No.163849

Inner Light 2nd Volume

コミケ78 3日目東ヨ-45b「まじかるパステル」頒布予定の、魔法少女リリカルなのはViVidの新刊小説サンプルです。

この作品は後編になります。
前編のサンプルはコチラ
http://www.tinami.com/view/111935

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2010-08-07 00:12:14 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2380   閲覧ユーザー数:2296

 

 

    Inner Light(後編)

 

 

 

 フェイトさんがどうしてここに? キャロは混乱した。

 ヴィヴィオの方を見れば、ヴィヴィオもまた次の言葉が出ないようだった。

「フェイトさん?」

 少女は不思議そうな面持ちでこちらを見つめていた。

 フェイトさんじゃないのかな?キャロは思った。ヴィヴィオと二人で呆然とその場に立ち尽くす。

 少女は、後ろを振り返ると凄い早さでこちらへとやってくる砂埃を見ていた。

「イルカが来る」

 少女は淡々と呟いた。

 黒のバリアジャケットに裏地が赤のマントを羽織っている少女は、キャロが知っているフェイトのものとは少し違っていたが、着ている本人はどこからどう見てもキャロの知っているフェイトそのものだ。おまけに、金色の長い髪を二つに結わえているリボンまで黒。

 でも二人が知っているフェイトと違うのは、その姿がだいぶ小さいのだ。どうみてもキャロの年下のヴィヴィオと同じくらいである。

 キャロがそんな風に考えている間に、イルカ達はキャロ達のすぐ側まで来ていた。このまま何もしなければ、砂の中を泳ぐイルカといえど、イルカの数が多すぎて村が占拠されてしまう。

 少女はキャロの戸惑いを知ってか知らずか、大量の砂埃をあげてこちらに向かってくるイルカの群れに突っ込んでいった。

「キャロさん・・・」

 ヴィヴィオが、戸惑った口調でキャロに声をかけた。

「うん・・・絶対フェイトさんだよね・・・」

「ええ・・・フェイトママですね」

「でも、小さいね」

「ええ・・・小さいフェイトママですね」

 ヴィヴィオも動揺してか、よく分らない事を言っている。

 フェイトによく似た少女は、金色の長い髪をひらひらなびかせながら、どんどん集まってくるイルカたちをどんどん牽制していた。

 少女の狙いを定められたイルカたちは次々と砂の上に頭を出して体を丸めている。

どうやら、少女は砂イルカには危害を加えず、ただ眠らせているようだった。

 そんな少女を見ながらヴィヴィオをよそにキャロは軽く深呼吸してよく考えた。

 昨日からずっとよく分らない事が起きては自分の前を通り過ぎてゆく。

 理解不能というのは、こんな状態だ。

 ロストロギアを保護し、ミッドにあるなのはの家を訪ねヴィヴィオと話していたら急に眠くなり気がつけば、いまキャロ達がいる砂漠のど真ん中に立っていたのである。

 状況を理解するより先に、どんどんとその状況が分らない方へと向かって行く。

 そんなことを考えていると、いつの間にか少女は少しずつイルカの数におされながらジリジリと後ろ、つまりキャロのいる方へと追いやられてきていた。

「キャロさん」

 不意に名前を呼ばれて、ヴィヴィオの方を振り返れば、ヴィヴィオは決心したように頷いた。ヴィヴィオの目は、このフェイトによく似た少女を手伝おうと言っていたのだ。

「うん―」

 それが分ったキャロも気を取り直してヴィヴィオを見て頷いた。

「―手伝おう。ヴィヴィオは大丈夫?」

「大丈夫ですよ」

 ヴィヴィオは軽く準備体操をしている。

「私はバックス担当だから、砂イルカが入らないようにフィールドを張ろうと思うの。でも結構広い範囲になるだろうから、時間がかかると思う。それまでフェイトさんと二人で抑えられる?」

「ええ。でも、あの小さいフェイトママみたいにイルカさんを傷つけないように押さえられるかなぁ・・・」

 ヴィヴィオがすこし自信なさげに言った時だった。

「これを使って―」

 向かってくるイルカをかわしながら踵を返して少女がこちらへ体を向けると、青いブレスレットを二つ投げてよこす。

「―砂イルカを一時的に眠らせることが出来る。傷つけないで済むから」

 キャロとヴィヴィオはブレスレットをキャッチすると、少女はまたイルカの方へ向かって行った。

「キャロさん。これ見たことあります?」

 ヴィヴィオはどうしたらいいか分らないといった面持ちでキャロに向かって言った。

 少女から渡されたブレスレットをみれば、青い宝石が二つ埋め込まれている。イルカを眠らせるための何らかの魔法が施されているらしいが、そこに描かれている文様は、ベルカの物でもミッドのものでもないキャロの全く知らない文様だった。

 

 

 
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