No.209882

SEASON 7.頑想の季節(1/4)

にゃぱさん

修学旅行も最終日。これといった思い出もなく終わってしまうが担任のうなだれた顔を発見する。

2011-04-04 05:08:22 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:410   閲覧ユーザー数:408

気がついてみれば最終日の夜

思い返せばこれと言った思い出がない。

 

 

なぜならしっかりと唯と里優に監視されていたからだ。

少しでも横道に逸れようとすると2人の目がそれを許さない。

おかげで丸ちゃんが心配していた問題も起こしていない。

 

 

しかし、一度だけ拓郎がどこかへ行ってしまい探し回ったことはあった。

正確には拓郎が商品に夢中になっているのに気付かないで俺達が置いて行ったのだが

探しているうちに竜祈達とはぐれてしまって唯とみんなを探し回った小さな事件は起きていた。

思い出と言えばこれぐらいだ。

 

 

 

飯を食い終わり横になりながらぼ~っといていると

部屋に円が来て拓郎とテレビゲームを始める。

どうやら初日の夜に拓郎に負けたのがくやしかったみたいで

晩飯が終わると飛んでやってきていた。

 

 

竜祈は部屋の奴らと話しているがみんなの緊張した顔は見ていて心が痛い。

気づいてないのか竜祈はいつも上機嫌だった。

 

 

そのおかげで里優は竜祈に相手にされず唯とずっと一緒にいる。

 

 

初日から最終日までそんな感じで過ごしている。

って俺はぼ~っとしているだけって何もしてないことに最後の夜に気づく。

「円、お風呂行くわよ」

唯と里優が円の着替えを持ってきて催促する。

 

 

「ぬ~、もうそんな時間?お風呂上がったらもう一勝負だからね」

悔しそうに部屋を出る円に

「いくらやっても僕には勝てないよ」

拓郎は満足そうに言い放つ。

 

 

それを見て余計に悔しがりながら唯達と部屋を出ていく。

 

 

 

昨日まで唯達が来てもあと少しと言いながらなかなか止めないから唯達は先に入っていた。

「あっ!唯姉達いない!」

と円は急いで部屋に戻るが唯達はもう上がっていて1人緊張しながら入っている状態だった。

 

 

それにこりたのか今日は素直にゲームを止めて行った。

 

 

「さて、俺達も行くか」

俺と竜祈はおもむろに立ち上がり風呂に向かう準備をする。

 

 

「どうしたの?僕達の時間はまだじゃない?」

拓郎は不思議そうな顔をして言ってきた。

 

 

「何言ってるんだよ。俺達はこの時間だぞ」

 

「そうなの?いつもならまだじゃない?」

 

「お前が円とゲームやってるから待ってただけだ」

 

「そう、お前は円と一緒であと少しって言って聞かないからな」

 

「いつも僕の事待っててくれたんだね。それじゃもう少し」

 

「先行ってるからな」

 

ゲームに夢中になった拓郎からは

「うん」

としか返事がなく先に風呂場に向かった。

丁度大浴場に着いたころに

「置いてかないでよ~」

と拓郎は猛ダッシュで追い付いてきた。

 

脱衣所で服を脱いでいると拓郎は辺りをキョロキョロと見渡している。

 

 

「そんなに周りの裸が気になるのか?」

 

「そうそう、僕実はこっち系で…」

 

「やっぱりそうだったのか…」

 

「違うわい!これだよ、これ」

拓郎と距離を置いた俺と竜祈に持ってきた袋の中を見せてきた。

中には見覚えのある水鉄砲とアヒルが入っていた。

 

 

そういえば初日に教師に注意されこれまで封印されたままだった。

 

 

「今日こそはこれで遊ぶんだ。でも無理かな、無理なのかな?」

何故か脱衣所には教師が座っている。

 

 

情報が回っているのか拓郎が風呂に入ろうとすると持ち物検査が始まってしまう。

 

 

「拓郎、それはもう諦めたらどうだ?」

 

「嫌だ!ぜっっっっっっっっっっっっっっっっったいこれで遊ぶんだ!」

溜め分だけの熱意が感じられる。

 

 

「他の奴に持ってきてもらうのはどうだ?俺達が持ってたら怪しまれるからな」

 

「それしかなさそうだな。教師が目を離したすきに誰かに渡せ。

ばれないように俺と慶斗で隠してやるから」

 

「なるほど、木を隠すなら森の中作戦だね」

 

「その例えは違うと思うぞ。おい、今の内に渡せ」

 

 

丁度教師が目を離している。

 

 

教師と拓郎の間に俺と竜祈が仁王立ちになり壁を作る。

後ろでは拓郎が風呂場に持ち込んでくれるよう頼んでいる。

 

グワッ!

 

アッヒル隊長の鳴く声に教師の目線が戻ってきた。

 

 

「なんだ、今の声は?」

後ろを見ると渡された奴が隠すのに時間がかかっている。

 

 

「グワッ!」

天高くアッヒル隊長の真似をした。

 

 

「グワッ!」

竜祈も真似をした。

 

 

ここからグワグワ大合唱が始まる。

最初は適当に鳴き続けたがいつの間にやら輪唱になり

最後にはハモリまで完璧になった。

 

 

「お前らいいから早く入れ。うん?おい、橋爪、お前はちょっと待て」

その教師は竜祈の体を触り始めた。

 

 

「この腹筋、背筋、しなやかな筋肉…ボクシング部に入らないか?」

部活の誘いを受けることになっていた。

 

 

「じゃあ俺先に入ってるからな」

竜祈を置いて拓郎を連れて入る。

 

 

 

これなら簡単に持ち込めたんじゃないか?

「ふぅ」

頭や体を洗い湯船に浸かりながら竜祈が入ってくるのを待つ。

 

 

「ったく、なんでタオル一枚でボクシングの話を聞かなきゃいけないんだよ」

ぶつぶつとぼやきながら竜祈が入ってくると

さっきまで込み合っていたはずの浴場が閑散とし始めた。

 

 

「毎度の事だけど僕達の周りはいつも静かになるよね」

グワッ

「こういう場合は丁度いいんだけどな」

グワッ

「俺は積極的に話しかけてるんだけどあっちから来ないのが気になるんだよな」

グワッ

湯船を縦横無尽に泳ぎ回るアッヒル隊長が返事をしてくれている。

 

 

「有難う御座います!」

3人で敬礼をしてみるとアッヒル隊長は俺達の前に泳いできて

グワッ

とまた返事をしてくれた。

 

 

本当にこいつはどんな細工をされているんだ。

もしかしたらこいつは生物なのか?

 

 

「本当ならこれでみんなで遊ぼうと思ったんだけどな」

拓郎が隠して持ち込んだ水鉄砲を取り出し始めた。

 

 

その数はみんなで遊びたかったと豪語するだけはあって20個は超えていた。

 

 

「慶ちん、竜祈、しょうがないから3人で遊ぼうよ!」

俺達の分までお湯を充填し始めていた。

 

 

「俺はパス。さっきの立ち話で疲れたからな」

 

「俺もパスな。まったりと入りたいし」

 

「え~!やだやだ!最近2人共冷たいよ。かまっておくれよ~。ほらほら楽しいよ!」

湯船から出た拓郎はシャンプーの容器目がけて打ち始めた。

 

 

それに熱中するがあまりもう1つの水鉄砲がタオルからはみ出しそうになっている。

 

 

「じゃあどれか1つ撃ち落とせたら相手してやるから」

あまり入っていないとしても水鉄砲ぐらいの威力じゃ落ちるはずがないと踏んでの提案だ。

 

 

「慶ちん侮ったね。これでもこういうのは得意なんだよ」

不敵な笑みを浮かべ容器に銃口を向ける。

 

 

そういえば夏祭りの時にありえない大きさのぬいぐるみを落としていたのに気付く。

 

 

あれも明らかに落とせるはずがないと思っていた。

 

 

竜祈が他の客とは比較にならない銃弾を浴びせたがビクともしなかったぬいぐるみを

 

 

こいつは落したんだ。

 

「いくぜ!」

 

ピュー

 

銃口から出たお湯はあまりにも切ないぐらいの威力で容器はビクともしない。

 

 

それを見て安心した俺達は拓郎を置いて浴場を出た。

 

 

浴場からは拓郎の声が響き渡り後ろにいた教師に注意を受け

いつの間にか水鉄砲は全て没収されタオル一枚のまま正座させられ説教を受けていた。

暫く入口で拓郎を待つと疲れ果てた様子で暖簾をくぐって出てきた。

 

 

「ひどいよ、いつの間にかいなくなってるんだもん。怒られるならみんな一緒じゃない?」

 

「盛り上がってたのはお前だけだろ。怒られるのは当然じゃないか」

 

「それはそうだけど僕等は一心同体じゃん!」

 

「怒られるのは勘弁だな。中学の時だけで十分だ」

 

「あの時も怒られたよね。すごいいい勝負だったのに邪魔が入って引き分けのままだよ」

 

「お前等中学の時もやってたのかよ」

 

「もう少しで俺の勝利が確定しそうだったのにな」

 

「危なかったよ。まあそのおかげでまだ無敗記録は続いてるから逆にラッキーだったかな」

次第に中学の頃の修学旅行の話になっていき

その話に俺はついて行けないでいた。

 

 

そういえば中学の時はどんなことしたんだろう?

 

 

 

 

 

どこからともなく泣き声が聞こえてくる、それといつも聞く慰めの声。

 

 

声の聞こえる方に進んでいくとやっぱりいつも見る3人組だった。

 

 

シクシク泣く円を里優が頭を撫でていて唯は困ったように頭を掻いている。

 

 

「もう、円元気出して。ほら今からまだ成長するかもしれないじゃない」

 

「そうですよ~。人生これからです~」

 

「そんなはずないもん。円は…円は…」

 

「よう、どうしたんだ?」

 

「あっ、慶兄…まただよ。また悲劇だよ」

 

 

下を俯き暗い顔をする円からとてつもない不安を感じる。

前に見た残像が頭をかすめていく。

 

 

「もしかして具合悪いのか?」

 

「違うよ…違うんだよ慶兄…」

 

「ならどうしたんだ?」

 

「女としての格アゲインだよ!」

そういうと大泣きし始めた。

 

 

そういえば前にみんなで風呂に入りにいった時にも泣いてたな。

 

 

「もしかしたらこれから大きくなるかも知れないぞ」

 

「慶兄気休めはいらないよ」

 

「僕も無理だと思うよ。考え方を変えればそっち路線で需要があるさ」

 

「拓坊…慰めになってないよ」

確かに円が目指す方向と真逆じゃないか。

 

 

「大丈夫だ。これから格好いい大人になれるよ。唯みたいになりたいんだろ?」

 

「うん…わかったよ。円頑張るよ!」

 

 

やっと元気になったと思ったが唯の姿見た円は

「全て遠き理想郷だよ~!」

とまた大泣きし始めてしまった。

ぐずる円をあやしながら廊下を歩いていると

 

 

「ほんっっとうに貴方はいつもそうよね!もういいわ!」

と女性の怒る声が聞こえてきた。

 

 

何があったんだとみんなで顔を見合わせていると1人の美人女教師がこちらに歩いてきた。

 

 

「紗南ちゃ~ん、何かあったの?」

さっきの声を聞いてなかったかのように拓郎は陽気に声をかけたが、その声が届いていないかの様に紗南ちゃんは通り過ぎていった。

 

 

「ついにあの優しい紗南ちゃんにもスルーされるようになっちゃった」

廊下の隅でへこむ拓郎をよそに紗南ちゃんが歩いてきた方に足を向けた。

 

 

「はぁ…なんで俺はこうなのかな?」

 

窓から外をぼんやりみながらため息をついている丸ちゃんが佇んでいる。

いつもはあんなに熱くて元気な丸ちゃんがそこにはいなかった。

 

 

声をかけるか迷っていると俺達に気づいたのかいつも通り

「神林達か!どうだった?いい湯だっただろう?」

と何事もなかったように振舞っていた。

 

 

「おっ、円ちゃん。バスの中では一緒だったけど喋ることはなかったね。修学旅行来れて本当に良かったね」

 

「うん!行けないって思ってたから今はすっごく楽しいよ」

 

「そうだよな。なんてったって最大級のイベントだもんな。楽しんでるなら言うことなしだ」

 

「慶兄達が変な事しなければもっと楽しいんだけど…」

 

「神林達!お前ら何してるんだ?」

 

「俺は何もしてないっすよ!竜祈と拓郎はわからないけど」

 

「俺もしてないっすよ。拓郎ぐらいだろ?」

 

「えっ、ちょっと何ばらしてるんだよ!」

 

「五十嵐…お前何かしてたんだな」

 

「あれ?丸ちゃん何も聞いてないの?もしかして自爆?円、余計なこと言うなよ」

 

「ぬ?拓坊何かしてたんだ。円適当に言っただけだよ」

 

「完全に自爆ですか~~~!」

 

「教師としてこういうこと言うのもどうかと思うけどお前馬鹿だろ」

確かに教師の言葉ではない。

 

 

「いつもなら許さないとこだけど修学旅行ぐらいは許してやるよ」

それも教師らしくない行動だなある意味丸ちゃんの持ち味ではあるのだけど。

 

 

「先生は楽しんでる?」

円からの質問に丸ちゃんは一瞬にして顔を曇らせた。

っというより落ち込み度がましたようだ。

 

 

「ついさっきまでは楽しかったんだけど一瞬にして楽しくなくなっちゃったよ」

 

「さっき紗南ちゃんが怒ってたのと関係あるの?」

 

「いや、そんなことは関係ないぞ」

唯の質問はどうやら図星らしく丸ちゃんの動揺は隠しきれていない。

 

 

目は泳ぎに泳ぎ、顔は引き攣っている。

 

 

「丸ちゃん、僕の情報網を侮っちゃいけないよ。丸ちゃんと紗南ちゃん付き合ってるっていう情報はもうこの耳に入ってるんだよ」

誇らしげに腕を組んで俺達に噂話をひけらかしていた。

 

 

 

でもそれって…

 

 

 

「私も知ってます~。デート現場も目撃してますよ~」

 

「円も知ってるよ。ファミレスで一緒に食べてるとこも見てるよ」

 

「私も知ってるわよ。うちの学校で知らないのは誰もいないくらいよ」

誇らしげに自分だけが知ってる風にひけらかす事じゃない。

 

 

「僕だけの情報じゃなかったんだね」

 

「そんなに知られてたのか…ばれないように頑張ってたのに」

拓郎と丸ちゃんが同じポーズで落ち込んでいた。

 

 

「丸ちゃん、ばれてないって思ってたんすか?」

 

「完璧に隠し切れてると思ってたよ」

 

「丸ちゃんは猪突猛進型だから無理だと思うわよ。隠そう隠そうとして逆に広めちゃったって感じね」

 

「するどいご指摘ありがとう。そうんだよな、昔から想ってることがバレバレでうまくいかなっかたんだ」

俺にただ純粋に自分の気持ちに真っ直ぐで隠し事が嫌いなんだ思っていた。

 

 

実は隠し事をしないんじゃなくてできない性格だとは思わなかった。

どおりで俺達の担任が務まるわけだと納得できた。

「それにしてもなんで紗南ちゃんは怒ってんすか?いつもあんなに仲良さそうにしてんのに」

 

「俺にもわからん。最近ずっとイライラしてるみたいなんだよな。気になって聞いてみたら自分の胸に聞いてみろって言われたんだけど心当たりないんだよな」

丸ちゃんの言うことだ、そこに嘘は一切ない。

 

 

「丸山先生~、本当に~心当たりないんですか~?例えば~、浮気してるとか」

里優の眼が怪しく光りだす。

 

 

その眼の力に竜祈が浮気してるかと思い竜祈を見ると手と首を横に高速に振った。

 

 

そんなにきょどらなくてもいいだろうに…

 

 

「浮気なんかしたことない。俺は紗南一筋だ!高校の時からずっとな」

 

「へ~丸ちゃん、紗南ちゃんと高校一緒なんだ。僕もそんな高校生活を送ってみたいもんだね。ってそんな前から付き合ってたの?」

 

「そういえば長い付き合いだ。2年の時から同じクラスでグループで良く遊んでたよ。そうだな、ちょうどお前らみたいな感じだ」

 

「なんだよ、丸ちゃんも問題児だったんじゃねぇかよ。俺達の事言えねぇじゃん」

 

「そうだよ!僕達だけ怒られてるじゃん!」

 

「言っとくが俺は遅刻したりしてないからな。そこだけは間違えるなよ。ちゃんと守れば俺だって説教したりしないさ」

説教というよりは体罰だけど。

 

 

「どういうきっかけで付き合うようになったの?話だけだと丸ちゃんからって感じはしないけど」

ニヤニヤと笑いながら唯が丸ちゃんの顔を覗き込む。

 

 

「私も気になりますね~。これからの参考にしたいです~」

胸の前で手を合わせ里優も後に続く

 

 

「円も聞きた~い!きっと最高にホットでクレイジーなラヴロマンスがあったんだよね?」

円が話のハードルを上げつつ話に参入していく。

 

 

その勢いにうろたえ始めているのか丸ちゃんに落ち着きがなくなっていく。

 

 

「どうしたんすか?丸ちゃんらしくないっすよ」

面白くなり俺も追い詰めに入っていく。

 

 

「自分も聞きたいすねぇ。勿論冷やかしとかじゃなくて人生の先輩のアドバイスとして」

ある意味丸ちゃんの話は竜祈には参考になるな。

 

 

「僕も聞かせて……ごふっ!」

丸ちゃんの右拳が今までに見たことのないほど綺麗に顔面をとらえている。

 

 

「なんで僕だけこんな扱いなの?」

 

 

「なんかお前のは冷やかしに聞こえたからな。ふぅ、しょうがないな、お前らちょっとついてこい」

そういうと俺達を引き連れ廊下を歩き始め俺達には関係ない階の部屋に入って行った。

そこは教師が使っている部屋で俺達生徒の部屋とは違って綺麗に使われている。

 

 

俺達の部屋とは大違いだ。

 

 

拓郎と竜祈の脱いだ服が散乱し拓郎と円が食べたスナック菓子の袋が無造作に捨てられ、拓郎がみんなでやろうとしたテーブルゲーム数種類が広げて置いてある。

ちょっと待て、ほとんど…いや全部拓郎絡みじゃないか。

それに気づき拓郎を蹴っておいた。

 

 

「なにするんだよ、慶ちん!」

 

 

何もわかってない拓郎から怒声が飛んできたが

「唯、後で俺達の部屋片づけてくれないか?拓郎が掃除してくれないんだよ」

無視して無理を処置で小声で頼んでみたら困った顔をしていたがしょうがないなっと笑って答えてくれた。

 

 

「みんな立ってるのもなんだからそこら辺に座れよ」

丸ちゃんは奥から人数分の座布団を持ってくると部屋の真ん中に陣取り始めた。

 

 

それぞれ座布団を取り丸ちゃんの前に座り始める。

 

 

俺と竜祈は窓際の椅子に深く腰をかけ話が始まるのを待つ。

 

 

「どこから話せばいいんだ?」

ゆっくり丸ちゃんの口が動き始めた。

 

 

明らかにあまり話したくない雰囲気が伝わってくる。

 

 

「そうですね~、付き合い始めたきっかけが聞きたいですね~」

 

「里優ちゃん、それじゃ後過ぎるよ。もっと前のプロポーズの言葉からだよ」

 

「円、もっと後の話になってるぞ」

 

「丸ちゃんは私達みたいにって言ってたじゃない?私はそこから聞きたいかな」

 

「わかったわかった。ちゃんと順を追って話せばいいんだろ。そうだな、あれは何年前の事になるかな。そうか、あれは…」

 


 
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