No.325023

真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 合間21

lovegtrさん

久しぶりの投稿です。
今回は太史慈こと栄の拠点です。
ではどうぞ!

2011-10-28 03:31:05 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5081   閲覧ユーザー数:3744

「「………」」

矢筒から弓を取り、弓に番え、弦を引き絞る。

そして手をすっと離すと、矢は的の真ん中に命中した。

おおー、という声が周りの兵から漏れ出すが、オレの耳には入ってこない。

弓を射るには集中が必要だ。

矢が的に吸い込まれるように頭の中で想像し、再び矢を放つ。

先ほど当たった場所とほぼ変わらない場所に当たると、兵たちはまた感嘆の声を漏らす。

弓の修練は集中力が必要なため、短い時間でもなかなか疲れる。

一刀がもうすぐ魏との戦が起きると言った。

オレにはよく分からないが、冥琳達も言っていたからそうなのだろう。

オレが今やることは、戦が起きたときに力を発揮できるようこうやって修練を積むことだ。

あ、そういえば今日はまだ一刀に会っていないな……

そんなことを考えながら弓を射っても、当然矢は当たるわけわなく、

「あ……」

的の中心から少しそれたところに突き刺さった。

駄目だ、いまので完全に集中力が切れた。

「クソッ……よし!各自鍛錬に戻れ!」

周りで見ていた兵たちを鍛錬を命じ、そばにいた副官に後のことを任せると、その場を後にした。

最近のオレは変だ。

一刀の事を考えるとおかしな感じになる。

さっきだって一刀の顔が頭に浮かんだだけで集中力が切れてしまった。

「は~~あ…こんなんじゃ、駄目だな……」

もうすぐ戦だっていうのに、鍛錬に集中できない。

「あ゛あ゛ー!どうしよう……」

「何!?どうしたのよ!」

頭を抱え悩んでいると、オレの奇声に引き寄せられた雪蓮が声を掛けてきた。

「雪~蓮~」

「一体、どうしたのよ?栄」

オレは心配そうな顔をする雪蓮に悩みを相談することにした。

「実は……最近、なんだか変なんだ。

 一刀の事を考えると胸がざわついて、頭が熱くなって、鍛錬にも集中できないんだ…」

オレの話を聞くと雪蓮は、

「ぷっ…ハハハ!」

「な!?何がおかしんだ雪蓮!オレは真剣に悩んでいるんだぞ!」

「ふふふ…ごめんなさい。でも、そういう事なら簡単に解消出来るわ」

「本当か!」

オレが今まで散々悩んできたことを雪蓮は、簡単に解決出来ると言う。

「簡単な事よ。栄、あなた一刀に恋、しているのよ」

「恋…?何を言っているんだ、雪蓮?一刀は友達だぞ、恋なんてするわけ無いじゃないか」

「本当にそう思ってるの?」

すると雪蓮はため息をひとつつくと、真剣な顔をこちらに向ける。

「今までは友達、そう思っていたかもしれないわ。

 でもね、一刀のことを思うと胸が苦しんでしょ、顔が熱くなるんでしょ。

 それは一刀のことが好きだからよ。好きな人のことを考えると胸がドキドキしたりするものなのよ」

「オレが一刀の事を……っ!?」

一刀の事を好きだ、そう思うと急にはずかしくなってきた。

「これが…恋?雪蓮、どうしよう!このままじゃオレ、おかしくなっちゃうよ!」

「ええ、そうね。だから、簡単な解決法を教えるわ。それはね…」

「それは?」

もったいぶるように一呼吸溜めて、雪蓮はその解決法を話す。

「それはね、栄、あなた一刀に告白しなさい」

バーンと得意げな顔をして、こちらに指を指しながら雪蓮はそう言った。

「…こ、告白ー!?そそそそんなの出来ないよ!

 オレなんかが告白しても、一刀が困るだけだよ……」

「こら、オレなんてって言わないの。栄は可愛いんだから、一刀も告白されたら嬉しいわよ。でも、そうね……」

すると雪蓮はジロジロと全身を眺めると、何か考えついたように顔を頷かせた。

「そうね、その格好は少し変えたほうが良いかもしれないわね」

そう言われて自分の格好を改めて見てみると、確かに色気の欠片も無い。

「あなた、素材はいいんだからもっとおしゃれな格好をしなさい。

 まずズボンじゃなくて、足を出しなさい足を。それからもっと胸元の開いた上着を着て、顔もお化粧をして…」

「で、でもそんな事急に言われても、服はこんなのばっかしだし、化粧品も持ってないぞ」

「そうなの…女子力低いわね……分かったわ!私があなたを変身させてあげるわ!」

こうして雪蓮に引きずられながら、オレの大改造のために街に向かうこととなった。

「う~、何かスウスウする……」

あの後、女の子らしい服装――丈の短いスカートや、袖の無い薄手の服など――を着せられ、化粧を行うと雪蓮は満足そうな顔をした。

「これで完璧ね!これなら一刀もイチコロよっ。ああ、自分の才能が恐ろしいわ…」

自己陶酔する雪蓮をほっといて鏡を見てみる、確かに可愛い。

「オレじゃないみたいだ…」

「ね?言ったでしょ。大丈夫よ、自信持ちなさい」

そのまま雪蓮に背中を押され、一刀の部屋の前へと来てしまった。

「う゛~~。やっぱり駄目だ、よそう。こんな格好恥ずかしくて見せられないし…」

そう思い立ち去ろうとした時、一刀の部屋の扉がいきなり開いた。

「んー?誰か居るのか?」

「ひゃっ!?かかか一刀っ」

オレと目が合うと、一刀は一瞬呆気にとられた顔をした。

「も、もしかして栄か?」

「そ、そうだ。オレだ、栄だ」

「「…………」」

突然の事なので2人とも変な会話の受け答えとなってしまった。

痛い沈黙が続く。

「…どうしたんだ、その格好?」

静寂を破ったのは一刀の方であった。

「あ、こ、これか!へ、変だよなこんな格好。オレがこんな格好しても似合わないのにな」

「いや、とても似合ってるよ。可愛いよ、栄」

可愛い?オレが?ガサツで男っぽい俺が可愛いだと?

一刀の顔を見ると優しく微笑んでした。

まずいっ!この顔だ。一刀の笑顔を見るとまた顔が熱くなる。

何か話さなくちゃいけない。

「あ、ありがとう……」

「それで、どうしたんだそんな格好をして。何か用があるのか」

そうだ、言わなくちゃ、好きだって。

「あのっ!」

もうこれ以上、我慢出来ない。

「一刀、オレ、お前のことが…お前のことが好きだ!」

どんな戦いの時よりも胸の鼓動が大きく鳴っているのが分かる。

「俺は…」

返事を待つ時間がこんなに長く感じるなんて知らなかった。

「雪蓮ー!!」

翌日、庭の四阿にいた雪蓮を見つけ、声をかけた。

「あら、栄。どうしたの?」

「その、昨日の礼と言うか、なんというか…ありがとなっ!」

「その様子だと、うまくいったようね」

オレの態度を察してか、雪蓮は口端を上げ見つめてきた。

「ああ!あの後、告白したら、俺も好きだよって!

 その後、部屋に誘われて、それから一緒に床にってキャーー!何言わせるんだよっ!」

「…そういうのは2人だけの秘密にしておいたほうがいいわよ……」

昨日の事を思いだし恥ずかしさでテンパるオレの様子を、雪蓮は苦笑いをして見ていた。

「ふふっ、でも手助けは今回だけよ。これからは恋敵として正々堂々勝負よ」

へ?恋敵?と言うことは……

「えっ!?雪蓮!お前も一刀のことが!」

「ええ、好きよ。もちろん一人の男として。

 あと言っとくけど私たち以外に呉の将のほとんどが一刀の事を想っているわよ」

負けないわよと言い四阿から立ち去る雪蓮を呆気に取られた顔で見送った。

呉の将のほとんどが、一刀の事を好き…

「なんだって~!!」

ということで栄の拠点でした。

最近忙しく、この話は時間があるときに少しずつ書いていったので、なんだか継ぎ接ぎな感じがするかもしれませんが、申し訳ありません。

 

栄の性格ですが、翠と無印の公孫賛を足して2で割った様な性格だと思って下さい。

男っぽくてハキハキしていますが、乙女なところもある。そういった感じです。

 

今度はハロウィンの話でも書きたいな。

では、またノシ


 
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