No.396791

恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第十九話

龍々です。
第十九話です。お待たせしました。
未投稿期間を大幅に更新しました……嫌な記録更新、しかも時間掛かった割に全然長くないorz。

とりあえず、どうぞ。

2012-03-23 18:28:13 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:5797   閲覧ユーザー数:4741

賊がこの街に襲来して数日。

自警団総出で街の防衛に回ったが、向こうの方が数が多く、劣勢に立たされていた。

途中、この辺りの街の見回りをしていたという州牧様の部下の方々が

率いていた部隊と共に援軍として加わってくれたが、それでも数の差は

覆らず、街全体が緊張感に包まれていた

 

 

 

 

筈なのだが。

 

 

「あ、また飛ばされたで」

「賊とはいえ痛そうなのぉ~」

 

この二人程では無いが、他の自警団の皆も同じ気持ちだろう。

気持ちは分かる。確かに分かる。けど

 

「もう少し緊張感を持てお前等!!!」

 

私は心からの叫びを上げた。

 

「え~~、だって全然敵が来ないのぉ~」

「そんなの分からないだろう!?警戒位しろ!!!」

「え~~、あれじゃあ敵さん来れへんて」

「そ・れ・で・も・だ!!!」

「は~~~い、なのぉ~」

「凪も心配性やな~」

「お前達がのんき過ぎるんだ!!!」

 

いくらなんでも賊に襲われてこんなにだらけるのは非常に拙い。

それはこの二人も十分に分かっている。

なのに何故だらけていられるのか。

それは

 

 

「「「「「「来るなああああああ!!?」」」」」」

「退け退け退けえっ!轢かれても知らねえぞおっ!!!」

「ぶぎいいいいいい!!!」

「「「ぐはあっ!!!」」」

「ああ!?またやられた!!?」

「馬鹿野郎!人の心配してる暇があったらあいつらの前に出ねえ様にしろ!!!」

「そうは言ったってこんなに密集してたら思う様に……ってこっち来たあ!!?」

 

今ぼたんが背中に真也さんを乗せながら賊の中を爆走しているからだ。

運悪くぼたんの前から逃げられなかった奴らを吹き飛ばしながら。

ちなみに真也さんは長い木の棍棒を持って、時々ぼたんに向かってくる無謀な賊を

相手に突きを放っている。

 

「なんだよありゃあ!?なんでこんな所にあんなでかい猪が居るんだよ!!?」

「知るか!!!」

「天和ちゃん地和ちゃん人和ちゃんおら達に」

「ぶぎいいいい!!!」

「「「「「「ぎゃあああああ!!?」」」」」」

 

そしてまた数人が吹き飛ばされた。

 

 

「凄まじいな、あの猪……」

「夏候淵様」

 

そんな中、一人の女性が私に近づいてきた。

部隊を率いていた将の一人、夏候淵様だ。

片目が青い髪の毛で隠れており、傍目から見ても冷静という言葉が似合いそうな女性だ。

実はこの方とは、以前私が真桜と沙和の三人で陳留に籠を売りに行った時に

会っていたので、援軍に来てくれた時はとても驚いた。

 

「凄いですよね~~。僕も乗ってみたいです」

「こら季衣。遊びじゃないんだぞ」

「あう。すいません、秋蘭様」

 

今度は一人の子供が話に入ってきた。

同じく将の一人、許緒様だ。

桜色の髪を二つに編み込み、どう見ても普通の少女なのだが、

見た目とは裏腹に大きな鉄球を振りまわせる程の強力を持つ方だ。

 

「猪は凄いが……楽進、あの男は大丈夫なのか?」

「大丈夫です。あの方はできない事をできると言う様な方ではありません」

「そうか。ならば私達も備えるとしよう。行くぞ、季衣」

「はい!」

「では、お願いします」

「うむ」

 

そう言って夏候淵様達は離れて行った。

真也さん、夏候淵様、許緒様、どうかよろしくお願いします。

 

 

 

「くそが!忌々しいぜあいつら」

「お、お頭。どうしやす?」

「お頭じゃねえ!隊長って呼べ!」

「へ、へい!隊長!」

 

元々賊である俺達だが、最近村人共が反乱を頻繁に起こすようになってからそれに

合流し、便乗するようになった。

こいつら、『天和ちゃん達の為に』なんて訳の分からない事を言っていやがるが、

その言葉を上手く使えば俺の手足みたいに動くようになった。

俺はその『天和ちゃん』なんか知らねえけどな。

そしてまた言葉巧みに街を一つ襲わせた。

初めは自警団らしき奴らだけ、援軍もきたみてえだが少数。

ちょいと軍には恨みもあったから更に激しく攻めさせた。

いずれ押し切れるだろうと思ってたが、街から男を乗せた猪が

飛び出してきて状況が一変した。

ただでさえ猪は畑を荒らす害獣、おまけに気性の荒い奴も珍しくねえ。

猪が出れば怪我人が必ず出るって位村人にとっちゃあ恐怖の対象だ。

ましてや通常よりでかい大きさの猪なら尚更だ。

おかげで馬鹿共は逃げ回るのに精一杯で街を攻められねえ。

馬鹿共の中に紛れこんでる俺の部下が何度か切りつけようとしたが、その度に猪の背中に

乗ってる男が邪魔をしやがる。

 

「た、隊長!あいつらこっちに来てやがりますぜ!!?早く逃げやしょう!!?」

 

手下の言葉にその方向に目を向けると、確かにあの猪がこっちに近づいてはいた。

だが

 

「良く見やがれ馬鹿野郎!あいつら素通りしてったろうが!」

「へ?」

 

猪共は俺の横……って割にゃあ距離があったが、そこを走り抜けて行きやがった。

俺の所を見ようともせずに。

 

 

「へっ!敵わねえとみて逃げだしやがったか!野郎ども!今の内にあの街を……」

 

俺が馬鹿共に命令を下そうとした時、いきなり何かがぶつかった様な衝撃が走りやがった。

俺にじゃねえ、乗ってる馬にだ。

 

「おわっ!?何だ!!?」

 

すると馬が暴れ出し、俺を乗せたまま走り始めやがった。

 

「この糞馬!落ち着きやがれ!!!」

 

俺が抑えようとしても、こいつは言う事を聞きやがらねえ。

そんな中

 

「げえっ!?また来やがった!?」

「じ、冗談じゃねえ!?また追い掛けられんのかよ!!?」

 

後ろからさっきみたいな馬鹿共の叫びが聞こえてきやがった。

 

「ま、まさか!?」

 

嫌な予感がして後ろを振り向くとさっきの猪が追い掛けて来てやがった。

だが、さっきと明らかな違いがある。

猪の背中に乗ってた男の得物が半分程になっていやがったのだ。

 

 

「くそったれ!後ろから追い掛けてきやがるせいか!?

 それにあの得物……野郎、自分で折ってこいつに投げつけやがったのか!!?」

 

痛みで暴走した上に後ろから追い掛けられてるせいで止まる気配が無え。

おまけにこの速さじゃあ飛び降りる事も無理だ。

もし降りられても後の猪に突き飛ばされるのが落ちだ。

そして街にぐんぐん近づき

 

「………おいおい冗談じゃねえぞ!!?」

 

俺の視界に、頭上で馬鹿でかい鉄球を振り回す餓鬼が目に入った。

 

「くそ!止まれ!止まりやがれ!!?」

 

なんとか制御しようとするが、全く受け付ける気配がなかった。

それでも何とかしようと悪戦苦闘してたが

 

ドスッ

 

何かが刺さる音が聞こえたと思ったら、俺の視界が真っ黒に染まっていった…………。

 

 

 

「……お見事」

 

首を矢で射抜かれ、馬から崩れ落ちる賊の姿を見た俺はそう呟いた。

暴れ馬に乗っている人間の首を射るなんて離れ業をなした夏候淵に驚嘆の意を持ちながら。

そのままぼたんを走らせて賊の集団から抜け出し、街の前で止める。

 

「貴様らの頭は討たれた! おとなしく武器を捨てて投降しろ!

 なおも抵抗するなら容赦はせん!!!」

 

それに合わせて夏候淵が賊に向かって叫んだ。

実はこれで抵抗されると不味いのはこっちなのだが、あえて強気な所を

見せる事にしたようだ。

まだ他にも隠し玉があるとも考えさせられるし。

けど夏候淵、その言い方だと俺とぼたんがお前の部隊の所属みたいに聞こえるぞ?

まあ、向こうはわからないだろうが。

夏候淵の言葉を受け、ほとんどの人間が持っている得物を手放したが

 

「か、頭がやられた!?」

「じょ、冗談じゃねえ!?早いとこずらかるぞ!!?」

 

何人かがそう喚きだし、我先にと逃げ出した。

本来なら追うべきなのかもしれないが、こちらにそんな余力は無いだろう。

それに下手に追撃すると

 

『抵抗しようとしまいと自分達を殺す気だ』

 

と考えて投降の意思を持っていた人間達も自棄を起こされたら拙いし。

にしても

 

 

「これは、やっぱりあれなのか?」

 

賊という割にはあまりにも得物がおかしい。鍬だの鎌だの鉈だのといった農具が

ほとんどだった。

武器と呼べる物を持っていたのはほんの一握り。ぼたんに斬りかかって来た奴らと、

あの中で唯一馬に乗ってた賊の頭らしき奴、後はちらほらと

集団の中に紛れてる程度だった。

そして

 

「黄色い布…」

 

頭だったり腕だったり、箇所に違いはあるが全員が例外なく着けていたのだ。

『三国志』に『黄色い布』。心当たりは一つだけだ。

 

「黄巾の乱……だよな」

 

俺でも知ってる、張角を筆頭とした農民の大規模な反乱。

そして三国時代へ移る切欠となった乱。

 

「分かった所で、俺にはどうしようもないんだがな……」

 

投降した連中を夏候淵達が縛り終えるまではここで睨みを利かせて、落ち着いてきたら

街の中に入るとしよう。

 

 

おまけ

 

夏候淵達が来るまでの真也の行動

 

「おりゃあっ!」

 

「がっ!?」

「ぐえっ!?」

「熱っ!!?」

 

「次!!!」

「はい!!!」

 

「………なあ」

「ん?」

「あの石、焼いてあるんだよな?」

「ああ」

「ものすごく熱いよな?」

「そりゃそうだろう」

「………」

「………」

「……なんで投げれんだ?あの兄ちゃん」

「……わからねえ」

 

焼き石で投石してました。

 

 

後書き

 

とりあえず防衛線終了。

もう少し続いてたんですが、区切りがつかないのでここで切り。

どうでもいい事ですが、真也の持ってる棍棒は細工がしてあって

二つに分かれるようになってました。

だから折ったというのは間違いです。

次はあの方達が出ます。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
24
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択