No.363514

真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 36話

lovegtrさん

追い詰めた呉蜀…追いつめられた魏…
最後の戦いが始まり、意外な幕引きとなる…
では、どうぞ!

2012-01-15 01:45:54 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5897   閲覧ユーザー数:3630

目の前に広がる魏の兵たち。

華琳達は桃香達蜀軍の追撃を受けながらも、なんとか自身の領土へと戻ることが出来た。

しかし、はじめ百万いた兵はその数を減らし、赤壁で対峙した時ほどの威圧感を感じない。

度重なる伏兵による攻撃で休まることを知らず、その士気もかなり低く感じる。

「最後は野戦で華々しく散る、か……」

その様子を見て冥琳がつぶやく。

華琳は持久戦である籠城ではなく、外に出ての野戦を選んだ。

狙うは俺と桃香の首級だろう。

この不利な状況を打開するにはそれしか無い。

それとも、覇王としての誇りが彼女にそうさせているのだろうか。

俺は目をつぶり、ここへ来る前の桃香の言葉を思い出す。

 

魏軍と会敵する少し前、桃香たちと合流を果たし、一緒に魏へと向かうことにした。

「一刀さん…少し話があります」

馬を横につけた桃香は、真剣な顔でそう言った。

「私、曹操さん達とも仲良くしたいんです!」

その言葉を聞いた時、頭を殴られたよな衝撃を受けた。

「……どういうことだい?」

だからか、冷静に、少し怒気を含み返してしまった。

「……曹操さんは、民を苦しめる様なことをする人ではありません。

 前にも話したと思いますが、私の、私たちの夢は、『皆が笑って暮らせる国』を作ることです。

 その夢は今も変わっていません。そのためにはこれ以上の戦いは必要無いと思います!これ以上、戦いが長引けばそれだけ民にも負担がかかるから」

「じゃあ、俺達は曹操に降伏し、その下に就けと言うのか?」

「……うんうん。それも違います。

 ……私と一刀さんはこうして話して分かり合えることができました。

 だから、きっと曹操さんともわかりあえると思うんです。そして、三国で手をとってこの大陸を治めるんです。

 曹操さんだけで大陸を治めることはできない。もちろん私だけでも……一刀さんだけでも。

 でも、三人なら、三つの力が合わさったらきっと、とても良いって思うんです!

 ………なんだかうまく言えないけど、私は曹操さん達とも一緒に『これからの世界』を生きてゆきたいんです!」

桃香の考えに思わず呆けてしまった。

「…くくく……ははははっ!それじゃあまるで、求婚の言葉みたいだな」

もちろん、それがおかしくて笑ったのでは無い。

自分の視野の狭さを、ただ華琳を殺すことだけを考えていた自分を笑ったのだ。

華琳を殺すしか無い。そればかり考えていた。

だけど、桃香は違った。

敵である華琳と手を取り合い、一緒に暮らしたいと言うのだ。

そんな道があったのか、そんな事が可能なのだろうか。

「桃香の考えは分かった。

 でも、曹操は、華琳は本気でこの大陸を統一しようとしている。

 今のままでは話し合いに応じるわけがない。だからこそ、この戦いで勝って、君の話を彼女に届けるんだ!

 次の戦いを最後の戦いにしよう!」

「はいっ!」

桃香はいつもの花が咲いた様な明るい笑顔になり、何度も頷いた。

目を開き、前方の魏軍に再び視線を向ける。

軍団の中から幾人かの兵を連れ、華琳が前に出てきた。

舌戦、下がりに下がった兵の士気をあげるために声高らかに華琳は叫ぶ。

「お前たち呉、蜀はなにゆえ我が覇道を邪魔する!

 黄巾の反乱から起き、乱れに乱れたこの大陸に必要なのは絶対的力を持った王である!

 それをお前たちは阻み、民を苦しみ続けて居るというのが分からないのか!」

すると華琳の舌戦を受けるため、桃香は部下たちを連れ前に出た。

「私たちは民を苦しませようだなんて考えていません!

 私たちはただ、皆が笑顔で暮らせる国を作るためにここまで来たんです!」

「なら、お前たちが私の元に下れば、戦いが終わり、民たちも笑顔になる!」

「違う!曹操さん一人が国をまとめても、曹操さんに何かがあればまた国は乱れてしまう!

 私たちは手をとって一緒に生きてゆけることが出来るはずです!

 三国で力を合わせれば、きっと今より良い国が出来るはずです!」

「それは理想論よ!もし、今協力出来たとしても、その先は分からないわ。

 貴方達がいつ裏切るか分からない。そんな風に考えながら過ごすことになる。

 それではやはりいつか戦が起きるわ!」

「でも、私と一刀さんは分かり合うことが出来た!

 だから、曹操さん、あなたともきっと分かり合えるはずです」

「…っ!…………そう。考えが一致しないのなら、これ以上の話は無用。

 もし、その甘い考えを通したいのなら私を倒すことね。

 その時は協力でも何でもしてあげるわ」

そう言い、自軍へと華琳は戻って行った。踵を返す直前、一瞬こちらを見たような気がしたが、すぐに顔を戻してしまった。

話し合いは決裂してしまった。しかし、これは分かっていたことだ。

ここまで色々な事を犠牲にしてきた事を考えると、ここで辞めることはできない。

それは俺達も同じである。

だからこの戦いに勝ち、俺達の力を華琳に分からせなくてはいけない。

「「「全軍!抜刀!!」」」

三人の王の声が重なる。

「これが最後の戦いだ!」「我が覇道のため!」「皆の笑顔のため!」

「「「全軍!突撃ー!!」」」

こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

戦いは予想通り、こちらの優位に進んだ。

赤壁での大敗、撤退中の伏兵で魏はもうボロボロなのだ。

しかし、それでもここまで戦うことが出来るのは、有能な将と軍師たちのおかげであろう。

ギリギリでこらえ、反撃の時機を待っている。

「うららら!らー!孫権!覚悟ー!!」

かく言う俺も夏侯惇相手に、なかなか押し込めないでいる。

「赤壁と徐州、その他もろもろの雪辱、晴らしてくれる!」

どうやら俺は、この娘にだいぶ嫌われているようである。あと、雪辱は晴らすものではない。

「お前の力はそんなものかっ!もっと全力でこいっ!」

「くっ……あれだけやられたくせに、どこにそんな力があるんだ……」

「誰が力だけの筋肉馬鹿だ!!」

ただ感嘆しただけなのだが、どうやら勘違いしたようで、怒りながら剣を振るってくる。

こんな様子で、魏の将達は他のところでも果敢に攻め立てている様子だが、一般の兵たちは違う。

時間が経つに連れ疲れが現れ、戦線が維持できなくなってきた。

「まわりを見てみな。そっちの兵はほとんどいないぞ」

「うぐぐ……くそっ」

自分の部下たちが倒れ、捕縛されてゆく様子を見て、夏侯惇は顔を歪める。

もう大局は決まった、そう思った時、首筋がゾワリとする感じが起きた。

 

「あれ~?曹操様、負けちゃいそう何ですか?」

 

その声は、上から(、、、)聞こえてきた。

戦闘のなか、通って聞こえるその声。

空を見上げると、空中に男が立っていた(、、、、、)

「なっ!?誰だ、お前は?」

声を掛けられた華琳は、その男に警戒しながら聞いた。

「あれ?ひどいなー。自分の部下の顔を忘れるなんて」

「……貴方みたいな空に浮かう人なんて知らないわ」

「そっか、この姿じゃ分からないか……じゃあ、これでどうですか」

男はかけていたメガネを外し、自分の顔を手で覆い、こすり始めた。

すると、どういうわけか、男の顔がみるみる内に変わり始め、

「これでどうですかな」

「お、お前は司馬懿っ!?」

「ふふふ、そうです。でも、この姿は疲れるので、元に戻りますね」

そう言い、再び元の、若い姿に戻った司馬懿と呼ばれた男は楽しそうな顔をしながら華琳を見下ろした。

「どうして貴方がそんな姿に!それに空中に浮いて……何故!」

「あーーもう、そんなにいっぺんに聞かないで下さいよ。

 ……まあ、聞かれても答える必要は無いんですけどね」

そして司馬懿は本当に嬉しそうに、口元を歪め、

「もうすぐ、消えて無くなるんだから」

すると司馬懿は両手を広げ、なにやらブツブツと唱え始めた。

ゾクリ……先程感じた首筋の嫌な感じが強くなった。

 

「う……うわああああーーー!!!」

突如叫び声が聞こえ、そちらに振り向く。

「な、何だ……?」

叫び声の元を見ると、魏兵の一人が叫び声を上げ自分の手を見ていた。

しかしその手は普通のものとは違っていた。石になっていたのだ。

するとみるみる内に石がその兵を覆い、みるみる内に兵士は石になってしまった。

それを皮切りに、他のところでも叫び声が聞こえ、他の魏の兵士達が次々と石に変わってしまった。

そして一瞬の内に魏の兵はすべて石になってしまった。

「なにが起きているのだ……」

近くで一緒にその様子を見ていた夏侯惇もなにが起きたのか分かっていない様子で、呆然と立ち尽くしていた。

「ちっ、やっぱり力のある恋姫達はまだ無理か……

 まあ、良い!これで魏のすべての(、、、、、、)エネルギーを手に入れることが出来た!」

「魏の…すべて……どういうこと!司馬懿!」

華琳もなにが自分の部下達になにが起きたのか分からず、司馬懿の言葉を聞き返した。

「どういうことって、言葉通りの意味ですよ。

 魏のすべての人間は今、目の前の兵達みたいに石になったってことですよ」

「……何故……どうして……どういうことだ、司馬懿ぃ!!」

「ああー、もううるさいなー………」

司馬懿の叫びを受けて、司馬懿はめんどくさそうに耳を掻きながらなおざりに答えた。

「別に答えてあげてもいいけどー……でも、もう時間だからいくね」

再び呪文を唱えると、司馬懿のまわりの空間が歪みはじめ飲み込んでゆく。

「じゃあ、ね」

そのまま、司馬懿は一瞬にして消えてしまった。

 

「そんな……そんなわけ、ないわ……」

うなされた様につぶやいた華琳は、思い立ったように城へと駆けた。

魏の兵がすべて石に変わってしまい、静まり返った戦場を横切り、俺も華琳を追い城へと向かった。

俺につられて、他の者達も華琳の後を追った。

城に入ると華琳は膝を突き、唖然としていた。

街には人が居る様子が無かった。ただ、人であった石像だけが辺りに転がっていた。

「う……うわああああ!!!」

華琳の悲痛な叫びが虚しく響き渡る。

この日、魏は一度、滅亡した。

前回のあとがきで、次でこの章終わらせるーって書きましたが、終わりませんでした。

次の話できっと終わります、絶対に!

 

まあ、分かっていると思いますが、今まで時々出てきた謎のメガネの男は司馬懿でした。

司馬懿が何故こういう事をしたのか、そのことは次回に。

 

ではまたノシ


 
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