No.432527

無題

YU_Hiさん

落書きのつもりで書き始めたのにどうしてこうなった! 無駄に長いです。疲れたので途中で終わってますし。まぁ落書きですのでお気になさらず。本当はこの後のネタがやりたかったんですけどね。そこ単体だとシックリ来ない気がしたので導入から書き始めた結果がこれだよ! 一応、アイマスなんだけどアイドル要素ねぇなコレ! そして相変わらずメカメカとかロボロボとか苦手なんだぜ……。 書きたいシーンが書けてないので遠からず続編をうpったりするかも……。 あ、とりあえずアイドルがロボットに乗るコトは考えておりませんのであしからず。 架空戦記とかおいらには書けません。そもそも落書きですしおすし。文字量が多くても落書きと言い張ります!←

2012-06-04 03:08:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:416   閲覧ユーザー数:409

 

 

「え……?」

 それは多分、プロデューサーの呟きだったのだろう。

 あるいは単純に、この車内で唯一の男性だったから、その声が目立っただけか。

 何であれ、誰かが漏らしたその呟きは、車内にいる全員の思いと同じだったのは間違いない。

 周囲が木々で囲まれている森のような場所。だが、その木々が明らかに日本のものではなかった。

 そして、湿度も気温も高い。

「えーっと……」

 誰もが戸惑っている中で、プロデューサーはそれでも冷静に車の窓を閉めた。

「こんな暑いのにしめるの?」

「湿度の高い密林地帯……信じられないけど、ここはそういう場所みたいだし。

 変な虫が入って来たりすると困るからね。クーラーをつけよう」

「れ、冷静だなプロデューサー」

 響の言葉に、思わずプロデューサーは苦笑する。

 確かに、この異常事態に対して自分は冷静だった。

 だが、何とかしようにもどうしようもない事態が目の前にある以上、必要最低限のことをしようと考えた結果でもあった。

 つい数分前までは、日本の公道を走っていたこのライトバンは、今、どことも知れぬ密林にいる。

「そういえば、雪歩……大丈夫? さっきから喋ってないけど?」

「あ、はい……大丈夫です。がんばって冷静に色々思い返してます。

 どうしてこんなところにいるのかを――あの、私が765プロに入った辺りから順番に……」

「冷静にパニクってるわね」

 乾いた笑みを浮かべながら律子は肩を竦めた。

 車内の誰一人大きなパニックを起さなかったのは、状況が突発的過ぎた上に、自分達の居場所が変わった以外に大きな変化がなかったからかもしれない。

 これで、目の前に恐竜だとか見た事も無い兵器とか居たら相応にパニックになったかもしれないが、今はそれがありがたかった。

 響、千早、雪歩の三人が仕事を終え、次の現場へ向かう途中で営業を終えた律子を拾った。目的地への最短ルートである表通りが事故で渋滞してたので、裏道へと入った。そこまではしっかりと記憶している。

「プロデューサー……これって、もしかして最近ニュースになってた空間消失現象ってやつか?」

「たぶんね」

 誤魔化しても仕方ないので、響の疑問に素直にうなずく。

 去年辺りから世界各地で発生している謎の発光現象。その光に包まれると、そこに在った人やモノが消えてしまうという現象だ。

 日本でも何度か発生しているし、ニュースでは天気予報ついでに消失予報などというものまでするくらいには、世間を賑わし――そして、日常化した現象である。

「えっと……空間消失現象に巻き込まれた男の子が、数日後に四十歳のオジサンになって帰ってきたっていうのを特集した番組、この間見ましたけど……」

「それ、私も見たわ」

 雪歩が思い出したテレビ番組のことに、律子がうなずいた。

「異世界に飛ばされて、そこで奥さんと子供が居るって。帰ってこれたのは嬉しいけど、今は異世界に戻りたいと言ってたわね」

 彼のDNA鑑定なども番組中に行い、同一人物であることが判明した。

 それでも、その番組の視聴者の何人が彼の遭遇した出来事が事実であり、決してやらせでないと思ったか。

「それが本当だとしたら、ここ――異世界ってこと?」

 そんなファンタジーな……と、千早は呟くが、明らかに日本ではない周囲の様子が、決してフィクションではないのだと訴えている。

「とにかく動こう。せめて人里でも見つけないと」

「足元、結構ぬかるんでるみたいなんで、運転――気をつけてください」

 気をつけたところで、この車はこういう場所を走ることを想定したものではない。何が起こるかはわからなかったが、だからといってそれを口にするのは無駄に不安を煽るだけだと判断し、プロデューサーは素直に、「ああ」とうなずいた。

 幸いに発進に問題はなく、日本から跳んで来たライトバンはゆっくりと未知なる道を走り始める。

 その時――

 ガサガサ……というのも生温い大きな音が近づいてきた。

 運転をしているプロデューサーバックミラーで、他の四人は首を背後に向けて音の出所を見遣る。

 そこから、飛び出してきたのは――

「ロ、ロボット……!?」

 単純なシルエットだけなら、有名な青タヌキ四次元ロボに見えなくもないが、その見た目はまったく違う。

 4メートル近い巨体。明らかに金属で出来た重量感ある姿。三つの形の大きさの違うカメラの付いた顔。

 人型のロボットというだけで驚きだが、それ以上にロボットが手に持った武装はマシンガンのようにも見える。単純にサイズをロボット用に大型しただけのシロモノにも見えるが、それだけで充分に脅威だ。

 この状況でそれが向けられるとなれば、このライトバン以外にありえない。

 灰緑色したそのロボットはこちらに気付いたのだろう。その顔に付いたカメラがクルクルと回転し、ピントを合わせるよに動く。

「パイロット式か、無人機がちょっと気になるかな」

「ううぅ……プロデューサー、何でそんな冷静なんですかー!?」

 涙目になって雪歩が言うが、周りが騒いでくれるせいで冷静になれるというものである。

「最悪は有人機で、こっちに狙いを付ける場合ですね」

「り、律子も結構冷静ね……」

「こんな状況だから、冷静にならないと」

 もちろん、内心では相当あたふたしてはいるが、それを表に出してしまえば、プロデューサーはともかくとして、後ろに乗った三人が本格的にパニックを起しかねないと思っている。

 現状はプロデューサーの運転だけが命運を担っているのだ。みんながパニックを起し、運転を阻害することは、自分達にさらなる危機しか招かない。

「千早すまん。もうちょっと頭を下げてもらっていいか?

 バックミラー越しにロボットが見づらい」

「あ、はい」

 背後の真ん中に座っていた千早が少し場所を動く。

「ありがとう」

 それに礼を告げ、ロボットから距離を開けつつバックミラーを気にする。

 そして――ロボットがマシンガンを構えた瞬間、

「みんな、ちょっと乱暴に行くからな!」

 一方的にそれだけ宣言して、アクセルを踏み込んだ。

「う、わ、わ、わ、わ、わ、わー」

「ど、どうしたんですかぁー」

 悲鳴を上げる響と雪歩を無視して、バックミラーを窺う。

「増援かよ!」

 こんな貧弱なライトバンに対して、同型ロボット三機というのは些か過剰反応ではないだろうか。

「どこかの軍の秘密施設の傍とか、敷地内とかだったりするのかしら」

「律子! それ、洒落にならない!」

 だとしたら、この状況も分からなくもないが――

「勝手にお邪魔したのを謝ったら許してもらえたりしないか?」

「何も言わずに銃を向けてくる人にどうやって謝るのよ!」

 まったくもって千早の言う通りだ。

 結局、自分達は逃げるしかないのである。

 泥を跳ね飛ばし、石や木の根に乗り上げガッタンガッタン揺れる中で、ハンドルを握りながら考えていたのは、自分以外の四人の無事だ。

 このワケの分からない状況のまま死にたくはないが、それ以上に、ワケの分からない状況下で彼女達を失いたくないのである。

(天職かどうかはともかく、結構気に入ってんだぞこの仕事ッ!)

 こんな終わり方は許せない。

 その一心でハンドルを握ってはいるが、背後のロボット達はどうにも湿地帯用の装備をしているらしい。

 これが普通の道であるのなら、小回りを効かせた逃げ方も出来たかもしれないが、さすがにここではそれも難しい。

(律子は……気付いちまってるか。そろそろヤバイって)

 それでも、雪歩達には気づかれないように振舞ってくれてるのはありがたかったが。

 後ろに乗ってる三人は、自分のことを信じてくれている。律子もそうだろう。だが、現実は非常だ。最悪だけがどんどんと近づいてくる気がする。

 だが、その最悪の足音が唐突に止む。

 背後のロボット達が急に動きを止めたのである。

「助かった……のか?」

 響ほど、彼は楽観視出来なかった。

 足を止めたということは、こちら以外にも何かターゲットが出て来た可能性があるのだ。

 あのロボットが兵器である以上、何かしらのレーダーがそういうものに反応したとしたら、それは自分達への救いか、最悪の足音の追加になるか……。

「連中が足を止めたってコトは、少なくとも連中の味方ではないだろうけど」

「プロデューサー?」

 苦味しか感じない唾液を飲み込んで小さく呻く。

 それに助手席の律子が不安げな表情を向けてくるが、目線だけで信じろと、答える。

(まったく、何を信じろというんだろうかな)

 それでも、信じてくれるならがんばるだけだ。

 普段の仕事と同じように、やるだけのことはやってやる。

 出来る限り背後のロボットから離れるように動いていると、上空から何やら音が聞こえてきた。

「ま、またロボット!?」

「今度のはすごく大きいんだぞ!」

 背後のずんぐりロボットの大きさは目算で4メートルほど。だが、空から現われた濃紅色の人型ロボットはその5倍くらいはありそうだ。

 距離はあるし、空を飛んでることもあって、分かり辛いがパッと見ではもはや大きさがピンとこない。それでも、ずんぐりロボットの5倍近くのサイズだとしたら、あれは20メートルクラスの大きさだということになる。

 中世の騎士が馬上で使っていたような大きなランスを手にしたその濃紅色ロボットは背面から赤い粒子を煌かせながら、宙に浮いている。

「たぶん、空を飛ぶのに使ってるんだろうけど……あのオレンジ色の光って……」

「わ、私――あれ、何か不気味ですぅ……」

「同感よ荻原さん」

「自分もそう思ったぞ」

 どうやら、女性陣はあの粒子が御気に召さないらしい。

 濃紅色ロボットがランスを構える。ランスには良く見ると途中に突起というか穴というかが空いているようだ。そして、その穴をずんぐりロボットへと向けるということは――

「俺たちのコトは無視か!」

 それが幸いなのか不幸なのか。

 まるでSF映画かロボットアニメのようなロボット対ロボットの戦いが開始されようとしている。

 とにかくそこから離れようと、アクセルを踏む。

(赤い方は、四機一組……一小隊? 軍隊の類か?)

「四対三だけど、あれってまるで……」

 そこまで呟いて、律子は言葉を飲み込んだ。

 自分も同感だった。彼女が飲み込んだ言葉。それは――

(戦争――この世界がどうとかよりも、この場所は戦場の真っ只中だとしたら……)

 だとしたら、どこへ逃げても危険なことにはかわりないのではないだろうか。

 そんな不安を胸の奥に無理矢理押し込んで、プロデューサーはハンドル操作に意識を向けなおす。

 ランスの穴から、粒子と同じ色をした光線が、ずんぐりロボット達へと放たれる。

 すぐさまずんぐりロボット達は散開し、空中の濃紅色ロボット達へと乱射する。

 背後で繰り広げられる光景は――それこそ、映画やドラマで、あるいはリアルであったとしてもテレビの向こうで繰り広げられるような破壊の宴だ。

 もしかしたら、自分達が演じることもあるかもしれないが、それも全ては虚像にすぎない。

 だが、今自分達が見ている宴は、虚像でも虚構でもなく、紛れも無く現実だ。

 ただ狙われているだけの方が不安感は無かった。

 恐怖はあったけど、それは狙われているという現実感と安心感が少なからずあったのかもしれない。狙われていて余裕がないからこそ縋れた、恐怖感というリアリティ。

 余計なことを考えられなかったからこそ、そのリアリティがリアルとなり、プロデューサーを信じるという行為で、大きなパニックを避けられていたのだろう。

 しかし、自分達がターゲットから外れ、外野が始めた戦い。

 爆音と轟音。機械の駆動音に金属が擦れ合う音。その全てを夢だと思いたくても、既に狙われてる時点でこれを現実だと受け入れてしまっているのだ。

 結果、ある意味で少女達が、真の恐怖を感じ始める。

 全員の顔が強張っていくのを感じながら、プロデューサーが歯噛みする。

(まずい……律子までも、雰囲気に飲まれ始めてる……)

 自分だって震えてる。自分だって怖い。

(ダメだ。俺だけは絶対ダメだ。飲まれるな!)

 軽く息を吸い、そして吐く。

「こんな状況でなけりゃ、あのロボット達を写真に撮りたかったんだけどな」

 出来る限り自然に、そんな軽口を叩いてみせる。

「こ、こんな時に何を――」

「いやー……俺も男の子ですよ? ロボットやメカが嫌いな男の子は居ないんですよ?」

 それに、肩の力が抜けたようにクスクスと律子が笑いはじめる。

「女の子にとって白馬の王子様が目の前にいるみたいなもの?」

「かもしれない。まぁ無骨で乱暴で、その対極みたいなカンジだけどね」

 車内の空気が弛緩していくのを感じて、プロデューサーは胸中で安堵した。

 完全に緩みきらず、だが強張り過ぎない――ライブ前の緊張のような、悪くない空気だ。

「プ、プロデューサー!」

「どうした響!?」

「空のロボットが一匹こっちに向かって来てるぞ!」

「ロボットって匹?」

「千早ちゃん、何を呑気なコトをー!」

 飛行しながらこっちを追ってくる濃紅色のロボットが、そのランスをこちらに向けて構えてくる。

「この世界の軍人って、もしかしてみんな問答無用系!?」

「組織として成立するのそれ!?」

「いやいやいやいや。言ってる場合じゃないんだぞ! さっきのずんぐりさん達と違って空からだからこっち狙い放題なんじゃないのか!?」

 響の言う通りだ。

 向こうが引鉄を弾いた時点で、こちらは終わる。

 ようやくみんなが冷静になってきたというのに――

 クソッタレ――プロデューサーが思わず、そう叫びたくなった瞬間、

『そこの車。そのままの速度を維持して進め!』

 どこからともなく、男の声が聞こえてきた。

「プロデューサー?」

「選択肢は、ないさ!」

 雪歩の不安げな声に彼はそう答え、運転に全神経を注ぐ。

 直後、車と赤いロボットの間に新たなるロボットが割って入ってきた。

『……――破壊するッ!』

 上空から落ちてくるかのように現われたその青と白のロボットは、その右手の大型の剣で、急制動で動きを止めようとした濃紅色ロボットのランスを両断する。

 そして青白ロボットはその勢いを殺さないまま、蹴りを放つと濃紅色ロボットを吹き飛ばした。

『アロウズ! お前たちが襲ったこの車は、恐らく次元転移による漂流者だ。

 治安維持を謳うお前たちが、それを何故襲った?』

 まだ若い男性の声。恐らくはこの青白ロボットのパイロットだろう。

 その青白ロボットはこちらを庇うように前に出て、上空に濃紅色ロボット達へ告げる。

『ソレスタルビーイングのガンダム! 

 その旧式の車を庇ったコトで確信した! そいつらはお前のテロ仲間だとな!』

「無茶苦茶言ってくれるわね、連中」

 治安維持を謳う連中に無言で襲われ、テロリスト扱いされている人物に庇われる。

 しかも、無警告で攻撃してきた連中が口にした言葉は、正直、どっちがテロリストなのか分からない。

「あの赤い治安維持ロボット達と、助けてくれた青白ロボット――ガンダムって言ってたかな? 信じるならどっち?」

「信じるも何も、青白ロボット以外に味方いないじゃない!」

 まったくもってその通りだ。

 だが、その味方である青白ロボットも正直なところ頼りない。

 本来左腕があっただろう場所はボロボロのマントで覆われているし、その装甲のあちこちも塗装が剥げていたり、ひび割れていたりしており、スクラップだと言われても信じてしまいそうな有様なのだ。

 顔の一部も破損しており、本来のパーツが調達出来なかったのか、赤いセンサーがその破損した部分の奥で眼の代わりに光っている。

 満身創痍を体現したかのようなその姿は、背面から放たれる緑色の粒子が、エネルギーの残滓の類ではなく、消え行く身体を表わしているようにも見えてしまう。

『確かに俺はテロリストかもしれない。

 だが、そこの自動車は違う。少し見れば、転移してきたばかりの漂流者だと分かるはずだ』

『ええい、黙れソレスタルビーイング!

 我々はこの平和の為に、世界を荒らすお前を倒す!

 そして、お前がそいつらを守るというのであれば、そいつらもテロリストだ!』

「話が噛みあってるようで、すれ違いまくってる気がするぞ」

「気がするんじゃなくてまさにそうなんだよ」

 盲目的な平和維持。その為なら、無関係な人が死ぬことを厭わない。

「本気で、どっちがテロリストだよ!」

 毒づいて、プロデューサーはアクセルを踏み込む。

 彼の――ガンダムの邪魔をしないように。

「雪歩、そこの拡声器とって」

「あ、はい」

 ガタガタと揺れる車内に苦戦しながら、拡声器を手に取り律子に渡す。

「えーっと、前もって言っておくわ。みんなゴメンね」

 テヘっと茶目っ気たっぷりに舌を見せる律子を、

「舌噛むなよ」

「そんなマネしないわよ」

 何をするか理解したプロデューサーが茶化した。

 律子は窓を開けて、身を乗り出し拡声器でもってアロウズ達に告げる。

『アロウズとかいう平和維持がどーとかいう人達へ!

 例え平和の為の組織だったとしても、警告もなしにいきなり撃ってくるような人達に助けてもらおうだなんて思いません!

 右も左も分からない私達だからこそ、助けてくれるのなら何にだって縋りますよ!

 ソレスタなんちゃらのガンダムさんとやら! 助けてくれてありがとうございます! ついでと言っては何ですが、可能でしたら安全なところまで誘導してくれると助かります!』

『いいのか? こっちはテロリストだぞ?』

『少なくとも、アロウズって人達よりは信用できます』

『了解した。その信用に応えよう』

 車の中に身を戻し窓を閉めて、律子は一息つく。

「――というコトになりましたので」

「OK。さっきよりも断然状況がわかりやすくなった」

 グッジョブと親指を立てるプロデューサーだったが、何やら後ろの三人は呆然としているようである。

「え、テロリストに助けてもらうんですか……?」

「あんな派手に挑発しちゃって良かったのかしら?」

「善いモノ、悪いモノの区別が付かなくなってきたぞ……」

 そんな三人に、

「ま、世の中、勧善懲悪じゃないっていう典型例ってコトで……逃げるぞ!」

 プロデューサーは投げやりにそう告げて、悪路どころかそもそも道ですらない密林に、躊躇わずアクセルを踏み込むのだった。

 

 

 先ほどランスを失った濃紅色ロボットに対して、ガンダムは右腕からビームを連発する。

「うわ! ハズしまくってるぞあれ!」

「カッコ付けてるワリにもしかして、あのテロリスト弱い?」

「いいんだよ。あのビームは当てる為に撃ってるワケじゃないんだから」

 後ろを見ながら響と千早が漏らす言葉に、プロデューサーがフォローを入れる。

 ある程度まで距離が空いたので、一度車を止めて、様子を窺っているのだ。もちろん、すぐに発進できるようにエンジンそのものは止めていない。

「で、でも……当てないと倒せないんじゃ……」

 雪歩までもそんなことを言い出すのだが、三人はすぐにプロデューサーの言った言葉の意味を理解する。

 ビームを撃ちながら近づいて行ったガンダムは、相手がその攻撃を嫌がり体勢を崩した一瞬の隙を付いて、右手の剣を伸ばしながら間合いを詰めると、相手の赤いロボットを一閃する。

 金属が擦れ合い火花を散らしながら、ガンダムの剣が、アロウズのロボットを真っ二つに切り裂いた。

 二つに分かれた上半身と下半身は遅れて爆発を起こすが、それに巻き込まれないようにすでにガンダムはそこから離脱している。

「当たらなくても、撃つコトに意味があったんだよ」

 そう言いながら、彼は少しだけ胸中で眉を顰めていた。

 あの爆発、人が乗っていたのなら助からないだろう。

 状況からしてやはり、戦争中ないし終戦直後のような世界なのだろう。

 仕方がないといえば仕方がないのだが、直接的で無いにしろ確実に人が死んだ瞬間を目の当たりにしてしまうと、やや衝撃がある。

 まだ、律子達はそのことに気が付いてはいないようだが――それも時間の問題だ。

 ここから上手く逃げられたなら、次はみんなのメンタルケアを考えるべきだろう。自分自身も含めて。

「あれ? そういえば、最初に私達を追いかけてきたずんぐりロボ達はどうしたんでしょうか……?」

「それなら赤いのにやられちゃってたみたいだぞ」

 そういえば逃げるのに必死で忘れていたが、確かに途中から静かになっていた気がする。

「しっかしあんなボロボロなロボットじゃ、赤いの三機は大変そうだぞ」

 緑色の粒子を放ちながら空を飛ぶガンダムに、響は不安そうだ。

「あの人の参加してるテロリストさんのチームって貧乏なんでしょうか?」

 雪歩の言葉に、プロデューサーは違和感を覚える。

「んー……どうだろうな。アロウズって連中、あれたぶんこの世界の正規軍だろ?

 ガンダムって正規軍用ロボットと同じような規格のロボットっぽいしなぁ……いくらなんでも、そんなロボットを用意できる組織が貧乏だとは思えないんだが……」

 見た目がかなり違うことから、軍のものを盗んで使っているとも考えにくい。明らかにテロリストの独自モデルなのだろう。だとしたら、それを作りだした施設などがあるはずだし、そういった場所でメンテナンスをしてもらえるはずである。

 だが、目の前で戦っているガンダムは、お世辞にもちゃんと整備されてるとは言い難い。

「だとしたら、メンテナンスに戻ってないのか……戻れない理由があるか……」

 自らが口にしたその言葉で、だいたい検討が付いてしまった。

 アロウズ――あの部隊が、治安維持の名の下にテロリストの残党狩りをしているのだとしたら、ガンダムが拠点にしていた場所は恐らく……。

 チラリと律子に視線を向けると、彼女もどうやら今の言葉で気が付いたようである。

 こういう時、冷静で理性的な思考が出来る人間が自分以外にいるというのはかなり助かる。もっとも、あまり負担を掛けるようなことはしたくないのだが。

「プロデューサー!」

 響の声に後ろを見れば、アロウズの機体が一機、ガンダムを抜けてこちらへと向かってくる。

「チッ!」

 すぐにアクセルを踏んで車を出すが、そもそも出せる速度に差がありすぎるのだ。

 かなり距離を取ってはいたものの、間もなく追いつかれるだろう。

(どうする……どうすればいい……!)

 ガンダムはすぐこちらをフォローしようという素振りを見せたが、他の二機にそれを阻まれてしまっている。

 どうにかするしかない。二度目の奇跡なんてものは期待出来ない。

 だが、普通のライトバンで、この湿気に満ちた密林で、自分に出来ることなんて運転することしかない。だからといってそれだけではダメだ。

 ならば、最悪は四人さえ守れる形で何とかするしかない。

 そうと決まれば、頭を使え。回転させろ。仕事の時の何十倍にも。この異常事態に出来ることなんてそれくらいだ。

 自分が死んでも、律子を、雪歩を、響を、千早を――四人を助ける方法を。

(くそ……くそ……)

 しかし、そんなもの簡単に思いつくモノでもない。

 漫画やアニメではなく、これは現実なのだ。

『やめろ……アロウズゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 ガンダムのパイロットの声が響く。

 アロウズのロボットがランスを構える。

 みんなが目を瞑る中、それでも彼だけはハンドルを握り、前を、ミラーを見続ける。

 そこへ――

 先端に光る刃の付いた棒状のモノが飛んできてアロウズのロボットに突き刺さった。

 何が何だか分からなかったが、それでも車は止めずに道無き道を進ませる。

 遅れて何か巨大な影が飛んできて、地響きがした。その影が着地したのだろう。

『アロウズ! お前達が掲げる治安維持とは弱者をいたぶるコトなのか!?

 それが……お前達の正義だとでも言うのかッ!!』

 その影は、青白のガンダムよりも一回り小さかったが――

「あれも……ガンダム?」

 その顔は、ボロボロの――ガンダムと呼ばれているロボットによく似ている。

 頭部の角のような部分は黄色く、先のガンダムよりも大きい。胸部から腹部にかけては真紅で、それ以外は青と白というカラーリングのそのガンダムは、どことなく中華風の雰囲気があった。

 中華風ガンダムはその突き刺さっている棒を引き抜くと背中へと納める。

 刺さり方のせいか、爆発はしなかったが、アロウズのロボットは動く気配がなく、完全に沈黙していた。

 先のガンダムと戦っていた二機のうち一機がこちらへと向かってくる。

『コロニーのガンダム! お前もソレスタルビーイングと同じようなコトを!

 テロリスト風情の分際で!』

『弱者を守るのが貴様等の戦いではないのか! そのテロリストからッ!?

 そうでないと、言うのであればッ!!』

 中華風のガンダムが、迫り来るアロウズのロボットに向けて右腕を掲げる。

「おお! 右手が変形して龍になったんだぞ!」

 中華風ガンダムは、背面のバーニアから光を放ち、一気に加速してアロウズのロボットとの間合いを詰めていく。

 途中で真上に飛ぶように軌道を変えると、スラスタで姿勢を制御しながら、空中でその右腕を大きく振りかぶる。

 まだ殴るにしては遠い間合いでその龍腕を突き出すと、その腕が伸びてアロウズの機体へと噛み付いた。

 そのまま右腕を振るい、アロウズのロボットを引き寄せると、左腕でボディブロウを繰り出す。

 さらにもう一度、右の龍腕で相手に噛み付くと、そのまま腕は伸びていきアロウズのロボットを地面へと叩き付ける。それだけで飽きたらず腕がボディを貫通していく。

 その龍腕が引き抜かれると同時に、アロウズのロボットが爆発する。その爆風をバックに着地する堂々たる姿は、正義を騙ることを許すまいとするかのような威風を伴っていた。

「あ、あの……プロデューサーさん……」

「なんだ? 雪歩」

 車のガラス越しでも感じる爆音と熱に顔を顰めながら、恐る恐ると言った様子の雪歩に、問いを促す。

「あの、赤いロボットにも、パイロットさんって乗ってるんですよね……?

 声とか、してましたし……」

 響と千早もその問いにハッとした表情を浮かべる。

 自分達の世界の、日本という国に住んでいればまずは遭遇しない、出来事。

 物語の中であれば、カッコイイという一言で済ませるはずの光景であるが、現在進行系で繰り広げられている出来事は、夢でもフィクションでもない。

 雪歩が気が付いたこと――それを誤魔化すべきか否か。

 僅かな間だけ、律子と顔を見合わせたが、互いに誤魔化せないだろうという判断すると、ゆっくりとうなずいた。

 すぐに、雪歩の顔が青ざめていく。

「お、荻原さん!」

 倒れそうな雪歩を千早が咄嗟に支えるが、千早本人も顔色が悪い。

 いや、響もそうだし、今まで我慢していたようだが、律子もだいぶ悪そうだ。

 プロデューサーである彼も気分は最悪なのだが、この場で唯一の男は自分だけだ。

 ならば、カッコ付けて平気なフリをするしかない。

 女の子と一緒になって取り乱してしまうのは、男として情けなさ過ぎるではないか。

 爆発したアロウズのロボットから昇る黒煙の向こうから、ボロボロのガンダムがやって来る。どうやら、向うにいたアロウズのロボットは破壊したようだ。

 ロボット同士が戦っている世界。

 普通であれば、男の子的にワクワクするのだが、ここまで明確な死の気配を感じてしまうと、ロマンよりも恐怖の方が勝ってしまうようだ。

『すまない。助かった』

『気にするな。そのボロボロのMSで、それでもまだ自分の正義を貫こうとする信念に手を貸したまでだ』

 礼を告げたボロボロのロボットに対して、そっけなくそう告げると、中華風ロボットはこちらを見下ろすように向き直る。

『お前達、よくぞここまで逃げた。

 転移された直後で右も左も分からぬ状況下でそう出来るコトではない。

 特にドライバーの男。お前の我が身を捨ててでも女達を守ろうとする気迫、見事だった。アロウズなどよりも強き信念と正義、見せてもらったぞ』

 改めて、自分がやろうとしていたことをそう言葉にされてしまうと、恥ずかしいやらなにやらで、微妙な顔をしてしまう。

 だが、そんな顔をしながらでも言うべき言葉がある。

「いや、こちらこそ、助けてくれてありがとう」

 車から乗り出し、そう告げる。

「えーっとガンダムだっけ? 助かったんだぞ!」

「ありがとうございます」

「ありがとうございました」

「ありがとう」

 四者四様の言葉に、少しだけ二機のガンダムの動きが止まる。

 どうにも戸惑っているようだ。

『改めて確認するが、異世界からの転移者で間違いないな』

「状況は良く分からないけどね。多分、そういうコトなんだと思う」

『了解した。確認するが、その自動車の雰囲気からして、そちらも地球出身で合っているか?』

「ん? ああ。確かに地球だったけど……」

『ここも地球だ。そちらにとっては、パラレルワールドというものになる。

 この世界には並行世界の地球から迷い込んでくる者が少なからずいるんだ』

「つまり、俺達みたいな人間か」

『ああ。俺達にはそれなりのツテがある。そのツテが利く範囲にはなってしまうが、お前達を希望する国に送ろう。場所によっては最低限の衣食住も保証する』

 ボロボロのガンダムのパイロットからの言葉に、五人は顔を見合わせる。

 例えここが並行世界であったとしても、五人が希望する国など一つだった。

 

 

 国名を告げてから知ったことだが、

 何かこの世界、日本が二つあるんですけど!

 

 

 

     ♪

 

                         【To Be Continued…?】

 

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