No.227168

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第14話

葉月さん

第十四話投稿です。

姜維と星の実力を見るために調練場で二人の手合わせを診る事にした一刀たち。
そんな中、星は姜維に何かを語りだした。

続きを表示

2011-07-09 19:03:15 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:11776   閲覧ユーザー数:8057

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第14話

 

 

 

 

【姜維の実力】

 

《姜維視点》

 

「それでは始めようではないか」

 

あのあと、なんだかんだと皆さんの名前を教えてもらい。調練場へと向いました。

 

趙雲様は調練用の刃の潰れた武器を持って調練場に立っていました。

 

どうやら趙雲様は槍を使うみたいです。

 

私は棍を借りてペコリとお辞儀をした。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「うむ、まあ、気負わずにやろうではないか。そう、肩に力が入っていては主に良い所を見せられんぞ?」

 

「な、なんでそうなるんですか!?」

 

そ、そんな北郷様にいいところだなんて。私、そんなに強くないのに。

 

「ふむ。私が見たところ。お主は主に仕えてみたいのであろう。違うか?」

 

「っ!?」

 

ど、どうしてわかったんですか!?誰にも言っていないのに!

 

「はっはっは。見ていればわかるさ。この趙子龍、伊達に女を何十人とはべらかして来たわけではないぞ」

 

「……それ、自慢にならないと思いますけど」

 

「ふむ。そうか?こういうと大抵のものは驚くのだがな」

 

「あは、あはは……」

 

どこか間の抜けた返事をする趙雲様に私は苦笑いをするしかなかった。

 

そして私は北郷様に目を向ける。

 

「?姜維ちゃん頑張れよ」

 

「っ!は、はい!」

 

北郷様の笑顔に胸の辺りが暖かくなる。

 

うん。頑張ってみよう。

 

「やる気が出てきたようだな。では、もう少しやる気を出すような事を言ってみようか」

 

「?」

 

趙雲様の言葉に首を傾げる。何を言うつもりなのでしょうか。

 

「ここでそれ相応の力を見せれば愛紗がお主のことを認めてくれるかもしれないぞ?そうすれば、お主が主に仕える事を許してくれるかもしれんな。逆に力を見せられなければ……わかっているだろ?」

 

「……っ!」

 

そうだ。ここで関羽様に認めてもらえれば……

 

私はチラリと関羽様を伺い見る。するとじっと私の事を睨みつけるようにして関羽様は立っていました。

 

「ふぅ~」

 

うん。いつも通り。お父様と調練をやってるようにやればきっと大丈夫……

 

深呼吸をして私は趙雲様を見詰める。

 

「どうやら、覚悟が決まったようだな良い目をしている……では、いかせてもらうぞ!」

 

言い終わるやいなや趙雲様は地面を蹴り私に向かって走り出した。

 

私はそれを迎え撃つように棍を構えた。

 

「はい、はい、はいぃぃ!」

 

「くっ!……はっ!」

 

早いっ!こんな早い突き、全部防ぎきれないです!

 

趙雲様の連続の突きを数撃受けたけどなんとか防ぎ、突きが収まった所ですかさず棍で攻撃を仕掛けました。

 

「中々やるではないか」

 

「ありがとうございます……次は私から行きます!」

 

私も趙雲様の様に連続の突きを繰り出した。時折、横薙ぎとかも織り交ぜ趙雲様の体勢を崩しに行こうとしていた。

 

「中々厄介な攻撃をしてくれるな……だが、常山の昇り龍と言われたこの趙子龍!そう簡単には倒されはせぬぞ!」

 

「きゃっ!」

 

趙雲様の反撃を予期していなかった私は体勢を崩してしまい倒れてしまった。

 

「どうした、もう仕舞いか?」

 

「ま、まだです!はあああっ!!」

 

私は立ち上がり埃をある程度払い落とすと趙雲様に向かって行った。

 

「ふふ、そうこなくてわな」

 

趙雲様もそれに答えるように槍を構えてきました。

 

《一刀視点》

 

「……」

 

俺は二人の手合わせを真剣に見つめる愛紗に話しかけた。

 

「どうだ愛紗、姜維ちゃんは」

 

「ええ、発展途上と言った所でしょうか。ですが、鍛えればまだまだ強くなりますね。それに」

 

「それに?」

 

「あの者の動き、姜維は棍が不得手だと思うのですが、ご主人様はどう思われますか?」

 

「やっぱり、愛紗にもそう見えたか」

 

「ええ、何となくですが少しぎこちなく見えます」

 

愛紗の言う通り、姜維ちゃんは横払いをする時、必要以上の力を入れて止めていた。だが、それも素人から見れば判りづらい微々たる物であったが、愛紗はそれに気づいていた。

 

「多分、星も気づいてるな」

 

「ええ、払い終えると同時に逆方向から攻撃を仕掛けているので気づいているでしょうね」

 

「それにしても、星の動きも前に比べて良くなってるな。姜維ちゃん相手だとわかりにくいけどかなり腕を上げてるだろうね」

 

「ええ。ですがそれでも私は負けません。ご主人様をお守りする為に必死に鍛えているのですから」

 

「うん。期待してるよ愛紗」

 

「はい!お任せください」

 

愛紗は嬉しそうに頷きまた目線を二人に戻した。

 

そろそろいいかな。姜維ちゃんも大分息が上がってきてるみたいだし。

 

「よし。もういいよ、二人とも!」

 

二人が手合わせを始めて三十分くらいが経った頃、俺は手合わせを止めさせた。

 

「ふむ……」

 

「はぁ、はぁ……」

 

息を切らす姜維ちゃん。かたや平然としている星、そんな二人に俺は近づき労いの言葉をかけた。

 

「腕を上げたようだな星」

 

「ふっ」

 

「次は鈴々と勝負するのだ!」

 

星が強くなっていることを褒める愛紗。その戦いを見てうずうずしだしたのか鈴々は対戦を申し込んでいた。

 

「鈴々とはまたの機会にしておこう。それに、まだまだ主には遠く及ばぬよ」

 

「当たり前だ!そんな簡単にご主人様より上になられては私の立つ瀬が無くなる!」

 

「はっはっは!確かにな。なら主を抜く前に私が愛紗を追い抜かすとするか」

 

「ふっ。そう易々とは抜かせぬぞ」

 

「鈴々だって負けないのだ!」

 

「これはこれは、手ごわい相手が二人も居るか。されど壁が高ければ高いほどやる気が出るというものよ」

 

「私だって絶対ご主人様に追いつくんだから!」

 

「「「……え?」」」

 

「は、ははは……」

 

愛紗、鈴々、星、朱里、雛里は声をそろえて声を詰まらせ、俺は苦笑いを浮かべていた。

 

「桃香様には無理かと」

 

「無理なのだ」

 

「無理でしょうな」

 

「はわわ、無理ではないでしょうか」

 

「あわわ、む、無理だと思います……」

 

「みんな、ひど~い!私だって頑張れば!ね?ご主人様!」

 

「え……あ~、うん、頑張れば、追いつく、かな?」

 

「うぅ~、ご主人様まで……いいも~んだ!絶対にみんなをあっ!っと言わせるんだから!」

 

「……」

 

桃香たちがワイワイと騒いでる後ろで一人俯きスカートを握り締めてる姜維ちゃんに気が付いて俺は近寄った。

 

「どうした?姜維ちゃん」

 

「……なんでも……ありません」

 

姜維ちゃんは俺の顔を見ようともせず。ただ、地面だけを見詰めていた。

 

「貴様!ご主人様がお伺いしているのにその態度はっ「愛紗、待つのだ」しかしだな……」

 

姜維ちゃんに怒鳴ろうとしていた愛紗を星が止めてくれた。

 

「まあ、見ておれ」

 

「……う、うむ」

 

愛紗は渋々ながら仕方なく見守る事にしてくれた。

 

「参ったな……こらしょっと」

 

「っ?!」

 

俺は苦笑いを浮かべながら頭をかくと、姜維ちゃんの顔が見えるように屈んで見上げた。

 

「負けたのが悔しかったのか?」

 

「……(フルフルフル)」

 

「それじゃどうして?」

 

「……から、……に……せん」

 

「え?」

 

「力を見せられなかったから……ぐすっ、北郷様に、お仕え出来ません」

 

「え?誰がそんな事を言ったんだ?」

 

「ふえ?だって、趙雲様が認めて貰えないと働けないって……」

 

「はぁ~……」

 

俺は溜め息を吐いて立ち上がり星を見た。

 

星はニヤニヤと笑い明らかに何かを言ったんだとわかった。

 

「星」

 

「なんですかな、主よ」

 

「手合わせの前、姜維ちゃんと話してたよな?何を話してたんだ?」

 

「はて、なんと言いましたかな」

 

星はニヤニヤ笑いながら惚けている。

 

「はぁ~……あまり、からかうなよ星。愛紗ちょっと来てくれ」

 

「なんでしょうか、ご主人様」

 

「姜維ちゃんのこと、どう思う?」

 

(ビクッ!)

 

「そうですね……」

 

「~~っ!」

 

姜維ちゃんは目を閉じ、肩を震わせながら手を力一杯握り締めていた。

 

「まだ、荒削りながら見所はあると思います」

 

「~~っ!……ふぇ?」

 

姜維ちゃんは間の抜けた声を上げて愛紗を見上げていた。

 

「ご主人様に鍛えて頂ければ立派な武将になりましょう」

 

愛紗は姜維ちゃんを見て優しく微笑んだ。

 

「っと言うわけだ。これからよろしくな姜維ちゃん」

 

「わぷっ!」

 

俺は姜維ちゃんの頭を撫でて微笑んだ。

 

「あ、あの!改めて!姓は姜、名は維、字は伯約。真名を雪華といいます。これからよろしくお願いします!」

 

ペコリとこれでもかと言うくらい頭を下げる姜維ちゃん。

 

「雪華ちゃんか。君の髪の様に綺麗で可愛い真名だね。よろしくね雪華」

 

「~~~っ!!あ、ありがとうございます」

 

「私は劉備、字は玄徳。真名は桃香!これからよろしくね雪華ちゃん!」

 

「よろしくお願いします。桃香様!」

 

「我が名は関羽。字は雲長。真名は愛紗だ。ご主人様の為に共に頑張ろうではないか」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「次は鈴々の番なのだ!名前は張飛、字は翼徳。真名は鈴々なのだ!これからよろしくなのだ!」

 

「姓は諸葛。名は亮。字は孔明。真名は朱里といいます。一緒に頑張りましょうね」

 

「えっと。姓は鳳。名は統。字は士元。真名は雛里です。これからよろしくお願いします」

 

「先ほどはすまなかったな。私の真名は星だ。これからよろしく頼むぞ、雪華よ」

 

桃香たちから歓迎の言葉を受けた雪華は嬉しそうにはにかんでいた。

 

これなら、直ぐに打ち解けるだろう。両親を殺されたのに強い子だな雪華は。

 

俺は微笑みながら雪華を見ていた。

 

「ご主人様」

 

「ん?どうしたんだ愛紗……さん?あ、あのわたくしめが何かいたしましたでしょうか?」

 

愛紗に呼ばれて振り返ると顔は笑っているのにその雰囲気は全然穏やかではない愛紗がそこにはいた。

 

「少々ご主人様の素行について『お話』したい事がございます。お時間よろしいでしょうか?よろしいですね、では参りましょう」

 

「お、俺何も言ってないじゃないか?!」

 

「いいえ、私の耳にはしっかりと『わかった』と聞こえました。では、参りましょう」

 

「と、桃香!助けてくれ!」

 

「えっと……ご主人様、頑張って!」

 

「そんな!り、鈴々!」

 

「り、鈴々はこれからみんなを鍛えなくちゃいけなかったのだ!」

 

鈴々は脱兎のごとく逃げ出した。

 

「り、鈴々ーーーーーっ!」

 

だ、誰か、俺を助けてくれる人は居ないのか……

 

そこで俺は一人オロオロしている雪華を見つけた。

 

頼む、雪華!助けてくれ!

 

「えと、あ、あの……」

 

俺の念が通じたのか雪華は途惑いながらも言葉を掛けよとした、が……

 

「やめておくのだ、雪華よ。今の愛紗には何を言っても無駄であろう」

 

星が止めに入った。その顔はニヤニヤと笑みをこぼしていた。

 

「え、でも……」

 

わ、わざとだな。わざとなんだな星!

 

俺は恨めしそうに星をにらみ付けた。

 

「主よ。そんな目で見られては照れるではありませんか」

 

頬を赤らめる星。ちょ!今そんなことされると!

 

「ご~しゅ~~じ~~ん~~さ~~ま~~~~~!」

 

「ひ~~~~っ!」

 

案の定、愛紗が後ろから普段感じたことの無い殺気を漂わせて睨んでいた。

 

くそ、星のやつ。面白がったりして、後で覚えてろよ!

 

俺はそのまま愛紗に引っ張られて調練場を後にした。

 

《雪華視点》

 

「あ、あの北郷様。じゃない、ご主人様は大丈夫なのでしょうか?」

 

「大丈夫だと思うよ。ああ見えて愛紗ちゃん、ご主人様の事大好きだから雪華ちゃんを連れてきて嫉妬しちゃったんじゃないかな」

 

「ふえ?!そ、そうなのですか?」

 

桃香様は笑いながらとんでもない事を仰いました。

 

え。愛紗様はご主人様の事を?だ、だから怒ってるの?

 

「そうだよー。私だって雪華ちゃんを見た時、ご主人様の事お仕置きしようかな~って思ってたんだよ?ふふふ♪」

 

「ふぇ?!」

 

桃香様の笑顔も先程の愛紗様の様にとても凄みがありました。

 

「でもでも、きっとそう思ってたのって朱里ちゃんや雛里ちゃんもそうだよね?」

 

「はわわ!しょ、しょのようなことはごじゃいませんよ?」

 

「あわわ!しょ、しょうでしゅ!」

 

そんな事無いって言っていますが、すごい動揺していました。

 

「はっはっは、やはりここは愉快で良いですな。他の軍勢より馴染めるというものだ」

 

「はい!みんな仲良くが私達の良いところですから♪」

 

星様は笑いながら答えると桃香様も笑顔で答えていました。

 

「それじゃ、お城の中を案内するね!二人とも付いてきて!」

 

「ふぇ?あ、あの」

 

桃香様はそういうと私の手を取り歩き出しました。

 

「ん?どうしたの雪華ちゃん」

 

「えと、なんで手を繋ぐのですか?」

 

「え?う~ん……なんでだろうね?」

 

「ふえ?」

 

「きっと繋ぎたいと思ったから繋いだんだよ!それとも雪華ちゃんはいやだったかな?」

 

「と、とんでもありません!ただ、驚いてしまって」

 

「そっか。ならこのままでもいいよね!それとそんな敬語じゃ疲れちゃうでしょ?普通に喋ってくれていいんだよ?」

 

「そ、そんな恐れ多い事できません!」

 

「お、恐れ多いだなんて私は別に気にしないよ?それに皆も普通に話してくれるし。ね、朱里ちゃん」

 

「そ、そうですね。まあ、桃香様はお心が広いお方ですから雪華さんも気楽にお話しするといいですよ」

 

「は、はぁ……努力してみます」

 

「うん!それじゃ出発進行~♪」

 

桃香様はお城の中を案内してくれました。

 

………………

 

…………

 

……

 

暫く、お城の中を桃香様に案内して頂き。最後にご主人様と桃香様の執務室を案内してもらいました。

 

「ここが私とご主人様がお仕事する場所だよ!」

 

「ふぇ~。凄い一杯の書簡や竹簡がありますね」

 

二つの机の上には書簡と竹簡が積み上げられていました。

 

「そうなんだよ。まだこの平原の相に就任して日が経ってないからやる事が一杯あって大変なんだよ」

 

「そ、そうなんですか。大変ですね」

 

「うん。大変なの~。だから雪華ちゃん慰めて~~」

 

「ふぇ!?と、桃香ひゃま!?」

 

「ん~。雪華ちゃんのほっぺがスベスベて気持ちがいい~♪」

 

桃香様は抱きつくとそのまま頬に擦り寄ってきました。

 

「お、お止めください桃香様!き、汚くなります!」

 

「え~。そんな事無いよ~。こんなに色が白くて綺麗なのに……あれ?これって痣?」

 

「あ……」

 

桃香様は私の腕の内側にあった痣を見つけてしまいました。

 

「どうしたのこれ?さっきの星ちゃんとの手合わせで付いた奴じゃないよね?」

 

「……はい」

 

「……もしかして。言い辛い事なのかな?それなら無理に聞かないよ」

 

「い、いいえ。そう言う訳では、ただ。人にお聞かせするような話では……」

 

「……ふむ。もしや、お主が主に拾われた事と何か関係があるのか?」

 

(ビクッ!)

 

「え?拾われたってどういう事!?」

 

桃香様は驚いた顔で私と星様を見比べていました。

 

「どうなのだ雪華よ。話し辛ければ無理にとは言わんぞ」

 

星様は優しい声で話しかけてきました。

 

「……実は」

 

私は自分の邑での惨事、邑を出たからの数日間、そしてご主人様にお会いした出来た事を全て話しました。

 

「そんな……」

 

「なんと……」

 

「……」

 

「……」

 

皆さん一様に沈痛なお顔をしていました。そして、桃香様は私の前に立ち……

 

「ごめんなさい」

 

「ふぇ!?な、なんで桃香様が謝るのですか!?」

 

「だって、その邑って私達が治めてるところでしょ?報告にあったよ。凄い惨状だったって」

 

「……」

 

「私達がもっと早く到着してればこんな事にならなかったのに……本当にごめんなさい」

 

「っ!お、お顔を上げてください!別に責めている訳じゃないんです!そ、それにご主人様とも会えましたし!」

 

もうしどろもどろだった。なんとか桃香様に頭を上げてもらおうと色んな事を喋った気がします。

 

「うん。ありがとうね雪華ちゃん。それにしてもご主人様……」

 

「ふえ?」

 

(ガチャッ!)

 

「も、もう無理だ……」

 

「お待たせしました桃香様」

 

その時だった。扉を開けて入ってきたのはフラフラになったご主人様と愛紗様だった。

 

愛紗様に連れて行かれて大体ニ刻くらいかな?そんなに何してたんだろう?

 

「ご、ご主人様、大丈夫?」

 

「は、ははは……ダメかも……」

 

ご主人様は疲れ切ったお顔をして笑っていました。

 

「もう愛紗ちゃんったら少しは後のことも考え欲しいな」

 

「申し訳ありません桃香様」

 

「桃香……」

 

ご主人様は感動してかヨロヨロと桃香様に近づいていきました。

 

「せめて一刻くらいにしておかないと!この後もお仕事があるんだから」

 

「……え?」

 

そこでご主人様の動きがピタリと止まりました。

 

「と、桃香さん?今、ナントオッシャイマシタカ?」

 

「え?一刻くらいにしておかないとって言ったんだよ?」

 

桃香様は笑っておいででしたがなんだか怒っているようにも見えました。

 

「あ、あの、私めがなにかいたしましたでしょうか?」

 

「それはご主人様がよ~~っくわかってると思うな」

 

「えっと……」

 

「雪華ちゃんから聞いたよ。雪華ちゃんのお洋服。ご主人様が見繕ってあげたんでしょ?」

 

「え?あ、うん。ボロボロの服だったしそのままじゃ可哀相だと思って」

 

「私。ご主人様に服買ってもらったこと一度も無いな~」

 

「あ、あの俺の話聞いてた?」

 

「聞いてたよ。ボロボロだったから服買ってあげたんだよね?」

 

「あ、ああ……」

 

「私も買って欲しいな~」

 

「……」

 

ふぇ~。私、とんでもない事を桃香様にお伝えしてしまったのでしょうか。

 

「雪華よ。安心しろ。お前のせいではない」

 

「せ、星様……」

 

オロオロしている私に星様はポンと肩に手を置き落ち着かせてくれました。

 

「悪いのは全て主だ。雪華が気に悩むことではないぞ。それともう仲間なのだ。『様』など他人行儀なことは無しだぞ。呼び捨てでかまわん」

 

そういいながら星様はニヤニヤと面白そうにご主人様と桃香様のやり取りを見ていました。

 

「で、ですが星様」

 

「星だ」

 

「ふぇ、せ、星さん」

 

「ふむ。まあ、それで妥協しよう。してなんだ?」

 

「元はと言えば私がご主人様に服を買っていただいたのが原因です」

 

「ふむ。では、雪華はあの汚い服のままでここに来たいともうすか?」

 

「そ、それは……」

 

た、確かにそれは失礼ですが……

 

「それに見て居れば分かる。主の甘さがな」

 

「ふえ?」

 

星さんに言われてご主人様と桃香様に眼を向ける。

 

「わ、わかった!買う!桃香にも服買って上げるから!」

 

「ええ!?別にいいのに~でも、ご主人様がそこまで言うならお言葉に甘えちゃおうかな~♪」

 

「は、ははは……はぁ」

 

ご主人様は苦笑いを浮かべながら桃香様に約束をしていました。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「くっくっく」

 

ふぇ~。なんだかこの場の空気が冷たくなったような気がします。

 

そんな中、星さんは一人だけ笑っていました。

 

なんで笑っているのでしょうか?

 

「「「ご主人様っ!!」」」

 

「は、はいっ!」

 

「きゃふっ!」

 

暫くすると行き成り愛紗様たちが大きな声を出してご主人様に詰め寄りました。

 

私は思わず小さく悲鳴を上げてしまいました。

 

え?え?な、何が起こるんですか!?

 

「ご主人様っ!」

 

「は、はい!」

 

「なぜです!」

 

「な、何がでしょうか!」

 

「なぜ、桃香様だけなのです!」

 

「は、はい?」

 

「なぜ……なぜ桃香様だけに服を買われるのですか!」

 

「そ、そうです!わ、私達だってそ、その……ご主人様に服を買ってもらいたいでしゅ!」

 

「でしゅっ!」

 

「え、ええ!?あ、愛紗たちも!?」

 

「勿論です!それともお嫌だというのですか?」

 

「別に嫌って訳じゃないんだけど……」

 

「ダメなんですね……やっぱり桃香様だけが特別なんですね」

 

「うぅ……朱里ちゃん元気出して、仕方ないよ」

 

「雛里ちゃん……うん。そうだね。仕方ないよね」

 

「くっくっく……如何なさいますかな主よ?」

 

「あぁ~もう!こうなったら自棄だ!みんなに服をプレゼントするよ!」

 

「「「ぷれぜんと?」」

 

『ぷれぜんと』とはなんでしょうか?聞き覚えの無い言葉です。

 

「あ、ああ。そっか。えっとね。プレゼントって言うのはね。俺達の世界の言葉で『贈る』って意味だよ」

 

「おくる……おくる?……っ!贈る!?つ、つまり、頂けるという事ですかご主人様!」

 

『ぷれぜんと』の意味を知って驚く愛紗様。

 

「ああ。そういうことだよ」

 

「よかったね愛紗ちゃん!朱里ちゃんに雛里ちゃんも!」

 

「べ、別に私は嬉しくなんてあ、ありませんよ!?」

 

「もう、愛紗ちゃんったら照れちゃって。本当は嬉しいんでしょ?」

 

「なっ!なな何を仰いますか桃香様!私は別に!」

 

「はいはい。それじゃそういうことにしておくね」

 

「で、ですから!」

 

「ど、どんな服を贈ってくれるのか楽しみだね雛里ちゃん!」

 

「うん。可愛い服だといいね」

 

「あは、ははははは……」

 

「あ、あの大丈夫ですか。ご主人様?」

 

「あ、ああ雪華……うん、大丈夫だよ。ただ、俺のお小遣いが数か月分無くなるだけだから」

 

「えっ……み、みなさんの君主様なのにお小遣い制なんですか?」

 

「ああ……」

 

「あ、あの。失礼かもしれませんが、とてもみなさんを導く方の扱いではないような気がするのですが……」

 

「ぐすん……」

 

「ふえ!ご、ごめんなさい!言い過ぎました!」

 

「いいんだよ。本当の事だからね。とほほ……」

 

「所で主よ」

 

「ん?なんだ、もちろん星にも服を贈るぞ」

 

「私としてはメンマ……いえ。それはありがたいのですが。雪華の処遇はどうするのですかな?」

 

「え?ああ、そっか。そうだな~」

 

ご主人様は手を顎に当てて考え始めた。

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

私は意を決してご主人様にお願いをしてみることにした。

 

「あ、あの。無理でなければご、ご主人様の補佐としてお傍に付かせてください!」

 

「「っ!!」」

 

「はわわっ!」

 

「あわわっ!」

 

「ほほう」

 

「え。俺?俺としては、朱里の下に付いてもらって軍師の勉強をしてもらおうかなって思ったんだけど」

 

「で、でしたら軍師の勉強もします!ご主人様の下で!」

 

「お、おい。雪華よ。す、少し張り切りすぎではないか?そんなに頑張ると後が持たないと思うぞ」

 

「大丈夫です!お父様とお母様から毎日の様に武術と学問を学んでいましたから!」

 

「い、いや。しかしだな……と、桃香様っ!」

 

「ええぇぇ!?そ、そこで私に振らないで欲しいな愛紗ちゃん。え、えっとね。まずはご主人様が言ったように朱里ちゃんの元で軍師として勉強をした方が私も言いと私は思うな」

 

「うむ。その方がいいと思うぞ!」

 

桃香様の横で愛紗様が力強く頷いていました。

 

でも……私は少しでも長くご主人様とご一緒していたいです。ご主人様は言わば命の恩人。あそこで拾っていただけなければ私はどこかの野で餓え死んでいたかもしれないのですから。

 

ご主人様に逢ったのもきっと天命!だから少しでもご主人様のお傍でその恩を返したいのです!

 

「それじゃ、こうしよう。基本は朱里の元で軍師としての勉強。それで、俺が調練する時は一緒に調練しよう。それでどうかな?」

 

「は、はい!それで構いません!ご主人様とご一緒できる時間があればそれでいいです!」

 

「そ、そうか。ならそうしよう」

 

「ふえ!す、すみませんでした!」

 

私は余りの嬉しさに身を乗り出してご主人様に止め寄ってしまいました。

 

「それじゃ。これからよろしくね雪華」

 

「はい!末永く、よろしくお願いします!(ペコリ!)?あの、皆さん如何いたしましたか?」

 

なぜか、桃香様たち皆さんのお顔が引き攣っていました。

 

「そ、それじゃ雪華ちゃんは私達に着いてきてください!まず、どれくらい出来るか試験をしたいと思いますので」

 

「あ、はい!よろしくお願いします。朱里先生!」

 

「せ、先生!?はわわっ!せ、先生だなんて……えへへ」

 

「朱里ちゃん、朱里ちゃん。顔がにやけてるよ」

 

「はわわっ!と、とにかく行きましょう!」

 

「はい!それではご主人様。桃香様。皆さん失礼します!」

 

「うん!また後でね~。それじゃご主人様は私とゆ~っくりとお話しようか」

 

「では、私もご一緒しましょう。少々聞かなければいけない事柄が出来ましたので。じっくりと長い時間をかけて」

 

「ちょ!し、仕事が残ってるのに!」

 

「大丈夫です。日は昇っていなくても仕事は出来るのですから」

 

な、なんだか私が部屋を出たら執務室から凄い殺気が漂ってきました。

 

「あ、あの雪華ちゃん?」

 

「は、はい!なんでしょうか!」

 

「うん。えっとね。悪気は無いんだと思うんだけど、言葉には気をつけたほうが言いと思うよ」

 

「?は、はい。わかりました」

 

よくわからないですが。言葉使いを気をつければ良いと言う事なのでしょうか?

 

こうして私は、ご主人様である北郷様にお仕えすることになりました。

 

これから、どんな事が起こるかわかりませんが、ご主人様に出来るだけご恩を返していけたらと思います。

 

《???視点》

 

「ちょ、ちょっとこれ多すぎじゃない?」

 

机の上に詰まれた書簡を見て愚痴をこぼす。

 

「それはそうだろう。ここ最近まったく仕事もせず、街をフラフラしていたのだからな」

 

「ぶーぶー!仕方ないじゃない。おばちゃんが美味しい李が出来たって言ってたんだもの冥琳だって食べたいでしょ?」

 

「あれは確かに美味しかったが、それだけじゃないだろ雪蓮」

 

「う……」

 

冥琳の綺麗な切れ長の瞳がさらにつり上がる。

 

「だって、つまんないんだも~ん!」

 

「……はぁ。まったくあなたって言う人は……」

 

溜め息をつきながら額に手を当てて首を振る冥琳。そこへ……

 

「失礼します。周泰。ただいま戻りました」

 

扉を開けて斥候からだろうか明命が部屋へと入ってきた。

 

「ああ。ご苦労だったな。して、どうだったのだ?」

 

「えっとですね……」

 

「何々?私に内緒で何を調べに行っていたのよ」

 

私は冥琳と明命、二人を見て少し不機嫌そうに言う。

 

「お前に言うと面白そうだから行くと言いかねないからな。私が独断で頼んだのだ」

 

「あ、あの。申し訳ありませんでした!冥琳様より雪蓮様には内緒で行ってくれと言われていたもので……」

 

「それより、どうだったのだ?報告を聞かせてくれ」

 

「あ、あのそれがですね……」

 

「ん?どうした。まさか、何も獲られなかったとでも言うのか?」

 

「いえ!そう言う訳ではないんですけど……実は……見つかってしまいました」

 

「なに!お前がか!」

 

「へぇー」

 

冥琳の驚きようは凄かった。確かに、明命の斥候の能力は大陸一だと私も思っている。でもそれよりも明命を見つけた方に私は興味があった。

 

「それで?誰に見つかったの?」

 

「え、えっと……」

 

「構わん。話してみろ」

 

明命は話していいのかと目線で冥琳に伺うと冥琳は頷きながら話していいと明命に伝えていた。

 

「えっと。今回の調査対象者である天の御遣い。北郷一刀様です」

 

「天の御遣い?それって確か……」

 

「ああ、占い師である管輅が言っていた天の御遣いのことだ」

 

「ふ~ん。それでそれで?その天の御遣いに見つかった明命はどうやって脱出してきたの?」

 

「えっと……お話をして逃がしてくれました」

 

「はぁ?逃がしてくれたって。天の御遣いが?」

 

「はい。『君はそんなに悪い娘には見えないからね』と言われて少しお話をして帰ってきました」

 

驚いた。普通、斥候や間諜なんかは見つかったら即殺すか、捕まえて情報を聞き出してから殺すか。とりあえず、見つかったら命の無い仕事だ。

 

だからどの国も敵に見つからないように訓練をしているんだから。それを見逃すって……ん?

 

「ねえ。明命?」

 

「は、はい?」

 

「何で顔を赤くしているの?」

 

「はうあ!そ、そんな事ないです!」

 

「……」

 

「は、はぅ……」

 

怪しい……これは何かあるわね……

 

私はいつもの勘で明命が何かを隠しているのを悟った。と言ってもあんなに動揺してたら丸分かりなんだけどね。

 

「そ、そうでした!め、冥琳様にお手紙を」

 

「手紙?誰からだ?」

 

「そ、その……一刀様からです」

 

「なに?天の御遣いからだと?」

 

「こちらになります」

 

明命は冥琳に御遣いからの手紙を手渡した。

 

「ふむ……」

 

冥琳はそれを受け取ると手紙に目を通し始めた。

 

「……なんと!これは本当のことなのか!?」

 

「ん?何が書いてあったの?」

 

「……」

 

「冥琳?」

 

「め、冥琳様?」

 

冥琳の顔は驚きとも困惑とも取れる顔をしていた。一体に何が書かれているというのかしら?

 

「……あなたも読んで見ればわかるわ」

 

そう言うと冥琳は私に手紙を手渡してきた。

 

「どれどれ……」

 

手紙の内容はこうだった。

 

拝啓 周喩殿

 

これがあなたの手元にあるということは無事に彼女は呉へと帰れたということでしょう

 

さて、行き成りこんな事を言っても信じられないと思いますが、いつの日か孫策さんは袁術から呉を取り戻す事でしょう

 

私はその手助けが出来るかわかりませんが力を貸したいと思っています

 

そして、近々、大きな戦が起こる事でしょう。これは予言ではありませんが私としては起こって欲しくないと思っています

 

もし、信じられないと思うのでしたら洛陽を調べてみてください。きっと優秀な彼女なら何か掴めるかも知れません

 

短いですがこれにて終わらせていただきます

 

天の御遣い 北郷一刀

 

「……」

 

驚いた。まさか、私達が袁術から呉を取り戻そうとしている事を知っているだなんて……

 

「どうする孫策よ」

 

冥琳は私の事を真名ではなく名を呼んでくる時は王としての意見を聞きたい時と怒っている時に言う時だけだ。そして今回は前者……王としての意見を聞きたいと冥琳は眼で語りかけてきていた。

 

「……周泰!」

 

「は、はひ!」

 

「天の御遣い。北郷一刀は他に何か言っていなかったか?」

 

「なにか、ですか?」

 

「ええ。なんでもい。話してみなさい」

 

「えっと……あっ!私が一刀様に『この町をどのようにしたいのでしょうか』とお伺いしたところ。『皆が笑って安心して暮らせる町にしたいかな』と言っていました」

 

「……」

 

それは私達も願っている事、呉の人たちが笑顔で暮らしていけるように……それが母様の願いでもあり、私の願いでもあった。

 

「それと『民から税を搾り取って贅沢な生活をしようと言った考えはないのですか?』とお伺いしたら凄い驚かれまして『民から搾り取るだなんてなに言ってるんだよ。民が居なきゃ国は成り立たないんだぞ?そりゃある程度の税はとるけど苦しめてまで取るなんて考えは無いよ。それに、俺は贅沢がしたくてなったわけじゃないからね。皆が笑顔で居てくれればいいさ』と」

 

「そう……どう思う?」

 

「そうだな……もう少し様子を見たいっと言いたいところだがそうも言ってられないかもしれないな」

 

「どういうこと?」

 

「お前も町に出ているのなら噂は耳にはしているのだろ?洛陽の有様を」

 

「まあね。でも、所詮は商人達の噂話でしかないもの。本当のところは誰も知ってなんて居ないのよ」

 

「そうだな。明命よ」

 

「はい!」

 

「次の仕事だ。洛陽の現状を調査して欲しい」

 

「わかりました!」

 

「帰ってきて早々にすまないな」

 

「いいえ。これが私の仕事ですから!」

 

笑顔で答える明命にやっぱり違和感を覚える私。

 

「明命~。ちょっとこっちに来て」

 

「はい?……はうあ!?な、何をするのですか雪蓮様!」

 

「何って、まだ隠してる事があるでしょ?」

 

「な、何もありません!何もありませんです!」

 

「嘘おっしゃい。だったらなんでさっき顔を赤らめたのよ!白状しないとこうするわよ。こちょこちょこちょ」

 

「っ!あはははははっ!や、止めて下さい雪蓮様っ!く、苦しいです!」

 

「だったら白状しなさいよ♪」

 

「あは、あはははははっ!め、冥琳様!た、助けてください!」

 

「はぁ。すまんな。こうなった雪蓮は止められん」

 

「そ、そんなぁ~~っ!あ、あはははっ!わ、わかりました!言います!言いますから止めて下さい!」

 

等々、明命は私のくすぐりに根を上げた。

 

「はぁ、はぁ。はぅ~、まだくすぐられてるみたいです」

 

「それで?天の御遣いになんて言われたの?」

 

「えっと……その……可愛い女の子と言われました……」

 

「「は?」」

 

「え?」

 

「それだけか?」

 

「は、はい。そうですけど」

 

冥琳の問いに頷く明命。

 

「ぷっ!あはははっ!面白いわね!まさか、敵かもしれない子に可愛いだなんて!……ねえ冥琳」

 

「だめだ」

 

「まだ何も言ってないじゃない」

 

「どうせ。あなたもその天の御遣いに会いたいとか言うんでしょ」

 

「わかってるじゃない。いいじゃない少しくらい」

 

「少しくらいって雪蓮。あなたは呉の」

 

「あっ!そうでした!もう一つ言伝があります」

 

『呉の王』と言おうとして明命に遮られた冥琳は少し顔をしかめていた。

 

「何々?」

 

「えっと。雪蓮様に『近いうちに会いましょう』と言っておられました」

 

「近いうちに?どういうことかしら」

 

首を傾げる私に冥琳は一言だけ伝えてきた。

 

「そう遠くないわよきっとね」

 

「あら、随分と自信満々ね」

 

「ふっ、そうでもないさ。この北郷と言う天の御遣いを信じるとそういうことになると言うだけだ」

 

冥琳は手紙に見ながらそう私に言ってきた。

 

「ご苦労だったな明命。帰ってきて早々悪いが洛陽の件頼んだぞ」

 

「はい!お任せください!では……」

 

そう言って部屋を出て行こうとした明命だったけど。

 

「ん~やっぱりちびっこくて可愛いね明命ちゃんは」

 

「はうあ!だ、誰ですか!」

 

「あら、珍しい。あなたが執務室に来るなんて」

 

部屋に入ってきたのは私の友である名を太史慈、真名は優未だった。

 

「えへへ。明命ちゃんが帰ってきたって報告があったから挨拶しに来たんだよ」

 

「ふがっ!く、苦しいです!胸がっ!胸がっ!」

 

明命は前から抱きしめられて苦しそうにもがいて居た。

 

「そろそろ開放してあげたら?」

 

「え~。雪蓮だけ。明命ちゃんを可愛がって私には可愛がらせてくれないつもり?」

 

「別に可愛がってたつもりは無かったんだけど?」

 

冥琳とは断金の仲だけど。優未とも禁断の仲とまでは行かないけどとても大事な親友。お調子者だけどとても優しくて頼りになる友よ。

 

「だって、遠くからでもわかるくらい明命ちゃん、大笑いしてたんだよ?」

 

「はうあ!そ、それは本当ですか!?」

 

「うん。本当だよ」

 

「あぅあぅ。恥ずかしいです」

 

明命は顔を赤くして俯いてしまった。

 

「う~ん!その恥じらい!やっぱり明命ちゃんは可愛いな~」

 

「はうあっ!」

 

「それで?明命を可愛がるだけが目的じゃないんでしょ?」

 

「おっ!良くわかってるね。流石は呉の王様って感じ?」

 

「茶化さないの。どうせ、面白い事が起こりそうだからってきたんでしょ?」

 

「まあね~。それでそれで?何か面白そうな事あったの?」

 

「ふふっ。あったわよ。すごい面白い事がね。冥琳」

 

「はぁ。あまり見せたくないのだがな……これだ」

 

「どれどれ……」

 

溜め息をつきながら冥琳は手紙を手渡す。

 

「へ~。随分と面白い事を書く子だね。それで?この天の御遣い君の話に乗るの?」

 

「とりあえずは保留、かしらね。明命の調査次第で変わってくるわ」

 

「ふ~ん……ねえねえ。冥琳」

 

「却下だ」

 

「えーーっ!まだ何も言ってないよぉ!?」

 

「どうせお前も雪蓮と一緒でその北郷と言う男に会って見たいと言うのだろ」

 

「ぶーぶー!雪蓮と同じ思考みたいに言わないでよね!」

 

「失礼ね!誰があんたと一緒ですって?」

 

「なにさ!」

 

「なんなのよ!」

 

「やめんか!はぁ……お前達は仲が良いのか悪いのかどっちなんだ?」

 

「「どっちでもない(わよ)(よ)!なによ!」」

 

「はぁ」

 

大きな溜め息をつく冥琳に恨めしそうに呟く。

 

「なによぉ。冥琳は私の見方じゃないの?」

 

「今回ばかりはどっちの見方でもないぞ」

 

「へっへ~ん!雪蓮が冥琳に見放された~♪」

 

「ぐぬぬぬぬっ!冥琳っ!」

 

「はぁ……それで?お遊びはそれでお仕舞いか?」

 

そういいながら眼鏡をかけ直す冥琳。

 

「お遊びって何よ。お遊びって!」

 

「そうだよ!こっちは真剣……」

 

「真剣に遊んでいるのだろ?お前が私から雪蓮を逃がすためにな」

 

「っ!な、なんのことかな~。私にはさっぱり……」

 

ちょ!そんな態度取ったらばれるに決まってるでしょ!もうこうなったら……

 

私は冥琳に気づかれないように逃げる準備をした。が……

 

(ガシッ!)

 

「逃がさないわよ雪蓮。今日こそは全部終わるまで部屋から一歩も出さないわよ」

 

冥琳に腕を捕まれて逃げる事に失敗した。

 

「うぅ~!冥琳のイジワル!」

 

「イジワルで結構よ……そうだ。共犯という事であなたにも手伝ってもらうとするか優未よ」

 

「い゛!?えっと……その……じゃっ!」

 

「周泰!逃がすなっ!」

 

「は、はい!申し訳ありません優未様っ!」

 

旗色が悪くなり逃げ出そうとした優未だったけどあえなく明命に捕まった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「ぶーぶー!だからこんな所に来たくなかったんだよ!」

 

「自分で来たくせによく言うわね」

 

「だって。雪蓮が冥琳に閉じ込められたって聞いたからこうして助けに来てあげたのに!」

 

「口を動かさず。手を動かしてください。お二人とも」

 

「「は~い……はぁ」」

 

机を挟み優未と顔を向けて仕事をする。

 

「え~ん……なんで私までこんな目に~」

 

「普段から政務をサボる罰です。観念しなさい優未」

 

「ぶーぶー!冥琳は横暴だ!」

 

「ほう……私が横暴ですと?」

 

「ひっ!」

 

「いつもいつも政務を逃げ出して、下のものを困らせているのは何処の誰でしょうね。太史子義」

 

「うぅ……ごめんなさい」

 

「わかればよろしいのです。さあ、私も手伝うので二人とも早く終わらせてください」

 

「「は~い」」

 

なんだかんだと言って冥琳は手伝ってくれるから優しいのよね。

 

それにしても天の御遣い、北郷一刀か……どんな子なのかしら?早く会って見たいわね。

 

私は期待を膨らませつつも目の前に積まれた政務をこなしていった。

 

《To be continued...》

葉月「ども~。一週間ぶりです」

 

愛紗「……はぁ」

 

葉月「ちょ。愛紗。挨拶挨拶!」

 

愛紗「ん?ああ、元気にしていたか。私は……無理だ」

 

葉月「ちょ!凄い落ち込みっぷりですね」

 

愛紗「……お前、分かって言っているだろ」

 

葉月「ええ。まあ、集計した本人ですから」

 

愛紗「足りないというのか!まだ、ご主人様への愛が足りないというのか!」

 

葉月「お、落ち着いてください!いいじゃないですか!今回は譲りましょう!次は大丈夫ですから!}

 

愛紗「ぐす……本当か?」

 

葉月「っ!その上目遣いは反則ですよ愛紗。胸がキュンとしちゃったじゃないですか」

 

愛紗「うぅ~。そんなことよりさっさと結果を発表しろ!」

 

葉月「で、では。結果発表に移ります!まずは最下位から!」

 

 

 

 

葉月「第六位っ!」

 

桃香・鈴々・雛里:2票

 

桃香「ふええぇぇんっ!凄い票数が少ないよぉ~」

 

鈴々「むー!鈴々は一度も載せてもらえてないのだ!」

 

雛里「ぐすん。次は頑張ります」

 

葉月「ここで前回掲載されたお二人がまさかの落選!桃香は6ポイントダウン。鈴々は1ポイントアップ。雛里はなんと!11ポイントは下がってしまいました!これも新しい仲間の影響なのでしょうか!」

 

 

 

 

葉月「続いて第五位っ!」

 

朱里:3票

 

朱里「はわわっ!また五位ですか!?」

 

葉月「不動の五位!前回と同様、投票数も同数です」

 

朱里「はわわ。つ、次こそはがんばりましゅ!」

 

 

 

葉月「ここからは掲載組みになります!第四位!」

 

星:11票

 

星「ふむ。私が四位か」

 

葉月「初登場で掲載を勝ち取りました!如何ですか?」

 

星「うむ。悪い気はしないな。だが、私の魅力はまだまだ語りつくせないほどあるぞ。次回も頼むぞ」

 

葉月「はい!私としては華蝶仮面は書きたくないのですが!色々と要望がありそうで怖いです!」

 

 

 

葉月「第三位っ!」

 

オマケ:12票

 

??「やった!これでまたお兄様にお会いできる!」

 

葉月「おやおや。気は早いですね。まだあなたを出すと決まったわけでは」

 

??「出すわよね?」

 

葉月「いえ。だから……」

 

??「だ・す・わ・よ・ね?いいえ。むしろ出しなさい。これは命令なんだから!きっと皆も望んでるはずなんだから!」

 

葉月「えっと……次っ!」

 

 

 

葉月「第二位っ!」

 

愛紗:13票

 

愛紗「はぁ……私が二位……二位……」

 

葉月「凄い落ち込みようですね。ちなみに前回から15ポイントダウンしています」

 

愛紗「うわーーーーーんっ!誰だ!誰が私に入れなかったのだ!私の前に出て来い!その首叩ききってやる!」

 

葉月「ちょ!お、落ち着いてください!いいじゃないですか!今回は花を持たせて上げましょう!新キャラなんですから!」

 

愛紗「う、うむ。そうだな……取り乱してしまった。すまんな」

 

葉月「いえ。別にいいんですけど……そういいながら偃月刀を振り回すのやめてもらえますか?」

 

 

 

 

葉月「そして栄えある第一位はっ!」

 

雪華:21票

 

雪華「ふえ!?わ、私ですか!?」

 

葉月「ですです。新キャラでしかもオリキャラである雪華が今回の第一位です!」

 

雪華「あ、あのその!あ、ありがとうございます!」

 

愛紗「うむ。よかったな雪華よ」

 

雪華「はい!愛紗さんもありがとうございます!」

 

愛紗「ううっ!ま、まぶしい。その笑顔。今の私には眩し過ぎる!」

 

雪華「ふえ?愛紗さん?」

 

葉月「ああ。気にしないであげてください」

 

雪華「は、はぁ……そ、それで、私は何をすればいいんですか?星さんは『一位の人はご主人様の閨に呼ばれる』って言ってましたけど」

 

葉月「そんな事は一切ありませんよ。だから私の後ろで偃月刀を構えるのをやめてもらえますか愛紗さん?」

 

愛紗「……本当であろうな?」

 

葉月「本当ですって!星が雪華をからかっただけですよ!」

 

雪華「ふえ!?う、嘘だったんですか!?……ところで閨ってなんですか?」

 

葉月「え……そ、それは」

 

雪華「それは?」

 

葉月「あ、愛紗任せました!」

 

愛紗「な、なに!?そ、それを私に説明しろと!?」

 

葉月「はい!出来ればあちらで説明しててください」

 

愛紗「む、むぅ……」

 

雪華「愛紗さん!閨ってなんですか!?」

 

愛紗「ね、閨と言うのはだな……」

 

葉月「さて。あちらで説明している間に」

 

??「ふっふっふ!私復活!」

 

葉月「はい。今回のお話で復活を果たした優未です!」

 

優未「やっとこの世界の一刀君に逢えるよ!」

 

葉月「ですが優未は呉ですし、会えるのはまだまだ先ですよ?」

 

優未「え~~~~っ!!早く逢わせてよぉ~」

 

葉月「反董卓連合軍までお待ちください」

 

優未「ぶーぶー!」

 

愛紗「はぁ、はぁ……」

 

葉月「あ。お疲れ様です」

 

雪華「ふ、ふええぇぇぇ~~~~。ね、閨がそんな意味だったなんて……」

 

優未「閨?閨ならやっぱり一刀君とがいいな~♪」

 

愛紗「なっ!なぜここに優未殿が!?」

 

葉月「だって。今回のお話で再登場していますし」

 

愛紗「な、なんだって!?」

 

雪華「あ、あのこの人は?」

 

優未「ん?誰この子?」

 

葉月「ああ。お二人は初めてでしたね」

 

優未「うん。でも、可愛い子だね~。すりすりしてもいい?」

 

雪華「ふえ!?」

 

優未「う~ん。だめだ!可愛すぎる!それ~すりすり~♪」

 

雪華「ふ、ふへぇぇ~~!」

 

優未「お名前は?」

 

雪華「きょ、姜維でふ」

 

優未「そっか~。姜維ちゃんって言うんだね~」

 

葉月「えっと……と、取り合えず終わりにしましょうか愛紗」

 

愛紗「そ、そうだな。ところで次回からの拠点はどの順番で載せるのだ?」

 

葉月「ああ、そうですね。順番は下記の通りです」

 

第一回拠点:星・愛紗

 

第二回拠点:雪華・オマケ

 

葉月「それと予断ですけど。今回の投票数は66票です。前回の投票数は76票で10票少なくなっておりますね」

 

愛紗「ふむ……その10票が私に入れてくれてさえすれば……」

 

葉月「あ。愛紗が黒くなりそうなので終わります!では皆さん。お会いしましょ~」

 

愛紗「ふ、ふふふ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優未「う~~ん!病み付きになりそ~♪」

 

雪華「ふぇ~。も、もうやめへくだひゃ~~い!」


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
77
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択