No.213613

夢の続きで、君を待つから-秋恋歌-

月千一夜さん

ど~も
≪月の詩≫第三作です
今回は以前に投稿した奴のリメイクとなってますw

ホッコリと、お読みくださいw

2011-04-26 22:52:13 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:8891   閲覧ユーザー数:7048

夢を見る

 

“悪夢”というものを

 

 

『さよなら・・・寂しがり屋の女の子』

 

 

愛した男が、消えていく夢を

 

ああ、なんて最悪な夢だ

愛した男が消えていく

 

いや、それだけじゃない

 

 

 

 

『さよなら・・・愛していたよ、華琳』

 

 

 

 

その男が、“私以外の女”に別れを告げ・・・消えていくのだから

 

 

 

 

 

 

≪夢の続きで、君を待つから-秋恋歌-≫

 

 

 

 

 

「いい天気だな」

 

「ああ、そうだな」

 

 

本日は晴天なり

そんなことを思いながら見上げた空

雲はゆるりと流れていく

 

俺はその心地の良い空を見あげながら、自身の膝の上に頭をのせる女性へと声をかける

 

 

「なぁ、秋蘭」

 

「なんだ?」

 

 

その言葉に彼女は・・・秋蘭は、フッと微笑みながらこたえる

そんな秋蘭の笑顔に癒されつつも、俺はさっきからずっと気になっていることを聞くことにした

 

 

「どうかしたのか?」

 

「・・・」

 

 

俺の一言

これに、秋蘭は答えることなく黙ってしまう

 

 

 

 

突然のことだった

今日の朝、いきなり秋蘭が“遠乗りに行かないか?”と誘ってきたのだ

珍しいなぁと思いながらも、俺も特に用事がなかったので一緒に行くことにした

そして都から少し離れた、この草原で休みをとることにしたのだ

その時、秋蘭が突然膝枕をしてくれと言ってきた

正直、我が耳を疑ったよ

あの秋蘭が、だ

まぁ驚きはしたが、断る理由なんてない

そう思い、今に至るわけなんだが・・・

 

俺はそんな彼女の様子に、ずっと気にかかるものがあったんだ

 

だって秋蘭、すごく・・・

 

 

 

「どうして、そう思ったのだ?」

 

 

しばらくして、ようやく秋蘭が口を開いた

俺の目を、ジッと見つめながら

俺はそんな彼女の頬にそっと触れ、深く息を吐き出す

 

 

「ずっとね、気になってたんだ

今日の秋蘭、ちょっと元気がないみたいだったから」

 

「元気がない、か・・・」

 

 

言われて、秋蘭は苦笑する

それから、頬に触れる俺の手を・・・そっと握ったんだ

 

 

「全く、油断ならんな

普段の鈍感なお前は、何処にいったのだ?」

 

「なっ、失礼な・・・俺のどこが鈍感なんだよ」

 

「その言葉は間違っても華琳様の前では言うなよ

首を切り落とされるぞ?」

 

「えっ、ちょ・・・なんでさ!?」

 

 

“やはり変わらんか”と、秋蘭は笑っていた

その笑顔に、俺もつられて笑った

 

それからしばらく、俺たちはまた・・・黙って空を眺めていた

太陽はちょうど、俺たちの真上にまでやってきていた

 

 

「どうして・・・」

 

「ん?」

 

「どうして、わかったんだ?」

 

 

ふと、彼女が呟く

とても小さな声で、今にも消え入りそうな声で・・・彼女は呟いたんだ

 

どうしてわかった、とは恐らく先ほどの話の続きだろう

そう思い、俺は考える

 

そして、真っ先に思ったことを口にしたのだ

 

 

 

「だってさ、秋蘭・・・すごく、悲しそうな顔してるもん」

 

「悲しそうな顔、だと?」

 

「うん」

 

「むぅ・・・」

 

 

目を瞑り、彼女は何か考えているようだった

だが、それもほんの僅か

すぐに目を開くと、彼女は何故か呆れたようにため息を吐き出していた

 

 

「そうか・・・そんな顔をしていたのか」

 

「うん、俺はそう思ったけど」

 

「いや、北郷が言うならば・・・きっと、そうなのだろう」

 

「え、そう言われるとちょっと自信がなくなるんだけど」

 

「ふふ、そう謙遜するな」

 

「いや、そういうんじゃなくて・・・」

 

 

焦る俺もよそに、彼女は“クッ”と小さく笑みをこぼしていた

その笑顔に、俺は一瞬見とれてしまう

 

 

「夢を、見たのだ」

 

 

そんな中、ふいに彼女は話始めた

夢を見たと、そう切り出して・・・

 

 

「夢?」

 

「ああ・・・北郷、お前が消える夢だ」

 

「え・・・」

 

 

俺が、消える夢?

その内容に、俺は思わず言葉を失ってしまった

 

 

「美しい月の下

お前は、華琳様にだけ別れを告げ・・・この世界から消えていってしまうのだ」

 

 

そんな俺の様子に気づかないままに、彼女は話を続けていく

俺は・・・それを、黙って聞いていることしかできない

 

 

「それが・・・堪らなく、悔しかった」

 

 

ぐっと、握りしめた手に力が入った

その手から、彼女の想いが伝わってきたような気がしたんだ

 

 

「何故、華琳様にだけ別れを告げたのか・・・とな

何故、私ではないのか

私ではダメだったのか

そんなことを、思ってしまったんだ」

 

「秋蘭・・・」

 

「ふふ、笑ってしまうだろう?

私はな、嫉妬してしまったのだ・・・あろうことか、華琳様に対して」

 

 

秋蘭が、嫉妬?

しかも、華琳に対して

 

 

「“信じられない”といった顔をしているな?」

 

「え、あっいや・・・」

 

 

う、顔に出てたか?

でも仕方ないじゃんか

あの秋蘭が、華琳に嫉妬するなんて・・・そんなの、信じられないって

 

 

「本当のことだ

いつからかは知らんが・・・それほどまでに、お前のことを愛してしまったようだ」

 

 

そう言って、彼女は微笑む

参った・・・そんなストレートに言われたら、なんか照れてくるじゃないか

 

だけど・・・

 

 

「夢、か・・・」

 

 

秋蘭の見たっていう夢

俺が、この世界から消えてしまうっていう夢

 

それが、もし本当に俺だったとしたら・・・

 

 

 

「大丈夫だよ」

 

「え?」

 

 

俺の言葉

秋蘭は呆気にとられたように、口を開いたまま固まってしまう

そんな彼女の様子に苦笑しつつ、俺は話しを続けた

 

 

「秋蘭が見たのは、まだ夢の途中だったってことさ」

 

「夢の、途中?」

 

 

そう、夢の途中

 

俺がこの世界から消える?

 

はは、冗談じゃない

 

それで、終わりなわけないだろ?

終われるわけないだろ?

 

 

 

「だってさ、俺なら絶対に・・・皆のところに、帰ってくるよ

何があったって、絶対にね」

 

 

そうだ

 

俺は、絶対にみんなのもとに帰ってくる

何があったって、絶対に

 

可能性がゼロだって言われたら、俺がその可能性ってやつを作り出してやる

世界だって越えてやる

不可能だって、飛び越えてやる

どんな壁だって、ぶち壊してやる

 

 

だってさ・・

 

 

 

 

 

 

「なんたって俺は、“天の御遣い”なんだから」

 

「北郷・・・」

 

 

トンと、俺は自分の胸をたたく

それからニッと、彼女に笑い掛けた

 

 

「そしたらさ、真っ先に秋蘭に言うよ

“ただいま”ってさ」

 

 

驚いたように、目を見開く彼女

だがしかし、すぐにいつもの笑みを浮かべ・・・俺の頬に触れた

 

 

「約束だぞ・・・“一刀”」

 

「ああ、勿論だ」

 

 

澄み渡る青空の下

交わした・・・大切な約束

 

この約束は、空を越え雲の向こう

きっと・・・届くはずだ

 

何処までも・・・果てしなく

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

規則正しい寝息が聴こえる

俺の膝の上、気持ちよさそうに眠る彼女から

 

 

「秋蘭の寝顔、可愛いな」

 

 

サラリと彼女の髪を撫で、俺は笑みをこぼした

ああ、本当に可愛いな

 

ああ、そろそろ帰らないと・・・華琳や春蘭に怒られそうだ

“貴方には、私の軍であるという自覚がない・・・うんたらかんたら”と説教され、“よくも私の秋蘭を!”と追い掛け回されたりするに違いない

あ~、後者は確実だな

やべぇ、ちょっと恐い

 

けど・・・こんな寝顔見せられたら起こせないよな

 

 

 

 

「仕方ない、か」

 

 

いいもんも見れたしね

この寝顔の為に怒られるのも、まぁ悪くはないか

なんて、俺がそう思っている時だった

 

 

「愛してるぞ・・・一刀」

 

「っ・・・!」

 

 

それは、彼女の口からもれた寝言

その内容に、俺は一人顔を真っ赤にしていた

 

 

「ああ、もう・・・」

 

 

なんで、こうも人が油断してるとこを狙ってくるかなぁ

 

けど、悪い気はしない

ていうか、すごい嬉しい

だから・・・

 

 

 

「俺もだよ・・・秋蘭」

 

 

 

そう返し、俺は彼女の額に口づけをする

 

そんな俺たちの間を、風が吹き抜けていった

温かなその風に、俺は目を細める

 

 

「夢の続き、見れたのかな?」

 

 

その俺の問いかけに・・・彼女は、一瞬嬉しそうに頬を緩めたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

夢を見た

 

“悪夢”というものを

 

愛した男が、この世界から消え去ってしまう夢

 

 

 

『やっと・・・来たか』

 

 

 

その、夢の続きを・・・

 

 

 

 

 

『随分と、待たせてくれたじゃないか』

 

『ごめん・・・ちょっと、手こずっちゃってさ』

 

 

 

 

澄み渡る青空の下

 

いつかの草原で・・・私は、また出会ったのだ

 

あのいつかの約束の通り、また出会えたのだ

 

 

 

 

『“ただいま”・・・秋蘭』

 

『おかえり・・・一刀』

 

 

 

 

風が、吹き抜けていく

温かく、優しい風が

 

 

ああ、そうだな一刀

これはまだ、夢の途中だ

 

何故なら・・・私たちの物語は、まだ始まったばかりなのだから

 

 

 

『さぁ、行くぞ一刀

皆が、お前のことを待っている』

 

『ああ、行こう秋蘭』

 

 

 

だから一刀・・・いつまでも、私の傍にいてくれ

 

そして、一緒に歩いて行こう

 

この、終わりのない物語を

 

どこまでも・・・どこまでも、果てしなく

 

 

 

 

『愛してるぞ・・・一刀』

 

『俺もだよ・・・秋蘭』

 

 

 

 

 

それは夢の中・・・私とは違う、私の物語

だがしかし、この想いは変わらない

 

 

“一刀を、愛している”

 

 

この想いだけは、どこにいようが・・・きっと、変わらないのだ

 

 

だから、伝えよう

この想いを・・・彼の心へと

 

 

さて、そろそろ目を覚まそうか

そして、始めよう

夢の続き、その先に見た未来へと向かい・・・共に、歩んでいこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“そして、私は辿り着く・・・”

 

 

 

 

 

≪the after・・・≫

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

 

 

“おはよう・・・秋蘭”

 

 

 

 

その言葉を聞くのは、もう何度目になるだろうか?

もう当たり前となったその言葉を、私は未だに愛している

だから私も“おはよう”と、笑いながら返すのだ

そして、そこからまた始まる

新しい、今日という日々

いつか見た、夢の続きは・・・いつしか、掛け替えのない毎日に変わっていた

当たり前の日常へと変わっていた

 

だけど、何よりも大切な毎日だった

だからこそ、今日も伝えよう

 

当たり前で、ありきたりな

そんな言葉を

 

愛する者に、伝えよう

 

 

 

「愛してる、一刀」

 

「俺も愛してるよ・・・秋蘭」

 

 

 

 

夢の続き

私たちの物語は、まだまだ続いていくのだから・・・

 

 

 

 

 

≪夢の続きで、君を待つから-秋恋歌-≫

   fin♪

 

 

 

 

★あとがき★

 

今回のお話は、正月に投稿したものの完全版です

ちょっとしたお話を追加し、魏ルートの内容に変更しましたw

 

 

やっぱ、秋蘭は魏√じゃなくちゃね♪

次もまたカオスだし、今回のお話で一休みしてからお進みくださいww

 

それでは、次の作品でwwww


 
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