No.187208

真恋姫無双~愚者を守る忠義の者~ 第6話 絶望と無力

ちいたさん

投稿です。生暖かく見守ってください。

2010-11-30 01:45:33 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:11930   閲覧ユーザー数:9357

この作品は原作のキャラの性格が変化したり時代背景が変わったりします。なので原作好きのかたまた特定のキャラが好きな方はスルーしてください。

 

  「『冥道覇月』」

一刀から放たれた斬撃が相手をのみこんでいった。一刀はそのまま長刀を鞘に戻していく。

愛紗「はぁ……はぁ……がはっ……大丈夫か……雛里」

雛里「……愛紗さん?」

雛里は愛紗が庇ったことにより無傷であった。雛里が見たのは愛紗や星といった我が軍が誇る将がボロボロになって倒れている姿であった。

星 「……ぁ……」

翠 「……ぅ……」

雛里「う、嘘……」

信じられない光景にそう呟いた雛里。そんな雛里の前に無表情の一刀が立っていた。

  「嘘ではありません……これが現実です」

愛紗「逃げろ……雛里」

何とか声を振り絞った愛紗だが、雛里は目の前の一刀を見て動けずにいた。

  「見ていなさい……これが絶望です…」

愛紗「ま、待て……」

星 「や、止めろ……」

動かない体を必死に動かそうとする愛紗たち。しかし、一刀は止まることはなかった。

  「そして、自分の無力さを嘆きなさい」

雛里「あっ……」

一刀が振り下ろした冥天が雛里を斬る。斬られた雛里はそのまま前のめりに倒れる。

愛紗「雛里ーーー!!!」

星 「貴様ぁぁぁ!!」

前のめりに倒れた雛里はピクリとも動くことなく、その身体から徐々に血溜まりができる。

 

蒲公英「いやぁぁぁぁ!!雛里ーーー!!」

桔梗「北郷ぉぉぉぉ!!」

動かなくなった雛里を見てそれぞれが声を出す。そんな様子を一刀はただ無表情で見ていた。

恋 「お前……絶対にゆるさない!!」

恋が力を振り絞って立ち上がると怒りの表情で一刀を見る。

  「驚いた……大した気力です……さすが飛将軍と言ったところでしょうか」

恋 「があぁぁぁぁぁ!!!!」

方天画戟を一刀目掛けて振り下ろす恋。

「はっ!!」

一刀は冥天を振りぬいて、恋から武器を弾き飛ばした。そして、そのまま恋のお腹に掌底を叩き込む。

恋 「がはっ!!」

一刀の攻撃を受けた恋はそのまま吹き飛ばされてそのまま意識を失う。そこで一刀は動かない雛里を担いで歩き始めた。

紫苑「待ちなさい!!雛里ちゃんをどうするのですか!!」

  「………」

紫苑「あなたは死者を辱めるほどまで堕ちたのですか!!」

紫苑の言葉に何も答えることなく一刀はそのままその場を去っていく。

愛紗「……何て……無力なんだ……」

翠 「くっそぉぉぉぉぉ!!!」

一刀が立ち去った後、愛紗達の声が虚しく響き渡った。

 

張任「おらぁぁぁ!!」

鈴々「にゃぁぁぁ!!」

張任は先程からずっと鈴々と打ち合っていた。すでに鈴々と何十合も打ち合っている張任は所々に傷をおっていた。

張任(さすが…燕人・張飛……なんちゅう怪力だ)

鈴々(このおっちゃん……すごい戦い慣れしているのだ)

鈴々の重い攻撃を斬鉄でいなしていく張任だが、なかなか攻撃を繰り出せずにいた。一方の鈴々も先程から攻撃をいなされてばかりで決め手に欠けていた。

張任「はぁ……はぁ……」

鈴々「……おっちゃん…かなりやるのだ」

張任「それはどうも」

ニヤリと笑う張任だが、このまま戦いが長引けば自分が負けることを理解していた。そんな張任に伝令がやってくる。

伝令「張任様!!」

張任「なんだ!!」

伝令「北郷様より伝令です!!全軍、退却せよとのことです!!」

張任「あん?…退却だと………ちっ、大将の命令なら仕方ねえな」

そう言って鈴々に背を向ける張任。そんな張任を見て鈴々が蛇矛を向けた。

鈴々「鈴々から逃げられると思っているのか?」

張任「確かに普通なら逃げられないだろうな……」

そう言って懐に手を入れた張任は何かを地面に叩きつけた。

鈴々「にゃっ…!!」

白い煙が鈴々を包み込んでいく。そこから張任の声が聞こえた。

張任「あばよ!!」

鈴々「待つのだ!!」

白煙が消えて鈴々が前を見ると、すでにそこには張任の姿はなかった。

 

一刀は張任達と途中で合流して成都に戻った。一刀はそのまま張任と共に劉璋のもとに向かう。一刀が劉璋の前に到着すると、劉璋は左右に女中を控えさせて、お酒を飲んでいた。女中達は劉璋が促す度にその器にお酒を注いでいた。そんな劉璋の前に一刀は跪くと報告を始めた。

 

劉璋「……ほぉ……鳳雛を討ったのか」

一刀が報告すると劉璋はそう言った。一刀の報告に上機嫌に酒を飲む。

  「はい……その代わりに我が軍も多大な被害を被りましたが……」

片膝をついた一刀はその場で頭を下げる。そんな一刀を見て劉璋はさらに酒を飲む。

劉璋「ふん……雑兵のことなどどうでもよい……」

  「…………それは……」

劉璋の言葉を聞いて一刀は俯き掌を強く握り締める。張任もまた俯いたまま奥歯を噛み締める。今回の戦いにでたのは全て劉璋ではなく一刀の兵であった。自分の部下が死んでそれをどうでもいいと言われて張任は怒りに震えていた。

劉璋「まあ…いい。そうだ……宗伯…何かやろう」

  「はっ…?」

いきなりの劉璋の提案に一刀は戸惑う。戸惑う一刀に劉璋はさらに続ける。

劉璋「だから……お前に褒美をやろう…」

  「いえ……私は……」

劉璋「そう遠慮するな…こっちに来い」

そう言って一刀に手招きをする劉璋。

  「………御意」

劉璋の前で一刀はその場で再び片膝をつき、劉璋を見る。

劉璋「宗伯よ……今回はよく頑張ったな…次も期待しているぞ」

  「いえ…勿体無きお言葉です」

劉璋の言葉を聞いて一刀は頭を下げる。劉璋が一刀にかける優しい言葉やその顔にその場にいた一刀以外の全員が驚く。お酒を飲んで気が良くなっているのかいつもより陽気であった。

 

劉璋「これが……褒美だ」

女中「あっ……」

劉璋はそう言うと女中からお酒の入った容器を取ると、その中身を一刀の頭に流していく。

劉璋「最高級の酒だ……美味であろう」

  「は………い………」

頭からお酒をかけられた一刀はそのまま頭を下げていたがその声は若干震えていた。

劉璋「ん…どうした?あまりの美味に声が出せないのか?」

張任「っ!!てめえ!!」

おもしろそうな顔をした劉璋の言葉に激怒した張任が立ち上がり、腰の斬鉄に手をかける。しかし、酒にぬれた一刀は立ち上がると張任を制止させた。

  「張任……止めなさい」

張任「なっ!!大将!!」

  「止めなさい」

張任「っ……すいやせん…大将」

一刀から発せられる殺気に張任がその場で膝をついた。そして、一刀のまた劉璋の前に膝をつく。

  「私の部下が申し訳ございませんでした……責任は全て私が……」

劉璋「なに……気にするな……今回は不問にしてやる」

  「寛大なお心遣い感謝いたします……」

そこで劉璋が一刀に近づくとその肩に手を当てて顔を近づけた。

劉璋「だから……俺を失望させるなよ……宗伯」

劉璋「ふはははははははは!!!!」

一刀の耳でそう囁くと劉璋は笑いながらその場から去っていった。一刀はその場から動くことなくじっと地面を見ていた。

 

自室に戻った劉璋はそのまま寝具に腰をかけて、自分の両手を見つめる。

劉璋「…………」

そこで立ち上がった劉璋はある箱を取り出す。そして、その箱を開けると中には短い刀が入っていた。

劉璋「…………」

劉璋はその短刀を手に取り、おもむろにそれを鞘から抜き出した。その刀身に映る自分の顔を見る劉璋。

劉璋「一刀……貴様は本当に愚かだな……」

自嘲気味に呟いた劉璋は短刀を鞘に入れて、再び箱に戻した。

 

後書き

お久しぶりです…今回は一応戦いが終わりました…。相変わらず一刀が強過ぎるwでも劉璋にお酒をかけられたり一刀が不憫です。あと雛里ファンのみなさんごめんなさい…本当に心よりごめんなさい…。私は決して雛里は嫌いではありません…これだけは言わせてください。

ではみなさんまた

 


 
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