No.221713

IS/SS/2

この作品の主人公は、原作主人公の「良き理解者」&「良き友人」をイメージしています。
尚、戦う為の力(IS)こそは使えないものの、かなりのチート性能を持った人間として描いています・・・まぁ、何と言うか、自分の憧れを詰め込んだ人?

2011-06-09 23:37:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:11302   閲覧ユーザー数:10123

 

 

ダダンダンダダン♪

 

―――うん、ピッタリだ。

 

 

「誰が未来から来た殺し屋ロボットだゴルァ」

 

「何故ばれた!?」

 

 

こ、こいつ、俺の思考を読みやがった!

 

 

「分かり易いんだよ、お前の馬鹿な考えは」

 

 

あ、侮ってる気は無かったけど、恐るべし五反田弾!

伝説の『魔弾(エビルバレット)』の名は伊達じゃないな!

 

 

“ゴスッ!!”

 

「いてぇ!?」

 

 

いきなり眉間狙いの犀拳!?

一体俺が何をした!

 

 

「チッ、外したか。

記憶を飛ばすには・・・」

 

 

こぇええええええええええっ!!?

黒歴史には、指一本触れられるのも嫌なのか、こいつ!

心が狭過ぎやしないか!?

 

 

「だから、黒歴史なんだよ。

勝手に伝説にすんじゃねぇよ。

誰が、何時、何処で、んな糞ダサい渾名を喜んだ?」

 

「あー・・・」

 

 

悪い、土下座したくなる位悪かった。

・・・それとやっぱお前、俺の思考完璧に読んでね?

 

 

 

IS(インフィニット・ストラトス)二次創作

「魔弾(エビルバレット)と呼ぶんじゃねえッ!!」

 

 

 

「それにしても、お前学園はどうよ?

メール見る限りじゃ相当苦労してるみたいだが」

 

「いやホントにな、更衣室も便所も殆ど無いから、校舎中走り回るなんて日常茶飯事だ」

 

「そうかー、女の園って言葉だけだとバラ色な響きなんだがなぁ・・・っと、それは織り込み済みだ」

 

「んげっ!? ・・・また負けたし」

 

「お前コンボ狙い過ぎ。

当身の餌食だよ、そんなもん」

 

「くっそー、さっきは上手い事はまったのになー」

 

「さっきのは俺の落ち度であって、お前が上手いんじゃないよ。

そう来ると分かってりゃ対応出来ンだよ。

馬鹿の一つ覚えだって突き詰めれば千冬さんみたく最強とは言え、お前はまだ突き詰められる程経験無いだろ」

 

「ぐぅの音も出ねぇ」

 

 

弾の部屋で格ゲーなう。

やっぱこいつくそ強い。

なのに、何故エアホッケーはあんな弱いのか。

いや、理由は分かる。

こいつ致命的なぐらい、遊びに関しては力加減が苦手なんだよな。

弾曰く「遊びには常に全力、真摯に取り組むもんだろ(キリッ」

いやいやいや、意味が違うと思うのは、絶対俺だけじゃない。

全力っていうのは、楽しむ事に全力になるべきであって、力一杯やる事じゃないだろ?

そんなんだから、エアホッケーで連敗しっ放しなんだよ。

常に真っ直ぐこっちのゴール狙ってくるから、カウンターしやすいし。

っつーか、パックがサイドに当たった瞬間吹っ飛んでリングアウトするから、自然と真っ直ぐ狙うしかないんだろうけど。

後、自殺点しやすい。

普段は器用なのにな、こいつ。

 

 

「飲むか?」

 

「お、サンキュ」

 

 

横から弾が汲んでくれたアップルジュースを貰う。

こいつ、いい奴だよな。

言葉遣いはまんま不良のそれだし、昔の悪名(みたいの)の所為で避けられがちだけど、少なくとも俺はこいつほど一緒に遊んでて【嬉しい】相手は知らない。

千冬姉にも実は気に入られてるし。

 

 

「おい一夏、何ニヤニヤしてんだよ」

 

「あ、悪い」

 

 

ホント飽きないよな、俺。

 

 

 

 

 

こいつ、頭大丈夫か?

いきなりニヤニヤし出すし。

・・・そういや何時もの事だったか。

まぁいい、聞きたい事は別にある。

 

 

「で、だ。

噂のファースト幼馴染の件なんだが」

 

「何だ? 箒の事がどうかしたのか?」

 

「美人か?」

 

「ああ、そうだな。

それからその・・・凄く色っぽくなってた」

 

「見たか! 見たのか! 見たんだなこの野郎! データ寄越せ!」

 

「見てねぇよ!?」

 

「ダウトォ! お前の事だ、どうせ風呂上がりの8割裸を見たなりしたんだろ!」

 

「何故知ってる!? ・・・っあ」

 

「墓穴を掘ったな、一夏!

モテない男の僻みと妬みと恨みの籠ったこの一撃、食らえやぁぁぁぁぁっ!!!」

 

“バァン!”

 

「うっさい馬鹿兄! 昼食出来たって何度も呼んでるんだから、とっとと降りて食べ・・・えっ? い、一夏さん・・・・・・?」

 

 

ド、ドアァァァァァッ!?

あぁ、蝶番からネジが抜けかかってやがる。

もういい、休め、休むんだっ!

しかし、ある意味タイミングばっちりだったな、妹よ。

 

 

「チッ、命拾いしたな」

 

「た、助かった。

よっ、蘭久しぶり」

 

「ど、どどどどどうして一夏さんが此処に?!」

 

「あー、家に色々と取りに来たついでに」

 

「お兄! どうして教えてくれなかったの!?」

 

「言ったぞ? お前がエプロン一夏ブロマイドにむちひでぶ!」

 

「はーっ・・・はーっ・・・はーっ」

 

「だ、大丈夫か弾!? 一体何処から辞書が!?」

 

 

見事な一撃だな、蘭。

しかし悲しきかな。

俺の首はその程度じゃ曲がりもしないのだよ。

辞書投擲した蘭は、その場から既にいなくなっていた。

さては着替えに行ったか。

今の普段着姿、下手すりゃショーツ丸見えだったもんな。

という訳でケアルガ! ・・・効かないだとッ!?

ならば、ベホマ!

 

 

「あたた、俺じゃなかったら首がイカレてたぞ」

 

「大概頑丈だよな、弾って」

 

「実に嫌な事実だが、爺ちゃんの鉄拳の方がぶっちゃけ破壊力がある」

 

「・・・確かに痛いけど、そんなじゃないと思うんだが」

 

「甘い、接待用鉄拳と制裁用鉄拳は質が違うぞ」

 

「俺、今まで接待されてたのか?」

 

「幾ら爺ちゃんでも、余所様の家の子に制裁用を使うほど見境なくはないぜ?」

 

 

一夏が恐れ戦いているが、あえて無視。

時計を見れば、既に12時を少し回っている。

蘭が言っていたが、昼飯が出来たらしいな。

随分と早い。

さては爺ちゃん、一夏の事を見越して予め仕込んでおいたな?

流石爺ちゃんだ。

 

 

「行こうぜ一夏、昼飯だ」

 

「悪いな、何だろう」

 

「売れ残り予定の定食だろうよ」

 

「じゃあ、カボチャ煮定食か。

あれ、甘ったるいんだよな」

 

「何を! いいじゃないか、甘いんだぞ!

カボチャ生来の甘味を損なっている訳でもないんだぞ!?」

 

 

何と失礼な事を言うのか。

俺の剣幕に一夏が少し引いているが・・・俺、何も間違った事言ってないよね?

 

 

 

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

俺と弾と蘭の唱和が響いた。

やっぱりと言うか、今日の昼食はカボチャ煮定食だ。

うーむ、やはり甘過ぎる。

弾は美味そうに食ってるんだけど・・・相変わらずの甘党だな。

いや、磨きが掛かってないか?

その癖して、全く太ってない上にこの身長とか。

しかもこいつ、見た目によらず滅茶苦茶頭いいしな。

くっそー、羨ましいし恨めしい。

生まれ付いての勝ち組ってのは、こう言う奴みたいな奴の事を言うんだろうな。

くそぅ、少し位その才能寄越せよー。

あれ、何だ!?

今凄い怖気が?

目を向ければ、そこには拳を引く親友の姿が!

 

 

「一夏、殴っていいか?」

 

「止めろよ!?」

 

 

こえぇ!?

てゆうか、目がヤクザも真っ青だよ!!

「視線一閃で暴走族を殲滅した」って噂はマジなのか!?

 

 

「よし、落ち着け弾。

俺たちに必要なのは、対話による相互理解だ、そうだろう?」

 

「・・・まぁ、一理あるわな」

 

 

危ねぇ!

後少しで俺の顔面が凹むとこだった!

幾ら何処にでもある様な面とは言え、顔に食らうのは男、いや人間として避けたいし。

 

 

「このモテスリム野郎・・・いっそもげて女になっちまえ」

 

 

ちょっと待て、今聞き捨てならない事言わなかったか、こいつ!?

俺がモテるって、何かの間違いだろ?

実際、今まで生きてきてそんな風に想われた事なんて一度も無いぞ?

あれ、どうして弾と蘭は溜息を?

 

 

「・・・蘭、午後の時間全部お前にくれてやる。

こいつはもう落とすなんてレベルじゃ無理だ、撃墜するしかねぇ」

 

「えっ!? あ、ありがと、お兄!」

 

 

何か兄妹間での取引が成立した?

てゆうか落とすって・・・殺害計画!?

んな訳無いよな多分?

信じてるぞ、信じてるからな!?

 

 

「一夏、俺は午後からやらなきゃならん事を思い出した。

俺の代わりに、蘭をどっかに連れて行ってやって貰えるか?」

 

「はっ? いや、別に構わないけど」

 

「ホントですかっ!? ホントのホントに!?」

 

 

ちょ、蘭、近い近い!

言ったら、顔を真っ赤にして自分の椅子に戻った。

うむ、年頃の女の子が男に急接近とか、はしたないぞ。

兄貴分として、とても悲しくなるじゃないか。

 

 

「・・・・・・かーさーん!」

 

「何、弾?」

 

 

ちょ!?

蓮さん今どっから出て来た!?

生えたのか!? 蓮だけに!?

 

 

「超絶鈍感な野郎でも、思わずムラッと来る様なコーディネートを」

 

「分かったわ、任せなさい」

 

「も、もう、お兄ってば、気が早過ぎるって・・・」

 

「馬鹿、分からんのか!?

相手は一夏なんだぞ、【あの】織斑一夏なんだぞ!?

やり過ぎて不足する事態が起こり得るとでも思ってんのか!?」

 

 

だから弾ちょっと待て、お前俺を何だと思ってるんだ。

 

 

「!? そ、そっか、確かにそうだよね!」

 

 

うぉぉぉぉいっ!?

誰かー! 誰か来てくれー! こいつ等明らかに正気じゃねーよ!

 

 

「うるせえぞ!! 静かにしやがれ!」

 

 

おお、家長の厳さん!

もっと言ってやって下さい!

ってあれ?

何で俺の視界一杯にお玉が?

 

 

“バカァン!!”

 

「おぶろっ!?」

 

 

な、何で俺だけ?

煩いのは、弾と蘭じゃないのか?

 

 

「手前がもっと男らしくしねぇから、弾が世話焼いて、蘭が泣くんだろうが。

家の自慢の孫共に迷惑かけては骨折り損させてる元凶ぶっ飛ばして何が悪い」

 

 

そ、それは非常に申し訳ないです・・・ぬぉおおおお、千冬姉の出席簿アタック食らった時レベルで痛い・・・・・・はっ!?

これが弾の言ってた、制裁用のパワーなのか!?

 

 

 

 

 

ども、弾です。

蘭と一夏をデートに無理矢理送り出して暇になっちまったんで、取り敢えず近場のゲーセンを荒らした。

最近珍しいパンチングマシーンでカンスト値出したり。

ギタマニでフルコンやってトップ簒奪したり。

オンライン麻雀で対面のみを八連続ハコにしたり。

ダンレボをブレイクダンス方式でフルコンクリアしてトップ簒奪したり。

格ゲーで十字稜を召喚しまくって三十連続でお師さんにご出張願ったり。

タイムクライシスをワンコインクリアしたり。

・・・むしゃくしゃしてやった、今は反省している。

 

そんなこんなで、既に夕方に時間は差し掛かってる。

む、少し小腹も空いてきた。

 

 

「うし、甘味処廻りでもすっか」

 

 

実に有意義な休日だ。

ちょっとだけ気分が良いや。

人生万事、平穏無事が一番だとも。

IS学園? 羨ましくとも何ともねぇや。

自ら進んで客寄せパンダモドキになりたいだなんて、誰が思うか!

俺は一般人として、勉学に励んで普通に就職するんだ。

・・・だから来るなよ! 運動系部活の勧誘!!

俺は別にエベレストパスを取りたい訳でも。

スラムダンクを叩き込みたい訳でも。

カタパルト投法やステルスサイドをやってみたい訳でも。

フリッカージャブを放つシスコンになりたい訳でも無いんだっつーの!

最後だけ誌面が違うとかの突っ込みは却下する!

 

―閑話休題―

 

一人さもしく甘味処廻り。

実に良いね、糖分はいい・・・想像を絶する。

人類が出会った最たる発見の一つだ。

そんじゃまずは、城址公園のクレープ屋からにするか。

意外と穴場なんだよな、あそこ。

美味いのに、何故か客が少なく回転率が良い。

・・・うん、何故かなのさ、誰がどう言おうが何故かなのさ。

 

人通りが少ないんで、あっと言う間に到着。

バン車改造式の移動型店舗が何時もの場所にある。

気楽に店長に声を掛ける。

 

 

「店長、いつもの!」

 

「お、弾じゃないか!

OK! いつものだな」

 

 

店長は、三十代後半位に見える、無精ヒゲにバンダナ姿のおっさんだ。

しかし分かり辛いんだが、この人実はまだ27歳なんだぜ?

信じられるか?

俺と似た様な理由で昔っから勘違いされまくってて、クレープ屋になるのにも相当苦労したとか。

中学時代、一人で此処へ来た時に同類だと気付き、すぐに気が合って、今じゃ歳の離れた親友とも言える相手になりました。

因みに名前は「朝倉新八」さん。

高校に通わずに、クレープ修行に日夜明け暮れたという強者だ。

 

 

「ほい、友情のミックスベリーお待ち」

 

「ありがとうございます、こっちお代ね」

 

「へへっ、毎度!」

 

 

出来立てのクレープを貰い、即食う。

・・・はー、うめー、幸せだー。

因みにこのミックスベリー、俺以外は出して貰えないのよ。

今巷で囁かれるおまじないに「恋人同士でここのミックスベリーを食べると、幸せになれる」と言う物がある。

実は、仕掛人は俺だったりする。

その真実は、「ブルーベリー」と「イチゴ(ストロベリー)」を恋人同士で頼み、食べる。

というちょっとしたトンチになっている。

勘が良い奴は一瞬で気付くのだが、大概は噂に気が行ってしまっていて、メニューにミックスベリーが在る事に気付かないんだよなー。

そんなこんなで、昔はそれ程流行っていなかったこのクレープ屋は今や安定して人を呼び込めるようになっている。

そのお礼代わりに、俺専用の「本当の」ミックスベリークレープがある、って訳。

いや、人との絆って素晴らしいね、ホント。

・・・むっ!?

あちらから歩いて来るのは、一夏と蘭!

さては蘭の奴、例のおまじないを試す気か!

こうしちゃいられん! 隠れねば!

 

俺が身を隠すのと、二人がクレープ屋に辿り着いたのはほぼ同時。

おーあぶねー。

 

 

「え、えーっと、ミックスベリークレープ二つ下さい!」

 

「あぁー、すいません、今日はミックスベリーもう売り切れでして」

 

「えっ!? そ、そんなぁ」

 

「あー、残念だったな蘭。

代わりに何か奢るよ」

 

 

ナイスだ一夏、しかし天然でやるんじゃねぇ!

そんなんだから、誰しも勘違いするんだろーが!!

 

 

「じゃあ、今日のお勧めは如何で?

ブルーベリーと苺ですが」

 

 

GJ店長!!

 

 

「あ、じゃあそれを一個ずつお願いします」

 

「毎度」

 

 

よっしゃよっしゃ、蘭が店長の目配せで噂の真相に気がついたっぽいぞ。

 

二人がクレープを受け取って、少し離れた場所で食べ始める。

行け蘭! 今こそ勇気を振り絞る時! それが勝利のカギだ!

 

―――――いよっしゃー!!

俺の視線の先では、一夏が自分の手に持っているクレープを蘭に食べさせ、代わりに蘭が自分のクレープを一夏に代わりばんこに食べさせる光景が!

当然撮りました。

 

今夜は祝杯じゃー!!

爺ちゃんに連絡せねば!

 

 

 

 

 

一夏がIS学園に戻って少しした日の夜。

何やら一夏からメール。

ふむふむ?

フランスから代表候補生として、第二のIS男性操縦者が転入してきたと?

・・・くせぇー!

明らかに偽装の匂いがプンプンするぜぇーっ!!

それ多分、男装した女くさい。

だって、代表候補生は伊達であっちゃいけないんだぜ?

ISに触れてからそれなりに長く、かつそれでいて戦闘力も高くなけりゃ務まらない。

普通に考えて、そいつこそ第一の男性操縦者になる筈。

なのに一夏の存在が明らかになる前から知られていないのは、明らかにおかしい。

今まで秘密にしていただけ?

何処にメリットがあるんだよ。

特にフランスなんて、唯でさえヨーロッパの第三世代型トライアルプランとやらに参加出来ていないのに、男性操縦者の存在を隠したりなんかしたら余計ドツボに決まってら。

取り敢えず、『シャワーや着替えの時間は別々にしといた方が吉』と送っておく。

・・・・・・ってあれ?

ふと気が付いたんだが、これって国家機密の漏洩じゃねぇの?

やべぇ、手が急に震えてきやがった!

 

 

「お兄―」

 

「うおわぁ!!?」

 

「きゃあっ!?」

 

 

部屋をチラリと覗いた蘭の声に心底飛び上がる。

ドア?

・・・天寿を全うしたよ。

ってそれはともかく。

 

 

「蘭! いきなりビックリさせんな!!

心臓飛び出るかと思ったわ!!」

 

「な、何よ、何時も通りじゃん!」

 

 

う、確かに何時ものことだったか。

そしてその度に・・・うぅ、ドア、お前の事は忘れない。

だって、プライバシーダダ漏れになるし。

 

 

「あー、悪かった。

で、何の用だ?」

 

「分かればいいんだけど・・・電話」

 

「は、誰から?」

 

「分かんない、でも女の人。

お兄の知り合いの人じゃないの?」

 

 

蘭が手に持っていたワイヤレスの子機を受け取る。

何故か不機嫌面、いやこれは俺の所為か。

まぁとにかく出てみる。

 

 

「はい、代わりました、五反田弾です」

 

『ハァイ、貴方の心の恋人楯無さんです―』

 

「蘭、110に電話だ!」

 

「えっ!?」

 

 

俺の名前や噂だけならまだしも、実家の電話番号なんて一体どうやって知りやがった!?

店用のならばまだしも、家用の電話番号は俺達と親しい人間位しか知らん筈だぞ!?

っつーか、楯無って誰だ!?

 

 

『ちょっとー!? いきなりそれは酷いんじゃないの!』

 

「阿呆か。

会った事も、名前を聞いた事も無い人間が家の電話番号知ってる上に、名指しで自分を呼ぶ。

どこからどう見ても聞いても、犯罪者の所業だろうが。

ストーカーか何かとしか思えないとは思えないかね、どっかの誰かさん!?」

 

『あー、そっか、そこから説明しないといけないか。

分かったよ、私は更識楯無。

IS学園で生徒会長やってる、美人!なお姉さんですよー』

 

 

・・・駄目だこいつ、早く何とかしないと。

何故に俺に対してんな事言う?

しかも何で『美人』を強調するか。

と思ってたら。

 

 

『実はね、君にスパイ疑惑がかかってるんだ』

 

「・・・は?」

 

 

先程までのおちゃらけた声が嘘みてぇに、寒気のする声色で言われた。

 

 

『此処から先が聞きたかったら、傍にいる人を遠ざけて。

下手したら、巻き込まれちゃうから』

 

 

 

 

 

おい、マジかよ。

確かに思い当たる節は・・・嫌ってほどあるけどさ。

こっちを見てる蘭に、向こうへ行けとジェスチャーで指示する。

伝わったようでよかった。

 

 

「人払いはしたぜ」

 

『盗聴されてる可能性もあるけど、言うね』

 

 

ゴクリと、生唾を呑んだのが自分でも分かった。

くそっ、まさか憂慮が現実になるとは。

 

 

『君は、世界で唯一のISを使える男性と特別親しい間柄にあるの。

その所為でね、君の一家は何度か狙われてるんだよ。

織斑君に対する人質として有効そうだしね。

その度に、特別な暗部撃退組織がそんな野望を打ち砕いてる訳』

 

 

成程、筋は通ってる。

しかし、何故俺にそんな事を告げる?

それに、何故そこから俺がスパイだ何だと言う話になるんだ?

次の言葉を待つ。

 

 

『・・・話、続けるね?』

 

「あ、ああ」

 

『よろしい。

それで今、IS学園では世界でたった一人の男性操縦者を巡って、どす黒い陰謀や女の戦いが繰り広げられているのよ。

他にも外部から協定を破って、強制介入しようとか画策してる輩もいるんだけど・・・これは此方で対処してる。

君が疑われている理由はそんな奴等が言う、殆ど言い掛かりに近い戯事なのよ。

曰く「日本は織斑一夏を内に取り込む為に国民を利用している」ってね』

 

「・・・・・・嫌な話だ、胸糞が悪くなる。

打算で友情を持つなんて器用な真似、やれって言われても、出来る気がしねえよ」

 

 

ああ、本当に。

そんな事言った奴を紹介して欲しい位だ。

全速力で殴りに行ってやる。

普段は温厚で通してる俺だが、友情に関しては妥協する気は無いぜ。

 

 

『うん、そう言うと思ったわ。

君の今までの来歴見せて貰ったけど、凄いわね』

 

 

何だか照れ臭いな。

話を全て鵜呑みにしていいなら、この電話の向こうにいる女性は国のトップと直接話せる位偉い人の筈だ。

 

 

『特にこの「魔弾(エビルバレット)」って辺りが・・・』

 

「それ以上言ったら、問答無用で切る」

 

『えっ!? そ、そんなに嫌いなのこの二つ名!?

お姉さんはセンス溢れるいい名前だと思うんだけど!』

 

 

・・・こいつも悪い意味でセンス無いよ。

あー、無性に切りたくなってきた。

 

 

『ごめんごめん、まさかそんなに嫌だったとは思わなくって』

 

「反省してるなら、二度と呼ばないでくれよ」

 

『・・・う~ん、さっきから気になってたんだけど』

 

「何だ?」

 

『何でさっきからタメなの? 私、君より一つ年上なんだけど』

 

「俺、まだあんたの事信用してないんだよ。

胡散臭い事この上ないし」

 

『あらら、残念。

ま、今回はこれ位でいっか。

それじゃバイバイ、五反田弾君♪』

 

“ブツッ、ツーツーツー・・・・・・”

 

 

切れたか。

しかし、今回はって何だ、今回はって。

またかけて来るつもりか?

今度かけてきたら、無条件で切っちゃる。

 

 

「―――お兄、終わった・・・?」

 

「ああ、終わった。

取るに足らない四方山話だ」

 

「そ、そっか、良かった―――」

 

 

蘭の奴、物凄くホッとしてるな。

まあ、政府に直結するかもな相手と話したともなれば、かなり怖かったろう。

そう言えば。

 

 

「そろそろ夕飯じゃね?」

 

「あっ、ホントだ、もうこんな時間!

急いで作らないと!

お爺ちゃん達がお店を閉めて戻って来ちゃう!」

 

「うし、俺も手伝おう」

 

「い、いいよ、お兄が作ると必ず一品は甘い物が入るし。

・・・美味しいけど太るんだよね“ボソッ”」

 

 

蘭、聞こえんてんぞー。

ボヤキならもうちょい小さな声にしとけ。

そんなんじゃ、内緒話も丸聞こえだ。

 

 

 

 

 

ある日。

俺の元へ一夏が電話を掛けて来た。

 

何やら「お前は私の嫁」宣言されたらしい。

な、何を言っているのかわからねーと思うが―(略)

 

いや、マジで意味不明だ。

あ、因みにだが。

例のフランス代表候補生とやらは、俺の思った通り女だったらしい。

と、それはともかく。

問題はフランスと一緒に転校して来たらしいドイツの代表候補生とな。

今まで一夏から伝えられた情報を時系列順に並べてみると。

 

1)転校初日に張り手

 ↓

2)お前を認めない宣言

 ↓

3)タッグマッチ戦前に仲間をかわいがりされた

 ↓

4)タッグマッチ戦で何やらおかしなシステムで暴走、これを助けた

 ↓

5)キスされた

 ↓

6)お前は私の嫁にする! 決定事項だ! 異論は認めん!

 

・・・えっ? 何この異常事態兼超展開?

4)~5)の隙間に入るべき何らかの情報が欠けてるだろ、明らかに!

でもやっぱり、今言うべきは。

 

 

「良かったじゃねぇか。

念願の彼女おめでとう。

IS学園に赤飯はどうすれば送れる?」

 

『欠片も良くねェー!!

赤飯もいらねぇよ!!』

 

 

何だウルセェ、周りの迷惑考えろや。

というか、幾ら鈍感戦略要塞な一夏でも、流石にこれで好意に気付かないこたぁねえだろ。

 

 

「それで、答えは出したのか?

しっかり告白されたんだろ」

 

『いや、正直未だに現実味が無さ過ぎて』

 

「何でだ?」

 

『だって、ほんの昨日まで関係最悪だったんだぞ!?

それがいきなり「惚れた」とか「嫁にする」とか言われても!』

 

 

・・・こいつ、本気で言ってんのか?

前提条件からして間違ってんぞ。

 

 

「阿呆」

 

『はぁっ!?』

 

「誰かが誰かを好きになる切欠なんざ、人それぞれだ。

第一そのドイツは、お前自身を憎んでたのかよ」

 

『? そうだろ?』

 

 

駄目だこの野郎、まるで分かっちゃいねぇ。

人より鈍い(by蘭)俺ですら分かるのに・・・こいつの鈍さは真性か、はたまたはわざとやってんのかと疑いたくなるぜ。

 

 

「あのな、罪を憎んで人を憎まずって言葉があるだろ?

今回は言わばそれだ」

 

『? よくわからん』

 

「だったらずっと、よくわからんままでいろ。

そして下手打って殴られでもしろ」

 

『ちょっ! 弾、待って』

 

「待たない、じゃーな!」

 

 

ピッと電源毎切る。

以前連絡して来た「更識ナントカ」の御蔭か否か、俺の元に変な電話や人間が来る事は無かったので、一夏の愚痴も普通に聞けるが・・・正直ウザい。

一夏達の愚痴聞く様になってから長いが、俺は人生相談所か何かかよ!

ウガー! と軽く吼えてみた。

 

 

「うるせぇぞーっ!!!」

 

 

爺ちゃんの方がもっと煩いっつーの!

 

 

「もう11時回ってるか、寝よ」

 

 

そういやそろそろ七月か。

また蘭に夏休みの準備の為に引っ張り回される事になるんだろうなぁ・・・ま、どうせ俺自身は暇になるからいいんだけどな。

それに、一夏ん家もかなり埃が溜まってるだろうし、そろそろ月一の掃除に入らせて貰うとしよう。

眠気の溜まった頭で、ぼんやりとんな事を考えた。

思えば、こんな事を考える事自体がある種のフラグだったのかと思いもしたが、別段どうでもいいから割愛しよ。

 

 

 

 

 

後書き

 

何故だ!?

何故、天遣伝よりもこっちの方が、筆が進むのが早い!?

まぁ、こっちは基本無軌道で推敲皆無だからしゃーないか。

面白いと言ってくれた方々に、最大限の感謝を!

 

 

 


 
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