの、大きな魚が、描いてあったえよね?イヴ見た?」

 

 「うん」

 

 壁に書かれてる問題に、二人は、見たことのある、あの絵だったのを覚えている。しかし、タイトルの部分は、ギャリーがおぼろげだった。

 

 「なんだったかしら……たしか、深海のなんとかって……」

 

 「一文字だったのよねー……ちょっと、イヴ適当に一文字、あげてくれない?」

 

 「うーん」

 

 タイトルの字は覚えているけど、最後の部分がわからない……

 彼女は、考えている彼の裾をちょんちょんっと引っ張り、地面にタイトルの最後の部分を指で書いてみる。

 

 「えっと、こんな字だった……」

 

 「なになに……世?」

 

 「深海の世…………あ!」

 

 「そうよ、それだわイヴ!『深海の世』!……タイトル、読めた?」

 

 「ううん?」

 

 「『しんかいのよ』だからね!」

 

 「オーケー……」

 

 壁に描かれた謎を解き終えた二人は、通路に飾ってある、絵を見ながら、先へ進む。すると、ロックのかかった扉を発見する。扉は、絵の名前を入力する、パネル式になっており、パネルには、見覚えのある、『深海の世』が、描かれていた。先程の、壁の謎を二人は解いているので、すぐに、『しんかいのよ』と記入。扉は開き、先へ進んだ。

 部屋の先には、大きな絵画が飾ってあり、タイトルには、『決別』と書かれていた。

 

 「なんか、嫌な絵ね……」

 

 「うん……」

 

 二人は、絵画を見ながら、憂鬱な表情になる。そして、絵から離れ、さて、帰ろうと思ったその瞬間に、突然、電灯が切れ、辺りが真っ暗になる。

 

 「わっなに!?停電!?」

 

 「ちょ、暗くて何も見えないじゃない……!」

 

 「イ、イヴ!いる!?」

 

 「いる!」

 

 「そう、なら良いわ……ちゃんと、そこに、いてよ?」

 

 「しかし、困ったわね……あ、そうだわ」

 

 彼は、自分のポケットを漁り、何かを取り出す。それは、まだ、オイルが満タンに入っているライターだった。

 

 「ライターがあったの、わすれてた」

 

 ギャリーは、ライターの火を点け、辺りが少しだけ、明るくなった。

 部屋の明かりに、目が馴染んでくる。

 

 「…………え?」

 

 「な……なによコレ……!」

 

 ギャリーとイヴは、顔を青くし、驚いた。部屋の周りは、以前には、無かった大きな文字が、部屋中に書かれ、「たすけて」「いやだ」「こわい」「やめて」しにたくない」っといろいろな色で、文字が書かれているのが、なお一層、不気味さを増している。

 

 「………………」

 

 「……大丈夫?」

 

 「ホント、キッツイわ……精神的に」

 

 二人は、すぐにこの部屋から出る。通路には、赤い足跡が、点々と、奥まで続いていた。

 正直、足跡を追うのは気が進まないが、二人は、慎重に、ゆっくりと、奥の扉まで進んでいく。

 扉を開け、中に入ると、何かが突然イヴにぶつかり、尻餅を付いた。

 ぶつかった人を見ると、イヴと同じくらいの年の子だろう、金髪と青い眼の少女で、緑を基準にしたドレスを着ていて、まるで人形のような、綺麗さと可愛さだった。

 

 「ちょっと、大丈夫!?」

 

 「…………!」

 

 ギャリーが、彼女に近づくと、彼女は、警戒し、後ろに後ずさる。

 

 「あ!待って!」

 

 「ねぇ、アナタ……もしかして、美術館にいた人じゃないの!?」

 

 「あ……!」

 

 金髪の少女は、美術館という単語に反応し、声が出た。

 

 「やっぱり……」

 

 ギャリーは、後ろに隠れているイヴを、前に出し、軽い自己紹介を始めた。

 

 「アタシは、ギャリー……で、こっちの子は、イヴっていうの」

 

 「…………」

 

 「アタシたちも、美術館にいたのに、気づいたらこの、ワケわかんない場所に、迷い込んじゃってて……」

 

 「今、なんとか二人で出口を探してる、ワケなんだけど」

 

 「もしかして、アナタも、そうじゃない?」

 

 少女は、二人は安全と思ったのか、ぽつりぽつりと、小さな声で話し始めた。

 

 「わ……わたしも誰かいないか、探してたの…………」

 

 「外に、出たくて…………それで…………」

 

 「あぁ、やっぱり!ねぇ、良かったら一緒に、行かない?」

 

 「え…………」

 

 「女の子1人じゃ、危ないわ。ここ、変な生き物とか、結構、いるみたいなのよ」

 

 「だから、一緒に行きましょ?みんなでいた方が、心強いし」

 

 ギャリーは、微笑みながら、少女に手を差し伸べた。

 彼女も、初めて笑みを見せ、そして、頷く。

 

 「うん、行く……!」

 

 「んじゃ、決まりね!あ、名前はなんていうの?」

 

 「メアリー……」

 

 「メアリーね!よろしく、メアリー」

 

 「……うん!」

 

 メアリーは、ずっと喋っていないイヴに近づき、喋った。

 

 「えと……イヴ、よろしく……」

 

 イヴは、彼女が挨拶をくれた

事に、好感を持て、すぐに、こちらも挨拶を返した。

 

 「よろしくねメアリー」

 

 「……うん!」

 

 「よーし、それじゃあ仲間も、増えたことだし、はりきって、行くわよ!」

 

 「おー!」

 

 「おー!」

 

 こうして、金髪の少女メアリーが仲間に加わり、イヴの周りは賑やかになった。

 

 ☆

 

 部屋での探索を終え、鍵を拾った一行は、突然絵画から、音がしたと思うと、地面からツタが伸び、襲撃を受けた。間一髪、ぎりぎり回避したギャリーとイヴ・メアリーは、ツタに阻まれ、離れてしまう。

 

 「ふたりとも、大丈夫!?」

 

 「あー、びっくりした!」

 

 「イヴは?ケガとかしてない?」

 

 「大丈夫!」

 

 「よ……良かった……」

 

 「それにしてもこれ……邪魔でそっちに行けないんだけど」

 

 「おったり、できないかしら?……ってなにこれ」

 

 ツタを折ろうと、ギャリーは、ツタに手をかける。すると、植物ではありえない硬さと感触に驚いた。

 

 「石でできてるわ、この植物」

 

 「どうしましょ……」

 

 ギャリーが、困り果てていると、何かを閃いたらしい、メアリーが、イヴに、話しかけた。

 

 「……ねぇ、イヴ、さっきの部屋で、カギ拾ったよね?」

 

 「うん」

 

 「その、カギで……そこのドア、開けられるんじゃない?」

 

 「もしかしたら、違う部屋にこれを、壊せる道具があるかもしれないよ」

 

 メアリーは、ギャリーの方へ振り向いて、二人で探索していいか頼んでみた。

 

 「ねぇ、見てきていいよね?」

 

 ギャリーは、二人だけに任せるのは不安なのか、少し考える。

 

 「うーん……でも……二人だけで、大丈夫かしら……」

 

 「大丈夫よ!ね、イヴ?」

 

 最初は、イヴは、ここに残ったほうが良いかなと思ったが、彼女の提案も一理あるし、何より、ずっとギャリーに迷惑を掛けたから、すこしは、手助けしたかった。

 

 「大丈夫だと思う」

 

 「ほら、イヴだって大丈夫って、言ってる!」

 

 メアリー……そんな、楽しそうに言わないで……

 イヴは、心の中で、ほんの少しだけ不安に思い、ため息をついた。

 

 「うーん……そ、そう……?」

 

 「じゃあ、ちょっと見てきて、もらおうかしら」

 

 ギャリーは、最初、困惑した表情だったが、すぐに改め、真剣になる。

 

 「でも、いい?何もなかったら、すぐに、ここに、戻ってくるのよ?」

 

 「どうするのかは、その後改めて、考えましょ」

 

 「うん!わかった!」

 

 「それじゃ、行こう!」

 

 メアリーは、イヴの手を取り、すぐに駆け出した。

 鍵を使って開けると、部屋は、物置小屋だった。二人は、すぐに、ダンボールを調べ、何か良い物が無いか、探し始める。

 

 「……何か、役に立ちそうなもの、ないかな」

 

 「………………あ」

 

 メアリーが調べたダンボールの近くによると、中には、切っ先が、不気味に光る、バレットナイフと呼ばれるものが入っていた。

 

 「これで、あのツル、削れないかな!?」

 

 目を輝かせて言うメアリーに、イヴは、ギョッとした。

  

 「さすがに無理……」

 

 「そうだよね……やっぱり、だめかぁ……」

 

 「でも一応、これ、持っていこうかな……」

 

 キラリと光るナイフを持つ、メアリーを見て、イヴは、少しだけ背筋が寒くなるのを感じた。

 

 「……危ないよ?」

 

 「念のため、ね……」

 

 確かにここでは、何があるか分からない、武器の一つは持ったほうがいいのだろう。

 イヴは、そこまで考え、とりあえず黙認することにした。

 

 「うーん……あんまり、役に立ちそうなもの、ないね」

 

 「いったん、ぎゃりーのとこに、戻ろっか?」

 

 「そだね」 

 

 作業を続行した二人は、結局めぼしい物を見つけることは出来ず。一旦帰ることにした。だが、突然停電が起き、辺りが真っ暗になる。

 

 「わっなに!?」

 

 しかし、すぐに電気が付き、明かりが、辺りを包んだ。

 

 「びっくりしたー……」

 

 二人は、自分たちに、何も起きてないことを確認し、部屋から出ようと、扉へ向かった。すると、扉の前には、今まで隣にあったマネキンが、そこにぽつんと立っていた。

 

 「あれ?出口が……」

 

 メアリーは、驚き、声が少し高くなる。

 

 「な、なんで、移動してるの?さっきは、壁ぎわにあったよね?」

 

 「どかそう!イヴ!」

 

 「わかった!」

 

 イヴとメアリーは、二人で、マネキンの近くに立ち、どかす準備を始めた。

 

 「押すよ?せーのっ……!」

 

 「………………」

 

 二人係でも全く微動だにしない!マネキンはとてつもなく重く、疲れた二人は、一旦諦めた。

 

 「はぁ……ダメだわ…………ビクともしない…………」

 

 「イヴ、どうしよう……出られなくなっちゃった」

 

 「もういっかいだけ頑張ろ?」

 

 二度目の挑戦。しかし、非力な二人では全く歯が立たなかった。

 

 「仕方ないから、こっち行ってみようよ、イヴ!」

 

 メアリーは、先へ進める扉を指差す。イヴは、先へ進むのが、不安だったが、いつまでもここに居ても、話しにもならないのは、わかりきっているので、マネキンから離れ、メアリーについて行った。

 

 ☆

 

 通路と、なぜか通れるようになった道、三角形の形をした物体を落とすハプニングなどを乗り越え、先の通路に進むと、突然、メアリーは、イヴに質問をしてきた。

 

 「ねぇ、イヴ……ちょっと、聞いていい?」

 

 「どうしたの?」

 

 「ギャリーって……イヴの、お父さん?」

 

 「ちがうよ」

 

 「ふーん……じゃあ、お父さんは、別にいるのね」

 

 「そっかぁ…………」

 

 「イヴのお母さん、やさしい?」

 

 「うん!怖いところもあるけど、とても優しいよ!」

 

 「へぇ……いいなぁ」

 

 「早く両親に、会いたいよね?わたしも、早くここから、出たいよ……」

 

 「うん……そうだね……」

 

 「ね…………イヴ、あのさ…………」

 

 「もし、ここから出られるのが二人だけだったら……どうする?」

 

 一番考えたくないような質問だ……だけど、もし、本当にそうなるなら私は……

 

 「私はここに残る……かも……」

 

 イヴが、自分が残るという答えを出した瞬間。メアリーは、悲しい表情になる。

 

 「え!いいのイヴ?そしたら、お母さんに会えなくなっちゃうんだよ?」

 

 「……きっと、すごくさみしいよ?」

 

 (わかってるよ……だけど、ギャリーも、メアリーも最近とは言え、私のかけがえのない友達だ……出来れば私よりも、二人が幸せになってほしいと思う……)

 

 「そんなこと、言わないで一緒に、出よ?約束だよ!」

 

 「う……うん……」

 

 二人は、通路を抜け、大部屋に入る。大部屋には、いくつもの仕掛けが施されており、中には、マネキンの首が、怪しいので、ちょっと落としてみたら、赤い煙が出たり、『釣り人』という絵画から、赤い傘をもらって、それを、『カサをなくした乙女』と呼ばれる絵画に渡すと、部屋にいきなり、雨が降ってきて、服が濡れたりした。

 だが、不気味なのは、ずっと、笑顔で喋り続けたメアリーが、突然ふっと、無表情になり、ボーッと立ち尽くしているからだ。

 

 「メアリー?」

 

 「……メアリー……わたし、メアリー……」

 

 「うふ、ふふふ、ふふふふふ、あはははは、あはははははははははは」

 

 「わたし、メアリーっていうの

  わたし、メアリーっていうの

  わたし、メアリーっていうの」

 

 「うふふふふ、ふふふふふ……」

 

 メアリーは、笑いながら、通路へ戻り出す。イヴは、あまりのことで、呆然としながらも、すぐに、彼女を追う。

 メアリーは、通路の帰り道を塞いでるマネキンの首を手に持っているパレッドナイフで、切り刻んでいた。イヴは、その姿を見て、背筋が泡立ち、メアリーに、呼びかける。

 

 「メアリー?どうしたの……?」

 

 しかし、彼女は、機械的にパレッドナイフでマネキンを切り刻み、ぶつぶつと何かを言っていた。それにイヴは、不安になりながらも、聞き耳を立てる。

 

 「邪魔だなぁ、邪魔だなぁ、邪魔だなぁ、邪魔だなぁ」

 

 イヴは、怖くなり、後ろを向いて走る。扉を開けて、大広間に戻った。

 すると、突然背後から声を掛けられ、ビクっとし、後ろを振り返る。

 

 「イヴ…………」

 

 背後には、メアリーが悲しそうに立っており、そっと小声で喋った。

 

 「おいてかないで……」

 

 その言葉に、イヴは、胸が痛くなる。もしかしたら、ここに耐えられなくなって、少しおかしくなっただけかもしれない。今はきっと、普通のメアリーに戻っているはず。

 イヴは、そんな淡い希望を胸の中でしがみつき、メアリーに手を差し出した。

 少し時間が経ってから、どうしてもさっきのおかしい行動が気になり、イヴは、メアリーに聞いてみた。

 

 「さっきどうして、行っちゃったの?」

 

 「えっ…………?あぁ、あれは……ごめん。私にも、わかんない」

 

 「なんか……急にいろんな、気持ちが……こうなんて言えばいいのかな?」

 

 「ふき出して?きて……ちょっと……その…………」

 

 「メアリー…………」

 

 「まぁ、気にしないで!もう、大丈夫だから」

 

 「うん」

 

 メアリーは、そのあと、ずっと絵を見て回り、とりあえず、イヴは、探索を続ける。すると、白黒だった部屋が、まるで色が付いたかのように、華やかになり。寸断されている道には、虹の架け橋が掛かっていた。イヴは、虹を渡り、テーブルに置かれている茶色の鍵を拾う。それをすぐに、鍵のかかった扉に差込んだ。

 メアリーを呼ぼうとしたが、イヴは、やめた。メアリーは、さっきからやはり変だった。意味もなく笑ったり、イヴの後ろをずっとついて行ったり……そして、何より時折、ものすごく怖い笑みを浮かべたりする。今は、どっかの絵を見ているのだろう。大広間には、居なかった。イヴは、そっと扉を開け、彼女が居ない間に、こっそりと、大広間から立ち去った。

 しかし…………

 

 「待ってよ、イヴ…………」

 

 メアリーは、いつの間にか、イヴの後ろに居て、イヴを驚かせる。

 

 「……こっちにも、階段あったんだ…………わたしも、行く!」

 

 彼女は、そう言うなり、イヴの手を握り、そのまま、困惑しているイヴに関係なく、階段を二人で駆け下りていった。

 

 ☆

 

 扉を抜け、また別の大広間に行った二人は、どこかで、声が聞こえ、すぐに声を辿り、扉にたどり着く。

 扉に手を掛けると、ノブの部分が、氷のように冷たく、イヴは、少し開けるのをためらった。しかし、向こうから、先程から、ギャリーの声が聞こえてくる。

 イヴは、すぐに気持ちを切り替え、勢いよく扉を開けた。

 

 「……うそ?」

 

 イヴは、扉を開け、中には入り、眼前の光景を見て、衝撃を受けた。

 部屋の中は、たくさんのうさぎの置物があり、目の前には、大きなうさぎの絵が飾られてる、前に来たような部屋だった。そして、その中で、一人楽しそうに、置物と話しかけているギャリーの姿が、イヴの目に入り、絶句する。

 

 「……ギャリー……?」

 

 メアリーも、衝撃を受け、口が動かない。ギャリーは、二人が見えていないのか、ウサギの置物にまだ、話しかけている。

 

 「フフ、でもアナタってホント、面白いわよねー」

 

 「悩みとか、色々なんでも、話せちゃいそうだわ」

 

 「アハハハハ…………」

 

 イヴとメアリーは、無言で、彼に近づく。しかし、ギャリーは、全く気付かない。

 

 「へー、それは初耳だわ。もっと詳しく、聞かせてよ?」

 

 「うんうん、誰にも言わないから!秘密にしてるわ、絶対に!」

 

 それから、間が空き、そして、突然彼は、驚きの声が上がった。

 

 「えっ信じらんなーい!本当なの、それ?」

 

 「だとしたら、サイテーね!女の子になんてこと、するの?」

 

 「だめよ、そういう時は、ガツンと、言ってやらなきゃ!」

 

 「困るわよね?わかるわ、どうしようもない時、あるもの」

 

 「逃げちゃダメって、わかってるけどなかなか上手く、いかないのよね…………どうしてかしら?」

 

 「はぁ………………」

 

 それから再び間が空き、しみじみと語りだす。

 

 「……そうねぇ、それもいいかもね、何も考えなくても、いいし……」

 

 「嫌なこと、全部忘れられるしね……アハハ、そうそう、それと一緒よ」

 

 ずっと、彼は一人で、喋り続けている、メアリーは、それを見て、不審に思った。

 

 「……これ本当に、ギャリーなの?なんか、変になっちゃってるよ……」

 

 「もしかして、ニセモノじゃない?本物だったら、こんなとこにいるはず、ないし……ねぇ?」

 

 「そう思わない?イヴ……」

 

 「…………」

 

 「………………イヴ?」

 

 イヴは、無言のまま、ギャリーの前にしゃがみ込み、そして……

 

 「………………!」

 

 メアリーは驚いた。イヴが、突然彼の前にしゃがみ込み、ぐっと力を入れたかと思ったら、思いっきり彼の頬に、グーパンで、殴ったからだ。

 そして、さらにイヴは、呆然としている彼に、もう一発叩き込む。

 

 「……………………い」

 

 「………………ったぁー!?ちょっと、なにすんのよ、イヴっ!」

 

 「うそ……も、戻った…………」

 

 メアリーは、イヴの行動にも驚いたが、さらに驚いたのは、ギャリーが、かなりおかしくなって、どうにも出来ないような状態だったのに、イヴのパンチで、正気を取り戻したからだ。

 彼は、正気を取り戻して、辺りを見渡す。そして、自分が、何がどうなっているのか、わからないようだった。

 

 「あれ……イヴ?それに、メアリーも……どうしたの?」

 

 「……って、ここどこ?アタシたち、なんでこんなとこに、いるんだっけ?」

 

 「わっちょっと、イヴ!?」

 

 イヴは、突然、彼の身体に抱きつき、そのまま、すすり泣く。

 

 「………………」

 

 「…………なんか…………よく、わかんないけど心配かけちゃった、みたいね」

 

 「ごめん……イヴ……」

 

 ギャリーは、イヴが泣き止むその時まで、ずっと、ずっと、頭を撫で続けた。

 それから数分後……

 

 「さて……それじゃ、先に、行きましょうか、と、言いたい所、なんだけど……」

 

なんかアタシ、記憶が混乱してて何してたのか、思い出せないのよ」

 

  ギャリーは、頭を抱え、考えるが、やはり何も思い出せないみたいだった。一体彼に何があったのかわからないが、きっと、ものすごく怖いことというのは、わかる。

 

 「……別に、もう、思い出さなくてもいいんじゃない?」

 

 「こうやって、合流できたんだし」

 

 「それは、そうなんだけど……なんか大事なこと、忘れてる気がするのよねー……」

 

 「なんだったかしら……」

 

 「……とにかく、行こうよ、上の階に、階段も見つけたし」

 

 ギャリーが、まだ、何かを思い出そうとすると、メアリーは、少しだけ、怒ってるような気がする。しかし、ギャリーは、それに、気づいていないようだった。

 

 「…………そうね、それじゃ、もうひと頑張りしましょ!」

 

 こうして、全員集まり、再び探索を開始した。

 

 ☆

 

 「ん?メアリー、なんか落としたわよ」

 

 「えっ…………」

 

 見ると、そこには、黄色いバラが落ちており、ギャリーが、そこまで歩き、拾いあげた。

 

 「あれ…………この薔薇……」

 

 「触らないでっ!」

 

 メアリーは、いきなり、ギャリーの背後に立ち、持っていたパレッドナイフを構える。すぐに、ギャリーは後ろを振り向き、驚愕した。

 

 「!?メアリー!アンタ、何持って……!」

 

 「返してよっ」

 

 メアリーは、ギャリーに襲いかかる。ギャリーは、彼女のナイフを持っている腕を捉え、両者はそのまま、組み合った。

 

 「な……ちょっと、メ、メア…………!」

 

 「さわらないでよ!わたしのバラ!」

 

 「ちょ、ちょっと、危ないってば……っ!」

 

 「あっ…………!」

 

 ギャリーは、メアリーを押し倒してしまい、彼女は、そのまま、動かなくなった。

 

 「…………!」

 

 「…………メアリー……そっか、やっぱり……」

 

 ギャリーは、顔を陰らせ、何かを思い出した。

 

 「イヴ、聞いて…………」

 

 「……え?」

 

 「アタシ、思い出したわ……メアリーの肖像画が、ゲルテナの作品集に、載ってたの」

 

 「信じられないかもしれないけど…………メアリーは、人間じゃない」

 

 「あの、追いかけてきた絵の女とかと、同じ……」

 

 「ゲルテナの作品の一つなんだと、思う」

 

 「あまりに、普通に接してくるから気がつかなかったけど……一緒にいると、危険だわ」

 

 「……そんな……」

 

 「残念だけど……急いでここから、離れましょ」

 

 そういえば、今まで、メアリーが、おかしい時があった……たぶん、それは、ギャリーが秘密を知ってしまって、ああなってしまったのかもしれない……

 イヴは、通路に出る最後に、もう一度だけ、メアリーを見て、そして、扉を開けてから、その場をあとにした。

 大部屋から出て、通路を遮る、マネキンをどかし、不思議な空間の通路へ出てから、二人は、謎解きをしながら、日向の下、束の間の、会話に話しを咲かしていた。

 

 「とりあえず、ここまで進み続けて、きたけどさ……」

 

 「アタシたち、下に向かってない?階段、下りてばっかり……本当に、こっちで良いのよね……?」

 

 「……わかんない……」

 

 「…………ゴメン、イヴ、不安に、なるような事、言っちゃったわ」

 

 「今のは、忘れてね?」

 

 イヴは、ギャリーの言葉に、こくりと頷いた。

 

 「ところで……」

 

 「色んな絵が、動いたり、飛び出したり、したのを見てきたけどさ……」

 

 「なんか、絵が動くことに、驚かなくなっちゃったわよね、本当だったら、あり得ないでしょ」

 

 「トリック・アートもメじゃないわよ」

 

 「……ははは」

 

 確かに、ここに来てから、飛び出したりする絵とかに、驚かなくなった。こういう時、なんていうんだっけ?確か……

 

 「慣れって怖いね……」

 

 「確かにね……」

 

 二人で、少し暗くなると、場の空気を変えるためか、すぐに、ギャリーは、別の話題を話してくれた。

 

 「イヴさぁ……マカロンって知ってる?」

 

 「?」

 

 聞いたこともない食べ物で、イヴは、首を傾げた。

 

 「ハンバーガーみたいな形の、お菓子なんだけど」

 

 「この間、そのマカロンがすっごく、美味しい喫茶店を、見つけちゃって!」

 

 「これがホントに、美味しいのよ~クリームも、甘すぎないし」

 

 「へぇ………」

 

 「でさーもしここ出られたら、いつか一緒に、行ってみない?………………いや」

 

 「絶対行きましょ!必ず、ここを出て!約束よ!」

 

 「うん!」

 

 二人は、お互いにここから出たら、喫茶店に行く約束を交わし、探索を開始する。

 氷に貼られた扉は、丁度日光があった輝場所から、手に入れた手鏡で、反射を利用し、氷を溶かし、中に入る。そこは、この場所の地図を示しているのだろう。パネルと連動していて、変なマークもいろいろあった。二人は、手分けして、マークを探し、順番通りに、パネルのスイッチを押す。すると、部屋の中心に鍵が現れ、さっそくそれを拾い、探索中に見つけた。鍵のかかってる扉に差込み、中に入った。

 部屋の中には、大きな箱があり、それを、イヴとギャリーは近づいて調べた。

 

 『おもちゃばこ』

 

 「これが、おもちゃばこ……?ずいぶん、大きいわね」

 

 ギャリーは、かなり大きなおもちゃ箱を見て、驚嘆した。

 

 「それにしても……」

 

 「この中に、カギがあるって、書いてあったわよね……」

 

 「……底が、見えないんだけど」

 

 イヴも、少し、背伸びをして、覗いてみると、確かに、底は真っ暗で、何も見えなかった。

 

 「ホントに、この中にあるのかしら……?」

 

 「行ってみたら?」

 

 突然、背後にメアリーの声が聞こえ、振り向こうとした瞬間。イヴと、ギャリーは背中を押されてしまった。

 

 「えっ…………!?」

 

 「メア…………!」

 

 二人は、暗い空間を真っ逆さまに落ち、意識も、どんどん遠くなっていった。

 目が覚めると、そこは、落書きと、いままでの、ゲルテナの作品だらけの空間だった。

 

 「ギャリー?」

 

 辺りを見渡すが、ギャリーは、居なかった。そして、大事に持っていたバラも、いつの間にか消えており、顔が青くなる。

 

 (探さなきゃ!)

 

 イヴは、すぐに、バラとギャリーを探しに向かった。バラは、花びらが点々と散って、道しるべになってくれていたので、すぐに見つかる。そして、ギャリーは、自分の倒れていた場所よりも、かなり遠くだったらしく、歩き続けると、倒れてる姿が目に入り、すぐに駆け寄り、声を掛けた。

 

 「ギャリー!大丈夫!?」

 

 「うーん…………」

 

 ギャリーは、体をゆすると、声を上げながら、ゆっくりと、体を起こした。無事な姿を見て、イヴは、内心すごくホッとする。

 

 「いた…………うぅ、頭、打った…………」

 

 「大丈夫?」

 

 「イヴこそ……大丈夫だった?」

 

 「大丈夫!」

 

 「そ!良かった……」

 

 「それにしても…………」

 

 ギャリーは、辺りを見渡し、喋った。

 

 「なにここ、イタズラ描きだらけ、ここが……おもちゃばこ?」

 

 「アタシたち、上の階から、落ちて来たのよね」

 

 「……あの子に、押されて……」

 

 ギャリーの、あの子という単語に、イヴは、表情が暗くなる。

 

 「……とにかく、カギを探して、戻らないと」

 

 「うん」

 

 二人は、おもちゃばこの周りを探索し、猫の落書きに落ちてあるカギを見つけ、拾った。

 すると、いきなり、おもちゃばこの雰囲気が、変わり、二人は、辺りをキョロキョロ警戒する。

 

 「な、なに……?この、イヤーな雰囲気……」

 

 「なんか、前にも……」

 

 ギャリーが、ボソッと言葉を発するや、突然、作品が、全部動き始め、彼らに襲いかかった。

 

 「うわっなによコイツら!イヴ……気をつけて!」

 

 すぐに、二人は手をつなぎながら、走り出し、作品から逃げる。いままで閉じてた階段は、開いており、二人は、そこに向かって全力で走り出した。階段を上り終え、長い通路を渡ると、また、部屋の雰囲気が変わり、二人を驚かせる。

 

 「なんか……部屋の雰囲気、変わってない?」

 

 「うん」

 

 先に進める場所は、二箇所あり、そのうちの、一つは、黄色いバラが、通路を塞いでいた。

 

 「見事に、塞がれてるわね……上に行くなってことかしら?」

 

 「なんとか、通りたいけど……」

 

 イヴは、考え、そして、ギャリーには、ある物を持ってるのを思い出し、すぐに提案した。

 

 「燃やしてみよ」

 

 「燃やす……か、そうね……それ、いいかもね」

 

 「全然、思いつかなかったわ、アタシ、ライター持ってるのに」

 

 「よし……じゃあ、燃やしてみるわよ」

 

 彼は、ライターを使い、イバラに、火をつける。たちまち、イバラは、他のイバラに燃え広がり、どんどん通路は、開いた。

 

 「やった!上手くいったわ、イヴ!」

 

 「うん!」

 

 二人は、成功したことに、喜びながら通路を渡り、部屋に入る。

 

 「なに?この部屋……おもちゃばこ……じゃないわよね?」

 

 「それより……イヴ、見える?向こうの壁に、かかってる絵……」

 

 「あの絵……なんか、見覚えあるわ、ちょっと、行ってみましょ」

 

 ギャリーは、絵を確かめるために、先に進む。イヴもそれに、ついて行く。すると、突然、後ろの扉が開き、必死の表情で、メアリーが、部屋に入ってきた。

 

 「だれかいるのっ!?」

 

 「…………!」

 

 「…………イヴに、ギャリー……ふたりとも、無事だったんだ」

 

 メアリーの表情は、どんどん、暗くなっていき、声のトーンも、低くなる・

 

 「……どうやって、この部屋、入ったの?」

 

 「出てってよ…………」

 

 「メアリー…………アンタは」

 

 ギャリーが、口を開くと、メアリーは、すぐに大きな声で警告した。

 

 「この部屋に、近づかないでよっ!」

 

 「な…………!?」

 

 「はやくここから、出てって!」

 

 そして、ナイフを取り出し、いままで見たことのないような、恐ろしい表情で、詰め寄る。

 

 「はやく!ハヤク!!早く!!!」

 

 「出ていけえぇぇええぇぇええ!!」

 

 ナイフを持って、猛然とメアリーは、走り出し、二人は、逃げる。しかし、目の前は、行き止まりで、すぐに、メアリーの絵が立て掛けられている所に向かう。そして……

 

 「もう、これしかない!」

 

 ギャリーは、ライターを使い、絵を燃やす。

 

 「おねがいっ!やめてぇ!」

 

 しかし、願い虚しく。絵は、燃え始め、ガラスが、激しい音を立てながら、飛び散った。

 

 「うわっ!」

 

 「あ…………!やだ…………!!」

 

 絵は、燃えカスになり、そして、メアリーは、悲しい表情をしながら、イヴを見て、そして、消えていった。持ち主を失ったパレッドナイフが、地面に落ち、悲しく音をたてた。

 

 「………………」

 

 ギャリーは、どっと疲れた表情になり、ため息を吐く。

 

 「…………はぁ…………!なんというか…………」

 

 「女って、コワイわね…………」

 

 「まぁ、それはともかく……なんか、思った以上に、激しく、燃えちゃったわね」

 

 「イヴ、大丈夫だった?ガラス、浴びたでしょ」

 

 「私は大丈夫だけど、ギャリーの手……」

 

 「……え?アタシの手?あれ、本当だわ、切れてる……」

 

 「気づかなかったわ、さっきので、切ったみたい」

 

 「……まぁ、これくらい、大丈夫よ」

 

 ギャリーは、そう言っているけど、血が出ているのは、やはり、良くないと思う。

 イヴは、ポケットから、ママにもらった、ハンカチを、ギャリーに渡す。

 

 「あら、ハンカチ……使っていいの?」

 

 「うん」

 

 「………………」

 

 ギャリーは、ハンカチを見て、少し、申し訳なさそうな顔をする。

 

 「……これ、本物のレースじゃない、なんか、よごしちゃうの、忍びないわ」

 

 「もう手遅れだけど……」

 

 ギャリーに、ハンカチを渡したことで、ハンカチには、べっとりと、血が付着していた。イヴは、それを見て、つい、笑いがこぼれる。

 

 「ま、いいや、せっかくだから、借りとくわね。 ありがとう、イヴ」

 

 「うん!」

 

 「さて……それじゃ、行きましょうか!」

 

 二人は、メアリーの部屋をあとにし、通路から出た。

 

 ☆

 

 カギを開け、階段を抜けると、あたらしい通路に出た。そこは、どこかに似ているような雰囲気の通路で、少し薄暗かった。二人は、奇妙な懐かしい通路を探索し、そして、一際大きな絵画を発見する。

 

 『???の世界』

 

 「なに、この、大きな絵……『絵空事の世界』?」

 

 「ねぇ、この絵の場所……下の美術館じゃない?」

 

 「もしかして……近衛に、飛び込めば元の場所に、戻れるの?!」

 

 「でも、絵に、飛び込むってどういうことかしら……?」

 

 彼が疑問に思うと、それを答えるかのように、絵画は光を放つ。

 

 「わっ何!?」 

 

 そして、額縁の部分が消え、飛び込めるようになった。

 

 「見て、イヴ!額縁が!!」

 

 「今なら、行けるかも!」

 

 ギャリーは、すぐに、絵の中に飛び込む。すると、kれは、本当にえの中に入った。

 

 「やった!本当に入れたわ!ホラ、イヴも早く!」

 

 「うん!」

 

 「イヴが、すぐに、入ろうと、彼の手に捕まろうとした瞬間。突然、ママの声が聞こえた。

 

 「イヴ…………」

 

 「ママ!」

 

 振り向くと、そこには、見間違えようのない、ママの姿が映っていた。

 

 「イヴ!どうしたの?ほら、来てごらん!」

 

 ママは、いつものように、私を心配し、探してくれていた。でも、何で?

 

 「イヴ!ねぇ、何してるの?早く、来なさいよ!」

 

 「ほら、怖くないよ、この手に捕まってご覧?」

 

 ギャリーが、喋ると同時に、ママも、「こっちにおいで」と誘う。しかし、今目の前にいるのはママじゃない!

 私は、必死に呼びかけてくれるギャリーの手を取り、絵の中へ入る。すると、周りが白く包まれ、意識が遠くなった。

 

 ☆

 

 何をしていたのか、思い出せない…………

 そういえば、パパとママが私を探してるかもしれない。

 イヴは、二人の所に急いで戻るため、通路を走る。すると、どっかで見覚えがあるような気がする男性を見つけた。彼は、赤いバラのオブジェを見ており、イヴもとなりに立つ。

 

 「………………ん?」

 

 「何か用?おじょーちゃん」

 

 「この像はなに?」

 

 「え………………これ?『精神の具現化』っていう名前の、作品みたいよ」

 

 「…………なんか、この像、見てるとさ……」

 

 男はしみじみとした口調で、すこし、なつかしむように、像を見た。

 

 「すごく、切ない気分になるのよねー……なんでかしら?」

 

 「……って、急にこんなこと言われても、困るわよね、ごめん、イヴ……」

 

 「…………って、誰よ、イヴって?」

 

 「私?」

 

 「え?アンタの名前?本当に、イヴって言うの?」

 

 「うん」

 

 「変ね…………アタシ別に、アンタのこと、知らないのに」

 

 「なんか、口走っちゃったのよ……へんなの」

 

 「でも…………なんか」

 

 「アタシたち、前にどこかで、会ったこと、なかった…………?」

 

 そこまで言い、突然彼は、首を振った。

 

 「今のは、気にしないで…………それじゃあね」

 

 そして、彼は歩き出し、突然止まる。

 

 「ん?」 

 

 男は、ポケットを漁り、レースのハンカチを取り出した。

 

 「なにこれ……ハンカチ?こんなの、もってたっけ……」

 

 イヴは、そのハンカチを知っていた。そして、彼が持っているのを目にして、頭の中で、ちらっと何かがよぎり、そして、すべての記憶が、鮮明にフラッシュバックされた。

 ギャリーも、自分がケガをした理由を思い出し、そして、記憶が蘇る。

 

 「ギャリー……」

 

 「イヴ…………!思い出したわ…………」

 

 「どうして、忘れてたの?こんな大事なこと…………!」

 

 「ずっと、二人でおかしな美術館の中歩き回って……」

 

 「正直、今でも信じられないけど……本当に、あった出来事よね?」

 

 「うん」

 

 「イヴ……アタシたち、無事に、戻ってこれたのよ!」

 

 「本当に良かった」

 

 「もっと、いろいろ話したいこと、あるけど、アタシそろそろ、行かなきゃ」

 

 「また、会いましょうね!」

 

 FIN

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

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