No.177060

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 拠点

狭乃 狼さん

さて、刀香譚、最後の拠点シリーズ第一弾です。

今回はあえて、無題としました。

タイトルを書くとネタばれが過ぎるんで。

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2010-10-08 10:53:27 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:12463   閲覧ユーザー数:10546

 成都を攻略してから半月。

 

 一刀は現在、船上の人となっていた。その傍らには劉備と張飛、そして華雄の姿もあった。

 

 最新鋭の高速艇、”駿舸・三式”が、その帆を一杯に膨らませ、水上を疾駆する。

 

 「……お兄ちゃん」

 

 不安と焦りの表情を浮かべる兄の横顔を、同じように不安の表情で劉備が見つめる。

 

 (……沙耶、間に合ってくれよ)

 

 その報せが荊州からもたらされたのは、二日前のことだった。

 

 前・荊州牧劉琦の容態が急変し、現在生死の境をさまよっている、と。そして、一刀と劉備に、是が非でも会いたいと、願っていると。

 

 成都に居た荊州組みの一同はその報せに驚き、誰もが一刻も早く、襄陽に向かおうと声を上げた。だが、未だ益州の諸事が全て落ち着いたわけではないので、全員で出向くというわけにも行かなかった。

 

 なので、劉琦の望みに応えるため、一刀と劉備、そして、護衛として張飛・華雄の二人が同行し、襄陽へ向かうこととなった。

 

 「お義兄ちゃん、沙耶姉ちゃんはきっと大丈夫なのだ!お義兄ちゃんの顔を見たら、すぐに元気になるのだ!」

 

 不安そうな義兄を気遣い、張飛が精一杯の笑顔で励ます。

 

 「……そう、だな。きっと、大丈夫」

 

 その義妹に、何とか笑顔を作って返す一刀。

 

 だが、現実は残酷だった。

 

 

 

 成都を発ってわずか三日という速さで、一刀たちは襄陽へと辿り着いた。

 

 しかし、劉琦の病状は、誰が見ても、もはや助からないことは、一目瞭然であった。

 

 「叔父上、あね上、……良く、来てくださいまし、た」

 

 「沙耶、しっかり」

 

 「病気なんかに負けちゃ駄目!ね?!またみんなで、楽しくお茶会しよ!こんな病気なんか、さっさとどっかにやっちゃって!!」

 

 気休め。

 

 そんなことは誰もが解っていた。

 

 だが、それでも言わずには居られなった。一刀も劉備も、その場に居る者全てが、涙をこらえつつ。

 

 「……ありが、とう。お二人、とも。でも、もういいの、です。もう、解っています、から。……それより、お二人に、これだけは、伝えておきた、かったん、です」

 

 「うん。……なんだい?」

 

 「……私の、亡き母は、父上の、実姉、だと言うこと、を」

 

 『…………え?』

 

 突然の告白。

 

 劉琦は、自身の父と母が、実の姉弟だったと、そう告げた。

 

 「……本当、なの?」

 

 「……はい。父上と、母上は、実の姉弟で、ありながら、互いに愛、しあい、結ばれまし、た」

 

 『…………』

 

 一刀と劉備は押し黙った。

 

 劉琦の告白は、自分達の事が言われている様に、聞こえた。

 

 「……なんで、そのことを俺達に?」

 

 「……ふふ。……見ていて、歯痒かったから、です。……お二人に、もっと、自分に、素直に、なってほし、いのです」

 

 「けど!!それは禁忌だよ!?実の兄妹でそんな……!!」

 

 「……誰が、禁忌と、決めたのです、か?……私には、それを理由に、現実から、逃げているとしか、思えません」

 

 息も絶え絶えに声を絞り出し、一刀と劉備を見つめる劉琦。

 

 『…………』

 

 「私の、短い人生で、唯一の、心残り、です。……叔父上と、あね上の、晴れ姿を見れ、なかったことが」

 

 寝台に仰向けになったまま、その瞳に涙を浮かべる。

 

 

 

 「……でも、本音を言えば、私が、叔父上の子を、授かって、みたかった、ですけれ、ど」

 

 「さ、沙耶?!」

 

 「ふふふ。……叔父上、手、を」

 

 一刀にその手を、弱弱しく伸ばす。

 

 「あ?ああ」

 

 一刀がその手をつかむ。

 

 「あね、上も」

 

 「う、うん」

 

 劉備もまた、差し出された劉琦の、もう一方の手を握る。

 

 劉琦はその二人の手を、そっと重ね合わせる。

 

 「……なにも、遠慮はいらないん、です。正直な、想いを、この手のように、重ねてくだ、さい。……わたしの、最期の、お願い、です」

 

 「沙耶……」「沙耶ちゃん……」

 

 

 そして、その日の夜遅く。

 

 前荊州牧、劉琦は、一刀と劉備、そして妹に見送られて、静かに息を引き取った。

 

 安らかな、笑顔を浮かべて。

 

 享年、二十二であった。

 

 

 

 その三日後。

 

 劉琦の葬儀が盛大に執り行われた。

 

 弔問には、大勢の民達とともに、孫家から孫堅と孫策。袁家から袁術と張勲が、それぞれ訪れた。

 

 その葬列を見送った人々の数は、最終的におよそ二十万にのぼった。

 

 わずか二十二年という、短い一生であったにもかかわらず、それだけ多くの人々に慕われていた劉琦の、その人柄を示すものだった。

 

 もし、病に倒れねば、良き為政者として、後世にその名を残したであろう少女は、荊州の全ての人に惜しまれつつ、父と母の元へと旅立っていった。

 

 

 それから七日。

 

 劉琦の喪が明けた、その日の夜。

 

 「……正直な想いを、重ねてほしい、か……」

 

 一刀は自室の寝台に仰向けで横たわり、劉琦も言葉を思い出していた。

 

 そこに、

 

 こん、こん。

 

 扉を叩く音。

 

 「……どうぞ」

 

 「…………」

 

 「……桃香。……どうした?」

 

 部屋に入ってきたのは劉備だった。

 

 「……いま、いい?」

 

 「?……ああ」

 

 体を起こし、寝台に座る一刀。その隣に、劉備が腰を下ろす。

 

 『…………』

 

 訪れる、長い沈黙。

 

 そして、先に口を開いたのは、劉備だった。

 

 

 

 「……あたし、お兄ちゃんが好き」

 

 「!!」

 

 一刀が制する間も無く、劉備が言葉を紡いだ。

 

 「子供の頃からずっと、お兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんしか、私は見てこなかった。そして、これからも」

 

 黙りこくる一刀の横顔を見つめながら、自分の想いをはっきりと言葉にしていく。

 

 「沙耶ちゃんに言われて決心がついたの。もう、私は自分を抑えない。誰に何を言われても、例え周りから白い目で見られようと、もう、この想いを止めることはしない。……お兄ちゃん、愛してる」

 

 「とう、か……」

 

 一度言葉にした想いはもう止まらなかった。一刀に、実の兄に愛を告白する劉備。

 

 それは、一瞬の間だったろうか、永い、時間だったろうか。見詰め合う二人。そして、

 

 「……俺も、桃香を、愛してる」

 

 「!!」

 

 「血の繋がり?んなもの、もうどうでもいい。俺ももう、迷わない。何があろうと後悔しない。この先、ずっと、お前を守り続けてやる。誰を敵に回しても」

 

 ぎゅっ、と。劉備を抱きしめる一刀。

 

 「……嬉しい。夢じゃ、ないんだよね?わたし、お兄ちゃんに、抱きしめてもらってるんだよね?」

 

 「ああ、夢じゃない。……その証拠を、あげる」

 

 「あ……」

 

 重なる二人の唇。

 

 「……な?夢じゃないだろ?」

 

 「うん。……お兄ちゃん、……一刀!!」

 

 ドサリ、と。

 

 一刀に抱きついた拍子に、二人は寝台に横たわる。劉備が上の状態で。

 

 「……これって、逆じゃないのか?普通」

 

 「あはは。……今夜は寝かさないよ?」

 

 「それも俺の台詞だ。……覚悟しとけよ?」

 

 「……うん!」

 

 

 

 

 その翌日。

 

 一刀と劉備の姿を見た一同は唖然とした。

 

 何しろ、二人が堂々と、腕を組んで歩いているのである。

 

 しかも、劉備にいたっては、なぜか歩きづらそうにしているのだ。

 

 だから、一同は即座に理解した。

 

 『ああ、とうとう”やったか”、と』

 

 正直、周りが見ていてやきもきしていたぐらいである(本人達は、気づかれていないと思っているようだが)。

 

 一刀と劉備がくっつかない限り、誰も間に入っていかないよう、協定まで結んでいたほどに。

 

 そしてついに、二人は結ばれた。

 

 それは、皆にとっても、とても喜ばしいことであった。

 

 これで、もう遠慮する必要はないのだから。

 

 その日から、一刀争奪戦がついに始まった。

 

 夜は誰かしらの嬌声が、一刀の部屋から聞こえ、

 

 昼は、それを悟った劉備が、

 

 「カズトノヴワキモノーーーー!!テンチューーーーーー!!」

 

 嫉妬神と化して、一刀を追い掛け回す姿が日常化。

 

 

 一月後、成都へ戻る頃には、すっかりやつれ、(いろんな意味で)ボロボロになっていた一刀であった。

 

 

 

 と、言うわけで、最後の拠点シリーズ、まずは第一弾で

 

 「死ねーーー!!」

 

 うわ!!何する輝里!!

 

 「問答無用ーーー!!」

 

 げっ!!由まで!!ちょっ、何をそんなに怒って、

 

 「解らないとは言わせない!!」

 

 「せや!!一刀を、一刀を」

 

 ・・・・・・ああ。つまり、一刀を”あれ”化させたことか。

 

 「この話を書く前に言ってたじゃないですか!!このお話では一刀さんは種馬化させないって!!」

 

 んなこと言ったっけ?

 

 「とぼける気ぃか。ええ根性しとるな、作者」

 

 あれはあくまでそのつもり、ってイッタダケデスヨ?しかも文章化してもいない楽屋ネタじゃんか。

 

 「……つまり、作者さんとしては、こうなる予定でいた、と?」

 

 そだよ。・・・まあ、かなり悩んだけどね。でも、やっぱり一刀は一刀だよな、と。誰にも手を出さない一刀なんて、と思った次第です。

 

 「・・・・・・なら、これからうちらも、その可能性はあるんやろな?」

 

 そこはそれ、自分で頑張って下さい。・・・・桃香たちが怖くなければ、ですが。

 

 『う』

 

 

 てなわけで、一刀と桃香がついに結ばれました。

 

 近親はらめー!って方、批難囂々なコメントはご勘弁下さいね?

 

 喜んでいただけた方、もしも居たら、たくさんのコメント、お待ちしています。

 

 「次回の拠点は?」

 

 今度は愛紗メインのつもりです。

 

 「・・・やられちゃうの?」

 

 逆にやっちゃうのかも?

 

 「あー、ありえそうやな。思い込んだら一直線やもんなー、あの人も」

 

 

 ではそういうことで。

 

 「またお会いしましょー」

 

 「ほななー」

 

 


 
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