No.423375

Sky Fantasia(スカイ・ファンタジア)8巻の2

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
”masa”改め“とげわたげ”です。
今作、1年の休載からついに書き終えることができました。
今まで読んでくれた方やこれから読んでくれる方。
簡単でいいので、よろしければ、感想おねがいします。

2012-05-15 19:34:18 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:654   閲覧ユーザー数:651

第2章 出会いと再会

 

 

 《スラム》

 南地区の廃都市を指す名称であり、一般には、禁止区域とされている区画である。この場所は、魔連の局員でも許可無く出入りすることはできず、もちろん、スラムの住人が、区画から出ることは許されない。

 

 そんな場所を俺は、ミュウと一緒に堂々と歩いている。

 

「・・・・ここは、変わらね、な」

俺は道中、目だけを動かして、当たりを見渡してみる。建物は、壁や屋根に穴があるものばかり、道も舗装なんてもちろんされておらず、当たり前のように廃材やゴミ、何かの破片などが転がっている。

「どう? 懐かしい?」

すると、俺より少し前を歩いているミュウが、顔だけ振り向く。

「ここに思い入れなんかねーよ。ただ、この感じは、久しぶりだな」

「外は、綺麗なところばかりだから、ね。こんなに汚いところなんて、見つける方が難しいわ。特にこの《特区》のような場所は、ね」

そう、スラムにも区域というものが存在する。《入り口》と《特区》だ。そして、この特区《特別禁止区域》は、本当のスラムと呼ばれる無放置地帯だ。

スラムには、簡単なルールが存在する。それは”力”だ。この区域には、紙幣など紙切れ、通貨などただの鉄くずでしかない。

”弱肉強食”それがこのスラムを更正する。だから、このルールには、女、子どもなんて関係ない。

それを証明するように、《入り口》からここまで、道に倒れていた人間は、何人も目にしている。それは、寝ているのか、死体なのか。確認はしない。誰も興味がないからだ。

「確かに、しばらく感じたなかった感覚だ、な」

「感覚?」

俺の言っている意味が分からないミュウは、首を傾げた。その瞬間、俺は、すぐに地面を蹴り、ミュウとの距離を詰める。それに驚いているミュウは無視して、左手で腕を掴んで引き寄せると、右腕は、対象に向かって突き出す。

 鳳凰流奥義“天風”

 魔力を手の平に集中させ、空気の層を叩くことで作りだした空気の壁。それで、俺は、飛んできた弾丸を防いだ。

「へぇ〜、魔導師にしては、いい反応じゃねぇか」

声がする建物の上へ視線を向けると、そこには、男が4人建物の上に立っていた。その男の一人には拳銃が握られている。銃口から煙が出ていることから、さっきの攻撃は、コイツのようだ。

一瞬だけ視線を下に向けると、足元には潰れた弾丸が落ちている。

実弾、どうやら魔導師じゃないみたいだな。

『私も驚いたわ。よく気づいたわね。魔力が全然感じられなかったのに』

すると、腰に下げている太刀、ニアが声を上げた。だから、俺は、簡単に答えることにした。

「火薬を使った拳銃から、アイツらは、魔導師じゃねーよ。だから、お前が反応できないのも普通だ」

『じゃあ、なんで分かったの?』

そんなやり取りをしている間にも四方の建物からゾロゾロと人が集まって来る。持っている武器は各々だが、な。ざっと二十は集まった。

「《殺気》」

『・・・・・・えっ?』

あまりにも意外な答えだったのか珍しく、ニアから間抜けな声が漏れた。それが面白くて俺は、笑みを浮かべる。

「《殺気》だ。機械のお前には、わかんねーだろうけど。コイツらから滲み出てた」

『そんな、小説の中じゃあるまいし』

「私も信じられないけど。ここの住人って、知らず知らずにその感覚を身につけているみたいよ。まるで獣のように」

ニアの疑いの声に、さっきまで、黙っていたミュウが、俺の腕の中から顔を出す。よほどさっきの攻撃に驚いたのか、少し顔が赤くなっている。

『まあ、人間が持つ内の力《気》っていうのは知ってたけど。目の当たりするのは初めてね。正直、私には、理解できないし。本来、魔導師は空気中の《マナ》を体内に取り込んで魔法を発動させるものだから』

「活力を力に使う《気》は、魔導師にとってはオカルト、だからな」

俺は、辺りを見渡す。どうやら、人数は、これ以上増えないようだ。それを確認すると俺は、鞘から太刀を抜く。

「ミュウ、じっとしてろよ。アブねーから」

「・・・・・どっちの意味で」

すると、ミュウは、笑みを浮かべて、俺の顔を覗きこんできた。俺は、それを鼻で笑うと、前に出た。

「そんなこと、決まってるだろ?」

 

 突如訪れた、ポピーちゃんのお姉さんを部屋に上げ、現在、室内は重い空気が漂っていた。

 

 リビングに戻ってきたわたしは、ことの成り行きを静かに見守ることしかできなかった。

「はい、お茶や」

ポピーちゃんは、キッチンから戻ってくると、コップをお姉さんの前に置く。すると、お姉さんの顔に笑みを浮かべた。

「おおきに、ピーちゃん」

「”ピーちゃん”やめ、ゆーてるやろ。みんなの前で恥ずかしいから」

ポピーちゃんは、少し不機嫌そうな表情を浮かべ、お姉さんの隣に座る。お姉さんは、お茶に一口つけると、わたしと目が合った。わたしもその顔をつい、見入ってしまった。

 肌は透けているように白く、髪型は、ポピーちゃんと少し違って、後ろで束ねていないセミロング。でも、並んでみると、やっぱり姉妹であってよく似ている。だけど、お姉さんの方は”キレイ”というか、なんだか”儚い”という言葉が合う雰囲気の人だ。

「ピーちゃん、そろそろ紹介してくれんの? さっきからお嬢さん方が困っとるで」

「・・・・こっちの人形みたいなんが”リリ・マーベル”ちゃん、こっちの目つきの悪い、つり目の子が”リニア・ガーベル”や。どっちも今の学園の同級生や」

「・・・・・・オイ、誰がァ目つきがワリってェ?」

「このとおり、口も悪い」

コロスぞォ、とリニアが青筋浮かべて、机に乗り出す。しかし、わたしが、すぐに体を抑える。すると、お姉さんは、急に笑い出した。

「アカン、オモロいなーあんたら。久しぶりにエエもん見せてもろーたわ。ウチの名前は”エミリア・ブライアン”や。妹が、お世話になってます」

大人な仕草にわたしは、ついたじろいでしまう。

「い、いえ、こちらもポピーさんとは、仲良くさせてもらってます」

すると、ポピーちゃんは、どこから出したのかハンカチを取り出した。

「そんな他人行儀やと、ウチ悲しーわ。ウチら一緒に”寝た”仲やん」

「はい?」

「ぽ、ポピーちゃん!?」

わたしは、不意な言葉に驚き、声が裏がってしまった。だけど、周りが笑っているのを見て、からかわれていることに気づいた。

「も、もう!」

「あはは、堪忍や。リリちゃん」

「テメェが、隙だらけだからダメなんだァ」

「あ、アカン、お腹痛い」

そんなこんなで、これがわたしとエミリアさんとの出会いだった・・・・。

 

                       ○

 

 それからしばらくの間、話に花が咲いていると、不意にインターホンが鳴った。

「誰やろ? さすがにもう珍人はこんやろうけど」

「誰が”珍人”や。こないに”キレイなお姉ちゃん”に向かって」

自分でゆーてたら世話ないわ、と苦笑いで言い残し、ポピーちゃんは、玄関に歩いて行った。それを見計らって、エミリアさんは、わたしたちの方へ視線を向けた。

「なあ、あの子学園ではうまくやっとる? どうもあの子、ウチに気ー使って、黙っとることが多いから」

その質問に、わたしは、笑顔で即答する。

「はい、とっても元気で、クラスでも人気者ですよ」

「女子の中では、リリの次に人気じゃねェか?」

「し、知らないよ! そんなこと」

そのやり取りに、エミリアさんは、笑みを浮かべた。

「ホンなら安心やね。これからも、あの子のこと宜しゅう」

そして、エミリアさんは、頭を下げた。その行動にわたしは驚いてしまう。だけど、リニアは違うようだ。

「ンなことォ、アンタに頼まれる筋合いねェよォ」

「り、リニア!?」

リニアの言葉にわたしは、腰を上げた。しかし、リニアは、それを手で静止した。

「オレは、オレの意思でアイツとツルんでる。ダレの指図も受けるつもりはねェ」

「・・・・・・もう、素直じゃないなー」

うるせェ、とリニアは頬を少し染めて、ソファーに体を埋めた。

 その姿をわたしとエミリアさんは、顔を合わせて笑う。

「お姉ちゃん、お客さんやでー」

そんなとき、ポピーちゃんが玄関から帰ってきた。そして、なぜか先程手ぶらだったのに、今は箱を抱えているのに気付いた。

「こんばんわ」

通路から姿を現れたのは、見たことのない男性だった。見た目からして、だいたい三十前後くらいかな。体格は、スーツ姿だけどよく分かる。所々スーツに筋肉のシワがついている。

 もしかしたら、軍人かも。

そして、気づいたらわたしは、リニアの制服の袖をつかんでいた。《男性恐怖症》が無意識に起こっていたのだ。だけど、そんなわたしをリニアは、そっと抱き寄せてくれた。

「ルーくん、どないしたん? ここへ泊まるから、迎えはいらんゆーたんやけど」

「ちょい待ち! そないなこと、聞ーとらんで!?」

「当たり前や。今、ゆーたんやから」

驚くポピーちゃんに、エミリアさんは、平然と答えた。どうやら、エミリアさんって、結構アバウトな人かもしれない。

 すると、男性は苦笑いを浮かべた。

「そうだろうと思って、ポピーにお世話になるついでに土産を、な・・・・えーっと、そこのお嬢さん、どうかしたかい?」

わたしの行動が気になったのか男性は、訪ねてきた。わたしは、内心焦った。

「オンナには、色々アンダよォ。アンタこそ誰だァ?」

わたしが、困っていると、すぐにリニアがフォローしてくれた。

だけど、初対面の方には、少し失礼な気が・・・・。

「おっと、すまないね。俺の名前は”ルー・フォンフォン”。エミリアの”婚約者”だよ」

「「婚約者!?」」

わたしとリニアは、驚き、すぐに視線をエミリアさんに向けた。しかし、エミリアさんは、少し表情に影を落としたが、すぐに笑みで返してきた。

「そや、ルーは、ウチの幼馴染で、彼氏さんなんや」

次に、わたしは、ポピーちゃんに視線を送る。すると、ポピーちゃんは、苦笑いを浮かべた。

「ホンマや」

と短く即答した。

 その言葉に、わたしは、2度目の驚きの声を上げた・・・・。


 
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