No.391895

二度目の転生はネギまの世界 第一話

俺はある事件で死を迎え、天使の力によって「されど罪人は竜と踊る」の世界に転生した……はずだった。だが気がついたら、俺の目の前には天使が……っておい! 転生はどうなった! 努力なしに力を得ることを嫌う俺は、三度目の生に「ネギま」の世界を選択するが……はあ、いったいどうなる事やら。

2012-03-15 17:10:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:28015   閲覧ユーザー数:26279

 

第一話「転生したはずだよね、俺?」

 

 

 今俺の前には、頭を下げ続けている金髪の女性っぽいヒトガタがひとつと、その横でため息をついて眼鏡の位置を直している黒髪の男性っぽいヒトガタがひとつ。どちらも、白を基調とした服を着ている。

 

「ねえ、確か俺って転生したんですよね? なのにどーして、またこんなところにいるんですか?」

「ですからそれはこちらのミスだと謝っているでしょう、そんな目で見ないでください」

 

 やや敬語を混ぜつつ、頭を下げ続けるヒトガタではなく、立っているだけのヒトガタに刺のある言葉を投げかけている俺の名前は、ジル・ドリイエ(仮)である。ああ、自分の名前なのに(仮)が付いているのには理由がある。それを説明するのには結構長い時間が必要だ。

 それは二年ほど前の話になる。とりあえず転生の時に記憶のほとんどを失ったためよく覚えていないが、俺は死んだ。そしてこの空間につれてこられた。ええと、確かその時の説明は……そうだ、『世界の歪みの修正の犠牲になりました』だ。

 世界の歪みってのは、頻繁に発生するようなものらしい。ただ、それが世界の危機に陥るようなレベルにまでいかないだけで。だけどそれは、たまに世界を崩壊させ得るまでに膨れ上がることもあるらしい。そうなったとき、その世界の管理者はその歪みを修正しなければならないそうだ。

 その歪みの修正者、世界の管理者のうちの二人が今俺の目の前で頭を下げ続けているヒトガタとその横に立っているヒトガタ、他称『天使』だ。なぜ自称ではなく他称なのか聞いたら、どうやら彼らは自分たちを呼ぶのに、目の前で立っているだけの天使なら『第三統括世界管理者』といったように、番号管理されているかららしい。天使とは、どうやら彼らが管理している世界の住人がそう呼んだのが始まりであり、説明を楽にするためにしか使わない称号だからだそうだ。

 

「でもねえ、まさか二年でこっちに来ることになるとは思ってなかったんですよ? どうしてですか?」

「ですからそれは……」

「それは?」

 

 そして本来、この管理世界に管理される側の存在が来ることはあり得ないらしい。関係者以外立入禁止(スタッフオンリー)ってやつだろう。だが、ある条件を満たした被管理存在は召喚される。それが、世界の歪みの『修正の』犠牲になった者、らしい。

 歪みの犠牲者は呼ぶことはないそうだ。世界中の戦争や紛争のほぼ全てが世界の歪みだという。その犠牲者をすべて呼ぶなんて、確かにきりがないな。

 だが、天使が責任をもってその歪みを修正する際に犠牲になった者には、責任問題が浮上するそうだ。そしてその清算の為に、被管理者は召喚される。そして俺は二年前、ここに召喚された十七人の被管理者の一人というわけだ。

 

「ちょっとした手違いだって「この馬鹿、第七統括世界管理者のせいなんですけどね。あなたが告げた条件をもとに転生させておいてくれと頼んだら、まさかあれほどひどい条件で転生させるなんて……いえ、馬鹿に頼んだ私も悪かったですね。すみません」第三統括世界管理者! 言い難いことを真実だけ告げないでください!」

「丸投げにしたんですか!? まあそれはいいとして俺の告げた条件? ええと……」

 

 確かに俺は、転生時に条件をいくつか告げた。ただ、同時に転生することになった十六人全員が無欲すぎると言い、目の前の第三統括……言いにくい。第三天使が近代稀に見る無欲さだと驚愕したほどに謙虚な条件で。『されど罪人は竜と踊る』の世界に転生させることを選んだあとに付けた四つの条件は……確か。

 一つ、三歳で前世の記憶を取り戻すこと。ただし名前や前世での生きざまといった記憶は、転生の仕様上の問題で消失は避けられない、と言われたが。

 二つ、咒式士としての才能を与えてほしい。

 三つ、鍛えた分だけ強くなる代わりに、最初の状態は低くていい。

 四つ、原作メンバーの誰かと強い接点を持つようにしてくれ。

 うん、この四つだったと思ったが……どうすれば二年で命を落とすようなことになるんだ?

 

「そうです! あの条件を満たすなら、苦難があればあるほど強くなるだろうと考えたんですよ? だから、神聖イージェス教国に、アルリアン人として転生させました。イーギー・ドリイエの弟として!」

「申し訳ありません。こんな馬鹿で」

「確かに馬鹿だ。大馬鹿だ」

 

 おいおい、いくらなんでも、イーギーの弟はありえん。あいつは、強制収容所に入れられた過去を持つ。おそらくだが……

 

「あなたが想像していると思われる事と同じことが起こりました。あなたの転生先であるジル・ドリイエは二歳で強制収容所に入れられ、そのまま命を落としました」

「で、三歳で覚醒するはずだった俺の魂は、ジル・ドリイエって仮の名前だけ持って舞い戻ってきたってことか? ふざけるなよ」

「な、なんで怒るんですか!? 私は良かれと思って「そろそろ黙りなさい、第七統括世界管理者」どうして!?」

 

 第三天使が第七天使を制止させる。確かにこれ以上は(この管理世界にあるかどうかは別だが)時間の無駄だ。

 だが、困ったことに、転生にもいくつかルールがある。そのうちの一つが、前世の記憶を持っている場合、同じ世界に転生することを禁ずる、というものだ。つまり、元の世界には戻れない、ということだ。

 俺がされ竜の世界に行きたかったのは、咒式を使ってみたかったからだ。別の世界に転生して使ってもいいのだが、ここで第二のルールが立ちふさがる。その世界の法則から外れた能力を扱うことを禁ずる、というものが。

 つまり俺は、この先咒式を扱うことは期待できない、ということになる。もしも転生先の世界法則と咒式法則が一致すれば咒式は使えることになるが、それは運任せにも程がある。

 だから俺は、二番目に行きたかった世界の名を告げることにする。

 

「さて、もう第七統括世界管理者の言葉は無視しましょう。ところで次の転生はどうしますか? 本来ならば転生先の容姿や種族や年代の設定はこちらが決定するのですが……前回のお詫びです。四つの願いの一つで、これら全てを決定してもよいですよ」

「え、いいんですか? では、転生先はネギま。性別は男性、見た目はFateの英雄王だけど眼は翡翠色で。前世の記憶は前回と同じく三歳で思い出すようにしてもらって、年代は……真祖になることを条件で、原作開始七百年前にしてください。真祖化が無理ならもっと後にしますが……」

 

 俺の好きな外面は、こんなところだ。一言で言えば旧セイバーだが、わかりやすく言えばこうだろう。ネギまなら、金髪に翡翠色の眼でもおかしくはあるまい。

 

「転生先は第十八統括世界管理者の管理するネギま世界、見た目は緑眼の英雄王、三歳で前世の記憶を思い出す、年代は原作開始七百年前、と。真祖になる年齢はどうしますか?」

「え、そんなところまで決めていいんですか!?」

「ええ、あなたは他の転生希望者よりも圧倒的に欲が小さい。この程度は前回の余剰分とすら言えますから。それで、幾つで真祖になりますか?」

 

 困った、こんな要求は通らないと思っていたから、考えていなかった。が、いちいち迷う必要もないか。

 

「二十歳くらいで。若すぎても悲しくなりそうですから」

「二十歳で真祖化、と。これで基礎となる情報の入力は終了しました。あと三つ、願いを叶えてから転生させます」

「あと三つ、か……」

 

 まあ、一つは決まっている。駄目だったら駄目で、また考えればいい。

 

「咒式を使用できるようにするって、可能ですか?」

「咒式ですか? ええ、大丈夫ですよ。あれは科学方面からアプローチした魔法ですから」

「え、そうだったんですか!?」

 

 いや、確かに異世界からエネルギーを取り出す魔法である、って言うこともできるからなぁ、咒式は。

 

「それじゃあ、咒式士としての才能とある程度の咒式理論をください。独学で何とかするのはきつそうなので」

「そうですね。では、咒式理論を前世の記憶と一緒にお届けします。咒弾はないでしょうから、物理干渉能力もセットにしておきます。では、次の願いをどうぞ」

 

 物理干渉能力。咒式士は咒弾を構成する物質を媒介にしなければ咒式を扱えない。この常識を覆す、というよりは、咒式理論が完成する前から咒式を扱っていた存在が持っていた、咒式を扱うために本来なら必須である特殊能力である。

 なるほど。これがなければ咒式士にはなれそうにないな。さて、次の願いは……やっぱこれだろ。

 

「次はじゃあ、魔力や気、体術、咒力の最大値を青天井にしてください。鍛えれば鍛えるだけ強くなるって形で」

「前回も望んだものでしたね。ですが一つ言っておきます。咒力と魔力は同一のものとなります」

「ああ、咒式は魔法の一種でしたっけ」

「そういうことです。本来なら魔力の最大量は変わりにくい世界ですが……才能として、変化率を最大にまで引き上げておきます。さて、最後の願いをどうぞ」

 

 最後の願い。これも既に決まっている。俺が俺であるための、一つの条件。

 

「転生したばかりの魔力量・気の量・魔法の腕・咒式の腕は一般魔法使い程度でお願いします」

「それは初期条件から変化させないことに等しいため、却下します。最後の願いをどうぞ」

「む……」

 

 しまった、それは考えていなかった。確かに俺にとっては必要条件でも、天使からすればそれが当然であるのだ。

 となると……前回の過ちを繰り返さないために使うべきか。

 

「では、少なくとも二十歳までは人として過ごせるように。つまりは、四肢の欠損や酷すぎる病気などが起きないように運命を調節してください」

「二十歳に真祖になるように調節しましたので、その願いはすでに受理されています。最後の願いをどうぞ」

 

 ……しまった。マジで最後の願いが思い浮かばない。第二のルールに抵触しないように能力を選ぶのは、以外と辛いんだぞ!

 ええい、こうなったら、否定されてもいいから言ってみるか。

 

「じゃあ、時間操作能力は可能か? 東方の十六夜咲夜の能力だ。魔法系にしてもいい」

「時間操作能力、ですか? どこまで可能になるか調べますので、少々お持ちください」

 

 そう言うと、第三天使は何やら空中からレポートのようなものを呼び出してはひたすら読んでいく。確かに、時間操作能力は大抵の世界では不可能に近い。できてもかなりの制限がつくだろう。

 ややして、ようやく顔を上げた天使の顔には、かすかな笑顔。

 

「結果が出ました。超鈴音が時間跳躍を使用しているため、魔力の消費を無視すれば、ほぼ全ての時間操作が可能となります。どこまでを可能としますか?」

「え? マジで? じゃあ、時間の加速から遅延までは、時間当たりの消費魔力量で速度が強く変化するように。あとは自分限定で時間への停滞。他者限定で時間停止と時間逆行。ただし、タイムパラドックスは発生させたくないから時間軸逆行は不可能にしてくれ」

「時間操作能力(操作対象:時間軸逆行以外)、と。魔力消費量はかなり莫大ですが、修練および術式の改良で魔力消費量は減らせます。おそらく、これがお望みですよね?」

「もちろん」

 

 どうやら第三天使は、俺の好みを覚えてしまったらしい。うれしいが、好みを覚えてくれるなら、隣で声もなくさめざめと泣いている女性型である第七天使のほうがいい。男性型に趣味を覚えられても、ねえ。

 

「ですが、良いのですか? 前回も確認しましたが、わざわざ自分を弱く設定する必要はないのですよ?」

「はっ、前回も言っただろう。俺のモットーは……」

 

 本来の口調に戻し、わざと少しため、笑顔を作ってから言い放つ。

 

「『進化をやめた生物に、生きる価値はない』だ。自分の足で進むことを忘れ、自己を磨きあげることを忘れ、停滞することに意味はない。そのためには、最初は弱くなくちゃいけないんだからな。それはそうと、こっちも聞いておきたいんだが」

「なんでしょうか」

「前回も確認したが、マンガや小説の、物語の世界の人間って、生きているのか? 生きていないのか?」

「前回も言いましたが、物語の世界とは……」

 

 第三天使も、俺と同じようにわざわざためを作り、表情を変えずに言い放つ。

 

「世界があって、その世界を疑似観測できた者が、物語にするのですから。世界があって、そののちに物語が生まれる。あなたが転生する世界でも、全ての存在は生きています」

「そんな世界に、イレギュラーを入れてしまっていいのか? 原作なんて跡形も無くなるかもしれないのに?」

「その世界のコピーに転生させますので大丈夫です。あなたの知るタイプムーン的にいえば、並行世界ですね。安心して原作破壊してください」

 

 ここまでは、ほぼ前回と同じ。まあ、ここから去る俺からの、最後の確認ってやつだ。

 

「……第三統括世界管理者…………ネギま世界のコピー……持ってきた…………はい」

 

 声が聞こえたので左を向くと、銀髪に翡翠と琥珀のオッドアイをしたロリ巨乳という、二次創作で扱われるような要素をこれでもかと言わんばかり詰め込んだ天使が、ビー玉程度の大きさの何かを持ってやってきた。

 先ほど第三天使が口にした、第十八天使だろうか。

 

「ありがとうございます、第十八統括世界管理者。さて、転生者、ジル。あなたの人生に幸あらんことを」

「そうだな。んじゃな、何事も無ければもう会うこともないだろうな」

 

 第三天使の手に渡ったビー玉が発光し、俺の視界が光にのまれていく。意識が遠のいていく。

 さあ、第三の生の始まりだ!

 

 
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