No.422139

真・恋姫†無双~薫る空~覚醒編:第68話『一矢一殺』

カヲルソラシリーズ覚醒編第2話です。
今回からちょっとずつですが、恋姫のヒロインが出てきます。
ではでは、よろしくお願いします。

前話:http://www.tinami.com/view/421387

続きを表示

2012-05-13 03:27:51 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:2242   閲覧ユーザー数:2023

【注意事項】

 

 

・恋姫?ナニソレ

 

・オリキャラとかキモい

 

・作者がきらい

 

・美しい文章でないと許せない

 

・ヒャッハー!あらしてやるぜぇ!

 

 

上記に当てはまる方は、読まれても時間の無駄かとおもいますので、ブラウザバック推奨です。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 私は以前、「星詠の瞳」なんて普通じゃ信じられないような力を持っていた。

 

 それは、誰かの記憶や感情を読み取ったりする力で、その対象は人に限らない。動物やただの物にだって記憶と呼べるものは存在して、それを読み取ることもできた。命がけになるが、その対象を外史そのものにだってできる。

 

 しかし、その代償として、ヒトとしての機能を能力を使うたびに奪われていく。

 

 私の場合、最初は味覚だった。どんどんヒトから離れていく感覚は今思い出してもぞっとしない。

 

 最後に完全にヒトでなくなった時、私は、自分の中にいたもう一人の自分に気がついた。

 

 彼女がどういう存在だったのか。それはまだわからないまま。

 

 けれど、彼女は私に願いのすべて託して、私の代わりに星詠の代償を支払った。

 

 私の願い。それはもちろん以前から変わらない。

 

 一刀の消失の回避。それが最大の目標ではあるものの、やることは他にもたくさんある。

 

 まずは、李儒に今回のお礼をしないといけない。それに、以前私が持っていた「星詠の瞳」は、今はあいつが持っている。前宿主としては、決着をつけないとね。

 

 でも、そのためには情報がいる。今の世界がどうなっているのか。私が隠れていた約一年半で、いったいどれだけの変化がおこっているのか、知る必要がある。

 

 向かう場所は、ひとつしかなかった。

 

「焼け落ちた洛陽……か」

 

 都への街道の途中で、歩きながら空を仰いで一言。

 

 私も関わりのある、あの戦のせいで、最大の栄華を誇った都は一瞬で灰になった。だから、感じないものが無いと言えば嘘になる。

 

 情報の集まる都市であれば、なにも洛陽にこだわる必要はないけど、あまり各地の勢力に関わりのある街は都合が悪い。

 

 それにしても、と、改めて自分の格好を眺めた。

 

 まだ暑い季節じゃなくてよかったと、本当に思う。

 

 顔を隠すために外套を顔が隠れるくらいに深くかぶっているのだが、もしも暑い時期にそんな格好していたら真っ先に衛兵に捕まるところだろう。

 

「えーっと、洛陽まで……まだ結構あるな」

 

 懐に忍ばせている地図を広げて、今の位置から洛陽までを算出すると、どんなに急いでも女の足では五日はかかるくらいの距離だった。

 

「形見としては実用的過ぎる気もするけど、ほんと、感謝してます。師匠」

 

 またその形見――地図――を折りたたんで、懐へと収める。

 

 ざっくざっくと砂地を踏み進み、少し進んだところで妙な光景を目にした。

 

 ひ弱そうな男が一人、他三人の大柄な男に囲まれ、何かを言われている。襲われている男はひどくおびえているみたいで、どうやら三人の男は追いはぎのようだ。

 

 思わずクスリと笑ってしまった。まったくひどい話だが、どこかで見たようなその光景を見て、昔の自分を思い出したのだ。

 

 このあたりは人も少ないから、おそらくあの追いはぎは成功することだろう。気の毒なことだが、今の私が手を出して司馬懿がうろついてるなんて噂が出ても、いろいろとまずいので、ここはあの男には素寒貧になってもらうほか無い。

 

 そう自分に言い聞かせ、目線からはずそうとしたときだった。

 

「七乃、あれはなんじゃ?」

 

 そんな声が聞こえてきた。まだ幼い女の子の声だった。

 

 見ないフリをすればいいのに、そんな大きな声で話したら……

 

「ああん、なんだこら、見せもんじゃねぇぞ。――っと、おお?おい、お前らもずいぶん羽振りがよさそうじゃねぇの」

 

 追いはぎの一人が子供と女性の二人に近づいていく。

 

 言わんことではない、とその場を離れようとしたのだが、足を動かそうとしたところで「ひぃっ!?」なんて悲鳴が私の耳を貫いた。

 

「……っっ。もう、どういう声だしてんのよ……」

 

 振り向くと、さっきの二人が互いを守るように抱き合い、ぶるぶると震えていた。女性のほうは持っている剣で応戦すればいいんじゃないのかな、と思ったけど、ただの護身用とかだったらとっさには使えないのかも。まったく意味ないけど。

 

「ぁうぁう……」

 

「へへ、なんだよく見りゃそっちは結構上玉じゃねぇか。……こっちはガキだな」

 

「わ、わらわに向かってガキじゃと!?」

 

「ああん!!!」

 

「ひぃ!?」

 

 男の威嚇に女の子のほうはすっかりすくみあがってしまっている。

 

「……あー、もー」

 

 さっきの男だけならばまだしも、こんな女性二人、ましてや片方は女の子じゃ、どう考えても人買い行き確定だろう。

 

 私は舌打ちを十回くらい連続でかましたい気持ちを抑えながら、そのわだかまりを右足に集中させた。

 

「ほら、さっさと身に着けてるもん全部出し、ぶふぅぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 これぞ不意打ち、といっても過言ではないだろう。男は何か話かけていた途中で見事に私のとび蹴りが入り、横に三回転半を決めて気絶した。

 

「な、なんだてめぇ、何してやがる!!!」

 

 当然のごとく、仲間を蹴り飛ばされたのだから、離れていたもう一人が激昂しながら近づいてくる。もうその顔は顔の骨格をめちゃくちゃにしたような、街で一芸として披露できそうな顔芸だった。

 

「……とび蹴りです」

 

「冷静に答えてんじゃねぇよ!!!!」

 

「とび蹴りだオラァ!!!」

 

「態度でかくしてもおんなじだコラァ!! てめぇ、覚悟できてんだろうなぁ!!」

 

 思ったよりもツッコミ気質なもう一人は、私に向かって突っ込んでくる。

 

「この野ろ、がぐふっぅぅ!!」

 

 正確に私の顔めがけて飛んでくる拳を冷静に回避して、その勢いのまま男のあごに私の左回し蹴りが綺麗にきまった。

 

 おそらく舌も噛んで二重の痛みが走ったのだろう。倒れた男の口からはちょっとお子様には見せられないくらいの泡が吹き出ていた。

 

「誰が野郎よ。女の顔狙うなんてサイテー」

 

 そっちはどうするんだと、最後に残った一人に視線を送ると、そいつは倒れた二人をおいて逃げていった。

 

 震えていた二人の視線に気づかないフリをしつつ、私は街道にもどろうとした。

 

「あ、あの!」

 

 最初に脅されていた男を忘れていた。

 

「はい……?」

 

「助かりました!ありがとうございます!」

 

「あ……はい」

 

 驚いた。まだ自分にお礼を言う人がいるなんてことに。というより、お礼を聞いたその事実そのものに。

 

「こちらも助かったのじゃ!」

 

「危ないところを、ありがとうございます~」

 

 それに便乗してか、さっきの二人も私にお礼を言い始める。

 

 わたしは「いやいや」なんて他愛の無いことを言いながら、そちらを見てしまった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ――――。

 

「……え、ええ、ええ、えええ、えんじゅ……っ!!!」

 

 その見覚えがありすぎた顔に、思わず名前を言いそうになり、途中で口をつぐんだ。

 

 どうして袁術がこんなところに、とも思ったが、それよりも隣の女性。

 

 まだ袁術ならば、しらを切れるというものだが、この人はなかなかキレ者だと以前聞いたことがあった。

 

 それは、以前に雪蓮から、まだ彼女が袁術の支配下にあったころに、袁術からの指示はほとんどが彼女の進言によるものだと。

 

 一時的にとはいえ、雪蓮を押さえ込むような奴だ。

 

「よろしければお名前を伺ってもいいですか?できればお礼がしたいので」

 

 と、そのように声をかけてくる張本人。名前はたしか張勲だったか。

 

「い、いや、別にたいしたことじゃないですし、かまいませんですよ?」

 

 びっくりしたのもあって、とっさに出た言葉はおかしな話し方になってしまった。

 

「う~ん。ですがうちの姫様がすっかりその気になってしまいましたので、できれば受け取ってほしいのですけど……」

 

「うむ!わらわを助けたのじゃ。それ相応の褒美を期待してよいぞ!」

 

 両手を腰に当てて、小さな胸を張る袁術。しかし、そんな発言になにかまずい言葉があったのか、張勲はあわてて彼女の肩をかけて後ろへ振り返った。

 

「ひ、姫様、今の私たちの懐ではあまり大げさなのはちょっと難しいかと思いますよ?」

 

「む、そうなのか?しかし礼はしておかねばわらわの名がすたるというものじゃ」

 

「それはすごくよいことなんですが……そうなると姫様の蜂蜜水もかなり我慢していただくことに……」

 

 ぼそぼそと小さな声で何かを話している二人。

 

 いかにも作戦会議と言わんばかりに、こちらに背を向けて話し合っている。

 

 いっそ今のうちに逃げてしまおうか。

 

「むぅ……それはだめなのじゃ」

 

「ですから、ここはほどほどの物を」

 

「仕方ないの。七乃に任せるのじゃ」

 

「はい、任されました~」

 

 逃げようとしたところで、ちょうど作戦会議は終了してしまったらしい。

 

 心の中で逃がしてくれよなんて不満を垂れつつ、私はもう一度二人のほうへ向いた。

 

「え~っと、どこまでお話したんでしたっけ」

 

「急ぐ旅なので、そろそろお別れしましょうってところかな」

 

「あ、お名前を伺っていたところでしたね」

 

 覚えているならとぼけないでほしいな。ちょっと逃げられると思ったのに。

 

「何か名乗るとまずいことでもあるんですか?」

 

「……薫です」

 

「かおる、さん。えーっと一文字ですよね?ずいぶん変わった名前ですねぇ」

 

「生憎と姓をもらえるほど、育ちがいいわけじゃありませんので」

 

「あ、あらあら。なるほど……」

 

 と、こちらの名を知ったとたんに張勲の態度が変わり始めた。

 

 家も持たない人間だったのかと、期待はずれだったということか。

 

 そういえば、雪蓮が独立する際に袁術は完璧に失脚したんだっけ。何かのきっかけを探してもう一回旗揚げを狙ってるってところか。

 

「では、こちらをお礼に納めてくださいますか」

 

「……っ。そちらのお気が済むのであれば」

 

 思わず噴出しそうになったのは、いかにも足元を見ているようなそれだったからだ。

 

 平民の子供のお駄賃並みのそれを受け取って、私は踵を返した。

 

「まつのじゃ、かおる!」

 

「はい?」

 

「ほれ、これもお礼じゃ」

 

「……これは?」

 

 袁術は小さな瓶のような何かを手渡してきた。中には水か何かが入っているようだけど。

 

「蜂蜜水じゃ。かなり我慢するのはいやじゃが、これくらいは平気なのじゃ。だから受け取るとよいぞ」

 

「姫様……。いいんですか?」

 

「うむ!」

 

「……そっか。じゃあ――」

 

 私は、頭にかぶっていた外套をはずして背中に回した。

 

「ありがとう。次は強盗なんかに会わないように気をつけてね」

 

「わ、わかっておるのじゃ」

 

「…………ぁっ」

 

 何かに気づいたのか、張勲が小さな声を漏らした。

 

 「それじゃ」と私は張勲のほうへ視線を移した。先ほどとは違う怪訝に満ちた表情の彼女を見ると、私のことに気がついたようだった。

 

 一度だけ頭を下げて、私は振り返り、歩を進めた。

 

 どうして顔を見せたのか、今思い出しても首をかしげる。しいて言うなら、あの子には嘘をつきたくなかった。そんなところだろうか。

 

 

 

 ◆

 

 

「姫様、さっきの人ですけど」

 

「む?どうしたのじゃ、七乃?」

 

 どんどん小さくなっていく、さっきの外套の女性の背中を見ながら思う。

 

 あれはたしか司馬懿という名前だったはず。直接の面識はないけど、一度反董卓連合のときに顔を見たことがある。

 

 うわさでは、西涼の土地を李儒に奪われた後、その場で処刑されたと聞いたけど。

 

「……」

 

「七乃?」

 

 考えてもわかるはずも無い。彼女の情報はあまりに少なく、彼女が行ってきた非道だけが、今の世には伝わっている。

 

 悪王。暴君。そんな名前で呼ばれているところも聞いたことがある。

 

 そんな彼女が、なぜ追いはぎに襲われているものを助けようとするのだろう。

 

 ただ、最後に姫様に見せていた表情は、ずいぶん優しいものだった。

 

「すみません、姫様。なんでもありません」

 

「?」

 

 考えても答えは出ずに、不思議そうな姫様を見ていると、それがどうでもいいことに思えてくる。

 

 わからないものは仕方が無い。

 

 そう結論付けようとしたところで、どこか遠くのほうから銅鑼の音が聞こえてきた。

 

「っ。姫様、どこかで戦が始まるみたいです。すぐにここから離れましょう!」

 

「わ、わかったのじゃ!」

 

 私たちは巻き込まれないように、その場を離れた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「全兵、配置につきました!」

 

 大きく響いたのは伝令の声。指示を出してから対応するまでの時間は、わが軍の将としては誇りと思うべきか。

 

 華琳さまからお受けした命は、西――つまりは涼州の制圧だ。

 

 私は強く歯をきしませた。

 

 というのも、このところ報告はすべて敗戦の知らせのみ。この夏候妙才ともあろうものが、ふがいない結果ばかりを残している。

 

「敵の動きはどうだ?」

 

「以前静寂を保ったままです」

 

「こちらが動くのを待つつもりか……」

 

 不気味と言うほかなかった。敵の数はこちらよりも少数。多くて数千といったものだった。

 

 だが、今までの戦はすべてこちらの敗戦。まるで我々の動きを事前にしっているような戦運びする。

 

 神がかった采配、そんな印象を受けた。かの伏龍・諸葛亮ならば、これを打ち破れるだろうか。そんな気さえさせる。

 

 敵の軍師を思い浮かべるなど、私もついにどうかしたか。などと思ったときだった。

 

「将軍、敵方から銅鑼の音が!」

 

「ついに動いたか……。こちらも応じるぞ!指示通り、鶴翼にて迎え撃て!」

 

「は!」

 

 伝令は迅速に戦場へとむかった。

 

 あるいはこれさえも敵の手中か。そう思うと一筋の汗を流してしまう。

 

 たとえそうであろうとも、この弓で敵の眉間を打ち抜かねばならない。そんな責任が焦りを生み始める。

 

「前線、左翼が敵軍の突撃を受けています!」

 

「ちっ、左翼は反転し、中央の本体と合流、右翼はそのまま敵後方を狙い打て!」

 

「右翼!敵伏兵の被害に遭い、交戦中!」

 

「右翼の足を止めてきたか……。仕方がない。中央の許褚へ伝令!左翼を追う敵軍を横撃しろと伝えよ!」

 

 敵の狙いは左舷を下げさせ、その隙に右翼をつぶすつもりか。それとも前線を下げた左翼をそのまま突破できるつもりでいるのか。

 

 だが、軍が左右へ割れた今、本陣は丸見えのはず。

 

「右翼はそのまま伏兵と交戦!撃破せよ!本隊は敵陣の中央突破を図る!」

 

 

 

 

 ◆ 

 

 

 

 

 じゃーん、じゃーん。豪快な銅鑼の音は、突然鳴り響いた。

 

「戦……? いったいどこが……?」

 

 地理的に考えれば、曹操軍がかかわっていることは間違いない。

 

 問題は相手で、劉備のところか、李儒か。

 

 劉備ならこのまま知らないフリしながらやり過ごすところだけど、もし李儒の軍だったら――。

 

 私は、銅鑼の音がする方向へ回り込んで、戦場を眺めてみた。

 

 規模的にはそれほど大きなものではないようだった。どちらが仕掛けたものかはわからないけど、小競り合いというようなものだ。

 

 案の定、片方は曹操軍で間違いない。大将は、と奥に目をやれば、肩に大きな髑髏をつけた短髪の将軍がいた。

 

「秋蘭か」

 

 私は視線をもう片方の陣営に移した。

 

「黒の鎧……」

 

 いやになるほど見覚えのある鎧だった。それは間違いなく李儒軍であることを示している。

 

「戦況は……ちっ」

 

 練度では明らかに曹軍が勝っているのに、状況はかなり悪い。

 

 陣形の両翼は止められ、その応援に中央を割いてしまっている。これでは秋蘭自身が敵本陣を狙わなければならない。

 

「動いちゃだめだよ、秋蘭」

 

 この形は、以前師匠と模擬戦をしたときに見たことがある。練度で勝っている兵士での戦い、ましてやその数までこちらの上となれば、普通に突撃してしまえば敵の陣形を崩せるだろう。

 

 でも、互いに軍が左右へ分かれてしまっている以上、その条件である兵数での利が薄れてしまう。もうひとつの練度にいたっては――。

 

「兵士から痛覚を消したのか……最低」

 

 アレの力は私でもそこまで使いこなせたわけじゃないけど、なるほど、際限なく使うとこういうこともできるらしい。

 

 剣で斬られても、槍で貫かれても、矢で射られても、李儒軍の兵士は攻撃の手を止めることなく襲い掛かってくる。

 

 そんな異常なのがあいてだ。徐々に曹軍の士気も下がってくることだろう。

 

 そうなると通常のぶつかり合いの条件は完全にひっくり返ってしまう。

 

 何より最悪なのは、指揮を執っているはずの李儒自身がこの戦場にいないということだ。

 

「くそ……!」

 

 悪態をつきながら、私は戦場を眺める。どう見たって曹操軍の形勢は最悪だ。

 

 斬られても倒れずに襲い掛かってくるような敵があいてなんだから、まず勝ち目なんてあるはずがない。

 

 どうしたらいい。李儒はあの性格だ。おそらくかなり離れた場所から兵士を操作している。

 

 地図を広げ、周囲の地形を確認する。

 

「曹軍の大将は秋蘭……。だったら、ある程度不意をつかれても対応はできるはずだから……」

 

 指で地図をなぞりながら、使えそうな物を探す。

 

 一度に数千の人間の感覚をいじるのだから、かなり意識を統一しないとできるはずがない。

 

 それを乱すことができるような要素。

 

「……秋蘭、期待してるからね」

 

 それは掛け値なしに信用のきく、彼女の腕しかありえなかった。

 

 

 ◆

 

 

 

 事態は最悪だ。以前から薄々だが感じていた。

 

 だが、やはり自分で刃を交えて改めてわかった。敵の兵は不死身であるということだ。

 

 なんど斬りつけてもかまわずに起き上がり斬りかかってくる。頭を貫いたときはさすがに身動きをとらなくなったものの、これではもはや人間ですらない。

 

 兵たちの士気も下がる一方。当然だ。誰も化け物の相手などしたいと思うわけがない。

 

「くっ……李儒、一体何をすればこんな兵士が生まれると言うのだ……!」

 

「がぁあああああ!!」

 

「はぁっ!!」

 

 襲い掛かる人間だった物を切り捨て、周囲を見渡す。

 

「頭を狙え! 化け物とて首がなければ何もできん!」

 

 檄を飛ばすが、それもどれほど効果のあるものか。

 

「秋蘭さま!」

 

「季衣か!」

 

 敵軍を裂いてこちらに来たのは、巨大な鉄球を抱えた少女。季衣こと許褚だった。

 

「はい!こいつら、いったいなんなんですか!?」

 

「わからんが、間違いなくただの人ではあるまい……っ!?季衣!」

 

「はい?――ってうわわぁっ!!」

 

 遠くで何かが光った気がして、季衣をとっさに横へ払い倒した。

 

 瞬間、地面に鈍い音を立てて、矢が突き刺さった。

 

「大丈夫か、季衣」

 

「はい、秋蘭さま、それは?」

 

 季衣の指差すほうには、先ほどの矢が地面に突き刺さっていて、矢には紙がくくりつけられていた。

 

「これは、文……か。――何だ?」

 

「秋蘭さま?」

 

「いや、しかし、誰だか知らんが、何のつもりだ」

 

 疑問を浮かべている季衣を尻目に、その文に目を通した。その内容は――”崖上の大岩を射よ”。

 

 たしかに前方奥の岩壁の上には大きな岩があるが、だからなんだと言うのだ。

 

 あの岩を落とせと言うことか?

 

 しかしそれは、この距離ではまず不可能だろう。通常の弓では届くかどうかさえわからない。

 

「……誰だか知らんが、まったく。名も明かさず、姿も見せず、われ等を勝たせようとするか」

 

「勝てるんですか!」

 

「それは、この矢文の送り主次第だろうな。どの道このままでは敵本陣にさえたどり着けん。季衣。すまんが少しの間、私を敵から守ってほしい」

 

「了解です!」

 

 ――この文の送り主は、私の弓の腕を知っていると言うことか。噂で聞いたなんて認識では、こんな指示を出せるはずがない。なにより。

 

「この私を操ろうと思った豪胆さ。決して忘れぬぞ!!――一矢一殺!夏候妙才の弓の腕、とくと味わえ!!!」

 

 弦の限界ぎりぎりまで引かれた矢は、その衝撃だけで、周囲の敵兵を吹き飛ばす。

 

 通常の飛距離をはるかに超えた矢が、大岩と崖の隙間ぎりぎりへと突き刺さる。

 

 瞬間、岩壁の一部は崩壊し、大岩が崖下へと落下した。

 

 その衝撃によってかなりの砂煙が発生する。

 

 だが、これでは何も状況は変わらない。何が起こる。そう期待もこめた気持ちで、私は前方をみた。

 

 ふわ。と急にそよ風が吹いたような気がした。

 

 ――その刹那、優しげなそよ風は、強風となって、砂煙をこちら側へと運んできた。

 

「なっ……!」

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 どれだけ離れているかはわからないけど、結局は戦場が見える位置でないと、兵士をあやつるなんて不可能。

 

 なら、戦場そのものを隠してしまうしかない。

 

「さすが、正直ちょっと不安だったんだ。見くびってごめん、秋蘭」

 

 矢を放ったのは秋蘭。放った秋蘭も、私の存在をしらない。奴が遠距離からモノの記憶をたどれない限りは、私の存在は気取られないはず。

 

 赤壁でのあれを見てないと、師匠とすごしたあの時間がないと、今回のは思いつかなかった。

 

 それは以前の自分にはなかったもので、同時に、策に頼りすぎなんて師匠の言葉を思い出して、ちょっと苦笑い。

 

「さて、これで状況が変わらなかったらちょっとお手上げだぞ……?」

 

 正直に言って、瞳の力は私が持っていたころよりも強くなっている。

 

 こればかりは未知数だった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

――某所。

 

 ガタリ。椅子から立ち上がったその男は、先ほどまでの嘲笑を浮かべた顔が一切消えていた。

 

「なんだ。兵からの反応が急に消えた……? まさか視認できなければ使えないとでも言うつもりか……!」

 

 ぎりぎりと歯をきしませながら、男は右目を掴みかかろうとせんばかりに顔に手を当てて、悪態をついていた。

 

「突風か。まったく運のいいことだ!」

 

 わだかまりをぶちまけるように、先ほどまで座っていた椅子を蹴り壊し、両手を机へと着いた。

 

「だが、まだだ……!死んだ者の操作ができずとも、痛みを知らぬ兵に貴様等は勝てるのか……?」

 

 再び嘲笑う男は、青白い霧を身にまといながら、自身も戦場へと歩き出した。

 

                                  

 

                                 <続く>

 

 

 

 

 ◆

 

 

あとがき

 

 

第1話ではヒロイン達を出せなかったので、ここからが本当に恋姫の二次小説と言えるかと思います。

まぁ、といっても甘甘でラブラブなシナリオだったりとか、抱腹絶倒のギャグストーリーとかは正直書ける気がしないので、いろいろとごまかしつつ……。そんな話も書きたいんですけどねorz

 

キャラクターの口調などについてはうろ覚えだったりする部分もあるんで、ここおかしくね?ってところがあれば、容赦なくご指摘ください。

 

読んでいただけるとわかるかと思いますが、うちの小説、特に薫る空では、基本武将たちの武力は人間離れしています。

今回の秋蘭しかり、恋もそうですし、凪だってかめはめ波くらい撃っちゃうかも知れません。

演出重視ということもありますが、強すぎワロタwwみたいなことになっても一応各キャラの強さの順列みたいなものは守るつもりでいくので、ご容赦ください。

 

 

ではでは、最後になりましたが、今回もここまで読んでくださってありがとうございます。

また次回、あとがきにてお会いしましょう。ノシ


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