こんにちは,魔法学園にようこそ!
一応最初に言っておきますが,この学園にちゃんとサボらず通ったところで,魔法とか絶対身に付きませんから! はいこれ大事です。此処は魔法を系統的に学ぶ場所ですが,別に魔法を覚える学校では無いのですよ。
だって貴方,飛行機の仕組みを知ったからって,自力で空を飛べますか? 何かしょうもない物語みたいな,特別な才能が在れば別なんでしょうけれど,貴方は別に物語の主人公ではないですからね! ただの脇役だってこと,そろそろ認めた方が楽になれますよ。
まあ自分のことを,特別なものと思ってる,天命みたいなものがあるんだ,とかそんな夢見がちな子は,とりあえず別の道を探した方が良いかもしれませんね。まあそういう中途半端なひとは,結局何者にもなれませんけどね。
ああ,はいはい,お帰りはそちらへ。授業料の返還とか一切ありませんからね! はい? だってパンフにはちゃんと書いてあるでしょう。え,文字が小さ過ぎる? 貴方は魔法とかじゃなく,まずメガネを身に着けるべきでしたね!
さて,これでもまだ半数も残っているのですか。貴方たちもあきらめの悪いことですね。実はこれはテストで,残った者には何か在るのではないか,なーんて,思って無いでしょうね? はっは,ある訳ないです! 何にも無い,ただの時間の無駄ですよ? 今からでしたらランチとかに間に合いますから,思い出代わりに学食で魔法定食でも食べて帰ると良いですよ。あれは実に美味い! あんな原価なんぼやねんってくらいチープな材料から,あんな美味いものを作るんですからね,あれこそまさに魔法です!
……いや,別にそういうオチではないですよ? というかそれでも意地になって残っているのは,やっぱりあの辛かった入学試験とかが,全部無駄,無意味,ただの嫌がらせだと認めたくないからなのですね。あれは酷い,実にみなさん滑稽で,楽しかった! あああのデブ必死だ,とか,あの子スカートなのに! とかね。教員みんなでじっくり楽しませて頂きました。ありがとうございます。特にそこの彼女。そうそう,人気ナンバーワン! でしたよ。ちょっとマニアックな顔ですが,それが実に素晴らしい。私が此処の学長なら,試験などせずにすぐに入学でしたよ。
は? いや別に私は,学長とかそんなんじゃないですが。そんな自己紹介もしてませんし。この白いヒゲがまぎらわしいと。ひとを見かけで判断しちゃいけませんねえ,そんなだといつか見誤って,人間関係でとんだ大失敗をすると思いますよ……おや,実はもう経験があるようですね。大変だ。怒った? ねえ怒った? 失敬!
失敬ついでに,そろそろ弁当を食べて良いでしょうか。もう朝からペコペコなのですよ。ほら,これ見て下さいよ,ハートマークに切ってあるんですよ。実に愛妻弁当! 正しく愛妻弁当です! だけどね,ここだけの話,実に不味いのです。身体は良いんですが顔はいまいち,性格は良いけど料理はいまいち,と,人間というのはなかなか完璧にはなれないものですね。おっと。
あ,すまないね。臭かったかな。最近屁がすっかり臭くなってね,もう歳でしょうかね。やれやれ,まだ帰らないのですね。まだ何か在る,そんな期待をしているのでしょうか。仕方ありません,では,ここで重大な発表をしますよ。私,学長でも無いですし,ここの教員でもありません! なんとなく弁当を食べる場所を探していた,ただの用務員のおっちゃんなのですよ。え,怒った? やめろよー魔法ですっ飛ばしちゃうぞ! なんてね!
痛てて……って,まだ残っている人は,何かオチを期待しているのでしょうか? それともまだ何か希望が在る,絶望の箱の底には何かが残っている筈だ,とか。此処まで何かを信じられるのって,凄いというか,ちょっとキモいですよね。あら,もしかして貴方たち,魔法とか信じてるんですか? ファンタジーとか真に受けちゃうタイプ?
……うむ,合格じゃ。その信じる力こそが,魔法なのじゃ。
いっ,今,マジで喜んだ奴いるでしょ! 手上げてー。うわ,上げてる! ありえない! キモい! じゃあ場の空気が最悪な状態ですが,ここでまた重大発表! 私は本当にこの学園の学長です! そして実はみんな合格です! だけどこの学園は,私の接待費の過度な使い込みによって,本日付であっさり倒産しちゃいました!
皆さんはこれを機会に,しっかりと現実を見つめて下さいね。魔法なんかで現実がすべて好転すると思っているような人に,魔法なんて絶対に使えません。現実はとても厳しいのです。だけど私たちは,奇跡など無い現実に生きていかなくてはいけないのです。まやかしを信じるな。これが……私の最後の授業になります。
……おや,なに神妙な顔をしてるんですか? やっぱ貴方たちはまだまだ,魔法を使うには人生経験が足りませんね。残念,ここで不合格です。
昔書いてたものを適当に。