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恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第十二話

第十二話です。ようやく完成しました。
お祭り用の作品は無理かも…。

それではどうぞ。

2011-12-17 00:39:25 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5819   閲覧ユーザー数:4735

こんにちは。

鍛冶屋「鋼鷹」店主兼「羽丸印」創設者兼董卓軍お抱え鍛冶師 鷹原 真也だ。

 

また肩書きが少し増えた。

 

 

 

「~~♪~~~♪」

 

今俺はとても機嫌がいい。つい元の世界の歌を口ずさむ位に。

ちなみに口ずさんでいるのは主にアニメやゲームの主題歌だ。

実は俺、アニメや漫画が大好きなのだ。ゲームも好きだが、元の世界では

やりこむ暇が無かったのでほとんど手付かずだった。

代わりにPVはネットで良く見たが。

で、なぜこんなに機嫌がいいかと言うと…

 

「ようやくカツ丼が食べられる~♪」

 

という訳だ。この世界、パンがないから当然パン粉がない。

だからフライ全般ができなかったのだ。

から揚げはできるのでフライの代わりにして作ってみたのだが、やはりカツ丼としては

無理があった。美味しかったけど。

ならばパンから作ってしまえ、って事でいろいろ試行錯誤した。

石窯は先に燃料だけ入れて窯全体を熱くし、その熱で焼く物で良かったし、

酵母はいくつか作り方を知ってたし、老面(小麦の生地を自然発酵させた物)もあった。

問題はパン生地の分量だった。

元の世界と違って細かい量りがないから失敗作ができる度に調整しなければならなかった。

その途中で作った物もある。

それが計量スプーンと計量カップだ。元の世界でも家庭には必ずあるであろう物を

作ったのだ。これを使えば大まかな調整ができるからかなり楽になった。

ちなみにカップとスプーンも「羽丸印」で売り出している。なかなか好評だ。

これらの値段はそれほど高くないから一般でも買える。

 

閑話休題

 

そんなこんなでようやく納得できるパンが完成し、それを乾燥させて削り、

パン粉を作った。

そしてそのパン粉を使って今カツを揚げているのだ。

ただし、極厚の豚肉で。しかも二度揚げ。豚肉が厚すぎて普通に揚げると衣が

真っ黒に焦げるか中が生のままになるので、まずは高温の油で数秒揚げ、その後直ぐに

低温の油でじっくり火を通すのだ。ついでに小麦粉には山芋をすりおろした物を

混ぜてある。

 

「………よし、揚がった」

 

いよいよカツ丼の調理開始。まず多めの醤油ベースの甘辛の汁で玉ねぎを煮る

(もう食関係には突っ込まない事にした)。

玉ねぎに火が通ったら食べやすい大きさに切ったカツを乗せ、少し煮る。

その後、溶き卵を回し入れ、半熟になったら丼によそったご飯の上に移して

 

 

極厚カツ丼完成!!

 

 

今回はちゃんと飲み水を用意。エビチリ炒飯の二の舞はしない。

まあ、流石に二度も連続で恋が来るとは思わないが。

それでは

 

「いただき『真也…』………何か用か、恋」

 

本当に来るとは思わなかったぞ。

 

 

「…詠が真也を呼んで来てって」

「……これ食べたら行く」

「…大至急来て欲しいって」

「そこまでか?」

 

いったいどれだけ大事な要件なんだ?

 

「…お城に行く」

「…分かった。……折角作ったのに」

 

名残惜しいが、余程の事情の様だから行かない訳にはいかない。

城に向かおうとして

 

「?恋は行かないのか?」

 

何故か一緒に向かおうとしない恋が気になって足を止めた。

 

「…今日一日、お城には近づくなって」

「……じゃあどうやって詠からの伝言を受け取ったんだ?」

「…ねねが聞いてきた」

「その本人は?」

「…今日はお城」

「………それでも大至急と伝えたって事はあいつにとっても余程の事か」

 

いくら俺が嫌いでも、重要な要件を遅らせる様な真似はしないだろう。

逆に大した要件じゃないのに大至急と言った可能性もあるが、独断で恋を

城から遠ざける事まではしない筈。ましてや自分が城勤めなのにわざわざ恋と会う機会を

自分で潰す事はしないだろう。

 

「なら行ってくる。恋、店番頼む。後その料理食べていいぞ。どうせ俺は食べられないし」

「ん。…いってらっしゃい」

 

……ちょっと声色が変わったのは…気のせいじゃないよな。

 

 

 

で、城に着いた俺なんだが、目に入った光景が

 

 

成獣であろう猪に追い掛けられている兵士達

蜂の大群に追い掛けられている陳宮

地面に四つん這いになって頭を垂れている霞

 

だった。

 

「………うん、目の錯覚だ」

 

そう考え、瞼を閉じて数回深呼吸して再び開く。そして入ってきた光景は……

 

 

 

猪に突き飛ばされてきりもみ回転しながら飛んでく兵士達

さっきよりさらに増えた蜂の大群に追い掛けられてる陳宮

変わらず四つん這いのまま頭を垂れている霞

 

だった。

 

「………なんだ、この状況」

 

誰でもこう呟くんじゃないかと思う。

この時期に猪はともかく蜂っていたか?とも考えていたら

 

「ようやく来たか鷹原!!!」

 

やたら焦っている華雄が来た。

 

「華雄、なんだこ『話は後だ!ついてこい!!』っておい!?」

 

俺の話を遮り、華雄が俺の手を掴んでどこかに連れていこうとする。

 

「待て待て!?あいつら放っておいていいのか!!?」

「急がなければ更に被害が増える!!!」

「本当にどんな状況なんだ!!?」

 

 

 

華雄に引き摺られる様に連れてこられた場所は執務室だった。

 

「賈駆!連れて来たぞ!」

 

どうやら中に詠が居るらしい。だが

 

「……返事がないな」

「……ああ」

「本当に中に居るのか?」

「その筈なのだが……」

 

部屋を空けてるのか?

 

「………ぇ」

「?何か言ったか?」

「私は何も言ってないが…」

 

何か聞こえたと思ったんだが。と考えていると

 

「……て~~」

「……華雄」

「今のは私にも聞こえた」

 

やはり聞き違いではなかったらしい。そして声は目の前の部屋から聞こえてきた。

 

「開けるぞ?」

「ああ」

 

そして俺が執務室の扉を開けると

 

「「……何だこれ(は)」」

 

目の前には竹簡の山があった。山の両端には机の脚らしき物も。

俺と華雄が呆然としてたら

 

「助けて~~…」

「「詠(賈駆)!!?」」

 

目の前の竹簡の山から詠の声がした。急いで二人で竹簡の山を掘り起こす。

竹簡同士がやたら絡み合ってて外すのにも手間が掛かったが。

少しして

 

「あ、ありがとう二人とも……」

「「いや…」」

 

竹簡の山から詠を救出した。竹簡をすべてどかすと真っ二つに割れた机があり、丁度

その間に竹簡の山があった形だ。その時机の上に置いてあったのであろう墨が

ぶちまけられ、詠の服を真っ黒にしてしまっていた。

 

「とりあえず着替えてこい。待ってるから」

「そうする……」

 

そう言って詠は執務室を出て行った。

 

「……さっきの事といい、詠といい、どういう事態なんだ?」

「……すまん、鷹原。後は任せた」

「は?」

 

今度は華雄が部屋を出て行った。任せたって何を任されたんだ?

 

「……とりあえず詠を待つか」

 

たぶんだけど詠が事情を知ってそうだし。

 

 

「ごめん、お待たせ」

「いい。早速で悪いが説明を頼む」

「……ボクね、月に一回、ものすごく運が悪くなる日があるの」

「?」

「今日は朝から着ようとした服が破れたり、ご飯食べようとしたら箸が折れたり、

 さっきみたいに机が壊れて竹簡の山に埋もれたり……」

 

それはつまり…

 

「今日が運の悪い日だって事は理解したが、それで何で俺を呼んだんだ?」

「運の悪くなる対象、ボクだけじゃないのよ」

「………なに?」

「ボクと話した人、ボクに近づいた人も運が悪くなるの。で、酷い目に遭う。

 今まで死人が出た事はないけどね」

 

さっきのあいつらはそれでか。けど「死人が出た事ない」って重傷者は

出た事があるって事じゃないよな?

おまけに詠の言い方だと……

 

「俺や華雄もその対象になるよな?」

「勿論」

 

キッパリ言いやがった。ちょっと文句でも言おうとしたら

 

「きゃああああ!!?」

「華雄!!!?」

 

華雄の悲鳴が聞こえてきた。

すぐに執務室を出て華雄の所に向かおうとしたのだが

 

「来るなよ鷹原!!!絶対に来るなよ!!!?」

「え…えええ?」

 

なぜか華雄本人から完全拒否された。

 

「執務室から出てくるんじゃないぞ!!?絶対だぞ!!?」

「……そこまで言われると本当に出られなくなるんだが」

 

俺が執務室に居るのは確定なのか?華雄。俺が聞いてるかどうか分からないのに。

けど大丈夫なのか?本当に。

なんて事を考えていたのだが、少しすると

 

「「「「「「お助けええええ!!?」」」」」」

「おとなしく金剛烈斧の錆になれお前等あああああ!!!」

 

兵士数人の物らしき悲鳴と華雄の叫び声が聞こえてきた。

 

「大丈夫……なのか?」

「さ、さあ…」

 

とりあえず放っておくべきか?本人の希望もあるし。

 

 

「華雄のあんな悲鳴、初めて聞いたわ」

「そうなのか?」

「ええ」

 

可愛くて綺麗な悲鳴だったが。まあ、悲鳴に可愛いも綺麗もないか。

 

「それで詠、結局俺が呼ばれた理由がわからないんだが」

「……真也」

「ん?」

「今日一日ボクの補佐してくれない?」

「……なに?」

「こういう日はボクがあんまり出歩くと被害が大きくなるから基本部屋に籠るんだけど、

 その間も仕事はしなくちゃいけない。けど終わった案件は別の場所に

 届けなきゃならないんだけど……」

「本人が部屋を出られないから他の人間がやるしかない。けどそれだとお前に近づいて

 会話する事になる」

「今までもいろんな人間がやってくれたんだけど、例外なく酷い目に遭うし…。

 どういう訳か月だけは影響受けないんだけど」

「主の月様にやらせていい仕事じゃないよな」

 

月様なら気にせずやりそうだけど。

 

「ね!お願い真也!もしかしたら真也も影響ないかもしれないし!」

「………」

 

これで城の業務が滞ったりしたら……やっぱり事だよな。

 

「ちゃんと特別報酬出せよ。軍の人間じゃないのに一日束縛されるんだから」

「出す出す!ありがとう真也!」

「一度店に戻るぞ。恋に店番頼んであるし、戸締りもしたいし」

「早く戻ってきてね」

 

 

 

恋を店番から解放し、店も閉めてきた。

執務室も掃除して新しい机も用意し、詠が処理を再開したのだが…

 

「真也!この案件持ってって!」

「わかっ『追加です』……増えすぎじゃないか?」

「今日みたいな日は大概こうよ!」

「そうか……」

 

処理した途端に案件が増えて竹簡の山がいつになっても消えないわ…

 

「ああ!また筆が折れた!?」

「……あれだけあった筆もこれで最後か。次持ってくる」

「お願い!」

 

丈夫な筈の筆が次から次に折れるわ…

 

「味が無い!?何この肉まん!?」

「……俺が作り直してくる」

 

お茶請けの肉まんの味が無かったりするわ…

 

「これさっきやった案件じゃない!!?」

「……向こうで墨こぼして読めなくなったんだと」

 

一度処理した案件をまたやる羽目になったりと散々だった。

 

 

 

「疲れた……」

「詠ちゃん、大丈夫?」

「今は何を言っても無理だと思います、月様」

 

ようやく今日の業務がすべて終わり、詠は今机に頭を預けている。

その少し前に月様が訪ねて来て、今執務室には三人の人間が居る。

 

「ほれ。これ食べて寝ろ」

 

肉まんの例があるので、俺が夕食を作ってきた。

ちなみに詠が疲れきっている事もあり、作ってきたのはおじやだ。

土鍋に水と醤油、酒を入れ、さらに干し貝柱を入れて煮る。貝柱が柔らかくなったら

細かく裂いて、研いでおいた米も入れる。煮えたら椀に盛り、浅葱を散らして完成。

本当はこれに牡蠣のから揚げとか乗せるんだけど、疲れた体に揚げ物は

食欲湧かないだろうと思って今回は外した。

 

「美味しい」

「なんだか落ち着く味です」

「好評で何よりです」

 

ゆっくりと味わうように食べ、おかわりもして、土鍋の中のおじやはすべてなくなった。

 

「美味しかった~。ありがとう真也」

「ごちそうさまです、真也さん」

「いえ。それでは…」

「どこ行くの?」

「ん?仕事が終わったのなら帰ろうかと」

「まだ日付変わってないわよ」

「……は?」

「今日一日、私の補佐って言ったでしょ?」

 

いや、確かに言われたが

 

「もうする事ないだろ?後は寝る位しか……っておい、まさか」

「一緒に寝て」

「寝言は寝て言え、馬鹿」

「え、詠ちゃん……」

 

いったい何を言い出すか、こいつは。

 

 

「年頃の娘が男と寝るとか言うんじゃない」

「日付が変わるまででいいんだけど」

「断る。良くて部屋の外で警護だ」

「じゃあそれで」

「………嵌めたな?」

「本当に一緒に寝る?」

「喜んで警護しようじゃないか」

「…よろしく」

 

これで放っておいて何かあっても困るしな。

 

「…ついでです。月様も今日は詠と一緒にご就寝ください」

「え…と……いいんですか?」

「構いません」

「…では、お言葉に甘えて」

「寝よう、月」

「うん」

 

執務室を出て二人が寝室に入るのを確認した後、俺は部屋の外で警護しながら

夜を過ごした。

 

 

 

次の日

 

「猪が部屋に来ただと!!?」

「正確には部屋に近づいた、だ」

 

警護してて正解だったな。たぶん俺が居なかったら部屋に乱入してたんじゃないか?

昨日の詠の状態だったらありえないって言えないし。

 

「どうやって追い返したんだ?」

「鼻に気弾一発。威力はまだまだ弱いけどようやく出せるようになった」

 

最初に使う相手が猪とは思いもしなかったけどな。

 

「ところで華雄」

「なんだ」

「いつもと格好が違うが、何かあったか?」

 

今華雄は紫色のチャイナドレスを着ている。

長手袋やニーソックスは変わらず着けていて、前と比べると

ずいぶん露出が少ない。

 

「ちょ、ちょっとした気分転換だ。……似合わないか?」

「いや、良く似合ってる。それにいつもの格好しか知らなかったから中々新鮮だ」

「そ、そうか!良く似合ってるか!」

「嬉しそうだな」

「そ、そんな事はないぞ!私は何を着ても似合うと再認識しただけだ!」

 

そういう事にしとこう。指摘する理由もないしな。

 

「しかし、お前も董卓様同様に影響を受けないのだな」

「影響受けなくても補佐する事になるなら苦労するのは同じだけどな」

「どういう事だ?」

「これからも昨日みたいな日には頼むって言われた」

「……すまん、私からも頼む」

「……だよな」

 

一度引き受けたのが運の尽き、か。

おまけに軍務に関わってる……まずい、このまま軍に組み込まれそうかも。

……ひょっとしてこれが俺の不幸か?

 

 

おまけ

 

「あんた達、昨日は大丈夫だった?」

「……秘蔵の酒を全部地面に飲まれた」

「恋殿と過ごせない怒りを木にぶつけたら蜂の巣が落ちてきたですぞ」

「……華雄は?」

「………いきなり鎧が外れて胸を兵達に見られた」

「「うわあ(ですぞ)……」」

「……服装を変えた理由と昨日の悲鳴はそれね。じゃあその後の悲鳴と叫びは」

「私の胸を見た奴らを一人残らず追い掛けて打ちのめした時の物だ。たぶん」

「……その兵達は?」

「たぶん、あれや」

 

「すいませんすいませんすいません」

「何も見てません。俺は何も見てません。何があっても見てません」

「鬼が…鬼が追い掛けてくる。どこまでも追い掛けてくる…」

 

「……何してくれてるのよ、華雄」

「私の胸を見たのだ。まだ足りない位だ」

「真也には?」

「あいつが望めば……って何を言わせる!!?というか何で

 鷹原の名前が出る!!?」

「今更よね」

「今更やな」

「今更ですぞ」

「~~~~~!!!」

 

 

 

 

~後書き~

 

詠の超絶不幸の日でした。

どんどん真也が逃げられなくなってます。

ちなみに詠も意図してません。

カツ丼は後日作って食べました。いつもの面子で。

月、詠、陳宮は普通サイズのカツで作りました。

 


 
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