No.382127

エベレストは昔海だった

健忘真実さん

小説家で友人の平岩隆氏と意見交換をしながらの更新が数回。
1か月を要して書き上げた、洞窟探検(冒険)物語です。
あ、別のサイトで、ですが。
世界最高峰エベレストといえば、イエティ(雪男)が有名で、
また、海底が隆起して8848mの高さまで盛り上がり、

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2012-02-23 13:22:36 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:1105   閲覧ユーザー数:1105

【エベレストは昔海だった】

 

 今から16年前、私は「日本雪男研究グループ」の一員として、エベレストへ出かけ

た。生物生態学の研究員であり、途或大学探検部のOBでもあった。

 しかし、現地のシェルパ族から集めた情報によると、足跡はキツネのもの、目撃され

ていた生き物はヒグマであり、アカゲザルやキツネの毛と、鳴き声はユキヒョウである

ことが分かった。もっと詳しくいうと、エベレスト登山のための資金集めとして、イエ

ティ(雪男)という架空の生き物が作られた、というのだ。

 

 

 現在48歳となった私は、6人のパーティーを組織して、エベレスト南西壁の下部、

クーンブ氷河の5200m地点を歩いている。

 昔より親しくしているシェルパ族のひとり、ラクパ・シェルパから興味ある情報が伝

えられたからである。

 温暖化の影響は極地において、より大きい。

 ヒマラヤ山脈の氷河が崩れたり後退して、岩肌が露出している所が増えてきている。

そうした中、ラクパの仲間のひとりが洞窟を見つけたのである。何万年にもわたって氷

雪に閉ざされていた洞窟である。

 エベレスト山脈は5000万年前に海底の堆積層が隆起してできた山であり、現在も

隆起は続いている。山頂からは貝類などの化石が見つかってもいる。

 

 2年の準備期間中に、事前調査に出かけ、スポンサーを探し、洞窟の生き物の知識を

得、登山技術を磨いてきた。低圧室にも2回入った。入山者の少ない雨季の8月から、

10月の3カ月を途或大学探検部のメンバーと行動を共にする。

 ネパール・カトマンズから小型飛行機でルクラに入り、徒歩で10日目である。途中

ナムチェ・バザールで食糧を買い足し、15人のシェルパ族をポーターとして雇い、食

糧や機材などを運び上げていく。

 

 頂上を極めるわけではないのだが、高所順応がうまくいき、今のところ誰も体調不良

は訴えていない。

 高度2500mを超えると、締めつけられるようなドクンドクンとした頭痛に見舞わ

れ始め、5000mともなると心拍数は増え、浮腫を起こし脱水状態となるのが普通だ

が、低圧室トレーニングが功を奏しているようだ。

 雪まじりのガレ場を1歩1歩ゆっくりと踏みしめる。所々には雪渓が残っている。氷

河の名残だ。まもなく登りを終え、下りに入って4820mの地点に洞窟の入口はある。

 雨季にもかかわらず頭上には濃紺色の空が広がり、世界第2位の高峰ローチェが、神

の座を思わせる威容を見せている。しばしサングラスをはずして見わたすと、雪による

光の反射で目が痛い。

 

 ポーターたちは洞窟の入口に先に到着して、テント設営と食事の準備をしているはず

だ。それが済めば連絡員として2人のシェルパが残り、他の者はすぐに引き返していく

ことになっている。

 洞窟の入り口はかがんで入れる大きさだが、少しゆるい傾斜を下ると立って十分進め

るほどの高さとなっている。曲がりくねった壁に沿って進むとさらに広い場所に出る。

息苦しさはない。そこから3方向に進路はあるが、2つはすぐに行き止まりで、残るひ

とつは急こう配のくだりになっている。

 昨年の予備調査では、ここから500mの長さのロープを固定しておいた。

 今回はここにベースを置くことにしている。

 

 この数年の間に、外の動物が入り込んでいるようだ。昆虫類も、洞窟特有の昆虫とい

うより、外部から入り込んだ虫が優勢になっている。目の構造を見れば分かる。その虫

を狙ってコウモリまでコロニーをつくっていた。

 

「だれか、固定ロープの安全点検に下りて行かないといけないね」

「先生、僕と吉田君とで点検してきます。去年のこと、よく分かってますから」

 三上は昨年も私と同行し、ルート工作に素晴らしい活躍を見せてくれた。

「よし、では頼んだぞ。劣化はしていないと思うが、ボルトやハーケンが緩んでいるか

もしれない。気をつけて行ってくれ。それが済めば、明日から順次装備を下ろしていく

ことができる。僕たちはその間にここまで物資を運び込み、ケーブルも接続しておこう」

 

 三上と吉田はハーネスに登攀具を携え、ヘッドランプを固定したヘルメットを締め直

し、気合を入れて下りて行った。

 

 私の名は松本博。

 三上潤は登山経験が豊富な電子工学の専門家で32歳。無論探検部OBである。

 吉田海斗、大橋祐樹、三宅浩二、藤岡雄介らは探検部所属の3・4年生。

 他にシェルパ族のパサンとカマル。ふたりには小型発電機の管理と連絡係、そして村

からの物資調達をお願いしている。

 発電機は洞窟入り口付近に設置しているので、そこからケーブルを引きこまなければ

ならない。同時に通信ケーブルも設置していった。

 ルート開拓は三上、吉田、大橋、三宅が当たり、藤岡はベースキーパー、主として記

録係であり、その他雑用といってはなんだが、多くの細かい仕事を受け持ってもらうこ

とになっている。

 私は洞窟内の地図の作成と、生物調査をしていくことになる。

 

 

 洞窟の中では天気を気にする必要がないので作業は順調に進み、さらに2000mの

固定ロープが3日がかりで設置された。私はその間に洞窟の壁を調べていたのだが、め

ぼしい成果はなかった。生き物は見つけられなかったのである。

 固定ロープを張ったその先は真下へ300m、まるで井戸のような空洞となっていた。

私はそれを『大井戸』と名付けた。

 

 『大井戸』を懸垂下降で下りて行くのはかなりの度胸が要る。

 下は漆黒の闇である。地獄への入り口とはこのようなものなのかもしれない。

 ヘルメットに取り付けたヘッドランプの淡い光を上に向けたり下に向けたり、時々壁

を照らしたりするのだが、下に開いた空間に吸い込まれていく感覚に変わりはない。下

降器から下側に垂れさがっているロープを片手で軽く握り、滑るようにして降りていく。

単調さの中でふと、手を離せばどうなる、と分かりきったことを考えてしまったりする。

 3番目の下降なので、下からボヤーッとした明かりが見えてきた時にはホントに救わ

れた気分になった。最初に下りた吉田君はどんな気分だったろうか。

 

 登り返しにはユマールという登降器2つを使って、尺取り虫のようにして上がってい

く。これには慣れが必要で、トレーニングの初めのころはかなりてこずったものだ。

 

 地上から染込んだ水が小さな流れを作っているところがあり、湿度は高いが気温はほ

ぼ15℃と安定している。高度計は洞窟の中では役に立たず、推計3000mといった

ところか。

 今いる所は広々とした空間になっている。上も下も周囲すべてが岩山のようで、水の

浸食により天井はツララが下がっているような形になっている。それでも平坦な場所を

見つけられた。

 ここからは水平方向に進路が取れそうなので、とりあえずここを前進キャンプ地とし、

荷物を下ろす作業に取り掛かることになった。

 このキャンプ地は、大学の名を取って『途或王宮』と名付けた。

 

 若い者たちが荷物を担いだりロープで吊り下げたりと、黙々と働いてくれたおかげで、

4日で3tもの食糧と装備を無事に下ろすことができた。その間に私は生き物を求めて、

壁とにらめっこを続けていたのである。

 ムカデやヤスデの仲間、クモ類、ワラジムシを数匹見つけ、プラスチック容器にそれ

ぞれを採取した。それらは小さくて色素は抜けている。

 

 文献によると、洞窟では餌にありつける機会が少ないので、からだは小さくて代謝も

遅く、寿命は100年を超えるものが多いらしい。数か月食べ物がなくても生きていけ

るということだ。

 同種属に出会う機会も少なく、どのように繁殖してきたのだろうか。

 2011年9月8日、きょうとあすは休養日とした。

 上半身裸になって久しぶりに太陽を浴びた。紫外線がよくないのは分かるが、これか

ら1ヶ月間は太陽を拝めないから構わないだろう。ただ眼だけは大切にしなければなら

ない。雪目にでもなれば、計画はお釈迦となる。洞窟の中ではきっと瞳孔は開ききって

いたはずだ。

 

 両腕を上げて思いっきり伸びをした。

 ああァ 空気がうまい! 

 空気は薄くても外気は気持ちがいいものだ。

 登山シーズンに入っているので、若者たちはエベレスト登山のベースが置かれている

地点まで行ってくると、出かけていった。若さの持つエネルギーは羨ましい限りだ。三

上もまだ若いもんだなと感心する。学生たちに負けていない。

 

 

 彼らは客人を連れて帰ってきた。イギリスの遠征隊のポーターのひとり、タァーとい

う男である。

 我々の進捗状況は、ナムチェ・バザールにいるラクパ・シェルパに届くようにしてい

る。

 タァーがインドにいる時、そこで知り合った日本人が好きになり、ラクパから日本人

の洞窟探検隊の話を聞いて、どうしても会いたくなって土産まで持ってやって来たのだ。

 タァーも交えてにぎやかな夕食会となった。少し寒いが、ダウンを着こんで、満天の

星を見ながらの飲み会だ。

 今夜は夜ふかししよう、差し入れの酒を飲みながら・・・久し振りの酒である。

 そうしてタァーの話に耳を傾けた。

 

 中国はラサのチベット人であるタァーは、漢人のチベット人に対する蔑視と、やせた

土地での農業だけの厳しい生活から逃れるために、ヒマラヤ山脈の東端に位置するナト

ゥラ峠を越えてブータン王国に入った。そこで職を探したが見つからず、インドにまで

出かけて行ったという。

 

 久しぶりに外側の人間とする会話は弾み、楽しい気分にさせてくれている。いや、タ

ァーの差し入れのおかげかもしれない。ホテルのバーテンをしていたという彼の差し出

す酒はうまかった・・しばらくは飲めないのだからゆっくりと味わうことにしよう。

 

「ブータンね、たばこの販売禁じられてるよ。国外から持ち込みオーケーね。だけど関

税200パーセント付くね。だから私、たばこ運び屋してたことあるね。内緒内緒でね。

高く売れるけど、命懸けよ。見つかたらヤバイの、分かるでしょ。家族、早く呼び寄せ

たかたのよ」

 

「日本語はどこで覚えられたのですか?」

「インドのホテル。バーテンしてた時ね、お客さん、面白い男きて。たしかァ、ひら・・

ひらいわ、言てたかねェ。いい人、いぺんで好きになたね。日本好きになたね。それか

ら勉きょした」

「ほう、どんな男だったんだろう」

「好奇心強いね。なんでも知りたがてたよ。私、意気合てね。相手気持ち大切する人。

情に厚いは日本人、特性ね。今、どしてるかね。10年前のこと、時々思い出すよ」

「このきれいな月を見てるかもしれないですね。上弦の月、ってゆうんです」

 

 私は月を見上げて、口げんかばかりしていた妻、美也子と中学生の息子、孝史と強の

ことを思い浮かべた。

 

 いつの間にか学生たちは寝込んでいた。三上もウトウトと舟を漕いでいる。久しぶり

の酒だし、かなり歩いてきただろうから疲れているのだろう。パサンとカマルに頼んで

洞窟の中のシュラフまで連れて行ってもらった。

 上弦の月は山に遮られて、まもなく見えなくなろうとしている。

 私はこの気さくな男と、酒で体を温めながら深夜まで話をしていた。

【ロープ切断】

 

 無理をしていたのか、体調を崩した三宅君を残して、三上、吉田、大橋、私の4人は

先に下りることにした。

 

 『大井戸』と名付けた穴の下り口付近で、カニムシを見つけた。サソリのような形を

していて、鋭いハサミを持つ、体長2~3cmぐらいの節足動物だ。数匹が集まってハ

サミを振り回して切り合っているようにみえる。珍しいこともあるものだと、しばらく

見入っていた。ハサミで仲間を切って食べているのだろうか。

 繁殖のためのものかもしれない、カマキリのような。

 

 標本をつくるために、1匹ずつ3体をプラスチック容器に入れた。

 それらには気にもかけないまま『途或王宮』に達すると、その先を探りながら三宅君

の到着を待つことにした。

 

 12日になって三宅君からメールが届いた。

 

「先生、三宅君からメールが届いていますよ」

「まだベースにいるのだろうか、体調が思わしくないのかな」

「先生! ものすごい数の虫が大井戸の下り口付近にうごめいていて、近付けなかった

そうです」

「ほう、2日前に見つけたカニムシだろう。それが多数集まってきているというのかね。

たしか今日は満月だからやはり、こんな洞窟の深くでも月の影響を受けているのだろう

か。これは興味ある事柄だ。観察してくるよ」

「あっ! それどころではありません、通信が途絶えました!」

 

 まもなくしてライトの光が消えた。私たちは皆その場に立ちつくし、お互いの存在を

確かめ合った。

 

「ケーブルが切れたのではないでしょうか、見てきます」

 すかさずヘッドランプを付けた吉田が、足元周辺を照らしながら歩きだした。

「いや皆で一緒に行こう。状況は分からないが、電池は節約したほうがいいだろう」

 

 『大井戸』の基部まで行きヘッドランプを上に向けたが、どうなっているのか分から

なかった。固定ロープを軽く引っ張ると・・・ロープはヒュルヒュルと音を立てて勢い

よく落ちてきた! すんでのところで落ちてきたロープを避けることができたが。

 切り口は黒く焦げており、黒く焦げたカニムシが数匹かたまってこびりついていた。

 

 ロープの切り口に光を当てていた吉田、そして我々は誰も言葉を発しない。それが意

味することが分からなかったのである。いや、考えたくなかったのかもしれない。じっ

と口を切り結んで切り口を見つめていただけだった。

 

 数秒なのか数分なのかどれくらいの時間が過ぎたろうか、大橋がぽつりとつぶやいた。

「僕たち、どうなるんだろ」

 はっ、と顔をあげて見まわした。皆もやっと気が付いたようである。

「ここを登らないと・・帰れないんだ・・・」

 

 300mの『大井戸』の壁はほとんど垂直になっている。ここを登るとするとハーケ

ンやボルトなどの道具が必要で、少なくとも1カ月はかかる。いや、ここを登りきるほ

どの道具がない。

「三宅君と藤岡君が救助を要請したとしても・・・早くても2週間はかかるだろう」

 私は淡い光の中にいる3人に順に視線を送った。三宅が確たる口調で応じた。

「それに期待するしかありませんね」

 

 切断されたロープを回収して、前進ベースである『途或王宮』に戻った。

 真っ暗闇の中で車座になり、どうするかを話し合った。皆の表情は見えない。言葉の

調子から、大橋と吉田はかなり動揺しているのがうかがえる。いや、私も同じだ。きっ

と三上もそうだろう。三上は黙ったままである。

 雰囲気を和らげるためにも、提案してみた。

「少なくとも2週間ここにいなければならない。とすればその間、この先の探検に出る

というのはどうだろうか」

「こんな気持ちで探検に出るなんて、できません。きっと事故るでしょう」

「大橋、君の気持は分かる。だが、ここでじっとしているだけでは、それこそ落ち着か

ないんじゃあないだろうか。せっかく与えられた時間、有効に使ったほうがいいと思う。

そのほうが気も紛れるだろう? 吉田はどう思う?」

 三上がリーダーらしく、皆の気持ちを引きだしてくれている。

「2週間で救助は来るでしょうか? 食糧は1か月分ですよね。だったら、大井戸にル

ートを付ける、という手もあるでしょう」

 吉田の意見に水を差さねばならないのは心苦しいが、あえて言った。

「水がね、そんなにないんだよ。洞窟の中には湖が付きものだ。そこで補給できること

を前提に計画を立てているからね。もし見つからなくても、水は上から補給してもらう

ことになっていた」

 

「ふたつのグループに分かれて・・登攀組と探検組と」

「いや、たった4人だ。ふた手に分けてしまうのは危険だと思う。一緒に行動すべきだ

よ。通信手段を無くしてしまったんだから」

 ぼそぼそという大橋の言葉に、三上は強く言い返した。キッと顔を上げた気配の大橋。

「僕はここから離れたくないんです。ここで食糧や装備の見張りをしてますよ」

「なにから守るというんだね」

「さっきの虫みたいなのが出てくるかもしれないじゃないですか!」

 

「大橋君、落ち着きなさい。やはりここでは皆が一緒にいるべきだと思う。ここがどん

な所なのかを知ったほうが・・・別の出入り口が見つかるかもしれない」

 自信はないが、大橋を落ち着かせるために言った。

「僕は・・・僕はこわいんです。もしこのままずっとここにいることになったら・・・

僕はここで死んでしまうかもしれない」

「大橋、一緒だよ、俺も怖い。だがやはり一緒に行動しようぜ」

「そうだ! そのほうが皆安心なんじゃないのか」

 

 三上、吉田の言葉に涙がにじんできた。そっとそれをぬぐった。

「三上、大橋、吉田、皆でひとつだ。一緒でないといけない。それにはこうして意見を

ぶつけることも大切なことだ。心にわだかまりがあっては事故を起こす要因となる。そ

の上でどうだろう大橋、共に生きていくために一緒に行動してくれないか」

 大橋は黙っていた。

「1週間。1週間で行ける所まで行って引き返そう。それから思ったことは表に出す、

決して一人で思い悩まないこと、いいね」

「大橋、それでいいよな・・・」

 

 三上は立ち上がって右手を前に差し出した。皆も立ち上がり右手を差し出して重ねて

言った。

「よーし、一致団結、生きて帰るぞう!」

「お―っ!」

【洞窟探検】

 

 2週間分の食料と持てるだけの水、若干の着替えとドライスーツ、シュラフを入れた

ザックを背負い、ハーネスと登攀具を身につけ、40mザイルを肩掛けにし、ヘルメッ

トをかぶったスタイルで洞窟深くに入って2日目。大きな湖に突き当った。我々は『命

の湖』と名付けた。

 ビニールボートは前進基地である『途或王宮』に置いてきている。左右は取り付きが

困難な壁だ。

 

「泳ぎが得意ですから、僕があちらに渡ります。ロープを張ってチロリアンブリッジと

いきましょう」

 大橋の頼もしい提案が嬉しかった。ドライスーツに着替え、少量のハーケン類とハン

マーを腰に、ザイルをハーネスに結わえて水の中に入って行った。強力サーチライトで

行く手を照らす。

 ウウーッ冷たい、と言いつつも寒中水泳には慣れているようである。

 

 湖は幅20mほど。両岸壁にロープを固定。

 吉田が、自分のハーネスのカラビナをロープに懸けぶら下がった。両足をロープに懸

け、両手でロープを手繰っていく。背中が水の中に浸かっているが腕力で瞬く間に渡り

きった。

 吉田が腰にぶら下げていったロープとユマールを使って、すべてのザックを送った。

 

 私の番だ。ハーネスのカラビナをロープに懸けてぶら下がり、足をロープに引っ掛け

てひょいとロープの上に腹ばいとなって、手でロープを手繰っていく。ゆっくりとした

進行になるが、腕力は少なくて済む。

 ロープは私の重みで大きくたわみ、湖面すれすれまで下がった。というかお腹がちょ

っと濡れてしまったのだが。

 練習でのチロリアンブリッジは楽しいものであるが、こういった状況の中では大変緊

張する。後半は引っ張り上げてもらって終了。

 三上はよほど慣れているのか、瞬く間にそばまでやってきた。

 このロープは帰りにも使用するので、このままにして先へと進んだ。

 

 

 5日目。

 昼夜はないので時計でしか時間経過が分からないが、体のリズムとは不思議なもので

ある。空腹や眠気は、自然とほとんど同じ頃にやってくるようだ。

 寒いというほどではないが、宇宙食ばかり続くと、火を使った温かい料理を食べたい

ものである。食べることは腹を満たすだけではなく、それ自体を楽しむためのものだと

分かる。4人で話をしながら食べていても、すぐに食べ終えてしまうからなぁ。

 タァーさんとの酒盛り、もうずっと昔のような気がする。

 

「おい、風を感じないか!?」

 先頭を歩いていた三上が立ち止まって周囲に目をやっている。

「ホントだ。きっと地上に通じてるんだぜ」

 吉田は指につばを付けて上にかざした。

「こっちだ!」

 吉田が向かった先には小さなトンネルらしきものがあった。這いつくばって通れるぐ

らいの穴である。

「中に入って見てきます」

 

 しばらくすると吉田の声が響いてきた。

「おお~ぉいぃみぃんな~ぁ、荷物ぅを~ぉ置いぃて~ぇ来てぇ~くだぁさい~ぃ」

 

 私はお尻を壁にひっかけながら、下から押してもらい、上から引っ張られて、やっと

トンネルを抜けた。

「こりゃ・・・こりゃこりゃこりゃ」

 言葉が出てこない。照らし出された物を見て目をみはるばかりだ。

 そこにはひと塊となった骨があった。

 頭骨をみると哺乳動物・・はっきりといおう、大きさからいっても人間のものらしい

骨なのだ。しかも生活の後がある。

 一体の骨だけが衣類を纏っていた。チベット民族が着用しているものと同じだ。女性

らしい。家族だろうか、子供らしき骨が3体分。

「こりゃあ、雪男という者が本当にいたのかもしれないぞ。世紀の大発見だ。地上に出

たら大々的に発表しよう。世界中びっくりするぞ。雪男捜索隊を組織して、私は隊長と

して生きた雪男を捕らえるぞ」

 

 私は興奮のあまり、周囲のことに気付かなかった。

「先生、残念ながら、それはかないそうもありません」

「出口が塞がっているんです」

 出口に通じているのであろう所から3人が溜息まじりに告げてきた。

「そんなばかな・・・じゃあ、彼らはどのようにして生活していたというんだね」

「この先に出口らしきところはあるんですが、岩や土砂で塞がってるんです。風はそこ

から吹き込んでいます。明るさもありますから、そこが外でしょうね」

「そこから出ることはできないのか・・・」

「地震があったらしくて、山自体が崩れたのでしょう」

 体から力が抜けていくようだ。ボーッとしながらつぶやいていた。

「ここは中国側らしい。昨年のチベット地震によるものかもしれない」

 

 気落ちはしたが、写真を撮った。

 男とおぼしき頭骨には中央に長い突起がある。女と思われる骨は、まさしく人間のも

のだろう。雪男と人間の女との間に3人の子供。性別は不明。

 火を使用していたらしい。獣や鳥や魚の骨が一カ所に集められていた。

 魚の骨、それも結構大きそうな魚とは不思議な気もするのだが。

 

 

 落胆の気持ちと、他にもきっと出入り口はある、という希望を抱いて前進を続けた。

 洞窟には天井が低い所もあり、這いつくばらねば通れない所があった。さほど大きく

はない湖もあった。中を覗いても魚がいるようには思えない。生き物はほとんど見かけ

ない。時々クモやヤスデの仲間を見かけるぐらいである。

 光を当てるときらめく、水晶の集まりがあった。数かけらをポケットに入れた。美也

子の喜ぶ顔が目に浮かぶ。無事に帰れたら、のことではあるが。

 

「腹減った~、宇宙食だけじゃもたないですよ。おにぎりでいいからたらふく食いたい

よなぁ」

「お茶漬けが食いたい」

「やっぱり日本人だな、米が懐かしいよ」

「ああ、米の飯が一番力出るもんな」

 どうやら今晩見る夢は食べ物がいっぱい出てきそうだ。せっかく見るのであれば鮨が

いいか、鍋がいいか、思い描いて寝ることにしよう。

 7日目である。今日1日進んで、明日からは元来た道を引き返すことになっている。

「おい、天井」

といって、殿にいる吉田がライトを前方の天井に向けた。天井一面からは丸い物体がつ

り下がっていた。

 その物体を伝って水が滴り落ちている。

 

 近づけるだけ近づいてその物体を観察した。

 根のようなものを伸ばし、周辺にはカビのような、苔のようなものがはびこっている。

そして少数ではあるが、虫がうごめいていた。

 丸い物体に恐る恐る触れてみた。球根のようである。思い切り引っ張ってひとつもぎ

取った。

「これはイモのようだね。ここを『イモのシャンゼリゼ通り』と名付けようか」

「イモ、ですか。山芋ですかね。この上にはイモ畑でもあるんでしょうか」

「おそらく野生種だね。だが、地上が近いのかもしれんよ」

「どこかに穴でもあればいいのですが」

 大橋の期待をそっけなく打ち消して言った。

「モグラか蛇の穴ぐらいのもんだろう」

 

「おい、天井! 何かが集まってきてる」

 天井を調べていた三上が叫んだ。『大井戸』で見たカニムシを思い出したのだろう。

「ヒルだよ。我々の体温と呼気を感知して集まって来たと見える」

「ワァーッ、落ちてきた。吸いつかれたら痛いぞ」

「これはかなわん、逃げろ! ここは『ヒルの落園』と改名だ」

 

 大急ぎで『イモのシャンゼリゼ通り』改め『ヒルの楽園』を突き抜けた。

 地上では雨が降っているのか、天井から滴る水の量が増え、小さな流れを作っている

ところもあった。

 

 

 ピチャピチャ、と何かが跳ねる音がしている。

「吉田君、足元周辺を照らしてくれないか、なにかが跳ねる音が聞こえるんだよ」

「さかなだ! でっかい魚がいる!」

 かがみこんでよーく見た。

「う~ん、これはどうも肺魚らしい。生きた化石といわれていて決して珍しい種ではな

いが、こんな所で見つかるのは珍しいことだ。しかも化石ではなくて生きたままだ。こ

れは学会で発表する価値のある発見だよ。うん、実にすばらしい」

「ここは本来水のない所ですよね。そんな所でも生きていられるんですか?」

「肺魚というのはね、肺で呼吸していて、乾期には仮死状態となって生き続けるんだよ。

こうして水を得ると生き返る。『水を得た魚』だね。やはりエベレストは昔は海の底だ

ったから閉じ込められたのかもしれないね」

「先生、エベレストが隆起し始めたのは5000万年前のことでしょ。いくらなんでも

5000万年前に生きていた魚が、仮死状態にあって今生き返ったってことはないでし

ょうね」

「ハハハ・・・ともかく、生け捕りにして持ち帰りたいね」

 

 1m以上もの大きさの肺魚に夢中になっている間に、水かさが増えてきていることに

誰も気付かなかった。

 そしていきなり鉄砲水が押し寄せたのである。

 ワァ――ッ

 私たちは抗うこともできず、水に押し流された。

【新人類『鬼子』】

 

 両脇を持ち上げられて、水の中を引きずられているのに気が付いた。

 うっ、胸に痛みが襲ってきた。水の流れに押されてきたらしい。気を失っていたよう

であるが、どのくらいの時間をどのくらいの距離流されたのかは分からない。

 

「先生・・気付かれ・・ましたか」

「ああ、みんなは、無事だろう、か」

 喉の奥をこすりつけるようなかすれ声しか出ない。

「命は、助かりましたが、負傷の程度は、まだ分かりません。僕は、胸を打って、ろっ

骨に、ひびが入ったか、折れてるか・・・」

 とぎれとぎれに苦しげに答える声。

「私も、胸を打った、ようだ」

 三上を見上げると顔も打ち付けたらしく、目の下から頬にかけて腫らしているのが見

えた。

 

 ん?

「おい、光が、差している、のか? 外に出られ、たのか?」

「よく、分から、ないので、すが、ライト、がなくても、見えますね」

 薄明を思わせる明るさがあった。

 

 吉田は腰を打ちつけたという。骨折はしていないようだが、腰をかがめて歩いている。

 大橋は足に大きな裂傷を受けていた。擦り傷は全員にみられた。

 三上と私が負っていたザックは無事だったが、吉田、大橋のは行方不明だ。医薬品は

三上が持っていたが、応急処置にしかならない。

 

 私たちが今いる所は、滝つぼのそばである。滝つぼの深さで、岩に打ちつけられずに

済んだようだ。

 胸の痛みをこらえて、明るさが差す方向へ歩いて行った。

 洞窟の外へ出たが、そこは外の世界ではなかった。

 砂の続くその向こうには湖が、見わたす限り湖が広がっていたのである。その向こう

は闇に沈んで見えなかったが。

 そして天には、相変わらず岩壁がおおっていた。

 

 明るさの元は、苔だった。苔が緑の蛍光色を発して、いたるところに生えていた。

 

 

 チカチカと点滅する緑色の光が近づいてきた。

 私はもう一度気を失いたい気分になった。とても信じられないものだったから。

 

 二足歩行をする生き物だった。私たちと違うところといえば、衣服は付けていない。

代わりに毛が、頭から背中、腰回りにあり、胸には毛がある者とない者がいた。ゴール

デン・レトリバーという犬種と同じ毛色にみえる。

 そして何よりも異形なのは、額の上から長い突起が伸び、先端が緑色の光を発してい

たのである。

 

 彼らは続々と集まって来た。口からは時々音が発せられているが、突起の光信号で意

思伝達をしているのが分かってきた。

 私は思い出した。

 地震で出口を塞がれた洞窟の中で見つけた人骨にも突起があった。ということは、こ

こは雪男のコロニーだろうか。雪男は人間の女性と暮らしていたのであるから、私たち

に危害を加えるような者たちではないのかもしれない。

 ここは、顔の筋肉をひきつらせながらも友好に笑って見せ、滝つぼのほうを指し示し

た。意味は通じたようである。彼らはぞろぞろと滝つぼへ向かった。

 

 私は彼らを総称してその突起から『鬼子』と名付けた。怖い鬼のイメージでなく、愛

らしい鬼である。

 私たち人間とほとんど変わらない知能と、私たち以上に平和を愛する者たちであるこ

とが、後に分かった。

 湖だと思っていたのは、海だった。

 海の民・鬼子は、驚くべき高い文明を有していた。

 

 鬼子たちに助けられた私たちは、彼らの住まいに連れて行かれた。

「ほお~お、これはすごい! 骨組みはまさしく骨じゃないか」

 クジラのような大型の生き物の骨を、魚の皮で作ったらしい革で覆っていた。

 ということは床に敷き詰められているのは、はらわたを詰めた魚の皮だろうか。

 

 吉田と大橋が動けない数日間は、三上と、数人の鬼子たちの案内で周辺を見て回った。

 私たちが落ちた滝つぼは、飲料水を保存するために作った水がめらしい。また、魚の

えらをフィルター代わりにして、海水を真水に換える工場があった。

 大々的な工場には驚いた。緑の蛍光色をした苔(『光苔』と命名)を栽培して、主食

としているのである。

 

 推測ではあるが、それにより突起が緑の信号を発するようになったのではないか。

 薄暗い洞窟の中では、光の信号がコミュニケーションの手段となる。離れた所からで

も認めることができる。言葉は必要ないのだ。むしろここではお互いに離れていれば、

音は反響して聞き取りにくいのだろうと思う。近くにいれば、表情や動作だけでも十分

意思疎通がはかれる。

 進化の過程で鬼子たちが獲得した生存戦略が、それだったのだろう。

 視覚は、形をぼんやりととらえるだけらしい。嗅覚は優れているようだ。

 

 電気ウナギと肺魚の生け簀があった。

 電気ウナギのいる中に骨に刺した魚を突っ込むと、たちまち焼き魚となる。また工場

の電源にもなっている。

 肺魚は乾燥させると仮死状態になるので弁当代わりとなる。水をかけて生き返らせる

といつでも新鮮な魚が食べられる、というわけだ。しかし、1m以上の大きさがあるの

で持ち歩くのが大変だろう。

 

 海に潜ってみておったまげた。まさしく『古代の海』である。1m以上ものシーラカ

ンスが遊泳していた。光苔をクラゲで作った袋に入れると海の中を照らすことができる。

懐中電灯には遠く及ばないが。それでも海中を見渡すことができた。

 ウミユリと三葉虫がうようよといる。

 ウミサソリを見かけてすぐに逃げた。毒はないが、大きなハサミで攻撃されると、骨

も断ち切られるほどの力がある。

 鬼子がウミサソリのハサミを使って、骨や皮を加工しているのを見ていた。

 

 4mを超すチョウザメやエイもみた。キャビアを生産して売れば、ひと財産が作れる

ぞ!

 しかし、チョウザメは淡水で産卵するので、どこかに遡れる川があるのかもしれない。

これは覚えておこう。

 鬼子たちの医療技術はたいしたものである。すべてが海に生きる知恵からきているの

だろうか。外傷は空気に触れなければ治りが早い、という。私の胸の痛みも和らいだ。

 大橋は2日間熱を出していたが、3日目にはケロッとして傷口も癒えてきている。

 時計はすべて壊れてしまったため、時間の経過は分からないが、体内時計に従っての

時間だ。

 

「みなさん、ご迷惑をおかけしました。おかげですっかり良くなりました。これから

『途或王宮』に戻ることができるでしょうか」

 期待と恐れを含んだ眼差しで見まわす大橋に対して、どう言えばいいのか、言葉を捜

しながら告げた。

「それなんだがね・・・僕と三上君のザックが残っただけで、他は装備も食糧も行方不

明で・・・おそらく途中で引っ掛かっているはずなんだが・・・戻るには水がめの壁を、

ざっと15mの高さを登らなければいけない」

「僕が壁を登ってみたんだけど、難しくてね。君らふたりならザイルなしでも登りきれ

るかもしれないんだけど・・・」

 三上が大橋と吉田に向かって言った。

「腰の痛みはなくなってきたけど、フリークライミングはまだ自信がないなぁ」

「じゃ、ひょっとしたらもう帰れないんだ。ずっとここにいなければいけないんだ」

 大橋の期待は、大きな絶望へと変貌した。

「・・・そうだな・・・肚を決めてここで暮らすとしようか」

「海の向こう側に出口があるかもしれない。海を渡る方法を考えよう」

 三上はやはり頼りになる。決して希望を捨てようとはしない。

 

 大橋の回復を待って、私たちは分散して住まわされた。今までいた家は、私たちのた

めに空けていてくれたものだった。

 

 

 電子工学が専門の三上は、ここで手に入る物で工夫した船を考える、と言っている。

 吉田と大橋は、鬼子たちの仕事の手伝いをしている。海に潜ったり、苔の栽培と収穫

などだ。それと飲料水を作ることもある。

 若い頭脳は光信号の意味を素早く理解していった。一方、言葉、日本語を教えようと

努力もしている。

 

 住民は150人ほどか。ほとんどが男ばかりで女性が極端に少ないのは、近親婚のた

めだと思う。種を存続させていくには500個体は必要だろう。

 結婚にあぶれた男たちはここを離れ、洞窟の出口を見つけた者が嫁を求めてヒマラヤ

山中を歩いていたのかもしれない。雪男といわれた所以だ。雪女は怪談の世界だ。

 

 私は何をしていたかというと、ここの文明に貢献となることだ。

 

 まず、火、だ。雪男とチベット人の女性、そして3人の子供がいた洞窟を出てから見

つけた水晶。ズボンのポケットに無事に残っていた。これは火打石となる。

 魚肉から絞り出した油に苔を使って火を付ける試みを何度も繰り返して、火を得るこ

とに成功したのである。

 これにより、今まで以上の明るさと暖を得られた。

 

 次が魚醤油。魚を塩漬けにして自然発酵させるとできる。臭みはあるが、うまみと栄

養たっぷりの醤油だ。味の革新である。食に広がりを持たせることができた。煮魚もお

いしく食べられる。鍋代わりの貝殻がいくらでも手に入るのだから。

 

 そして筆記具だ。ノートとペンは尽きかけている。そこで魚の皮のゼラチン質から工

夫を重ねて紙の代用品を作り出し、削った骨とイカの墨でペンを作り出した。

【男の事情と情事】

 

〔大橋祐樹〕

 足を怪我した僕はその後熱が出て、2日間意識が朦朧としていた。

 その間ずっとかあさんがそばに付いて、手を握っていてくれた。

 何か食べないと治らないよ、と言いながら僕の体を抱え起こして、スープを飲ませて

くれた。そして体をさすってくれた。

 いつ家に帰ったんだろう、と不思議には思ったが、かあさん、と呼びかけていた。

 

 意識がしっかりしてくると、かあさんは、いなかった。

 

 ああ、水に流されて崖から落ちたんだ、だれかに負われてここに連れてこられたんだ、

ということを思い出した。

 頭を動かした。すると彼女が、ニッ、と笑って僕の体をさすってくれた。

 股間もやさしくなでてきた。ぎょっとしたけれどされるがままにしていた。なでられ

たところは血流が良くなっていくのが分かる。恥ずかしい気持ちが湧いたけれど、違う

人種だし、すぐに出ていくんだし、という思いでいた。

 次第に気分がたかぶり我慢できなくなって・・・彼女は口で受けてくれた。彼女の緑

のシグナルは、ゆっくりと瞬いていた。

 

 翌日、気分はすっかり良くなり傷口もふさがっていたが、足を動かすとまだ痛みが残

っていたのでもう1日寝ていることにした。

 そして、もう帰れない、ということを知った。船を作ってみよう、ということだった

が、いつになることやら。

 ここで暮らすことにしよう、だって?

 

 彼女に名前をつけなきゃ・・・マリア。

 マリアは今日もやってきて、体じゅうをさすってくれた。今度は、彼女の体で受けて

くれた。

 

 

〔吉田海斗〕

 水に流されている時、ザックが体から離れそうになって、肩ひもを必死で押さえてい

たら、腰をしたたかに打ってしまったようだ。しかもザックは紛失している。

 歩くのが苦痛だったけど、なにかしら皮のようなものを腰に張られると、翌日にはほ

とんど痛みが取れたので、海辺を歩いた。

 岩礁といったほうがいいが、砂浜もあった。薄暗い海岸の岩の上に腰かけて、海をぼ

んやりと見ていた。

 

 香奈はどうしてるだろう。俺らの遭難のニュースはもう耳にしてるだろうか。

 卒業したら就職して、6月頃に結婚しよう、とプロポーズした。香奈も就職先は決ま

っていて、会社を辞めなくていいならね、と言っていたっけ。

 結婚したら好きなことができなくなるから、これが最後だという気持ちで、探検隊に

参加したのだ。

 

 郷愁に浸っていると、悲しい音色が聞こえてきた。

 振り向くと、鬼子の中でも大柄な女性が近づいて来て、口からなにやらを取り出す。

ほおづきに似ていた。海ほおづきだろうか。俺の横に座って、ほおづきを吹き始めた。

 鬼子も俺たちと同じ感情・感性を持っているのだな、と気付かされた。俺を慰めてい

るのを感じた。

 

 翌日、俺たちはもう帰れないのだということを確認した。香奈と会うことは、もう二

度とないのだろうか。

 

 俺は、昨日の女性と、香奈とを重ねてみるようになった。

 香奈、という名前を教え俺を、海斗、と呼ばせた。

 俺の香奈に対する気持ちを、体でぶつけていった。

 香奈は俺を、受け入れてくれた。

〔三上潤〕

 日本に帰っても俺を待ってる人はいないだろう。山登り中心の生活だったし、会社で

は昇進をすべて断ってきた。管理職に就けば、自由に休暇が取れなくなるからだ。

 愛する特定の人も、いない。

 ひとつの山を征服すれば次の山に目を向けるように、ひとりの女性を征服できたら、

別の女性に目が向くというもんだろう? それが難しければ難しいほど執着し、やりが

いを感じる、ってもんだ。

 

 ここでは女性の数が極端に少ないのだが、乳をそのままさらけ出しているから、いく

ら俺でも目のやり場に困ってしまう。

 といってもやはり釘づけになってしまう。かといって関係を持ってしまうと、ここで

は逃げ場がない。もう帰れそうにないなら、いっそ覚悟を決めて、性の処理のためだと

割り切って、だれかと・・・

 

 吉田も大橋も隠そうとしているが、すでにSEXをしたのは分かっている。表情から

あからさまに知れる。

 外人を恋人にすれば語学の上達は早い、というが、彼らがまさに、それだ。

 

 ひとり乗りの舟なら作れるが、4人が乗る船となると、材料が手に入らない。ま、気

長に動力源の工夫でも重ねていよう。電気ウナギだけでは、安定した電気が得られない

からなぁ。

 

 

〔松本博〕

 ここに来て1年近くになるのだろうか。

 いつの間にか大橋と吉田に子供ができていて、誕生するまで全く気付かなかった。三

上にもまもなく子供が生まれるという。

 

 家族を持つのはもうこりごりだ。

 美也子とは山で知り合って結婚をした。

 孝史と強が生まれ育児に勢出している間、私が山へ行こうものならいつもイヤミを言

われた。

 ふたりが長じるにつれ、教育熱心さから子供中心の生活となり、私など見向きされな

くなっていた。すでに冷めてしまった食事をチンしてひとりで食べ、終わったら洗い物

までしておくという有様だ。

 孝史も強も幼いころは一緒によく出かけたものだが、中学生ともなると口をきくこと

もなくなった。

 私はただお金を運ぶロボット。いやお金は振込だから給料を得るありがたみなど分か

ろうはずもない。

 私が死ねば保険金が入る、と喜んでいることだろう。

 

 大学では研究室を預かっていたが、芳しい成果は上がっていない。

 この探検によって、世界を驚かすほどの成果を得た。これをどのようにして発表しよ

うか、と時々思うのだが、現実は・・・

 

 今はいろいろと工夫をして、いろいろな物を作り出しているが、酒は原料となる物が

手に入らず、うまくいかない。

 ひとり用の舟で近くを回ってみようかとも思っている。

 

 

 ここへ来てからおよそ10年が過ぎた。

 吉田と大橋はまるで競い合うかのように、それぞれ6人の子持ちだ。三上には3人の

子がいる。15人中女の子は9人。鬼子たちの喜びようといったらない。

 頭の突起は11人には見当たらないので、本来はないはずのものだったのだろう。し

かし光信号が出せなくて、ここでうまく生きていけるだろうか。

 

 

 そんなある日、海竜の死体が海を漂ってきた。

 クジラほどの大きさがあり、首は長い。図鑑がないので分からないが恐竜時代に栄え

ていた種類だと思う。

 鬼子はこれの骨で住まいを作っていたらしい。十数年ごとに見つかるそうだ。

 

「これはいい。これで船が造れますよ」

 三上はガッツポーズをとった。

【海へ】

 

「おお君たち、手伝いかね。三宅君はいるかい」

「とうちゃんなら中にいるよ」

 三宅の息子穂高が、海竜丸を指差した。

 光苔をクラゲに詰め込んでいた作業をやめて、吉田の息子太陽、大橋の娘茜も共に船

の中に入った。

 

「ほう、立派なもんだ。よくこれだけのもんが作れたな」

 三宅は、クラゲの明かりを取り付けている最中だった。緑の光が、空間をやさしく包

みこんでいた。

 

 恐竜の横腹から内臓を丁寧に取り出し、骨格と皮をそのまま利用したものである。推

進力は電気ウナギの電気と魚油を用いている。両方使えなくなった場合は、足で漕ぐこ

とになるそうだ。

 オープンタイプではなく、潜水ができるように改良が加えられる予定だが、それはま

だ先のことである。洞窟内の海なので、天井が低い所、洞門になっている所が予想され

るからである。

 

「先生みて! ここから外が見えるんだよ」

 太陽が首の骨格を登りつめて、目のあるところから外を覗いている。

「いずれはここから遠隔操作で見られるようにしたいんですがね。そこまで材料が揃わ

なくて。魚の眼でレンズを作ったんですよ」

 ふん、ふんとうなずきながら内部を見て回った。

 

「で、いつ航海に出られそうだ?」

「あさってにしましょう」

「わ~い、いよいよ進水だあ~」

 子供たちは大はしゃぎである。

「残念ながら君たちは乗れないよ。そうだな、一番年長の太陽ひとりぐらいなら大丈夫

だろう」

「え~っずる~い、私も太陽と同じ頃に生まれたんでしょっ」

「ハハ、処女航海はね、男がするもんなんだよ」

 訳の分からない弁明に、茜はふくれっ面を作っていた。

 

 彼らの子供たちは大家族のように、お互いに面倒をみあって生活を共にしている。

 

 乳児を抱いたマリアと香奈、鬼子たちが見守る中、進水式を行った。海竜丸の長く伸

びた首の上の口から明かりを突き出して、周辺を照らし出している。吉田が頭部にある

目から、目を凝らして前方を見ていた。障害物があれば三上に伝えて、三上は舵を切る。

上陸できそうな所があれば大貝の舟で漕ぎ寄せることにしていたが、初日は試験航行で

もあるため、ぐるりと回るだけとした。

 海は広かった。3度目は2週間の航海となった。

 鬼子たちが住む場所の半分程度の草地を見つけて上陸した。

 他に生物がいるかもしれない、という期待はあったが、そこには植物が一面に茂り、

いるのは小さな虫や爬虫類であった。

 

「これはこれは・・・この植物を持って帰って栽培しよう。この実は腐ったような臭い

がするね。酒が造れるにちがいない」

 私は根こそぎ引き抜いて袋に詰めた。実も集めにかかった。

 

 

 それ以降、航海は彼らに任せっきりにした。代わりに茜と穂高が交替で乗り込むこと

ができるようになり、喜びのあまり抱きついてきた。

 船は少しずつ改良されていき、魚の浮きを利用して短時間の潜水ができるようにもな

っていた。

 

「水が流れた跡、川があった跡を見つけたら、そこを遡ると外に出られるかもしれない。

チョウザメはね、外の世界から水に流されてきたと思われるんだよ。それらしき痕跡に

目を凝らしてくれ」

 

 三宅は子供たちに、船の仕組みや操縦法などを教えるのが、実に楽しそうだった。船

造りは彼に合っていたのかもしれない。海中探検にも夢を膨らませていた。

 

 来る日も来る日も酒造りに熱中した。採取してきた実は黒っぽく『酒の実』と名付け

た。翌年には豊富な実を付け、それを種々の条件で熟成させると、ついに完成したので

ある。

 

「どうだ、飲んでみてくれ」

 匂いを嗅ぎ、舌をチロッと付けていた3人は、貝殻に注いだ少しの酒をグイッと飲み

ほした。

 

「ん~まい!」

「あぁ~久しぶりの酒だぁ~」

「先生、ついにやりましたね」

 

 彼らのお墨付きをもらって量産し、鬼子たちにもふるまった。

 一部の鬼子は酒をもっと飲みたがり、有頂天になって造り続けた。

 

 

 しかしやがて、穏やかだった鬼子たちの間で喧嘩が頻繁に生じるようになっていた。

二日酔いで仕事を休むようになり、怠け出す者が出てきた。酒をもっと飲ませろ、と奪

っていく者まで現れ、喧嘩が高じてついに殺人にまで至ってしまった。

 彼らは、生まれて初めて味わった酒に呑まれてしまったのである。適量というものが

分からなかったのだ。

 酒を飲まない者からは恨まれ始め、酒を飲む者からはもっと造れと強要された。

 

 今私の前には、酒を廃棄することを要求するグループとそれに抗うグループとに分か

れ、一触即発状態となって睨みあっていた。

 

 吉田がその間を割って現れた。

「酒はいい面もあれば悪い面もある。今まで経験のなかった君たちに急に持ち込んだの

は、間違っていたのだろう。正しい酒の飲み方を僕たちが指導していく、というのでは

どうだろう。酒の管理も僕たちで執り行っていこう」

 大橋が続けた。

「酒は気持ちをたかぶらせる働きがある。一方気持ちを落ち着かせる面もある。元気の

源を与えてくれることだってある。うまく付き合えばプラスとなるものなんだ」

 

 吉田も大橋も今や鬼子の世界に融け込み、リーダーの立場にあった。鬼子たちは、三

上も含めた3人に十分な信頼を置くようになっていたのである。

 私はといえば、自分の好きな、興味ある研究に没頭していただけといえよう。それら

の成果は、ここの文明に大きく貢献してきたはずだ、という自負を持っていたのだが。

 老いた私はもうとっくに、探検隊の隊長ではなかったのだ。

【愛する家族は】

 

 ここへ来て、18年になるだろうか。

 

「先生見つけましたよ、川の跡を。少し遡ってみました。すると空気の流れを感じたん

です」

 大橋が勢いこんでやって来た。たった今航海から戻ってきたらしい。酒の実の選別を

していた手を止め、イスから腰を浮かせて叫んでいた。

 

「そ、外に出られるかもしれないんだね!」

「そうです。幸い僕たちが鉄砲水で押し流された後回収した装備で、まだ使える物があ

ります」

 『命の湖』までは何度か出かけていたが、そこに残しておいたロープはハーケンが抜

けてしまったらしく無くなっていた。湖の底に沈んでいるのだと思う。しかし大橋と吉

田のザックは回収できたのだ。

 

「みんなは外に出られたら、日本に帰るつもりなんですか」

 その夜、夜といえるのかどうかは分からないが、久し振りに4人が顔をそろえた。航

海をねぎらう意味もある。魚介類を肴とし酒を酌み交わしていた。

 吉田がひとりひとりの顔に視線を当てながら、おもむろに切り出したのである。意外

な言葉だ。

「どういう意味かね?」

「僕はここに残ろうと思っています。今さら帰っても居場所はないと思うんです」

「そうだよな、今さら仕事も見つからないだろうし」

と大橋が応じる。

「ここには家族がいます」

「第2次世界大戦が終わった後、終戦も知らずに30年近くジャングルでひとり、生き

続けた人がいた。日本に帰って一時は注目を浴びたが、中傷や誹謗が多かったと聞いて

います」

 三上まで残る発言だ。

「祖国に帰ったから幸せになれる、とは限らない」

「僕はここにいて生活に不自由は感じないし、心から愛する家族がいるんです。まさか、

家族を連れて帰ることはできませんよ」

「そうです。すぐに見せ物になり、研究対象にされてしまうだけです」

「3人ともここにいることを望んでいるんだね・・・じゃ、私はどうすればいい? 私

はやはり祖国を見て死にたいと思っている」

「先生が外の世界に出られるまでは、ご一緒します」

「・・・・・・」

「しかしお願いがあります。ここの生活のことは一切公表しないでほしいんです」

「何にも持ち帰らないでください」

「僕たちが生きていることも、秘密にしてください」

 深いため息をついた。この18年間の研究のことを思った。

「・・・研究成果はすべて捨てろ、ってことだね」

「そうです。先生と僕たちは、遭難してすぐにはぐれてしまったことにしてほしいんです」

「だから僕たちが生きているか死んでいるかは分からない、と」

 しばらく沈黙の時間が流れた。

「分かった・・約束しよう。それでも私は、帰りたいんだ」

「先生の数多くの発明のおかげで私たちの暮らしは向上しました。ありがとうございまし

た」

「ご無事を祈っております」

 三上の妻・富士そしてマリア、香奈と抱き合って別れを惜しんだ。

 子供たち、鬼子たちありがとう、感慨にふけりながら海竜丸に乗り込もうとした時、

「待ってェ――」

という太陽と茜の声が聞こえた。

「ハァハァハァ、間に合った」

「先生、これ」 

 差し出されたのは水晶だった。

 

「ほら、先生言ってたでしょ、これのこと。運を開く宝物になるって。だからふたりで取

りに行ってたんだ。これくらい持って帰ってもいいよね」

「ありがとう。君たちのことは忘れない。とうさん、かあさんを大切にしてくれ」

 こみ上げる感涙をそのままに、船内に入った。

 鬼子たちは一斉に緑のシグナルを点灯して、送り出してくれた。

 

 時々海中に潜ったりしながら、9日目に目的地に到着した。海はやはり、古代そのまま

の海だった。

 海竜丸を岩に係留して、十数年ぶりの装備を身につけ洞窟の中に入っていった。鬼子と

の生活で得た物資も多数ある。

 

 洞窟内の通路や岩は丸みを帯びていた。湿って滑りやすい所もある。水が流れていた証

拠である。

 1日進むと、風を感じた。進路はいくつもに分かれている。吉田が指につばを付けて差

し出した。

「こっちです」

 最も狭まった通路である。いくつもの小さな滝の跡を、ザイルに繋がって遡行していっ

た。

 

 

 涼やかな風が吹き込んでいた。

 空には星が瞬いている。天の川がよく見えた。

 おおーっ、と全員から感嘆の声が上がった。

 草の匂い、土の匂い、“生”の匂いが充満している。虫の音が聞こえる。

 出口は崖になっていた。20mほど下方には草原が広がって見えていた。川があったら

しいが、干上がってしまったのだろう。

 

 私はひとりずつと握手をし、抱き合った。

「ありがとう! 君たちのおかげだ」

「いや、まだですよ。ここがどこらへんに位置するのかが分かりませんから」

「そうです。夜が明けてから先生を下ろすことにしましょう」

「すぐに人と出会うことができればいいのですが」

 

 空が白み始めるまで会話が途切れることはなかった。

 それぞれの心には18年の思いが詰まっている。さらに遭難するまでの数年間、探検の

準備に費やした時への思いがあった。

 ザイルにぶら下がって崖を降りた。

 彼らは、私が見えなくなるまで手を振っていた。

 

 干上がった川に沿って進んだ。歩いては休み、水溜りがあればそれを飲んだ。持参した

光苔はすでに無くなっている。草を食べた。

 翌日の朝、羊を連れた人間に出会うことができた。そして私は気を失った。

 成田空港には特別室が用意されていた。

 吉田、大橋のご家族には、遭難後すぐにはぐれてひとりでさまよっていたことをあらた

めて告げ、申し訳ないことになってしまったことを詫び、深々と頭を下げた。

 三上には親族がいないようであった。

 三宅と藤岡も待っていた。救助隊を組織するためにナムチェ・バザールに戻っている間

に、洞窟上部の氷雪が温暖化の影響のため融け、土石流を発生させて洞窟入り口全体が埋

まってしまったことを知った。シェルパ族のパサンが犠牲になってしまったという。私は

深く頭を垂れた。

 

 その間ずっとハンカチを目に当てた美也子を真ん中に挟んで、孝史と強はソファに座り、

私に視線を向けていた。

 髪がすっかり白くなり、皺を深く刻んだ美也子には、化粧気がなかった。

「みやこ」

 喉の奥から絞り出すような声で呼びかけると、目を赤く腫らした美也子は笑い顔を作ろ

うと顔をゆがませて、ただただうなずくだけだった。

 

「父さん、母さんはねずっと、父さんは生きてる、って言い続けていたんだよ」

「うん。父さんのことだから、岩でも石でも砕いて食べて命をつないでいるはずだって」

「働いて、働いて、僕たちを大学まで行かせてくれてさ、父さんが帰ってきた時に自慢し

てやるんだ、ってさ」

「美也子、すまなかった・・・」

 私は美也子を強く抱きしめ、涙でぬれた頬を胸に受け止めた。

 

 

 廊下に出ると、ひと組の男女が目に付いた。

 目をみはり、吉田君、と呼んでいた。

 女性は、服部香奈です、と名乗った。私はすぐに理解した。

「あなたと吉田君との間の息子さんですか?」

 はい、と女性が答えると男性が頭を下げた。

「22歳になります」

 18年だと思っていたのは実は22年間だったのである。

「吉田君が探検に出た時の年齢だ。それに、まさに生き写しだ。吉田君は知っていたので

すか?」

「いえ、遠征から帰って来てから告げるつもりで・・・」

 

 吉田が生きていることを告げたい衝動に駆られたが、そうすれば不幸になる人を増やし

てしまうことに気付き、思いとどまった。

 香奈さんは、実家の援助を受けながら育ててきたという。

 しばらく頭を深々と下げたまま、罪作りな事をしてしまったのかと、心の中でわびた。

 

 マスコミ界は22年ぶりの生還に沸いていたが、1か月ほど過ぎると下火になっていっ

た。

 約束通り、私の研究成果は封印している。

 しかしこの体験は記録しておきたいと思い、SF冒険小説として出版した。

 タイトルは 『エベレストは昔海だった』 である。


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