No.338582

日々、徒然と

magaminarumiさん

おとめ妖怪ざくろ、利剱×薄蛍。この二人の夫婦っぷりに惚れた……! 初書きでございます。(2010/11up)

2011-11-23 22:11:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1103   閲覧ユーザー数:1103

 昼過ぎの台所は、賑やかで明るい声に溢れていた。

「桐、それ何の形なの?」

「ビスケットー!」

 えへへ、と満面の笑みで手に持ったものを薄蛍に見せる桐。釣られて薄蛍も笑ってしまう。

「今作ってるのビスケットじゃないのよ」

「賑やかだな」

 台所から聞こえる声が気になって、のぞき込んできたのは利剱だった。

「あー利剱だー」

 わーいと声を上げて、利剱に桐と桜は駆け寄る。

「こら、桐、桜!」

「構わないが」

「でもズボンが……」

 利剱のスボンには、可愛らしい白い手形がうっすらとついている。

「今、パンを作っていたので」

「ああ、その粉か」

 台所にある台の上は、見事に粉まみれで様々な形のパンが並んでいた。

「遊び感覚で作れると聞いたので作っていたのですが」

「りけんー、泥遊びしてたのー」

「そうか。楽しかったか?」

『うんっ!』

 利剱の問いかけに、二人は満面の笑みで答えた。妖人であっても、幼子なのだと実感できる。無邪気で無垢だ。

「利剱様、お着替えは……それともお風呂にしますか?」

「もう沸いているのか」

「はい。桐と桜が粉まみれになると思いましたので、今日は早めに準備をしたんです」

「では俺も入るとするか」

「りけんも一緒に入るのー?」

 きゃーと嬉しそうに騒ぎ始める桐と桜に、薄蛍は慌てた。

「利剱様」

「俺も汚れたことだしな」

 言われて、利剱を見渡すと、小麦粉の粉はズボン以外の場所にも付着していて、利剱の顔を触ったのか、肌にも粉がついていた。

「ただまだ時間が時間だ。櫛松さんに伝言は頼めるか?」

「あ、はいっ。お着替えは」

「風呂上がりのいつもの服で頼む」

「わかりました」

 賑やかにしゃべる桐と桜を連れて、利剱は台所を去っていった。一人残されて、薄蛍は簡単に台所を片づけ終えて、櫛松の元へと走るのだった。

 

 誰もいなくなった台所に、ふふふと笑いながら足を踏み入れたのは鬼灯と雪洞だった。

「磨きがかかってますわね、雪洞」

「そうね、仲がよくてまるで新婚さんですわね、鬼灯」

「そうだね」

 突然背後から聞こえた声に、二人は驚いて振り返ると、そこには櫛松の姿があった。

「さきほど薄蛍が櫛松のところに行ったはずですのに」

「あァそこで会ったよ」

 慌てながらも嬉しそうに走っていく薄蛍。

 いつかは巣立っていくとはわかっていても。

 娘が成長していくかのように感じてしまう櫛松だった。

 


 
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