No.444150

コードギアス 帝国の黒鳥 ―Prologue―

六花さん

コードギアスのオリキャラ混入による改変ものです。
ご都合主義も多数含みます。


初心者ですがよろしくお願いします。

2012-07-01 13:27:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3364   閲覧ユーザー数:3005

 

地平線までのびる白い雲の海。それと対をなすように青い空。

それらの映るモニターを見ながら、プラチナブロンドの髪をもつ青年は溜息を吐く。

 

彼は今、戦闘機のような金属の塊で超高度を飛行している。もっとも、飛んでいるだけなら溜息など吐きはしない。外の景色を映すモニターとは別のモニター…そこには赤と青の光点がいくつも存在していた。

個々で動きながらもどこか統率性をみせるそれらは、この雲の下で行われているものを示すものだ。

 

 

 

――――――――――この景色だけでは、地上が戦場などと思えもせんな

 

 

 

そう思考して、雑念を払うように頭を振る。自分自身それなりに強いと自負しているが、このような思考をしていては墜とされかねない。

と、ちょうどモニターの中で変化があった。青い光点…自軍の一つが突貫し、壁を築くように存在する赤い光点、即ち敵軍の布陣を喰い破らんと動き出した。

その青い光点が通ったあとは、赤い光点が消滅。見事に布陣が崩され、そこを起点にどんどんと形が崩れていく。

 

いくら使用している兵器に差があるとしても、たった一人で突貫して無事でいるような人間。この戦場でいるとすれば自分と、ある女傑ぐらいだろう。

脳裏に赤みがかった紫の髪に、上に立つべき人間の独特の空気を纏った女性が浮かぶ。

 

 

 

「さすがはコーネリア皇女殿下、と言ったところか」

 

 

 

ついつい言葉がこぼれてしまう。

独り言のつもりで呟いたのだろうが、通信が開くことによってそれが他人に聞かれた事を理解する。

 

通信用のモニターに映るのはついさっき、脳裏に浮かんだ人物。赤い軍服で身を包んだ女性だった。

 

 

 

『我が国最強の一角を担う卿からそんな言葉が聞けるとはな。無茶をした甲斐があった』

 

 

 

戦闘により気分が高揚しているのだろうか。爛々と輝く瞳をこちらに向け、笑う女性がいた。

 

彼女とそれなりに付き合いは長いが、戦場でこうなるのはどうやら変わらないらしい。

 

 

 

「聞こえていましたか。というか、無茶と自覚しながら行動に移すのはやめて頂きたいのですが。もし殿下に何かあったら陛下にどう報告すればいいのですか」

 

 

 

コーネリアの言葉にげんなりしながらも答える。

本来彼女のような立場の人物にこのような態度をとれば面倒なことになるだろうが、彼自身の立場やその他様々な要因からよく会話する数人なら咎められることはないようだ。

 

 

 

『ふん、卿がいるのだ…万が一もあるまい?』

 

 

 

意味のない信頼ではなく、確かな確信から来る信頼。それが通信ながらもありありと伝わってくる。

事実、彼が戦場に来ていると軍に話が伝わるだけで戦意を向上させ戦況を覆すことも可能だろう。

 

それだけの肩書と、実力を有しているのが彼なのだ。

 

 

 

「変わりませんね、殿下は。」

 

 

 

そういって今日何度目かの溜息を吐く。この立場になって溜息が数段と増えた気がする。

 

…ふと、溜息を吐いた時に顔を伏せ、青と赤の光点の入り混じるモニターが視界に入る。

すぐに通信用のモニターに視線を戻そうとして、それに違和感を覚える。

 

 

言いようのない違和感がこびり付き、頭から離れようとしない。それを確かめるためにモニターを操作しだす。

 

突然彼の雰囲気が変わったのがモニター越しにも分かったのか、コーネリアの表情が疑問を浮かべたそれになる。

 

 

 

『アッシュフォード卿…?』

 

 

コーネリアの疑問の声が届かないほどにモニターを注視している彼。

 

 

 

 

 

 

――――――――――なぜ違和感など覚える?

 

 

――――――――――モニターを見る限りではいつも通りの光景

 

 

――――――――――布陣を崩されれば当然の結果

 

 

――――――――――違和感など覚えるはず…っ!?

 

 

 

 

違和感の正体に気づいた彼の心境を一言で表すなら《マズイ》に尽きる。

ここまで巧妙に偽装するなど出来る人物が何人いるだろうか。

 

それに気づいたからこそ、その異常性も理解できる。

 

 

 

 

――――――――――いや、まずはっ

 

 

思考するよりも体を動かす。

コーネリアとの個人間でのみ繋がっていた通信を自軍の全ての通信へと繋げる。

 

 

 

「ブリタニア軍は総員追撃を中止! 退避しろ!!」

 

 

 

半ば叫ぶように通信を入れる。が、モニターに映る青い光点はすでに反転し退避するコーネリアを示す光点以外は動きが鈍い。

大方いきなりの見知らぬ人物の命令で戸惑っているのだろう。

 

こんなことなら最初から自分が来ていると通告しておけばよかったと後悔しながら、そして今回は明白に叫びながら通信を入れる。

 

 

 

「なにをしている! 死にたくなければ追撃を中止し―――――っ!?」

 

 

 

 

二度目の通信を言い終える前に、数か所から爆音が響く。

その音が聞こえた瞬間、眉間に皺がより苦虫を噛みしめた表情になる。

 

 

 

「遅かったか…っ」

 

 

 

モニターを見れば、それまで画面にまんべんなく存在した青い光点が消滅している場所が数か所。

その部分にいた自軍が消滅した事を意味していた。そしてその空白の地点に一つずつ赤い光点が新たに存在していた。

 

 

 

未だ存在する青い光点の中、一つだけ動きの違うものがある事を確認しコーネリアの無事を確認する。

 

 

 

そこで、通信用のモニターに新しい人物が映る。

黒髪をオールバックにまとめ、メガネをかけた知的な男性。

それが第一印象となる男。コーネリアの騎士にして帝国有数の騎士たるギルバート・G・P・ギルフォード。

確かこの戦場でコーネリア以外に唯一自分の存在を知らされていた人物だったはず。

 

 

 

『アッシュフォード卿! 一体何が!?』

 

 

「やられたよ、まさか布陣を崩されるのを許容した上での面制圧兵器とは」

 

 

『なっ…』

 

 

 

ギルフォードがモニターの向こうで絶句する。

面制圧兵器はその攻撃範囲と威力ゆえに使う場所やタイミングが制限される。

下手をすれば味方ごと粉砕しかねないからだ。

 

そんなことから面制圧兵器が使われるのは戦闘が起こった直後か、絨毯攻撃。追い打ちを引きつけた上での使用に限られる。

少なくとも、今回のような混戦で使われるような代物ではないのだ。

 

 

 

そして、その兵器があったであろう場所で戦闘をしても、それがレーダー類に感知されることはなかった。

 

 

 

――――――――――動力を全て落とした上で潜伏させていた…か?

 

 

 

 

「どうやら、いいように誘導されたようだ」

 

 

 

情報を統合し、考えた結果がそれだった。

 

 

『正気の沙汰とは思えません!』

 

 

 

暗にありえないと言っているギルフォードに、彼も内心同意する。

タイミングを間違えば味方ごと吹き飛ばすそれを、戸惑いなく行い。そしてそれを遂行する兵の精神力。

 

赤の光点も数個は消えているが、それもこちらの損害と比べるまでもなく軽微といえる。

指揮官が優秀なのか、兵が優秀だったのか…はたまた両方か。

 

どちらにしても、彼が動かねばさらに被害が増加するだろう。

 

 

 

敗北はありえないが、これからまだ戦線は続く。被害は抑えるに越したことはない。

 

 

 

 

そう考え、自身の乗る機体の状態を戦闘レベルまで引き上げる。

 

 

 

 

 

「ギルフォード卿、私もこれから戦闘を開始する。それと展開している部隊には5分間耐えろと伝えておけ」

 

 

『了解しました。しかし5分間…ですか?』

 

 

 

 

ギルフォードの疑問についついクスリと笑ってしまう彼。

この状況下で、時間制限つきで耐えろと言えば何をするのか明言しているようなものなのだが。

 

 

 

 

――――――――――いや、これもありえないという先入観があるか

 

 

 

 

自身との差に内心苦笑いしながら、機体の操縦桿を操作する。

それまでモニターに映っていた景色が、青と白から白一色へと変わる。

 

 

 

「5分で全ての面制圧兵器を黙らせるということさっ!」

 

 

 

 

その言葉とともにペダルを踏み込み、爆発的な推力の全てを重力に引かれ落下する機体に加える。

 

異様なまでの加速は、モニターをあっという間に真っ白に染め上げ、数秒後にはそれすらも突き抜け地上を映し出す。

地上で猛威をふるう巨大な面制圧兵器をモニター越しに見つめ、口の両端を釣り上げる。

 

 

 

 

「行くぞ、メリオダス」

 

 

 

自らの機体に声をかけ、面制圧兵器に向かって数発銃撃を行う。

驚異的な落下スピードと発射時の加速の付加。

そして試験的ではあるが粒子加工された銃弾が赤い尾を引いて突き進み、それを貫く。

 

弾薬か、はたまた燃料に引火したのか面制圧兵器は大きな爆発とともに沈黙する。

 

 

 

 

「存外脆いな…」

 

 

 

 

呟いた言葉にふくまれた感情は失望か、それに似たナニカ。

 

地表に衝突する前に、巧みに操縦桿を操り最低限の減速で機体を持ちあげターン。

地面すれすれを高速で飛翔しながら次の標的に向かって、先ほどと同じように銃撃を加える。

 

 

こちらも容易にその分厚く見える装甲を貫通し、引火。

自身の機体内にまで響く轟音とともに沈黙する。

 

 

 

 

それを見て、何を思ったのか操縦桿を捻るような形で上に向ける。

 

 

 

 

すると、それまで戦闘機のようだったものの主翼部が下に折れ、さらに折りたたまれていたであろう部分がのび足に。

機首部が左右に分かれ、肩のようなアーマーがせりあがり腕に。

 

最後に胴体から頭部がせりあがり、完全な人型へと変化した。

 

 

 

それらの工程を数秒の間に終わらせ、その人型。

人型機動兵器KMF(ナイトメアフレーム)が地上に降り立つ。

 

本来ならあり得ない可変の兵器。

戦場で目立たないはずもなく、周りからの攻撃がその人型…メリオダスに集中しだす。

 

 

 

が、淀みない機動でそれらを回避。

逆に反撃をいれて黙らせる。

 

 

 

 

 

――――――――――戦況を確かなものにするなら敵味方に注目されている今か

 

 

 

 

そう考え、外部スピーカーをONにする。

 

 

 

 

一連の動作を見ていたコーネリアの顔には笑みが浮かび、ギルフォードの顔には驚愕が。

 

二人の心境は同じだった。

 

 

 

 

 

――――――――――これがナイトオブラウンズ…これが帝国最強の一人!

 

 

 

 

 

 

 

「―――ナイトオブラウンズ所属。ナイトオブツー、クレイ・アッシュフォードだ。皇帝陛下の名の下、貴軍等を討たせてもらう」

 

 

 

 

 

 

神聖ブリタニア帝国最強の十二騎士・ナイトオブラウンズの一角。

ブリタニアの黒鳥と呼ばれるクレイ・アッシュフォードとその象徴である黒い可変KMF(ナイトメアフレーム)、メリオダスが圧倒的な敵意をもって動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
6
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択