No.363331

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 16話

TAPEtさん

長らくおまたせしました。
もう一ヶ月も経ってるわ…ヤバい、そろそろ皆展開忘れるところだよ……

3編で終わらせると言ったのに無理くさくね?(いつもどおり)

2012-01-14 21:30:44 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:4018   閲覧ユーザー数:3555

袁術SIDE

 

「……ぅ…蜂蜜……」

 

痛いのじゃ…体が痛いのじゃ……

熱い……痛い……

 

蜂蜜が…甘い蜂蜜が欲しいのじゃ……

 

七乃……七乃、蜂蜜を持ってきてたも……ぉ……

 

 

ガタン!

 

「本当にそれで美羽さまが治るのですか?!」

「…らしいです」

「らしいとはなんですか。それに、阿片に毒された人を治す薬なんて聞いたことも…」

「七乃、少し落ち着きなさい。…鳳統ちゃん、少なくとも、それは毒ではないことは確認させてもらうわ」

「それが…もらった人からの話だと、これを全部使わないと効果がないらしいです」

 

…七乃?

 

「七乃……」

「!」

「七乃かえ?」

「…はい、美羽さま」

 

目が良く見えないのじゃ。

七乃……妾は……もう死ぬのかの?

 

「七乃……すまんなのじゃ」

「どうして美羽さまが謝るのですか。悪いのは私なのに…私がもっと美羽さまをしっかり守っていたら…こんなことには……」

「…七乃はいつも優しかったのじゃ……」

 

母様がお亡くなられて、妾が豫州の太守となって、妾はとても寂しかったのじゃ。……七乃も居てくれなかったら妾はきっと母様と姉様の後を追っておった。

でも……

 

「妾が死んだら」

「そんなこと言わないでください!!」

「……妾が居なくなったら、きっと七乃は独りぼっちになるのじゃ……妾は七乃に妾みたいな独りぼっちにはならせたくないのじゃ…」

「………」

「妾が死んだら…七乃がとても悲しくなるのじゃ…じゃから妾は…生きたいのじゃ。誰のためでもなく…七乃のために……」

「……美羽さま……」

 

どんなに苦しゅうても、どんなに死にたくても今まで操り人形の役をしてきたのは…七乃が一緒に居てくれたからじゃ。

じゃから…今でも七乃のためなら、何でも出来るのじゃ……

 

「……鳳士元さん、あの薬をください。私がやります」

「はい…」

「…もし、これを使って美羽さまに悪いことが起きたら…その時はこの部屋に居る人皆死ぬのです」

「……判りました」

 

七乃……。

なんだか…甘い匂いがするのじゃ……

 

「美羽さま、口を開けてください」

「……蜂蜜…」

「はい、美羽さまが大好きな蜂蜜水ですよ」

 

…蜂蜜………

 

七乃が淹れてくれた蜂蜜水が一番美味しいのじゃ……

 

 

 

 

真理SIDE

 

「阿片中毒を治す薬らしいです」

「……あわわ」

 

朝になって、私は皆が集まってる部屋で、孟節さん、遙火さんのお母さんからもらった小瓶を二つ出しました。

 

「一人つき一瓶、中にある水薬を水に1粒入れて一日を三分割定期的に飲ませたら、容態が徐々に好転するそうです」

「どこでこんなものを手に入れたの?」

「セツさんからか?」

「はい」

 

私は北郷さんの質問に答えてふとしまったって思いました。

 

「……誰ですか?セツさんって」

「え?あ」

「てわわ……」

「一刀が昨日この宿屋に連れてきた女の人」

 

遙火ちゃん!

 

「へーー、女の人なんだ<<ゴゴゴ>>」

「ちょ、ちょちょっと待って、雛里ちゃん、今何を考えてるのかは知らないけど、誤解だから」

「あわわ、そうですか。私の勘違いですか。良かったです」

 

・・・

 

「何が私に言いたいことはありませんか?」

「すみません、隠すつもりじゃなかったのですOTL」

 

こういう時の北郷さんってちょっとみっともないですよね。自業自得ですけど。

 

「…それで、その人がコレを作ってくれたの?」

「はい、実は私、この前袁術さんのところに行ってたんですけど、袁術さんも既に阿片中毒になってました。それも街の人たちとは比になりないほど」

「なるほど…袁術だからか……君主を薬漬けにして自分たち好き放題にするつもりだったんだろうな」

 

まだ商人と袁家の元老たちが結託していた時、元老たちは袁術さんを完全に傀儡にするため袁術さんに蜂蜜を飲ませたのだと思われます。

だけど、その結託が崩され戦いが始まろうとする中、袁術さんはただの犠牲者に過ぎないのです。

 

「じゃあ、一つの瓶は袁術さんに使うとして、もう一つはどうするの?」

 

遙火ちゃんがもう一つの瓶を卓の上に転がして遊びながら言いました。

大事なものだからおとしたりしたら駄目だからn……

 

「あっと」

「てわわ!」

 

遙火ちゃんの手から離れて落ちそうになる瓶を遙火ちゃんが空中で掴みました。

 

「……冗談」

「てわわ、遙火ちゃん!」

 

んもう……

 

「……もう一瓶は、太史慈に使うことになるだろう」

「あわわ、太史慈も中毒されてるんですか?」

「いや、確信はないが……商人が太史慈を操ってるのだとしたら、袁術ほどの重態でなくても、ある程度は中毒させてると思わない?」

「それは……そうかもしれませんね。自分に逆らった行動をとった場合に備えて…」

 

雛里ちゃんの言うとおりだと、本当に用意周到な人ですね。あの商人も…

取り敢えず、この瓶は、この戦を止めることに大事な役割を果たすことができそうです。

私もなんか役に立てて嬉しいです。

 

「ところで、真理ちゃん、セツさんは?」

「それが…朝起きたらこの瓶だけ置いて部屋を空いたみたいです」

「……そうか」

「…何で残念そうな顔をするんですか?<<ぎろり>>」

「いえ、そんなことはありませんOTL」

 

本当に北郷さんってこんな時にみっともないですよね。

 

「……あ、一刀、雛里ちゃん」

「うん?何、倉ちゃん?」

 

 

「昨夜はお楽しみだった?」

「「「なんてこと言うの(だよ)!!」」」

 

私が教えたわけじゃありませんよ?!

 

 

 

 

雛里SIDE

 

「……ぅ……すぅ……」

 

薬を飲んでから眠りについた袁術さんの息は、さっき起きていた時の苦しそうな顔が晴れている様子でした。

この薬で、阿片によった中毒症状を無くし、阿片への依存症も治すことが出来るらしいので、これで一安心です。

 

「……美羽さま…」

 

張勲さんは嬉しそうに袁術さんの顔を撫でながら袁術さんの寝床にビッタリくっついて離れません。

 

「……ありがとな、鳳統ちゃん」

 

私の隣に居た紀霊さんが礼を言いました。

 

「七乃あのこは、美羽さまのことしか頭に入ってないのよ。美羽さまに何か起きたら、美羽さまを怪我したのが蛾一匹でも元老の豚どもでも全部虐殺できそうなぐらいにね。阿片中毒になったから蜂蜜をこのまま与え続けることも出来なくて、だからと言って与えなかったらさっきのように屍のような顔をするから、あの娘もとてもつらかったのよ。雛里ちゃんが来るのが少しでも遅かったら、きっと暴走し始めたかもしれない」

「………」

「美羽さま……」

 

さっきの袁術さんの話を聞くだけでも、張勲さんと袁術さんが互いにどれだけ大事な存在なのかは分かります。

きっと、張勲さんもずっと辛かったのでしょう。

 

「七乃、そろそろ美羽さまを休ませなさい。私たちにはまだまだ残った問題があるのだから」

 

紀霊さんが張勲さんに近づいて肩に手を乗せながら言いました。

 

「……そうでしたね」

 

張勲さんも紀霊さんの話を聞いて立ち上がりました。

 

「…美羽さま、七乃が絶対に美羽さまのことを守ってあげますからね」

 

そして、私の方を振り向いた七乃さんは、

 

「鳳士元さん、私の真名は七乃って言います」

「…へ?」

「美羽さまを助けてくださったお礼、と言いましょうか。まだ完全に治ったわけではないですけど、これで鳳士元さんのことを信用してもいい気がしました」

「…ありがとうございます、私の真名は雛里です」

「あ、七乃だけずるいでしょう。私のことも彩で良いわ」

 

紀霊さんも負けずと(何に?)私に真名を許しました。

 

「はい、今後ともよろしくお願いします。彩さん」

「……あー、やっぱ、鳳統ちゃんって可愛いわね。いや、雛里ちゃん」」

「あわわ……」

 

なんかこの人、一刀さんがそのまま女になった感じがするのは私だけですか?

 

・・・

 

・・

 

 

袁術さんの部屋から出て、私たちは以前話し合った部屋に戻りました。

 

「それで、雛里ちゃん、これからどうするつもりかしらね」

「そうですね……実は昨日一刀さんが戻って来ました」

「確か、雛里ちゃんと一緒に居たという男ね」

「はい、それで、一刀さんから孫策さんのところの話を聞いた所、太史慈と同盟を結ぶ形になったらしいです」

「…最悪な構図ですわね」

 

張勲、七乃さんが目を細めながら言いました。

確かにこのまま孫家・反乱軍同盟軍との戦いが始まれば、袁術軍には不利になります。元老たちの私兵をかき集めるとしても、勝てるかどうか分からないでしょう。

そして私たちにとっては、どちらが勝つかは関係なくこの戦いが始まった時点で負けとなります。

私たちの目標は、あくまで無駄な血を流させないことですから。なんとしてでもこの戦いを無血で終わらせます。

 

「それでなんですが、七乃さん。一つ、はっきりさせていただきたいことがあります」

「なんですか?」

「もし、袁術さまを助けるために、袁家を滅ぼす必要があるとしたら、どうなさいますか?」

「!」

「どういうことなの?」

 

七乃さんよりも彩さんが驚いた顔で尋ねましたので、私は答えました。

 

「例え戦いまで行かずにこの問題を凌げるとしても、袁術さまには既にこの豫州を治める力がないことが知らされると思います。私は最終的に、今後ともこんなことが起こらないように、袁家の元老たちの罪を裁くべきだと思ってますので、もしそうなった場合、袁術さまを守る壁は、ここに居る彩さんと七乃さんだけとなるのです。そうなったら、袁術さまを嫌う孫策さんや他の者たちが袁術さまを狙うことは当たり前」

「つまり、この事件が収まると、私たちは美羽さまを豫州を離れなくてはならないというわけですね」

 

七乃さんが冷静な顔で言いました。

 

「しかし、美羽さまは何も悪くないじゃないか。寧ろあの爺共がなくなれば今からでも我々が美羽さまを支えて良き君主に……」

「それが出来たならどうして私たちは今回美羽さまを守れなかったのでしょう、彩さん」

「……っっ」

「時は既に遅れたのです。私たちが美羽さまを助けるべき場面はもっと前…そもそも美羽さまが傀儡君主として選ばれる前に助けるべきだったのです。ここまで来てしまっては、もう美羽さまに重荷を背負わせることは出来ません」

 

七乃さんは彩さんの顔をまっすぐ見ながらそう言いました。

 

「そしてぶっちゃけますと、私は美羽さまを天下人にする気なんて最初からなかったのです。美羽さまが君主の座から降りられて、私がその側に居られるとしたら、他のことはどうでもかまいません」

「七乃……」

 

彩さんが言葉が詰まって何も話さずに居ると、七乃さんは私に言いました。

 

「というわけで、雛里さん、私は美羽さまが助けられるのなら他のことは全然構いません。あの豚野郎どもが死ぬだろうと、他にどんな犠牲があるだろうとかまいませんから、美羽さまのことを、助けて欲しいです」

「……判りました。それじゃあ、これから私がいう通りに二人とも動いてください」

 

私はお二人に、今回の作戦の概要を説明し始めました。

 

 

 

 

一刀SIDE

 

「……」

 

僕は今宿屋で一人で居る。

雛里ちゃんたちは城に仕えていて、今でもなりに働いているらしい。

 

この宿屋が警戒サれている様子が見当たらない。

僕が戻ってきたことを知らないというよりは、こっちに気を使う暇がないのかもしれない。

袁家の考えだと、僕は孫家と結託した人間だろうけど、今その孫家が反乱軍と一緒に下克上を行おうとしてるんだ。

僕は良く知らないが、今頃裏舞台では激しい諜報戦が繰り広げられてるに違いない。

そんな中でただ孫家の知り合ってるぐらいで、連絡もわたり合ってないようなただの放浪者に使う気があるとしたら孫家の城や太史慈の所に間者一人でももっと送るだろう。

 

「まぁ、どの道無駄だろうけどな」

 

お前たちが行ってるその諜報戦は、光を見ることなく終わるんだ。そうするために、今雛里ちゃんたちが頑張ってるんだから。

そして、今誰も注目しない二つの勢力も……

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「数日前、二つの場所に手紙を送りました」

「手紙?どこにだ?」

「…一刀さん、戦いに勝つもっともいい方法ってなんでしょうか」

「………それって、あれだよ?戦わずに勝つことが上策なんだろ?」

「はい、そのとおりです。でも、既に時は遅れ、戦を止めることはもはやできそうに有りません。この戦い、白鮫江賊団の時みたいに戦わずに屈服させることは難しいでしょう。あの時とは規模も違いますし、時期も悪く、もっとも私たちが直接的には何の関係もないただの旅人ですから」

「じゃあ、どうするんだ?」

「戦にもっとも早く勝つ方法、それは……王を取ることです」

「王?」

「はい、王というか、この戦で得する二組を捕まえたらいいんです」

「得する組み……袁家が勝った場合、得するのは袁家の元老で、反乱軍が勝った場合得をするのは…商人だな」

「はい、その両方を戦争が始まって、願わくば、本格的な戦いが始まる前に捕獲します」

「……そう簡単に行くのか?そもそも戦わずに隠れてる奴らじゃないか。商人に限ってはどこに居るかすら分からないし」

「だから、援軍を要請したんです」

「…援軍?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「………はぁ…」

 

出来れば、巻き込みたくなかったんだけど……。

 

 

 

 

チリーン

 

ガキン!

 

「刃物を締めろ。ここは普通の宿屋だ。厨房の包丁以外に血を見ることがあってはならない」

「…貴様の甚だしさには呆れるばかりだ」

 

鈴の音を鳴らしながら後ろにあった宿屋の窓から入ってきたのは甘寧だった。

後ろから攻撃とはなかなか嫌われるけど、まあ仕方ない。

僕がやったことは、蓮華をこの危険な賭けに取り込むことになるのだから。

 

「貴様らがその下らない理想を持ってどこで野垂れ死にするかはどうでも構わないが、まさか蓮華さまを巻き込もうとするとは、許せん」

「まさか、蓮華本人も来ているのか?」

「ほざけ。来たのは私だけだ。貴様を殺すには十分な全力」

「…………蓮華はなんと?」

 

甘寧の悪口を聞き流して僕は本題に入った。

甘寧は僕を視線だけで殺す勢いで睨むが、悪役で結構。

この無駄な戦いを止めることが出来るなら安い御用だ。

 

「今明命が部下の中で脚の早い連中を20人ぐらいを忍ばせている。優秀な者たちだから、2日もあれば準備が整える」

「……流石だな。助かる…牙莎は来てないのか?」

「…奴は蓮華さまと一緒に留守番だ。こういう仕事には向かない奴だからな」

「結構頼りにしてるのな。奴一人に蓮華を任せて」

「………何が言いたい」

「別に何も(棒読み)」

「ちっ」

 

鈴の音がまたもや振ってきそうなので取り敢えず姿勢はとっておくことにしよう。

 

 

 

 

倉SIDE

 

 

「……ふぁぁ」

 

暇。

………もう直ぐ太史慈たちと戦うかもしれないのに、借りにも武将のあたしが暇ってどういうこと?って言われるかもしれないけど、

だって暇だもん。何もすることないし。調練とかも、全然ないよ。

あまりにも暇で自分から城壁警備するって言ったけど…失敗だった。

これ、暇すぎる。

 

「…亜季ちゃん。…うん?」

 

一緒に(むりやり)連れてきた亜季ちゃんが隣に居ないと思ったら、ちょっと離れた所の影の下で寝てた。

 

「……<<カチン>>」

 

一刀からもらったラ『らいたぁ』。

 

「えいっ」

 

の火種を亜季ちゃんに跳ばす

 

「……む……なんか……う?」

 

………

 

「あちぃーー!あち!あち!頭あちぃ!」

 

跳び上がった亜季ちゃんは帽子が燃えてるに気づいて驚いて帽子を城壁の床に投げつけて足で踏んだ。

 

「………<<くす>>」

 

面白い。

 

「っ!遙火、お前がやっただろ!」

「……知らない。今日暑いせいかも」

「馬鹿にするな!暑いぐらいで帽子が燃えるわけないだろ」

「…亜季ちゃんは暑い時に溶けるって言わない?」

「あ?そりゃいうだろ」

「…溶けるの?」

「溶けるか!」

「…じゃあ、それと同じ」

「………あれ?そう……なのか?」

「そうなの」

「……そうか。そうだな。暑いからって溶けないのに、溶けるって言うよな」

「うん、だから、暑いから火がついても、おかしいことじゃない」

「……うん、そうかもしれない。ごめん、オレちょっと勘違いした。許してくれ」

「…大丈夫、亜季ちゃん友達」

「うん、ありがとう。遙火」

 

………面白い。

 

「ん?あれって」

「何?」

 

亜季ちゃんが見た方を見ると、なんでも凄く不審者っぽい姿をした人が城壁の辺りに居た。

ここは普段人が居ない場所なのに、しかもあの服って、袁術軍の人が着る官服でもない。

 

「おい!そこのお前!」

「!!」

 

亜季ちゃんがその人に向けて叫ぶと、こっちに気付いたその人は素早く逃げ始めた。

 

「あーっ!こら逃げるな!遙火、追うぞ!」

「…うん」

 

あたし達は城壁から飛び降りて、その人を追い始めた。

 

・・・

 

・・

 

 

「こらぁ!もう逃げるとこなんてないぞ。大人しく捕まれ!」

「くっ!」

 

二人で暫く追い続けてやっと隅に追い込んで、もう逃げる所なんてない。

 

「くっ…!かくなる上は……甘寧さま、周泰さま、お許し下さい」

「!」

 

周泰……明命ちゃんの部下?

 

「っ!」

 

駄目、舌噛んで自決しようとしてる!

 

「あ、遙火!」

 

あたしはその人が死ぬのを止めるため素早くその人に近づいた。

 

「っ!させない!」

 

自決を邪魔されたその人は手を長い袖に入れて暗器を投げた。

 

「!」

 

ガチン!

 

ぎりぎりで棒で止めて軌道を外した。

 

「うわっ!遙火、こっちに跳ばすな!危ないだろ!」

 

後ろからなんか聞こえるけど気にしない。

 

「きゃっ!」

「大人しくする」

「は、放せ!」

 

……女?

 

「大丈夫、あたし、明命の友達」

「!」

 

前に倒して腕を後ろに曲げて制圧したまま、あたしは彼女の耳にそうつぶやいた。

 

「おお、やったな。遙火!」

「……うん」

 

亜季ちゃんが後ろから来た。

 

「早く連れていこう」

「…あたしだけで十分」

「えー、何でだよ。一緒に捕まえたんだろ」

「…捕まえたのはあたし。それに、二人とも城壁に居なかったら紀霊に怒られる」

「むっ…それはそうだけど……じゃあ、オレが連れてくから遙火が城壁に行ってよ」

 

多分、亜季ちゃんは城壁に居るのがだるいから駄々をこねてるだけ。

でも、亜季ちゃんは本当に審問する所に連れてくから駄目。

それじゃ……

 

「じゃあ、じゃんけんで決めよう」

「じゃんけん?」

「うん」

 

あたしは亜季ちゃんにじゃんけんについて説明した。

 

「なるほど、分かった。じゃあ、グーかチョキかーパーを出して勝った方がつれていくんだな」

「……うん」

「分かった。絶対勝つぞー!」

 

でも、これだけだと確立は半分……

 

「じゃん、けん」

「亜季ちゃん」

「あ、何だ?」

「あたしが掛け声する」

「うん?…まぁ、いいけど」

「それじゃ……

 

 

 

最初はグー、じゃんけんぽん!(いつもの3倍の速さ)」

「!!」

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

「なんか、騙された気分だぞ……はぅぅ…眠い」

 

後、亜季ちゃんは結局紀霊に城壁で昼寝してるのをバレて怒られた。

 

 

 

捕まえた(仮に)曲者を連れて、紀霊の所に行くふりをして、あたしはその娘を連れて人気のない場所に回りこんだ。

 

「…あなたは、何者ですか?」

 

鋭い目つきのその娘が私を睨みながら言った。

 

「あたしは倉。明命の友達」

「周泰さまとお友達」

「……信じないのだったら」

「あ、いえ、疑うわけではありません。真名も呼んでいますし、それに私を助けてくれたんですから」

「……どうしてあんな所に居たの?明命と一緒に袁家の元老たちの屋敷に潜り込んでたはずだよね。何であんな見え見えの所に居たの?」

「そ、それは…その……ごめんなさい。私が未熟なばかりに…」

「後、自決、良くない。そんなことすると明命が哀しむ」

「で、ですが、敵に情報を漏らすわけには行きません。捕まって味方の情報を吐かされるより、自決した方が味方のためです」

「……そんな犠牲しても、誰もありがたく思わない。ただの無駄死に」

「っ……」

「あたしが知ってる明命は、部下が例え掴まったとしても、味方のため自決するより、味方の情報を話すとしても生きて帰ってくる方を喜ぶ娘」

「……ごめんなさい」

 

その娘はしゅんとなって肩を落とした。

 

「名前、何?」

「りょ、呂蒙と申します」

「……諜報員、向いてない」

「そ、そんな…!」

「目悪いと困る。眼鏡かけると光ってバレやすい」

「っ………!」

 

さっき早くこの娘を追い込んだのは、この娘が途中の樽やいろんな障害物に事々引っかかってくれたおかげ。

だからきっと、この娘は目が良くないのだと思った。

そして、眼鏡なんてかけて屋敷に潜り込めないからかけないで来たら、道に迷ってあんな所にいた。

 

「どこかに隠れてて、夜街に居る宿屋に来る」

「し、しかし……」

「いいから」

「……判りました」

 

 

 

 

 

 

 


 
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