No.324033

真・恋姫†無双 外伝:幼なじみは耳年増

一郎太さん

明日提出のレポートもさくっと終わったので、今日3つ目。
summon氏と黒山羊氏のリクでにょろっ!と来たので書いてみた。
『このロリコンめ!』というコメントは受付を終了いたしました。
どぞ。

2011-10-26 00:31:52 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:10120   閲覧ユーザー数:7309

 

 

 

幼なじみは耳年増

 

 

 

pppppp……―――。

 

「うぅ……」

 

毎朝耳にする電子音が鳴り響いている。もぞもぞと身体の向きを変え、その音源へと腕を伸ばした。

 

「……………朝、か」

 

時計を見れば、短針は時計盤の5を指している。窓へと顔を向ければ、まだ陽も射していない。これは別に、今朝だけ早起きをしたという訳ではない。毎朝の恒例行事だ。

いつものように布団から抜け出して軽く伸びをすると、いつものように着替える為に立ち上がり――――――

 

「………はぁ」

 

――――――そしていつものように溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

あまり振動を起こさないように布団から抜け出して立ち上がる。

 

「ぐっ………」

 

ひとつ伸びをして箪笥まで抜き足で移動し、トレーニングウェアを取り出した。ごそごそと着替えを済ませてそっと部屋を出た。

階段を降りてランニングシューズを履き、ガラガラと玄関を開ければ朝の冷たい空気が俺の頬を撫でる。

 

「あ……iPod忘れた」

 

走る時間は1時間。毎朝音楽を聞きながら走る事が習慣づいている癖に、忘れ物をするとは。俺は出ていたばかりの引き戸をくぐり直し、靴を脱いで階段に足をかけた。

 

「………………はぁ」

 

そして再度溜息を吐く。仕方がないだろう。だって――――――

 

「っく、ひっく…お兄ちゃん、どこぉ…………」

 

――――――目の前で泣いている少女がいるんだから。

 

「どうしたんだ?」

「ぁ…お、お兄ちゃぁん………」

 

俺の声に反応した少女は顔を上げ、布団の中から飛び出してきた。涙に頬を濡らしながら両手を伸ばし、俺を求めてくる。仕方がないなとそれを受け止め、ゆっくりと頭を撫でてやった。

 

「それで、どうしたんだ?」

「んくっ、ぇぐ…だって、起きたらお兄ちゃんがいなかったから………ふぇぇえん………………」

「俺が毎朝トレーニングをするのは知ってるだろう。それより、また怖い夢でも見たのか?」

 

俺の腹に顔を埋めながら、こくりと頷く。この娘はよくこういった行動を起こす。怖い夢で真夜中に目を覚まし、怖がりなくせに暗いなか俺の部屋までやってきて、布団に潜り込む。

 

「ご、ごめんなさぃ……」

「いいよ。いつもの事だろう」

「うん……」

 

今日のランニングは半分に減らすか。いまだぐずる少女の頭を撫でながら、俺はそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

「寒くないか?」

「はい……」

 

落ち着きを取り戻したのか、少女の口調がいつもの敬語に戻っていた。もっと年相応にしてもいいのに、何故かこの娘はそれが嫌らしい。

 

「お兄さんの背中、暖かいです」

「そうか」

 

水色のパジャマの上から俺のパーカーを着せ、背中に乗る少女がぎゅっと首を抱き締めてくる。たまには負荷があってもいいだろう。

 

「それじゃ、行くぞ」

「はいっ」

 

俺は少女を背に、いつもより短いランニングを開始した。

 

「今日はここまでじゃ」

「押忍」

 

道場での鍛錬も終わり、爺ちゃんは一足先に居間へと向かう。俺も軽くストレッチをすると、道場の隅で座布団に正座をする少女に声を掛けた。

 

「朝飯も食っていくだろう――――――雛里」

「あわわっ、いいんですか?」

 

だったら何故まだいるんだ?そんな事は言わない。口に出したが最後、雛里が泣き出す事は目に見えている。

 

「あの、お兄さん…一緒に学校に行ってもいいですか?」

「そうだな。じゃぁ、先に準備出来た方が家に行く事にするか」

「はい」

 

爺ちゃんたちと一緒に朝食を摂るなか、雛里がおずおずと切り出す。いつも一緒に登校しているくせに、こうして聞いてくるのは彼女の弱気な性格が原因だ。

 

「相変わらず、雛里ちゃんはお兄ちゃんっ子ねぇ」

「あわわっ!?」

「一刀よ、いかに雛里が可愛いとはいえ、まだ手は出すなよ?」

「出すか、この色ボケ爺」

 

爺ちゃんも婆ちゃんも慣れたもので、雛里がいるこの状況を楽しんでいる。お隣さんに申し訳なくないのか。雛里もおばさんが朝ごはんを作ってるんじゃないのか?

 

「………」

 

ふと、静かになった隣に座る少女に視線を向ければ、茶碗を持ったまま真っ赤になる少女がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

雛里と初めて出会ったのは、10年と少し前の事だった。小学校から帰った俺が玄関で目にしたのは、来客を示す靴。

 

「おかえりなさい、一刀ちゃん。可愛いお客さんが来てるわよ」

「お客さん?」

 

居間へと向かえば、婆ちゃんの言葉の通り、そこには可愛らしい客が来ていた。

 

「お邪魔してるわね、一刀君」

 

お隣のおばさんと、その腕の中で眠る赤ん坊。生まれてまだ数か月のその姿は、とても印象に残った。

それから、俺と雛里の生活が始まった。

 

「ごめんなさいね、北郷さん」

「大丈夫だよ。俺が面倒見る!」

「あらあら、一刀ちゃんもすっかりお兄さんね」

 

時々うちで雛里を預かる事もあった。勿論爺ちゃんや婆ちゃんも一緒にいたが、もっぱら俺が雛里の面倒を見ていた記憶がある。

 

「お、にぃ…ちゃん………」

「よく言えました。雛里は偉いな」

「えへへ」

 

兄貴ぶってはいたが、雛里が初めて俺を『お兄ちゃん』と呼んでくれた時は、叫び出しそうなくらい嬉しかったのを覚えている。独りっ子だった事も相まって、俺は一層彼女の面倒を見るようになった。

 

俺と雛里の年齢差は5つだ。必然的に、小学校は、1年間だけだが重なることとなる。

 

「一刀のやつ、1年生の女子と一緒に帰ってるぜ!」

「俺知ってる!年下の女が好きな奴の事を、ロリコンって言うんだってー」

「やーい、一刀のロリコーン!」

「んだと、コラァ!!」

 

よくある小学生の囃し立て。当時の俺は精神的にもまだまだガキで、よく反応をしていた。

 

「あわわ………お兄ちゃんって、ロリコンなの?」

 

雛里は別の意味で反応していた。

 

「おにぃちゃぁん………」

 

初めて雛里が泊まりに来た夜の事だ。布団に入ろうとしたところで、窓の外から聞き慣れた細い声。

 

「雛里!?」

「ふぇぇええん……」

 

怖い夢を見たからと、彼女は屋根を伝って俺の部屋までやって来た。運動も苦手なはずなのに、よくやるよと感心すると同時に、頼ってきてくれた事が、たまらなく嬉しかった。

後から聞いた話だが、その夜は雛里の両親とも仕事で帰れずに、俺以外に頼る相手がいなかったとの事だ。ただ、それ以降は親がいようと俺の部屋に助けを求めるようになるのだが。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんと私って、愛人なの?」

「は?」

 

幼なじみの発言がたまにおかしくなり始めたのは、彼女が小学校3年になった辺りからだった。

 

「だって、この本に書いてあった」

「なになに―――」

 

雛里から本を受け取って、該当ページを開いてみる。

 

   『のぅ、義兄様……今日は一緒に寝ぬか?』

   『空……?』

   『だって、私たちは義兄妹であると同時に、愛人じゃろう?ならば、一緒に寝てもよい筈じゃ』

   『そうだな………』

      『いつもは情事が終われば空が眠るのを待ち、自分の部屋に帰る俺だったが、この日は違っていた。義妹の寂しそうな瞳に見つめられ、俺はとうとうその力に屈してしまうのだった。だが、この時の俺には予想も出来なかった。まさか、これをきっかけとして唯さんに気づかれる事になろうとは――――――』

 

「なんだ、コレ?」

 

その時には俺も中学生だったから、大体の文脈は理解できた。タイトルを見てみれば、『御遣いと天子~文官は見た~』と書いてある。どうやら、古代中国の文学らしいが………。

 

「書いてあったよね?愛人は一緒に寝る、って。だったら、一緒に寝たら愛人って事にもなるんじゃないのかな……」

 

なんとまぁ、余計な方向に頭がいいというか。双方向に等式が成り立つのは数学だというに。読書好きの雛里の事だ。古代の文学という事でこの本を読み始めたのだろうが、どう考えてもチョイスミスである。この後俺は、ひょっとしたら自分よりも頭がいいのではと思えるくらいの少女の問いに、四苦八苦して答え続ける事となる。

 

「あわわっ!?」

「ちょ、ナニ見てんのっ!?」

 

彼女の書への興味は留まる事を知らなかった。自分の本だけでなく俺の本も読み尽くした雛里は、上手く隠してあった筈の、俺の秘蔵書にまで手を出す事もあった。それ以来、彼女の耳年増は加速度的に進むこととなる。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

「手を出すって事は、あんな事やこんな事するんだよね。……でも、私まだアレ来てないし………あ、そしたら色々と気にしなくてもいいのかな?だけど………やっぱりちょっと怖いな。お風呂で見るおにぃちゃんのはそんなでもないけど、アレって、ソレする時に大きくなるんだよね?………やっぱり最初はゆっくりと慣らしていくのかなぁ………」

 

そして今ではこんな調子だ。どこからそんな情報を得てくるのか、彼女の脳内一刀は、小学生に手を出すほどに鬼畜らしい。テーブルの反対に座る爺ちゃん達に聞こえていない事だけが唯一の救いか。

 

「言っておくが、全部聞こえてるからな」

「あわわわわわわ…………」

 

雛里を一度自宅に返し、学校へ行く準備をする。玄関を開けてみれば、まだ彼女の姿はないため、俺は隣家へと足を向けた。

 

「またうちの娘がお邪魔しちゃったみたいね。いつもごめんね、一刀君」

「いえ、俺は大丈夫ですよ。頼りにされて嬉しくないって言ったら嘘になるし」

 

出迎えてくれた雛里の母親と世間話をする。まぁ、雛里が俺の部屋に忍び込んだ翌朝はいつもこんな感じだが。

 

「それにしても、雛里ったら一刀君にべったりねぇ。将来は貰ってくれるのよね?」

「………雛里がその気なら」

「あら、まんざらでもないみたいね。でも、おイタはダメよ?」

「………………」

 

雛里のアレは母親の所為かも知れない。

 

「あの、お兄さん………」

「ん?」

「手、繋いでもいいですか?」

「ん」

 

いつもの会話。もう小学校高学年だというのに、こうやって甘えてくるのはどうかと思うが、なんだかんだで手を差し伸べる俺にも責任の一旦はあるのだろうな。

ランドセルを背負った小学生と、高校の制服を着た男子。傍からは、兄妹に見える事が唯一の救いか。

 

「おはよー、雛里ちゃん」

「あ…朱里ちゃん、おはよ」

 

角を曲がろうとしたところで、横合いから声を掛けられる。そちらを向けば、雛里と同じくらいの身長の小学生。鮮やかな髪にベレー帽をかぶった女の子だ。

 

「一刀さんもおはようございます」

「あぁ、おはよう」

 

ちなみに、この娘とも顔見知りだ。こうして毎朝のように―――途中までだが――― 一緒に登校している。

 

「雛里ちゃん、いいなぁ……」

「反対側なら空いてるよ」

 

何の会話かと思えば、俺と雛里の繋がれた手を朱里がじっと見ている。………俺の世間体とか大丈夫かな。そんな事をしながら左手に持った鞄を肩に担ぎ直し、俺を見上げてくる少女に空いた手を差し出した。

 

「はわわっ!いいんですか?」

「自分が言ったんだろう?ほら」

「あの、その…失礼しましゅ………」

 

適度に噛みながらも、少女は俺の手をそっと握った。

 

 

 

 

 

 

「かずピーは相変わらずハーレムやな」

「俺はロリコンじゃねぇ」

 

朝っぱらからウザい奴と遭遇する。塞がった俺の両手を指しながら、笑うと、朱里の隣に並んだ。

 

「それにしても、かずピーもえげつないわ」

「あ?」

「だって、この21世紀に生きながら光源氏計画を実行しとるんやからな」

「あわわっ!?」

「はわわ!?」

 

及川の言葉に、2人の少女が顔を赤くする。だからなんで知ってるんだよ。

 

「朱里ちゃん朱里ちゃん、ワイの手に鞍替えせぇへんか?」

「はわわわわ……」

「お前こそロリコンの極みじゃねぇか。死ね」

「ぶほぁっ!?」

 

慌てて腰にしがみついてくる朱里を庇いながら、級友に蹴りを放つ。ったく、どうしてコイツは。

 

「いててて……ヒドイわぁ。ワイかて女の子と手ぇ繋ぎたいで」

「うちのチビ2匹が怯えてるから却下だ」

「チビ…」

「2匹……」

 

しまった。言葉を選ばなさ過ぎた。

 

「それじゃ、お兄さん」

「また明日です」

 

分かれ道に来た所で、雛里と朱里は名残惜しそうに俺の手を離す。

 

「応、行ってこい」

「朱里ちゃん、今度デートしてな」

「はわわっ!?」

「お前は逝ってこい」

「ぐぼらっ!?」

 

懲りずに小学生にナンパをかます馬鹿に、俺は再度蹴りをかますのだった。

 

 

 

 

 

 

休日。俺は雛里と駅前に買い物に出ていた。俺は特に買いたいものもなかったが、雛里が本や文房具、それと雑貨を見たいと俺を誘ったのだ。

 

「まずはどこにする?」

「あわわっ……私が決めるんですか?」

「いや、雛里の買い物だろう?どこに行きたい。荷物は俺が持ってやるから、順番は気にしなくてもいいぞ」

「あわわ……これが恋人というやつなのですね」

「は?」

「えと、普通のカップルは、彼氏が彼女の荷物を全部持つと雑誌に………」

「………」

 

どこのファッション誌だ。

 

「―――それじゃ、まずは本屋にでも行くか」

「はいっ………ぁ」

 

元気よく返事をしたその直後、雛里がおずおずと手を伸ばそうとして伸ばしきれていない。その様子に噴き出しそうになりながら、俺はそっと彼女の手を握った。

 

――――――本屋にて。

 

「雛里は何を買うんだ?」

「その、小説を」

「なるほど、でも『御遣いと天子』シリーズは却下な」

「あわわ……まだ覚えてるんですかぁ!?」

 

――――――文房具屋にて。

 

「お兄さんは何か買わないんですか?」

「あー…そういや、ゴムが切れてたんだった」

「……お、お相手は誰ですか?ドラッグストアとかで買わないんですか?」

「………………輪ゴムな」

「あわわっ!?」

 

――――――雑貨屋にて。

 

「そのストラップ、気に入ったのなら買ってやろうか」

「いえ、その………キノコって、卑猥ですよね―――あわわわわ」

「卑猥なのはお前の頭だ」

「はにゃをつままにゃいれくらはいぃ」

 

――――――喫茶店にて。

 

「少し休憩していくか」

「………私の初体験は、2時間で終わってしまうのですか?」

「ご休憩じゃないぞ」

「あわわっ!?」

 

俺の幼なじみは耳年増だ。

 

 

 

 

 

 

買い物も終え、来た時と同じように手を繋いだ帰り道。

 

「―――へくちっ」

 

晴れ渡った空に夕陽は紅く燃えているが、風は冷たい。その冷えた空気に晒されて、雛里がひとつ、くしゃみをした。

 

「寒いか?」

「い、いぇっ、大丈夫で―――くちゅん!あわわ……」

「変に強がらなくていいんだぞ………ほら」

「え?」

 

一度手を離し、俺はジャケットを脱いで雛里の小さな肩にかけてやる。

 

「家まで羽織ってな」

「………はい」

 

左手で胸元を閉じ、右手を再度差し出してくる雛里。俺は何も言わずに、その手をそっと握った。

 

「――――――それじゃ、ちゃんと風呂に入って暖まるんだぞ?」

「え………あ、はいっ」

「?」

 

雛里の家の前まで戻ってきた。俺は彼女から上着を受け取り、声をかける。何故か雛里は顔を赤くして、裏返った声で応えるが、そのままパタパタと家の中へと入っていった。

 

「………どうしたんだ?」

 

 

 

 

 

 

夜。夕食と風呂を終えて部屋に戻った俺の目に、小さな身体が映り込んだ。

 

「あれ、どうしたんだ、雛里?」

「あの、そにょ……」

 

顔を真っ赤に染めた幼なじみが、そこにいた。

 

「今日も泊まるのか?おばさんにはちゃんと言ってきたのか?」

「は、はいっ!………………不束者ですが、よろしくお願いします」

 

言うが早いか、雛里は正座をして三つ指をつき、頭を垂れた。

 

「………何の話だ?」

「へ?………だって、お兄さんが、お風呂に入っておけって言ったから、その、ついにその時が来たのかとあわわわわわわわっ!?」

「曲解にも程があるだろうがっ!」

「あわわわ、違ったんでしゅか!?というか、鼻をちゅままにゃいでくらはいぃ!」

 

顔を真っ赤にしたままの雛里の鼻を、指で摘まみあげる。

 

「お前は幼なじみを犯罪者にしたいのか!?」

「ら、らってぇ―――」

 

鼻を摘ままれて涙目になる少女を、俺はその体勢のまま説教するのだった。

 

………………俺の幼なじみは、耳年増だ。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

というわけで、雛りんのターン!

妹キャラっていいよね。あくまで妹『キャラ』だからソフ倫には触れないし。

 

前書きにもある通り、summon氏と黒山羊氏の御指名で書かせてもらいました。

まぁ、楽しんで頂けたのなら貴方はロリコンです。

 

ではまた次回。

バイバイ。

 

 

 


 
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