No.188592

カリンの旅4

前回で一区切り、今回から舞台が少し移ります。
4人の関係は大体こんな感じで……。
ちなみに扉絵がついたからといって挿絵が増えたりすることはありません。
■前⇒http://www.tinami.com/view/188426
■次⇒http://www.tinami.com/view/188794

2010-12-08 13:15:56 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5630   閲覧ユーザー数:4568

■※※※注意事項※※※■

 

 

 

・素人故の文章力不足。

・原作設定の崩壊。

・キャラの性格崩壊。

・浮き沈み無しのグダグダ文。

・笑い無し、涙なし、ポロリもなし。

・和兎、行き当たりばったり感の変わらないただ一つの駄作者

 

 

 

上記の中に「ねーよw帰れw」と思われた方は、今すぐPCの電源をお切りください。

それ以外の方は、つまらない時間を過ごす覚悟をした上で、賢者の心境でお読みくだされば幸いです。

 

 

 

 

 

 ――数日前。

 

「お疲れ様です、華琳様」

 

 終戦の証として、三国の同盟を終えたこの日。

 一通りの行事を終えて、夜になった頃、最初に話しかけてきたのは秋蘭だった。

 

「あなたもね、秋蘭」

 

 石畳が鳴らす足音が近づいてくる。

 彼女の気配が後ろにまで近づいたところで、その音はやんだ。

 

「色々あったけど、全て終ったのよね」

「はい」

「…………驚いたわよ。敗北した私に、魏を任せるですって。ふざけるにも程があるとは思わない?」

「それは……。華琳様以外に、仕えるつもりはありませんから。私も姉者も。皆も」

「当たり前よ。あなたたちはずっと私を見てきたんだもの」

「えぇ」

「――――……と、思っていたのだけれど」

「え?」

「失望させるようで悪いけれど、今は少し分からなくなっているの」

「分からない、ですか?」

「私は、王になりたかったのか、王でいたかったのか。それとも別の――……」

「華琳様……」

「時間がほしい。今の私が何者なのか、理解する時間が――」

 

 

 ――――……。

 ――……。

 ……。

 

 

 

 

 夜。

 まさかこの旅初めての野宿がこんなことになるとは夢にも思わなかったわ。

 

「ちょっ、それ俺の魚やんけ!」

「む?おお、そうなのか。それは魚もきっとよろこんでるはずじゃ!」

「どういう意味や!」

 

 起き抜けの最初に聞こえた声がこいつとはね……。

 男の名前は及川佑。

 字を知らないという変わった奴。いえ、コイツの場合、それ以外の要素のほうがおかしいわね。

 霞と似た言葉を使うから同じ土地の生まれかとおもったけど、それだけは断じて認めないわ。

 霞とこんな男が同郷であってたまるものか。

 

「うん?どないした?あ、やっぱり俺に惚れた?」

「寝言は死んでから言いなさい」

「死んだらなんもいえるかーいっ!ってまさかボケたん!?孟ちゃんがボケたん!?」

 

 名前を名乗るわけにもいかず、かといって真名なんて教えられないし、字のほうだけ名乗ったわけだけど。

 しかしなんなの。この喋り方はみんなその呼び方で統一されているというの?

 

「……佑。あなた随分口が回るわね」

「そら関西人は口が命やからな」

「その場所も聞いたことが無いわ。そこがあなたの郷なの?」

「いや、生粋の江戸っ子や」

「美羽、七乃、私……会話がしたいわ」

「佑さんを捨てれば早いかとおもいますよ~」

「あはは、張勲ちゃん冗談きついわ~」

『…………』

「あ、あれ?」

 

 七乃の目は笑っていない。

 ああいう七乃は昨日からたまに見るけれど、全部美羽絡みなのよね。

 もしかして私も同じような目で見られていたのかしら。

 

「け、けど面倒なもんやなぁ、その真名?っていうの。教えたらあかん名前か」

「私達にとっては当たり前の事だもの。面倒だとは思わないわ。寧ろ真名が無いというほうが異常なのよ」

「そんなもんか」

「……そろそろ眠りなさい。明日に疲れが残っても知らないわよ」

「あぁ、そやな。…………おきたら誰もおらんてことないよな?」

「あら、思ったより頭は回るのね」

「図星かい!」

「冗談よ。夜は静かに過ごしたいのよ、私はね」

「最初っからそう言うてくれたらええのに……」

「何か?」

「おやすみなさいませぇ!」

 

 佑はそれから急に動かなくなった。寝入りは神がかっているほど早いようだ。

 

「――で、七乃。こうして呼んでいる訳だけど、本当によかったの?」

「かまいません。美羽様と同じくお世話になってしまったわけですし」

「不本意と言いたげね」

「本音は隠せませんかねぇ」

「隠そうとしていないでしょうに」

 

 不満があるなら教えなければいいとおもうのだけど。

 美羽が強制したわけでもないのに、不思議な子だわ。

 

「ん……。ん……」

「美羽様、こちらへどうぞ」

「んむ……」

 

 振り子が縦になったように、美羽の首はこくこくと揺れている。

 見かねて七乃が美羽を膝へ招くと、美羽の意識はあっさりと落ちていった。

 

「寝る子は育つというけれど、寝すぎる子は一周して馬鹿にでもなるのかしら」

「美羽様は早起きですから大丈夫ですよ」

「そう。なら、いいのよ」

 

 あっさり眠る二人を見て、少し美羽が心配になったが、七乃が見ている限りはある程度は大丈夫だろう。

 別の意味で心配ではあるが。

 

「ところで魚はあと4つはあったはずだけど」

「華琳さんが寝ている間に佑さんが2つ食べてましたよ?」

「…………やっぱりここで捨てていこうかしら」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

◆ ◆ ◆

 

 

 

 一夜明けて、翌日。

 

「そ、そこはあかんて~。ら、らめぇ~~……むにゃむにゃ」

 

 身悶える佑を見て、改めてこいつを捨てる決心を固めた。

 七乃は七乃でしっかりと美羽の目を塞いでいる。

 

「な、七乃?何も見えないのじゃ~」

「美羽様、みてはいけません」

「そうなのか~?」

「はぁ……行きましょう。変態を連れる趣味はないわ」

「は~い」

「うん?よいのか?」

「美羽様?そういう時は『及川ェ……』っていうんですよ?」

「わかったのじゃ!」

「七乃、変な事教えないの」

 

 何の因果か、次の場所まで共に行くことになった二人をつれて、私は次の宿を目指す。

 村や街でなくとも、このあたりには個人で屋敷を構える変わり者もいるでしょうし。

 一夜過ごしてみて、三人というのは思いのほか退屈しないものだとわかった。

 長く一人で過ごすことを考えたら、もう少しこのにぎやかさがあっても悪くない。

 

「――ってまたんかい!何存在抹消してくれてんねん!」

「あら、おはよう、佑」

「おう、おはようさん――とちゃうわい!昨日図星ったくせにガチで実行すんなっちゅうねん!」

「うるさいわね。朝から叫ばないで頂戴。頭に響くわ」

「ぐぐぐ……なんちゅう女や……」

「昨日は俺に惚れた?とか言っていた奴の言葉とは思えないわね」

「ふん、昨日は昨日や。日々進化する男、及川佑とは俺のことやからな!」

「…………死ねばいいのに」

「うん?何て?」

「――っ。もういいわ、いくわよ」

「あ、今舌打ちしよったな!?」

 

 喚き散らす佑は放置して、歩を進めることにする。

 いい加減進まないとまた野宿になりそうだものね。

 

「いいですか、美羽様。あれが『ツンデレ』というものですよ」

「ふむふむ」

「七乃、いい加減にしなさい」

 

 

 

 それから半刻ほど歩いたところで、美羽が疲れたために一度休息をはさむことになった。

 予想通り、少し歩いたところに庵があったので、そこを訪ね、戸を叩くと子供が一人、中からでてきた。

 

「失礼、ここの主人はいらっしゃるかしら?」

「…………ちょっと待ってて」

 

 ととと、と軽い足音を立てながら、忙しなく子供は中へ戻っていく。

 

「ふぅん」

「何か?」

「自分の事やから、『選びなさい。私達を中へ入れるか、ここで死ぬか』とか言うと思ったんやけど」

「そんな非常識な事いうわけないでしょう」

「さっき非常識な事しようとしとったやろ!」

「だから、いちいち大きな声を出さないでって……」

 

 と、中からの気配に言葉を遮られた。

 現れたのは細身で長身の男だった。

 男女の体格差は理解しているけれど、首が疲れるほどというのは勘弁願いたいわね……。

 

「お待たせしてもうしわけありません。集中すると周りが見えなくものでして」

「急に訪ねたのはこちらなのだから、非はこちらよ。邪魔をしてしまったわね」

「構いませんよ。それで、本日はどのような用向きで?」

「旅を続けている途中で連れが疲れてしまって。一時の間、屋根をお借りしたいのだけど」

「そうでしたか。それは大変でしたでしょう。どうぞ、こちらへ」

 

 男は半身引いて、中へと招き入れるよう身振りする。

 

「美羽、もうすぐ休めるわよ」

「あうぅ~……」

 

 七乃の背中でしな垂れる美羽は力なく手を振っている。

 女性の七乃が美羽を背負う理由は……言わなくても分かるわね。

 男の案内に連れられ、中へと入る。

 古い造りのようだが手入れはされていて、綺麗な建物だった。

 一日砂地に晒されていたせいか、床にあがった途端底知れぬ安心感が浮かび上がってくる。

 

「やっと落ち着けるわね」

「そうですね~。美羽さ――」

「あっあぁ~~~。もう疲れたわぁ」

「…………」

「うん?どないしたん?急にだまりこくって」

「なんでもないわ」

 

 四人いるのを考えてくれたのか、案内してくれた部屋は思ったよりも広かった。

 

「女性の方はこちらへどうぞ」

「ありがとう」

「ん、女性?俺は?」

「男性の方は別室がありますので、こちらへ」

 

 主人は佑には別があると次の場所へ案内をはじめる。

 

「俺だけ別!?」

「普通でしょう?野宿の時は仕方ないとはいえ」

「くっそ~、覚えとれよ~!!!」

「見事な捨て台詞ですね~」

「ななのぉ……」

「あ、美羽様」

「もう休んでいいわよ、美羽」

「うむぅ……」

 

 美羽を床に降ろしてやると、冷たい床が心地いいのか、すこし楽になったようだ。

 気が抜けたのもあって、私と七乃もその場に腰をおろした。

 

「そういえばあなた達、御遣いをどうとか言っていたけれど、あれはどうなったの?」

「あぁ~。それがですね~。御遣いの名声を利用してまず昨日の街の市場を押さえたらどうか~というのが狙いだったんですけど」

「えぇ」

「美羽様の蹴りが警備の方どころかその計画そのものを壊してしまいまして」

「……なるほどね」

「おまけに頼りの御遣い様は佑さんですから」

「アレじゃあね」

「はい。アレはちょっと」

 

 あんな小さな街に拾われて今こうして逃走真っ最中なわけだから、名声もなにもあったもんじゃないわね。

 似非占い師の世迷言のほうがまだ信用に足るわ。

 

「どうでもいいけれど、外が静かね。佑のことだから騒ぎ散らすと思っていたけれど」

「案外一人だと不安でしょうがない人なのかもしれませんねぇ」

 

 そういえばそんな事も言っていたわね……。

 

「……すこし散歩にいってくるわ」

「心配ですか?」

「散歩よ、道の把握も兼ねてね。へんな曲解しないで頂戴」

「ふふふ」

「美羽の事お願いね」

「任されました~」

 

 部屋を出て、先ほど主人が向かった道を辿る。

 といっても廊下なんて一本道なのだから、それらしい扉があるところまで歩くだけなのだけど。

 それにしても個人の所有にしては随分ひろいわね。

 元貴族だったりするのかしら。

 

『……!!……!!』

 

 と、歩いていると明らかに一箇所だけやかましい扉があった。

 はっきりとは聞こえないけど、何を騒いでいるのやら。

 

「――……佑?人の家なのだから少しくらい押さえて……」

「サタデーナイトフィーバアアアアアアァアアアッ!!!!………あ、あぁぁ……?」

 

 右手の人差し指を腕ごと天井に突き上げ、左手は腰に。

 随分細身になったとおもったら、服は全部脱ぎ捨てていたのね。

 ずいぶん開放的な遊びだこと。

 

「…………」

「…………」

 

 …………。

 

「邪魔したわね」

 

 扉を閉める。

 

◆ ◆ ◆

◆ ◆ ◆

 

 

 

「待ってえええええええ!!!??このまま行かんといてえええ!!これには茶碗の裏側の溝くらい深い理由があるんやあぁ!!」

「知らないわよ!そんな浅い理由!!」

「頼むぅぅぅ!!!袁術ちゃんにだけはあああ!!!」

「言えるわけが無いでしょう!あの子の教育に悪すぎるわ!!」

 

 主人に相談してみましょう。こいつを引き取ってもらえないかどうか。

 なんなら桂花に連絡して……と、それはまだ駄目だわ。とても会話になるとは思えない。

 

「おや、どうかなさいましたか?」

「え?い、いえ、なんでもないのよ?中を少し見ておこうと思って……」

『……!……!』

 

 ええい、うるさい。

 

「ふふ。にぎやかな方ですね」

「そ、そうね……」

「そういえば、部屋の前にきちんと案内しておくべきでしたね。では、順に説明していきますので、こちらへどうぞ」

「えぇ、ありがとう」

 

 やはり馬鹿は馬鹿だったようだし、このまま案内してもらうのもいいわね。

 まぁ、長居するつもりはないのだけれど。

 

「美羽様、もういいんですか?」

「うむ、七乃、華琳はこっちへいったのじゃな?」

「はい、中を見て回るっていってましたけど」

 

 二人が通る直前、目の前の扉が突然開いた。

 

「だからパピヨンが蝶サイコー――って、あら?」

「お、佑ではな……い……か……?」

「え、えんじゅ――」

「佑さん」

「……はい」

「美羽様の目を穢しましたね?」

「……この場合、悲鳴あげるのは俺のはずよね?」

「えぇ、間違ってませんよ」

「で、ですよねー。じゃ、俺はこれで……」

「羞恥が理由ではありませんけれど、ね」

「え…………?」

 

 

 

 

 

「アァァァァアアアッッ――――!!!!!」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「おや……?何か聞こえたような」

「たぶん気にしなくて大丈夫よ」

「ふむ、まぁいいでしょう。こちらは書斎になってます。私が作業をしてることが多いので、あまり用のない部屋でしょうが」

「作業?」

「物書きなどをしているものですので、こんな場所が必要なのですよ。お恥ずかしながら」

「いえ、素晴らしいことだと思うわよ。仕事をする上で環境を整えるのは労働者の義務でしょう。それが精神状態に関わるものならば特にね」

「そう言ってもらえると救われます」

「当然の事を言っているだけよ。すれ違いざまの独り言とでも聞き流してくれて構わないわ」

「ふふ。では、案内はここで最後になりますので、後は夜までどうぞお休みください。食事を用意しておきます」

 

 主人はそう言って私の横を通り過ぎ、奥へと姿をけした。

 そんな主人の後姿に、何か違和感を感じたが、結局はわからなかった。

 

「…………別に宿を構えているわけではないのよね」

 

 待遇の良さは前の街の宿よりもいいくらい。

 

「気のせいならいいのだけどね」

 

 

 

◆ ◆ ◆

◆ ◆ ◆

 

 

 

 夜。

 

「ヒャッハー!飯やー!」

「いちいち騒がしいのね」

「おかしいですね。二度ほど殺したはずなんですが」

「一回や二回殺したくらいで俺が死ぬと思ったらあかんで!」

「あなた何で出来ているのよ……」

 

 それぞれの前には食事を乗せた膳が置かれていた。

 野菜を中心にしているようだけど、見た目は非常に華やかなものだ。

 こんな何も無いところでこんな食事が出るとは思わなかった。

 

「それにしても豪華ね。よかったのかしら?」

「えぇ、久々のお客人ですから」

「もうたべてよいのか!?」

「どうぞ、お食べになってください」

「うむ!いただくのじゃ!」

 

 美羽が食べ始めるのに少し遅れて佑も箸を伸ばす。

 どうやら誰かが食べ始めるのを待っていたらしい。小心者ねぇ。

 

「私もいただきますね~……はむ」

「では、ごゆっくり」

 

 主人は全員が食べ始めるのを確認して、ゆっくりと部屋を出て行った。

 足音が聞こえなくなった辺りから、予定調和のごとく佑が口を開いた。

 

「おお、結構いけんなぁ!」

「もう少し綺麗に食べたらどう?」

「んな小奇麗に食うとったら飯がまずくなるっちゅうねん。お、これも旨い」

「はぁ……」

 

 昨日は人の魚にまで手を出すし、今日はこれだし。

 次の街で離れないと身が持ちそうに無いわね。

 皆美味しいといっているし、私も――……

 

「…………」

「どうかしたんですか、華琳さん?」

「いえ、なんでもないわ」

 

 私も、料理を口に含んだ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

◆ ◆ ◆

 

 

 

 部屋の騒ぎ声が聞こえなくなり、庵全体が静かになる。

 

「……で、久々の獲物はどうなんだ?」

「なかなか上物だ。あの小さい子なんか特にな」

 

 主人の男は美羽を指してそういう。

 先ほどまでとは口調も変わり、下卑た笑いを作り上げる。

 

「け、てめぇの趣味は理解できねえぜ」

「ふ。貴様もそうかわらんだろうに」

「まぁいい。オイお前ら、寝てるつっても調子にのるんじゃねえぞ。せいぜいモノが噛み切られねぇように注意しなぁっ!」

 

 男は後ろに身を伏せていた男達に叫び散らす。

 

「――斬られるのがモノで済めばいいわね」

「なぁっ!?」

 

 扉がひとりでに開く。

 男達は目を見開き、それぞれが別々の反応を見せ、驚く。

 

「な、てめぇ、寝てるはずじゃねえのか!」

「そんなはずは、たしかに食べているのを確認して――」

「飲み込まなければどうという事は無いでしょう?まぁ、口に含んだ程度で効果のある毒ならばそれまでだけど、ここまで手を回している奴らが命を目的にするとは思えないしね」

「…………」

 

 苦い顔をする主人の隣で、男は口を閉ざした。

 

「どうかしたのかしら?」

「ったく、寝てたほうが幸せだったのになぁぁぁぁっ!!」

「――っ!!」

 

 叫び散らし、男は突然その巨体を私へと向け、突進する。

 すぐに飛び退き、それを交わすが、男の巨体は中途半端に開いた扉を完全に吹き飛ばした。

 

「野郎共!!遠慮はいらねぇ!!容赦せず喰っちまえ!!」

『うぉおおおおおおお!!!』

 

 何人いたのか、廊下からは複数の叫び声。

 

「な、ななな、なんじゃ!?なんなのじゃお前らは!?」

「きゃぁっ!ちょ、どこ触ってるんですか!もう、このぉっ!!」

「ちょ、ちょい待ってや!何で俺に迫るねんな!」

 

 中にはおかしい奴もいるらしい。

 さっきの男は七乃に襲い掛かっている。すぐさま助けるべきなのだろうけど、それよりも気になることは。

 

「なんで私に誰もこないのよ!!!」

「幼女じゃないし」

「男じゃないし」

「胸ないし」

 

 なんでそんな特殊性癖な奴しかいないのよ。

 胸はまだしも、幼女と男ってなんなの。どうしようもないじゃない。

 

「~~~っ!!!」

「幼女ハァハァ……」

「おっぱいぱ~い!」

「やらないか」

 

 ――ぽんぽん。

 軽く背中を叩く感触。振り向くと、最初に出てきた子供がいた。

 そういえば、どうしてこんな奴らのところに子供が?

 

「……精進しろよな」

「……殴っていいかしら。というか殴るわね」

 

 中々いい音がなった。

 

「うわあぁぁぁん!!!」

『頭ぁぁっ!!?』

「頭!?」

 

 どういう組織なのよ、これ。

 

「七乃~助けてほしいのじゃ~~」

「美羽様ぁ!」

「あかん!あかんて!じゃれんのは好きでも掘ったり掘られたりは勘弁や~!」

 

 相変わらずあの三人は襲われてるし。

 とうか佑は男なのだから、少しくらい応戦してみせたらどうなのよ。

 

「てめぇ、よくも頭を!この趣もないド貧乳女がぁ!!」

 

 ――いや……そう。

 

「そうなの……いえもういいわ。そうよね。きっとそう。あなた達全員で私を馬鹿にしているのね……」

「え、なんかやばいことになってへん?」

「華琳がくすんで見えるのじゃ……」

「龍の逆鱗を引きちぎって塩を塗りたくる所業ですね……美羽様、こちらへ。巻き添えをくらいます」

「う、うむ……」

 

 なんだか部屋が静かになったけれど、もう関係ないわ。

 

「だから男というのは好かないのよ。物の本質をまるで理解していない」

「な、なんだ、てめぇ……!」

 

 胸に忍ばせている短刀を取り出す。

 本来ならば愛用の鎌を持ちたいところだけど、今は仕方が無いわね。

 

「この場の男共、皆聞くがよい。わが名は曹孟徳……。わが覇道の真髄、その身に刻めぇぇぇええええ!!!!」

「え、それってもしかして俺もはいってるん!?」

「死ねええええええええ!!!!」

 

 その夜、大陸の一部には男達の阿鼻叫喚が鳴り響いていたが、ド田舎のおかげで誰も聞くことはなかった。

 

 

◆ ◆ ◆

◆ ◆ ◆

 

 

 夜が明けて。

 

「あぁ……信じられへん。キレたら見境なしかい」

「だからこうして身を低くして謝っているでしょう。いい加減許しなさい。器の小さい奴ね」

「おのれが身ぃ低いんやったら世の中の人間皆地面にうまっとるわ!!!」

「ちゃんと峰打ちにしておいたでしょうに」

「峰打ちっちゅうんはな、刃で切らんだけで鉄の棒でなぐっとんねんから、結局めちゃくちゃ痛いんじゃ!」

「いいからもう黙りなさい。首撥ねるわよ」

「おうおう、やってみぃや!化けて出たるからな!!」

 

 朝早くだが、あんな男が半裸で積みあがっている場所にいつまでもいるわけにはいかず、私達は庵を出発した。

 あいかわらず朝は寒い。

 寒い上に後ろの男はうるさいのだから、最低の朝といえるわね。

 

「なぁ、七乃?結局昨日の奴らは何がしたかったのじゃ?」

「なんだったんでしょうね?」

「ふむぅ……よくわからんが、七乃!」

「はい?」

「そろそろ蜂蜜が恋しいのじゃ……」

「次の街まで我慢してくださいね~」

「あうぅ」

 

 次は蜂蜜のある街が目的地にでもなるのかしら。今向かっているところにあるとも限らないというのに。

 

「七乃、『ドひんにゅう』とはどういう意味じゃ?」

「はい、それはですね?」

「七乃!!!先を急ぐわよ!!!!」

「ふふふ。了解です~。美羽様、急ぐみたいなので、その意味はまた今度ですね」

「うむ、わかったのじゃ」

「ど貧乳……くくく……。ど貧乳やて」

「七乃、次の街では墓を用意してあげて頂戴」

「わかりました~」

「冗談やん!」

 

 やっぱりこいつは捨てるべきだわ。

 ――絶対に。

 

 

 

 

■あとがき(?)

 

 その場その場で単発を考えるほうがあっているのか、筆が進む和兎です。

 絵の調子が悪い時は文章を書かざるを得ない、というわけではないのですが。

 なんだか華琳が原作よりもはっちゃけているような気がします。いろんな意味で。

 もう少しカリスマをだしたいなとか思いつつ、可愛さもだしたいという。

 なかなかむずかしいですね。

 ちなみに一刀でなく、及川を選んだ理由は、自分の中では一刀×華琳の話は、以前投稿させていただいた話で完結してしまっているので、新鮮さも求めて彼にしました。

 このお話ではボケ担当になってます。

 正史での一刀との関係は原作準拠。彼の好みはたぶん桃香みたいなタイプですので、現段階では華琳とはなかなかウマが合いません。

 今回きづいたことは、及川の名前は意外とカッコイイということ。(オイカワ=タスク)

 思ったのは自分だけかもしれませんがw

 それでは、また機会があれば。

 

 

 ※追記:華琳に怒られたおかげで反省した子供は組織を解散しました。

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
38
3

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択