No.407427

真・恋姫無双~武の頂点に立つ者~ 間幕 休息のひととき

これは、ひとりの男の転生から始まる物語。
男は力を得て、何を為し、どう生きるのか。
それはまだ、誰も知らない。
どうも、ナナシノゴンベです。
処女作です。学生なので、鈍亀更新です。ついでに駄文です。

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2012-04-13 00:26:09 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6345   閲覧ユーザー数:5790

 

 

 

 

 第質話 休息のひととき 前編

 

 

 →<三人称>→

 

「ふぅ」

真っ青な空の下で、息を吐いたのは八雲。

今は昼下がり、陽は頂点まで登り、空はぬけるように蒼い。

そんな中、今朝からしていた仕事が一段落した八雲は休憩に中庭に来ていた。

「……黄巾の乱が終結して早1月、ようやく対反董卓連合の大凡の目処が立った」

そう、八雲は詠から回される仕事の他に、反董卓連合に対する準備を着々と進めていた。そして、今日、ようやくそれら全ての目処が立ったのである。

少なくとも、黄巾の乱の真っ只中で下準備を進め、その後1ヶ月で大凡の目処を立てるなど、優秀では済まされないだろう。

「……少し、疲れたか……」

そうして、八雲は空を見上げる。すると……。

「八雲!ワタシと闘え!」

大斧を振り上げ、そう怒鳴る声。それを聞いて八雲は一つため息を吐き、

「またか、いい加減にしてくれ、華雄」

嫌そうな表情を隠そうともせず、そう答えた。

「なんでだ!ワタシは恋とおまえを超える!ならば鍛錬を重ねるのは道理だろう!」

それを聞いて八雲はまたため息を吐いた。

……八雲の最近の心労のおよそ4割は華雄によるものだったりする。

「なーなー、うちを差し置いて面白そうな話せんといてーな」

更に、1割の心労を与える人物まで現れる。霞だ。

この二人、最初の模擬戦で試合って以来、たびたびこうして挑んでくるのである。

初めのうちは八雲も快く受けていたが、仕事が増えていくにつれその余裕もだんだんなくなっていった。

しかし、彼女らにそんなことは関係ない。ある時は仕事中の執務室に突撃し、またある時は八雲が部隊の調練中に闘おうとし(これは、華雄のみ)、こうして、八雲の少ない休憩中にまで

仕掛けてくる始末。要約してしまえば、八雲は疲れきっていた。主に華雄の所為で。

しかし、そこへ救世主が現れる。

「……だめ」

恋である。

恋はそう言うと、八雲へ近づき腕を掴み、

「……八雲は恋とご飯」

言葉少なにそう言った。

八雲は、たびたび恋を連れて食事に行く。確かに金はかかる。かかるがそれでも八雲には恋が必要なのだ。恋の食事姿はとても和む。つまり、八雲にとって恋は癒やしなのだ。

誰かの所為で精神的に疲れきった八雲は恋に癒やされ、恋はご飯を食べさせてもらえる。

そのため、八雲は恋を必要とし、恋は八雲に懐いている。

「し、しかしだな、ワタシたちも闘いたくて……」

「………………」

恋は何も言わない。何も言わず華雄をジッと見つめている。恋の中では、すでに八雲とご飯に行くことは決定事項だからだ。唯一の例外と言えば、八雲の予定が合わなかった時ぐらいであろうか。それだけ、恋は八雲に懐いている。

ジッと見つめる恋に対し華雄は明らかに挙動不審だった。視線はあちこちに飛び、口を開けたり閉めたりを繰り返している。

「し、しかし……」

「華雄、諦め。恋がこうなったら何が何でも動かん。また今度やな」

それをずっと見ていた霞が華雄にそう言った。

それを聞いて、華雄も悔しそうながらも引いた。

「……いこ」

「はぁ、わかった。行こうか」

「気ぃつけてぇなー、あ、八雲お土産よろしくー」

町へ向かう二人の後ろ姿へ霞はそう声をかけるのであった。

「はぁ」

 

 

「もきゅもきゅもきゅ」

町へついてまず向かったのは、定食屋。

とはいえ、料理は当然中華だが……。

「もきゅもきゅもきゅ、ゴクン。……もきゅもきゅもきゅ」

そして、八雲の目の前には皿の山が出来つつあった。

……大皿で。

「……相変わらずよく食べる」

思わず口にする。

「?…………」

恋は不思議そうな顔をして自分の箸に刺した点心と八雲を見比べ、

「食べる……?」

そのまま、ずいっと突き出してくる。

「いや、俺はもういい。これで腹いっぱいだ」

とはいえ、八雲も普通に比べれば食べる方だ。仕事中は簡単に済ませてしまうものの、食べる時は食べる。今も八雲の手元には空になった大皿などが4つ、5つ置いてある。のだが。

「だから、これは恋が食べればいい」

「ん……」

文字通り、恋は桁が違った。

「もきゅもきゅもきゅ」

しかし、彼女のその姿のなんと愛らしいことか、八雲のその口元は僅かながら緩んでいる。

と、そこへ

「ちー

 

 んー

 

 きゅー

 

 キッーク!!」

八雲の後ろからねねが跳び蹴りをしてきた。

しかし、示し合わせたかのように八雲はねねの足を掴み、卓に突っ込まないように、小さい体を支えて、落とす。

「ぴぎゃ!」

ねねはお尻を打ちつけ、痛そうに押えながら立ち上がり、

「いきなり、落とすななのです!だいたい、なに恋殿と仲良さそうにご飯食べてるですか!」

吼えた。しかし、

「いきなり飛びかかってきたのはねねだろう。あと、必要最低限の怪我だけは避けるようにしたんだ。皿の山に突っ込むよりはマシな筈だ。あと、最後のは恋に誘われたからだ」

八雲に見事に論破される。このようなやりとりは一度や二度ではない。

「むむむむむ。ま、まあ、それはいいのです。でも、」

一旦、ねねはそこで区切ると、

「なんでねねを置いていったですかー!」

再度吼えた。それはもう、がーっと言わんばかりに。

実は、ねねも八雲に懐いていたりする。しかし、子供故か素直に甘えられず、攻撃という形になってしまう。結果、八雲の心労の更に2割を締めてしまう。

「わかった、わかった。悪かった」

八雲は完全に疲れ果てていた。

見上げた空は奇妙に蒼く感じた。

 

 

 

 

 あとがき

 

……長い。

パパッと終わらせるつもりだったのに、異常に長くなりそうなのでここらで前編、後編に分けることにします。

凪、月、詠を楽しみにしていた人ごめんなさい。もう少し時間を下さい。入れたいもの全部入れると大変なことになってしまうので、取捨選択しています。

だからほのぼのは苦手なんですよね……。

次回予告

 

休息の八雲の午後は、凪との稽古には始まり、月の様子見、真桜、沙和への仕事回し、詠との黒いお話。

八雲の休息は未だ遠い……。

 

 次回 間幕 休息のひととき 後編

 

  Bloody walk the earth

  (血塗れた大地を歩む)

 

 
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