No.181606

真・恋姫無双 萌将伝・外史 ~華雄編~

狭乃 狼さん

・・・何故だろう。

刀香譚を書かなきゃいけないのに、こんな話が浮かんでしまった。

最近、時々意識の無いときがあるし・・・。

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2010-10-31 14:56:45 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10199   閲覧ユーザー数:8992

 「で?私にこれを着ろ、と?」

 

 「そ。ぜひぜひ華雄にこれを着てほしいんだ♪」

 

 にこにこと。

 

 満面の笑みで、一刀は華雄にあるものを差し出していた。

 

 「し、しかしだな、いくら北郷の頼みとはいえ、こ、こんなものが私に似合うだろうか」

 

 その、一刀が手にしているものを見ながら、顔を赤く染め上げて、華雄は躊躇の表情を浮かべる。

 

 「大丈夫!!絶対に似合うって!!てか、これは華雄にしか着れない!!いや、華雄が着るために、この世に生まれてきたんだ!!」

 

 そう言って、目を輝かせながら、一刀は華雄に迫る。

 

 「そ、そんな大げさな・・・。でも、お前がそこまで言うなら、い、一度ぐらい、着てみてもいいかも・・・・・・」

 

 「本当!?」

 

 「・・・頼むから、似合わなくても、笑わないでくれよ?」

 

 一刀の手から”それ”を受け取り、やはり、恥ずかしそうな表情で、そんなことをつぶやく。

 

 (これだけでも十分に可愛い!けど、やっぱり俺はあれを着た華雄が見てみたい!そのために、徹夜までして、職人さんの所で頑張ったんだからな!)

 

 ぱたり、と。

 

 自室に入る華雄が扉を閉めた後、(徹夜で)充血した目をこすりながら思考している一刀。

 

 そして、三十分も経った頃。

 

 「・・・ほ、北郷?そこに、いるの、か?」

 

 「ああ、いるよ。着替え、終わった?」 

 

 「あ、ああ。一応」

 

 「・・・じゃ、何で出て来ないのさ?」

 

 「・・・・・・・から、だ」

 

 「え?」

 

 「は、恥ずかしいからだと言ったんだ!・・・頼むから、本当に、笑わないでくれよ?」

 

 キィ、と。

 

 恐る恐るといった感じで、部屋の扉が、ゆっくりと開かれる。

 

 ゴクリ。

 

 一刀が思わず、つばを飲み込む。

 

 そして、開かれた扉の、内側に立っていたのは。

 

 

 

 「・・・・・・・・・・・」

 

 「な、何で黙ってるんだよ?・・・お、おかしいなら笑ってくれていいんだぞ?」

 

 笑うなんてとんでもない。

 

 一刀はそう思った。

 

 だが、言葉にできなかった。

 

 穢れを知らぬ、その真っ白な上着。

 

 まるで、本人のその頬のように、美しい紅に染まった、その袴。

 

 その小さな足に、まるで、やさしく包み込むかのように履かれた、その草鞋。

 

 それらががすべて調和した、完璧なる美。

 

 だからこそ。

 

 一刀は思わず、その姿に魅入った。

 

 華雄の、巫女装束姿に。

 

 そして、その言葉を、無意識に、口にしていた。

 

 「・・・・・・・・・・きれい、だ」

 

 「!!・・・・・・・」

 

 赤かった頬をさらに紅くして、華雄はその言葉に思わず固まった。

 

 「とっても綺麗だ、華雄。・・・俺の見立て以上だよ」

 

 「・・・・・・あ、ありが、とう・・・・」

 

 さらに紅くなってうつむき、もじもじとする華雄。

 

 (・・・あ。まじでやばい)

 

 

 

 その華雄の姿に、思わず抱きしめたくなる衝動を、理性を総動員して抑えつける。

 

 「・・・そ、それじゃあ、そろそろ行こうか」

 

 「ほ、本当にこれでいくのか?」

 

 「当たり前だろ?さ、早く行こう!」

 

 「ちょ!おい!」

 

 華雄の手を掴み、駆け出す一刀。そして、その握られた手を見ながら、恍惚の表情となる華雄。

二人が向かった先は、とある場所にある林。ちなみに、一刀の手にバスケットがひとつ、握られていた。

 

 「んー、いい天気だ!絶好のピクニック日和だな!」

 

 「そ、そうだな。・・・うん、最高のぴくにっく日和、だな」

 

 普段なら、一刀の使う英語に首をかしげる華雄なのだが、このときばかりはさすがに、緊張と昂揚が優先されたらしく、一刀の言葉にそのまま同意する。

 

 「さてと。場所はここらでいいかな?さ、お弁用にしようか?華雄手作りの、お弁当に、さ」

 

 「あ、あまり味は期待しないでくれよ。料理なんてめったにしないんだし」

 

 「大丈夫大丈夫。・・・世の中にはさ、食べ物と呼べないものを作る人もいるんだから」

 

 「・・・ああ~、そう、だな」

 

 誰のことかは深く追求しないが。

 

 そして、ござを敷いて食事を始める二人。

 

 「ん!これうまいよ!」

 

 「そ、そうか?なら、こっちのも食べてみてくれないか?・・・ちょっと、自信作なんだが」

 

 「うん。・・・あーん」

 

 「(ぼっ!)あの、その。はい、・・・あ、あーん」

 

 出しまきのようなものを箸で取り、一刀の口へと運ぶ。

 

 「もぐ。・・・はあ~、これもうまいなあ~。華雄って、料理上手だよな。うん、いいお嫁さんになれるよ」

 

 「お!およ、めっ!?・・・・・いや、あの、か、一刀が望むなら、わたしはいつでも・・・」

 

 「ふあ~あ。なんか、おなかが膨れたら、眠くなってきたな。・・・よっと」

 

 「え?!」

 

 ごろん、と。

 

 突然大あくびをしながら、その場に寝転がる。華雄のひざを枕に。

 

 「・・・いや、だった?」

 

 「そ、そんなことはない!・・・おまえこそ、私なんかの膝じゃ、固くて眠れないんじゃないのか?」

 

 「それこそまさかだよ。・・・やわらかくて、とっても気持ちいいよ。華雄のひざ。どんな上質な枕だって、これには勝てないくらい、さ」

 

 「・・・・・・・馬鹿」

 

 こつん、と。

 

 一刀の頭を軽く小突く華雄。

 

 そうして、何をするでもなく、しばらく穏やかな時間が流れる。

 

 

 

 「・・・・・・・わたしは、しあわせだな」

 

 眠っている一刀の顔を見ながら、華雄がポツリとつぶやく。

 

 「・・・・・・・お前の笑顔は、都の、いや、都に居ない他の者たちのものでもあるのに、こうして、今は独占していられる。・・・・この間だけは、わたしは、お前だけの、私で居られる。・・・・・・一刀、愛してる(ポソ)」

 

 「・・・・・・俺もだよ、華雄」

 

 「!?」

 

 眠っていると思い、聞こえないであろうと思って言ったその一言を、自分の膝を枕に眠るこの男は、きちんと聞いていた。しかも、華雄が、他のどんな言葉よりも、最も望んでいる言葉を、その口で紡いだ。

 

 「おれも、君を愛してる。・・・今だけじゃなく、いつでも、どこに居ても、君を、君だけを愛してる。・・・・・だから」

 

 「あ」

 

 ぐっ。

 

 一刀が華雄の顔を、自身の顔に近づけ、そっと、唇をかさねた。

 

 「・・・・・・かず、と」

 

 次は華雄から。

 

 二人は、何度と無く、口付けを交わす。

 

 今このときだけは、お互いだけを、その瞳に映して。

 

 辺りには、虫たちの鳴き声と、綺麗に紅葉した木々のざわめきだけが、静かにこだまする。

 

 「・・・・・・一刀」

 

 「・・・・・・何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・ずっと、ずっと、一緒に居ような」

 

  

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

                                ~ end ~

       


 
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