No.325654

インタビュー ウィズ リザードマン

立早 文さん

ちょっと関西弁が入ったハイファンタジー超短編。

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2011-10-29 09:08:18 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:472   閲覧ユーザー数:471

「おいこら、トカゲ」

「なんだよ、猿」

「なんでトカゲが、立って歩いて、しゃべっとんねん」

「いや、だから、トカゲ言うなや」

 

「だいたい、何やねん。ヘビに手足が生えました、みたいな見かけしよってからに」

「逆やで、それ」

「何が逆やねん?」

「ヘビに手足が生えたのがトカゲ(ヘビの進化形がトカゲ)やのうて、

 トカゲの手足が無いなったのがヘビ(トカゲの進化形がヘビ)や」

 

「なんじゃそれ! 退化しとるやないけ!」

「んん~。一概には、退化とも言い切れんような?」

「なんや、その、奥歯にモノのはさまったような言い方は」

「クジラとか、手足が無いなって今の姿があるやろ? アレはアレで、一つの進化やで?」

 

「だいたい生物は、血のにじむような苦労をして手足を手に入れた(?)んだろうに。

 それを、あっさり捨て去るとは、どういう了見じゃ!」

「んあ~、両生・爬虫類までの足は試作品みたいなモンで、何かと使い勝手が悪いんやな」

「試作でも何でも、足は足やろ。そんなに違いがあるもんかいや?」

「まぁ、イモリやトカゲと、イヌやネコを、真上から見下ろしたと想像してみぃや」

 

「おぅ、想像したでぇ」

「イモリ・トカゲ組と、イヌ・ネコ組の間に、どんな違いがある?」

「イヌ・ネコの方が、もふもふして、撫で心地がええな。あと、ケモミミが付いとる」

「誰が体毛やケモミミの話をしとるかぁ!」

 

「痛い! 痛いがな。ぐー で殴ったら痛いがな」

「刀や弓矢みたいな武器もって、ほっつき歩くような、猿の子孫が何を言うか」

「イモリ・トカゲは、手足が真横に突き出とるが、イヌ・ネコは、身体の中心線に沿うとるな」

「分かっとったら、最初からそう言え」

 

「でも、そんなんが手足を退化させるほどの大事け?」

「考えてもみぃや。イモリ・トカゲの足は前後にしか振ることができんやろ」

「ふんふん」

「早く走りたい時に、蹴り出しするんも難儀や」

 

「小さいトカゲとか、ちょこまか走り回りよるで?」

「それは、スケールが小さいから、割と少ない筋肉量でも無理が効くからや。

 びゅんびゅん走り回るワニがおるか? ぴょんぴょん飛び跳ねるコモドドラゴンもおるまい?」

「ワニやコモドドラゴンも、エサに襲い掛かるときは、けっこう敏捷らしいで」

「言い訳くさいけど、普段の話、ちゅうコトで考えてくれや」

 

「イヌ・ネコのたぐいは、そうやない、と」

「前足後ろ足とも、前後左右に自由に動かせるんで、蹴り出しもしやすい。

 宙に浮いたふとももの周りには、みっしり筋肉つけることも可能や。瞬発力も持久力も上がる」

「なら、中途ハンパな足なら要らんわい、とか考えたヤツが、ヘビになったんやな」

「そんな、服着替えるみたいに種類は変わらんがな。

 でも、無理に足使うより、身体くねらせた方が便利がええ環境、みたいなモンはあったかもな」

 

「恐竜なんかは、二本足で走り回りよったヤツもおるんやろ?」

「ああ。おったらしいよ。でも、骨格の骨組みは、一旦真横に突き出てから、下に降りとったらしいね」

「じゃあ、お前らみたいな、人の姿をしたトカゲちゅうのは、想像の産物ってコトでFAやな」

「んん~、まぁ、そうっちゃあ、そうなんやけどね」

 

「なんや、歯切れが悪いなぁ」

「確かに、手足が身体の中心線に沿って伸びる、ちゅうデザインは哺乳類に多いもんや。

 でも、その哺乳類のモトになったんは、何やと思う?」

「えーと、爬虫類け?」

「せや。しゃれこうべ(頭蓋骨)の造りが、ちょっと違う爬虫類が、哺乳類の祖先と考えられとる。

 てコトは、爬虫類のまんま、中心線に沿った手足を持つように変化出来とったかもしれん」

 

「進化、やのうて?」

「そこらへんは、ちょっと微妙やね。とりあえず、ワシの趣味で変化て言うとると思うてくれ」

「クジラは進化言うたクセに」

「今の時点から見て、ある意味当たりの変化やったから、進化かなぁ、みたいなもんや」

 

「お前のウロンな話だけでは、いまいちワケが分からん。なんぞええ本でも無いんか?」

「おお。ええ本ならあるぞ。しっかりメモでもとっとけ。

 ドッポたち ― ちがっててもへいきだよ 小泉吉宏 幻冬舎(2005/07) 123p 20cm B6判

 ISBN: 9784344010086

 NDC分類: 726.1

 本屋で買えるかどうかは微妙や。ガキに読ませても無難な本やから、図書館にあるかもな」

「お前な、もちっと違う本は無いんかい!」

「そうは言うてもな、この本、骨格の足の向きにまで言及しとるんやぞ」

 

「てっきり、グールドあたりのエッセイが出てくるんかと思うたのに」

「ああ、グールドはええなぁ。文庫本よりハードカバーのが、もっとええ」

「え? 文庫とハードカバーとで内容違うんけ!」

「内容は違わへんけどな。読みよったら、なんや眠ぅなってきて、枕にしたら気持ちよぉ眠れるねん」

 


 
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