No.163289

真・恋姫†無双 あなたと共に 11(後編)

highstaさん

こっちが本編です。

次は華雄さんの続きでも書きます。

2010-08-04 18:58:09 投稿 / 全26ページ    総閲覧数:21802   閲覧ユーザー数:13054

~1回戦(準々決勝)~

 

 

「それでは天下一品武道大会本選1回戦第1試合、選手入場です!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

会場が歓声に包まれる中、2人の将が舞台へと歩を進める

 

「東!魏軍、夏侯惇将軍!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「ふんっ!」

 

ガキンッ!!

 

肩に乗せていた大剣を自分の立ち位置に突き刺し、春蘭が得意げに笑う

 

 

「西!蜀軍、関羽将軍!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「・・・・・・」

 

こちらは春蘭とは違い、静かに立ち位置に向かう

 

 

舞台上で見合う2人

 

「はっはっはっ、愛紗よ・・・まさかこんなに早くやり合うことになるとはな」

 

「ふっ・・・そうだな。だが、たとえ貴様が相手だろうと負けるわけにはいかん」

 

それぞれに武器を構える・・・

 

 

そして・・・・・・

 

 

「それでは・・・・・・・・・・・・・・・始めッ!!!!」

 

合図が出された

 

 

「らあぁぁぁーー!!!!」

 

「はあぁぁぁーー!!!!」

 

ガキンッ!!!!

 

 

合図と共に2人が駆け出し、中央でぶつかり合う

 

 

「「くっ!!」」

 

あまりの勢いに2人とも体勢を崩したが

 

「はぁっ!ふっ!」

 

春蘭が一瞬早く体勢を立て直し、再び大剣をもつ手に力を込め、愛紗に襲い掛かる

 

「くっ!」

 

ギンッ!ガンッ!

 

愛紗も体勢を崩しながらも、春蘭の攻撃をどうにか偃月刀で捌く

 

「(相変わらずの馬鹿力めッ!!それに加えこれはッ!!)」

 

想像していた以上の力、そして鋭さに驚きながらもどうにか耐え続ける

 

しかし、春蘭も大剣を扱ってるとは思えないような速さの攻撃をあらゆる方向から繰り出す

 

「(くっ!そろそろまずいか・・・!)」

 

ガンッ!ギーンッ!ガンッ!・・・・・・

 

「(愛紗め!防いでばかりで・・・このままでは埒があかん!・・・ならばッ!!)」

 

ガキンッ!!

 

ぶつかり合った反動のまま、春蘭が大振りに構える

 

「(来いッ!愛紗!)」

 

「(!?今だッ!!)」

 

愛紗もそれを反撃の好機と感じ、偃月刀を構え直し一気に突っ込む

 

狙うは、がら空きの脇腹

 

「はあぁーーー!!!!」

 

愛紗が”もらった!!”と確信したその刹那・・・

 

ガンッ!!

 

「なっ!?」

 

青龍偃月刀の頭部分が地面に叩きつけられ・・・

 

そして・・・

 

「はっ!!」

 

ヒュン!

 

愛紗の喉元に春蘭の武器である”七星餓狼”がつきつけられた

 

 

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

会場全体が静けさに包まれるが

 

やがて・・・

 

「・・・・・・まいった」

 

・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・・・・はっ!?しょ、勝者!夏侯惇将軍!!」

 

「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

愛紗の負けを認める言葉、そして審判の勝敗を告げる声に反応して、多くの歓声があがる

 

 

「何という剣速だ・・・・・・まさか、こんなに早く負けるとはな」

 

「ふん!当たり前だ!」

 

愛紗も春蘭も表情を崩し、互いの健闘を称え、握手をしてからそれぞれの陣営に戻ってゆく

 

「(・・・しかし、去年までの春蘭とはまるで違ったが・・・・・・一体何が・・・)」

 

振り返り、魏の陣営を見る・・・

 

「!?・・・そう・・・か」

 

そして、すぐに納得した

 

 

意気揚々と引きあげる春蘭の向こう側・・・

 

 

そこには去年までにはなかったもの・・・・・・

 

 

天の御遣い・・・・・・

 

 

”北郷一刀”の笑顔がそこにあった・・・

 

 

~魏陣営~

 

「ご苦労様、春蘭」

 

「か、華琳さま~~//////」

 

華琳の労いの言葉に続いて、それぞれの将や軍師からも声が掛けられる

 

「おめでとう、姉者」

 

「さすが惇ちゃんやわ!」

 

「ふんっ!猪でも役に立つじゃない」

 

「おめでとうございます、春蘭様」

 

「ぐぅ~」

 

「ふはははは、当たり前だ!私が目指しているのは優勝だからな!・・・・・・と・・」

 

春蘭が高笑いしていると、視界に笑みを浮かべた一刀の姿が映る

 

「ほ、北郷・・・」

 

一刀からはまだ言葉を掛けてもらってなかったので、春蘭も一瞬だが戸惑う

 

しかし・・・

 

そんな戸惑う春蘭に一刀は満面の笑みで伝える

 

「おめでとう、春蘭!やっぱり春蘭は強いなぁ~!!」

 

と・・・

 

 

「なっ!?あ、当たり前だ!!私は魏武の大剣だぞ!?貴様と同じにするな/////」

 

精一杯強がってはみるものの、照れているのは周りから見ても一目瞭然なので、一刀をはじめ、皆が笑いを堪える

 

「く、くぅ~~~//////」

 

笑われていることに気づき、さらに顔を赤くして俯いてしまう・・・

 

 

と・・・

 

 

「それでは続いて天下一品武道大会本選1回戦第2試合を始めます!!!!」

 

2回戦開始の合図が審判によって出された

 

「よっしゃーー!!ウチの番やな!」

 

そして、その審判の声に反応して霞が入場口に向かう

 

「神速の張遼の力・・・とくと見せてあげなさい」

 

「うむ、霞、私の分も頑張ってくれ」

 

「ちょっと、霞!華琳様の為に勝つのよ!絶対よ!!」

 

「霞、頑張ってくださいね」

 

「ぐぅ~」

 

「おう、任せとき!ちゅーかな、風、いい加減起きんかい!」

 

ペシッ

 

「おぉ!?もう霞ちゃんの試合なのですか~?頑張ってくださいね~」

 

マイペースな風に苦笑しながらも、一刀と春蘭の方を向く

 

「霞・・・ここでお前が勝てば、次は私とだ。・・・楽しみにしているぞ」

 

「あぁ、ウチも楽しみや!惇ちゃんとやれるなんてな!」

 

お互いに挑発し合うように見合っていたが、その顔には無邪気な笑みが浮かんでいた

 

「霞」

 

「んっ?おっ、一刀!」

 

春蘭と見合ってる途中で一刀が霞に声を掛ける

 

「俺、精一杯応援するから・・・・・・頑張って!!」

 

「ッ!?」

 

一刀からの激励の言葉・・・

 

何気ない”頑張って”・・・

 

しかし一刀からのその言葉は

 

「ッッッッッッッ!!!!!!!!」

 

 

声にならないほど嬉しい言葉・・・

 

「ッッッシャー!!!!一刀、行ってくるわ!!」

 

「うん、行ってらっしゃい!」

 

振り返り、今度こそ入場口に向かう

 

「(あかん・・・一刀から頑張れって言われただけでこんなに嬉しいやなんて・・・)」

 

気分が高まっていくのを感じる

 

そして・・・

 

霞の顔にも笑みが浮かぶ

 

「(絶対に負けられん!一刀の前で恥ずかしい試合ができるかい!)」

 

喜びを表すように、偃月刀を振り回し入場口に立つ

 

 

後は開始の合図を待つのみ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~蜀陣営~

 

「ふむ、次は私か」

 

「頑張ってね、星ちゃん!」

 

「せ、星さん頑張ってくだしゃい・・はゎ!」

 

「が、頑張ってください(あわわー!い、言えたよ~)」

 

「くっそー、あたしも出たかったなー」

 

「もうお姉様!星お姉様のことちゃんと応援しないとダメだよ!」

 

「(モグモグ)」

 

「あ、恋殿、おかわりならこちらにありますぞー」

 

「・・・いい加減食べすぎではないか?・・・」

 

ほとんどの将からは応援とは関係のない声があがる

 

「やれやれ、うちの軍ときたら・・「・・・星」・・ん?」

 

星が呆れ笑いを浮かべていると、神妙な面持ちの愛紗から声が掛かる

 

「どうかしたか、愛紗?」

 

「・・・今回の魏軍は手ごわいぞ?」

 

「・・・ふむ。だろうな・・・」

 

2人して魏の陣営を見ると、霞が一刀に何か声を掛けられ、意気揚々と入場口に向かう姿が目に付いた

 

「・・・だが・・・」

 

「ん?」

 

星もその顔に笑みを浮かべ

 

「だからこそ面白い・・・違うか?愛紗よ・・」

 

星の顔を見て一瞬驚いてしまったが、すぐに愛紗も笑みを浮かべ

 

「・・・いや、違わんな、ふふっ」

 

と、答えた・・・

 

 

「それでは天下一品武道大会本選1回戦第2試合、選手入場です!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

1試合目の興奮そのままに再び歓声があがる

 

「東!蜀軍、趙雲将軍!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「ふふっ」

 

妖艶な笑みを浮かべながら舞台中央へと歩を進める星・・・

 

「西!魏軍、張遼将軍!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「おっしゃーーー!!!いくでーーーー!!!!」

 

気合の入った声と共に、両腕を広げ、観客を煽るように向かう霞・・・

 

 

「ふふっ、霞よ、今回はずいぶん機嫌が良いな?」

 

霞のいつも以上にご機嫌な振る舞いに、星はおもわず笑いを漏らす

 

「分かるか?今日のウチは今までとは一味違うで?」

 

溢れる笑みを隠そうともせずに霞が応える

 

「魏の者は分かりやすいからな・・・・・・・・・あのお方であろう?」

 

そう言うと星は魏の陣営、ただ1人の男を見た

 

「・・・せやな。・・・一刀が見てくれとる・・・それだけでこんなに嬉しくなるなんて思わんかったわ」

 

ゆっくりと武器を構える・・・

 

「ふふっ、羨ましいことだ・・・。・・・・・・だがな霞よ?・・・」

 

意味深に言葉を区切り

 

「それは・・・私も同じことだ」

 

そう言って、にやりと笑い、星も構えた

 

それから間もなく・・・

 

「それでは・・・・・・・・・・・・・・・始めッ!!!!」

 

第2試合開始の合図が出された

 

 

 

「うらぁぁぁーーー!!!!」

 

「はあぁぁーーー!!!!」

 

ガキンッ!ギンッ!ガンッ!ギーンッ!・・・・・・

 

一進一退の攻防・・・

 

前後、左右、上下それぞれにフェイントを入れながら、まるで示し合わせたかのように、まさに疾風の如く、両者の得物が何度もぶつかり合う

 

「「はあぁーーーー!!!!」」

 

ガキーーーーンッ!!!!

 

大振りの一撃の後、両者は距離をとる

 

「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・・ははっ・・・おもろい・・・おもろいで、星!」

 

先に体勢を立て直したのは、口元に笑みを浮かべた霞

 

「!!くっ!さすがに楽はさせてもらえんか・・・」

 

先程の愛紗と春蘭の試合を見ていたので、星もすぐに構え直す

 

「(速さは互角・・・・・・つまり・・・・・・)」

 

星の目から余裕が消える

 

「(先手を取られては愛紗の二の舞になる・・・・・・・・・!)」

 

「はあぁーーー!!!!」

 

「おっしゃー!来いやー!」

 

先に動いたのは星

 

凄まじい速さで体ごとぶつかりにいく

 

対して霞は攻撃を受けた後のカウンター狙いで待ち構える・・・

 

 

「せやぁーーーー!!!!」

 

「(この速さやったら・・・ギリギリ避けれる!)」

 

攻撃が当たるその瞬間・・・

 

霞が少しだけ横に体をずらす

 

「(これで終いや!!)」

 

ニヤリと笑い、勝利を確信した刹那・・・

 

ドゴッ!!

 

「かはッ!!」

 

ズザーーーーーー!!!!

 

腹部への衝撃と共に地面を転がっていた

 

「な、なんやと・・・・・・っつ!?」

 

「はぁ・・はぁ・・ふふっ・・・上手くいったようだな・・・」

 

「くっ!」

 

偃月刀を支えに立ち上がる

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

星は肩で息をして、追撃までする余裕はないようだ

 

「(・・・槍でやられたんか?・・・いや、あの衝撃は槍やない)」

 

槍を地面に突き立てた星の姿が霞の視界に入る

 

「(!?もしかして・・・)」

 

霞がある可能性に思い当たる

 

「槍やなくて・・・・・・・・・蹴りか!?」

 

「ふふっ、気づいていなかったようだな?」

 

そう・・・・・・

 

星は槍では攻撃をしなかった

 

 

霞が避け始めたのが見えた瞬間・・・

 

槍を地面に突き立て、槍を軸にして、いきおいそのままに腹部への蹴り

 

これが、星が行った攻撃の全貌

 

衰えることのない最大速度での動きだったので、一瞬でも勝ちを確信し余裕を見せてしまった霞には何が起こったのか、とらえることはできなかった

 

「・・・あかんなー。ウチとしたことが・・・・・・よっ・・と」

 

偃月刀を頭の上で、ぐるり、と1回だけ廻し構え直す

 

「・・・けどな・・・・・・・・・星・・・・・・」

 

「!?」

 

霞の顔からも余裕が消える・・・

 

「言うたやろ?・・・・・・今日のウチは・・・」

 

「くっ!」

 

しかし、変わりに確実に感じられるようになった闘志・・・

 

「一味違う・・・・・・ッてなッッッ!!!!」

 

ダンッ!

 

地面を強く蹴り出し、星に襲い掛かる

 

「なにっ!?」

 

星も意外な攻撃に驚く

 

それもそうだろう・・・・・・

 

攻撃に転じる霞のその動きは・・・

 

「うらぁぁーーー!!!!」

 

ギンッ!ガンッ!

 

「あっ・・・くっ!」

 

まるで先程の自分の攻撃がなかったかのような鋭い動きなのだから・・・

 

 

 

キンッ!カンッ!ギーンッ!・・・

 

「今度こそッ!!!!」

 

「くぁっ!(ま、まずい!?)」

 

霞から繰り出されるのは闘志を剥き出しにした一撃

 

「これで・・・終いやぁーーーー!!!!」

 

ギーーーーーンッ!!!!

 

「うっ・・・くっ!」

 

霞の放った一撃により、星の手から槍が飛ばされ、地面に突き刺さる

 

「おいっ!!」

 

「は、はははははい!!!!」

 

霞が審判の方を向き、合図を促す

 

「ち、趙雲将軍の武器が手元を離れてしまったので、勝者!張遼将軍!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

魏の兵を中心に歓声が響き渡る

 

 

「へへへー、星、おしかったな~」

 

「霞・・・お主、私の攻撃はなんともなかったのか?」

 

自分でも感じるまさかの敗北・・・

 

確かに手ごたえは感じたのだ・・・

 

確実に霞の最大の武器である”速さ”は殺したと思った・・・

 

しかし、そんな予想とは裏腹に

 

さらに速い攻撃で負けた・・・

 

納得いかないのも無理はないだろう

 

 

 

 

 

「いや、確かに星の蹴りは効いとったよ」

 

「ならば、なぜあれだけの動きができる?」

 

疑問をぶつける星に、霞は背中を向け、魏の応援席へと目を向け答える

 

「・・・・・・ウチはな、星・・・・・・3年前に、それまでウチが生きてきた中で・・・・・・一番痛くて、苦しい思いをしたんや・・・・・・」

 

「・・・3年前?」

 

星の方を見ずに、霞は頷く

 

「・・・あの痛みに比べれば・・・・・・ウチはどんな痛みにだって耐えれる・・・」

 

「お主ほどの者がそれ程とは・・・・・・そんなに強敵だったのか?」

 

その星からの言葉を聞き、霞は思わず笑ってしまった

 

「あははははっ!いや、全然や。ウチらと比べたら、それこそ話にならんな!」

 

「?・・・なら何故だ?何が苦しかったのだ?」

 

声には出さないものの、顔には微笑を浮かべたまま、霞は答える

 

「・・・・・・・・・優しかったからや」

 

「・・・優しい?」

 

再び頷く霞・・・

 

「誰よりも優しかったから・・・誰よりもウチらのこと考えてくれてたって分かったから・・・」

 

目を閉じ、昔を思い出すように・・・

 

「・・・・・・苦しかったんや」

 

「・・・・・・」

 

ここまで聞くと星も誰のことを言っているのか分かってくる

 

 

「ん~なんや、暗くなったな!まっ、そういうこっちゃ!」

 

明るく笑い空気をごまかす

 

「・・・ふふっ、なるほど・・・・・・ようやく納得がいった・・・」

 

星も笑い、場の空気が和んでいく

 

第1試合の春蘭・愛紗と同じように、2人は握手を交わし、それぞれの陣営に帰っていく

 

 

「(天の御遣い・・・・・・北郷一刀・・・か・・・)」

 

星は考える

 

北郷一刀のことを・・・

 

そして・・・

 

魏にとっての彼のもつ意味を・・・

 

「(良い意味でも、悪い意味でも・・・北郷殿が関係しているとは・・・)」

 

ふふっ、と笑いをこぼす

 

「(やはり面白いお方だ・・・)」

 

試合には負けてしまったものの、何かすっきりとした思いを感じる星であった・・・

 

 

 

 

~魏~

 

「か~ずとぉ~勝ったでーーー!!」

 

ガバッ

 

「おっ・・・ととっ・・・うん、ちゃんと見てたよ。おめでとう、霞!」

 

「へへへっ、一刀も応援ありがとうな♪」

 

抱きついてきた霞の頭を撫で、戦いの疲れを労う

 

「むっ」

 

そんな2人にぴくっ、と一番最初に反応したのは1回戦を勝ち抜いたのに言葉以外は特に何もなかった春蘭・・・

 

「・・・姉者」

 

「お、おぉ!?な、なんだ秋蘭?」

 

「羨ましいのなら、そう言えばよかろう?」

 

「なっ、ななななな!////////」

 

「(ふふふっ、動揺する姉者は、やっぱり可愛いなぁ)」

 

完全に秋蘭に遊ばれる春蘭・・・

 

しかし、春蘭以外にも反応を示す女の子たちが・・・

 

「へぇー、一刀良かったわね・・・霞に抱きついてもらって」

 

「へっ?」

 

まずは・・・笑顔なのに、こめかみをピクピクさせている華琳・・・

 

「ふんっ!本性を現したわね・・・このケダモノ!!」

 

「はいっ!?」

 

華琳の勢いに続いて桂花が・・・

 

「一刀殿・・・場を選んでください・・・」

 

「えぇー!?」

 

いつもなら鼻血を吹いていてもおかしくない稟が・・・

 

 

「むぅ~お兄さんはやっぱりおっきい方がいいのですか~」

 

「いやいやいやいやっ!!」

 

とどめにジト目をした風が・・・

 

 

それぞれが一刀に抗議の思いをぶつける

 

 

と、その時・・・・・・

 

 

「あの、申し訳ありませんが、少しよろしいですか?」

 

「へっ?」

 

魏の応援席に響く聞きなれない声

 

一刀が声の方を向くと3年前、何度か見たことがある女性が1人・・・

 

「(確か・・・蜀の黄忠さん・・・だよな)」

 

「あら、紫苑どうかしたのかしら?」

 

「あ、華琳さん・・・あの、鈴々ちゃん見ませんでしたか?」

 

「鈴々を?いえ、私は見ていないけど・・・あなたたちは?」

 

華琳の言葉に、そろって首を振る7人・・・

 

「そう・・・ですか」

 

黄忠・・・紫苑も魏勢の反応に、少し困ったような表情を浮かべる

 

「・・・いなくなっちゃったんですか?」

 

そんな紫苑の表情を見かねて、一刀が声を掛ける

 

「・・えぇ、さっきまではいたんですけど、いつのまにかいなくなっちゃって・・・」

 

「ん?待て、紫苑。鈴々は第4試合に出場するのだろう?」

 

春蘭の言葉に一刀もハッとする

 

確かに対戦表には張飛の名があったのを確認していた

 

「えぇ、そうなの・・・だから探しているのだけれど・・・」

 

「ウチも探そか?」

 

霞がそう提案してみるが・・・

 

「いや、霞は試合したばっかりで疲れてるだろ?」

 

一刀がすぐに遮った

 

「そらそうやけどな、一刀?さすがに放っとくわけにはいかんやろ?」

 

一刀は霞のその言葉に笑顔で頷いた

 

「うん、だから俺が探しに行くよ。次の試合は魏は出場してないし・・・」

 

「いえ、そんな!御遣い様にそんなことさせるわけには「紫苑」・・秋蘭さん・・」

 

一刀からのいきなりの申し出に戸惑う紫苑の言葉を遮ったのは秋蘭・・・

 

「一刀のことなら気にするな。いや、正しくは違うな・・・。紫苑・・・・・・諦めろ」

 

微笑を浮かべながら紫苑にそう言葉を掛けた

 

「そういうことよ」

 

秋蘭の言葉に華琳も頷く

 

「・・・華琳さん」

 

「一刀は元々こういう性格だから、別に気にすることはないわ」

 

そして、その言葉に頷く魏勢・・・

 

「・・・そう・・・ですね・・・」

 

紫苑も少しの間悩んでいたが、やがて決心がついたのか笑顔で言葉を返す

 

「それなら・・・御遣い様、よろしいですか?」

 

「もちろん」

 

一刀も紫苑の言葉に笑顔で返した

 

「それでは、皆さん・・・少しの間、お借りしますね?」

 

「べ、別に返さなくてもいいわよ!」

 

紫苑の言葉に抗議するように、突然桂花が目線をそらしながら声をあげる

 

 

「「「「「「・・・・・・ぷっ」」」」」」

 

そんな桂花の様子に周りは一斉に噴出す

 

「なっ//////」

 

そんな周りの様子に桂花が顔を真っ赤にする

 

「あ、あんたのせいで笑われちゃったじゃない!」

 

「何もしてねぇよ!」

 

「うるさい!早く行きなさいよ!この歩く生殖器!!」

 

ドガッ、ドガッ

 

「わ、分かったから蹴るなって!黄忠さん、行こう!」

 

「ふふふっ、はい」

 

結局、桂花に追い出される形で一刀は鈴々を探しに行くことになった・・・

 

 

 

「御遣い様は愛されてますね?」

 

応援席を後にして程なく、紫苑がからかうように一刀に話しかける

 

「あは・・はは・・・そう・・・ですかね?」

 

「えぇ、そう見えましたわ。本当に羨ましい限りです」

 

思わず一刀も苦笑いである・・・

 

「そうだったら俺も嬉しいんですけどね・・・・・・と、そうだ。黄忠さん、できれば名前で呼んでくれませんか?北郷でも一刀でも構わないので・・・」

 

「あら?いいのですか?」

 

「えぇ。天の御遣い、っていっても、特別何ができるってわけでもないですし・・・。それに・・・・・・俺も同じ人間ですから・・・・・・」

 

寂しそうに呟いた最後の言葉は、一刀の本音・・・

 

「そう・・・ですわね・・・分かりました。それならば、北郷様、と呼ばせていただきます」

 

「はい、よろしくお願いします。それと・・・俺は黄忠さんって呼ばせてもらいますけどいいですか?」

 

「・・・いえ・・・どうか真名で、紫苑とお呼びください」

 

「えっ!?いいんですか?」

 

「えぇ、構いませんわ」

 

そう言って柔らかな笑みを浮かべる紫苑・・・

 

「えっと・・・わ、分かりました。そ、それじゃあ、俺は紫苑さんって呼びますね」

 

「はい、よろしくお願いいたしm・・「紫苑!」・・あら?」

 

「うん?」

 

一刀が紫苑から真名を預かった直後、背中から紫苑を呼ぶ声が聞こえた

 

「紫苑、ここにおったのか・・・・・・もう第3試合も始まっておるようだぞ・・・・・・と、そちらは御遣い殿か?」

 

「おぉ、紫苑!北郷も一緒じゃったか!」

 

「あっ、祭さん・・・と、えっと・・・」

 

背中の方から向かってきたのは、祭と豪快な身なりをした女性・・・

 

「そうか・・・御遣い殿とは初めてじゃったの。ふむ、それならば・・・わしは蜀の厳顔と申す」

 

「あっ、俺は北郷一刀です。北郷でも一刀でも好きな方で呼んでください」

 

「うむ、ならば北郷殿と呼ばせていただこう・・・早速だが北郷殿、祭殿とは真名を呼ぶほどの仲か?」

 

「う~ん、一応?」

 

「北郷!一応とはなんじゃ、一応とは!」

 

「あはは・・・だって・・・ねぇ?」

 

一昨日の祭とのやり取りを思い出し、一刀は思わず苦笑いを浮かべてしまった

 

「・・・祭殿が認めるほどの御仁か・・・・・・ふむ、北郷殿」

 

「はい?」

 

「わしのことは真名で呼んでくれ。桔梗と申す」

 

「あ~~えっと・・・・・・・・・はい」

 

いい加減このやり取りにも慣れたのか、特に何も言わずに一刀は頷いた

 

「それよりも桔梗、鈴々ちゃんのこと何か分かったの?」

 

話がちょうど途切れたタイミングで、今まで黙っていた紫苑が口を挟んだ

 

「おぉ、そうじゃったわ!おう、鈴々のことなら分かったぞ」

 

「そう・・・。それで、鈴々ちゃんはどうだったの?」

 

少し困った顔になりながら、桔梗が答える

 

「うむ、それがの?どうやら鈴々の奴、愛紗の作った朝餉を食って腹を下したらしく・・・厠を離れられんらしいのだ・・・」

 

「!?」

 

桔梗の愛紗云々の話を聞いた瞬間、紫苑の顔が引きつる

 

「・・・・・・愛紗・・・・・・ちゃんの?」

 

「・・・・・・うむ」

 

「ふんっ!」

 

「??」

 

祭は不機嫌な表情を隠さず、一刀はただ1人話しについていけなくて頭の上に”?”マークを浮かばせる

 

「大抵のものなら鈴々も大丈夫のようだが・・・・・・今回は本選ということで愛紗もはりきってしまったらしい・・・・・・とりあえず衛生兵には気に掛けるように言ってきた・・・」

 

「・・・・・・そう」

 

すごく悲しそうな表情を浮かべる蜀の2人・・・

 

そこで一刀が口を挟んだ

 

「張飛ちゃんがその状態ってことは、もしかして・・・・・・」

 

祭の方に目を向ける一刀・・・

 

「そうじゃ!わしは不戦勝じゃ!」

 

「・・・・・・だよね」

 

普通なら喜ぶところだが、生粋の武人である祭は納得いかないようだ

 

一刀も何かを考えるように俯く・・・

 

「そうは言ってもの・・・」

 

「・・・えぇ・・・」

 

「むーーー!!!!」

 

困り顔の桔梗と紫苑・・・

 

そして、不満顔の祭・・・

 

それぞれの感情を表情に表しているなか・・・

 

再び、一刀が口を開いた

 

「・・・ねぇ、祭さん・・・」

 

「なんじゃ、北郷!」

 

「祭さんはとりあえず戦いたいんだよね?」

 

「そうじゃ!」

 

 

祭の答えを聞き、一刀は決心したかのように語りだす

 

「・・・祭さんさえよければ・・・・・・考えがあるんだけど・・・」

 

「・・・なんじゃと?」

 

そして、一刀は言った・・・

 

 

後には引けなくなる・・・

 

“考え”を・・・

 

 

 

 

 

「・・・どう・・・かな?」

 

自分の考えを言い終わり、周りの3人の反応を窺う

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

紫苑と桔梗が驚きのあまり黙り込むなか・・・

 

「はっはっはっはっはっ!!面白い!その話乗った!!」

 

祭だけが高らかに笑い声をあげた

 

「しょ、正気か北郷殿!?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

桔梗が妙に慌てるが、一刀は冷静に答える

 

「・・・・・・分かりましたわ」

 

「紫苑!?」

 

「ふふっ、いいじゃないの。本人がこう言っているのだし。それに・・・・・・」

 

一刀の目を見る紫苑・・・

 

「これだけの決意ですもの・・・・・・ね?」

 

「・・・・・・」

 

一刀の視線から何かを感じ取ったのか、桔梗も結局は黙り込んだ

 

「・・・北郷様」

 

「はい」

 

「審判の方には私のほうから言っておきますので、ご安心下さい」

 

「そうですか・・・ありがとうございます」

 

紫苑に何かの礼を言い、祭の方に向き直る一刀・・・

 

「それじゃあ、祭さん」

 

「うむ、楽しみにしているぞ」

 

互いに笑いあった

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・ぁぁぁぁ!!」」」」」」」」」」

 

「ん?」

 

「試合が終わったようだの・・・」

 

「そうみたいじゃの」

 

「それなら、そろそろ私たちも・・・」

 

紫苑を先頭に歩き出す4人・・・

 

笑みを浮かべる者もいれば・・・

 

納得のいかない表情のものも・・・

 

 

あることを実行するために会場に向かった

 

 

 

 

 

~魏~

 

「一刀・・・遅いわね」

 

「そうですね・・・さすがに」

 

第4試合が始まる前、魏の陣営では帰りが遅い一刀を案じる声がでてきていた

 

「いったい、何やっとるんや?」

 

「鈴々ちゃんが見つからないんじゃないですか~?」

 

「死んでればいいのに」

 

「(そわそわ)」

 

「姉者、心配なのか?」

 

全員が何かしゃべっておかなければ落ち着かない様子だった

 

 

と、その時・・・

 

 

「遅れましたぁ!・・・・・・って、あれ?」

 

「申し訳ありません!・・・季衣?」

 

「まったく真桜は・・・」

 

「集中しすぎなの~」

 

「し、仕方ないやん!隊長の武器が面白かったんやもん」

 

季衣・流琉の親衛隊コンビと北郷隊の3羽烏が姿を現した

 

「あっ、おはようございます。あの、今はどうなってますか?」

 

状況を聞いたのは凪

 

「おぉ、凪たちもやっと来たんやな!今は第3試合まで終わって、ウチも惇ちゃんも勝ったで!ちなみに第3試合は恋の勝ちや!」

 

「そ、そうですか(ほっ)・・・おめでとうございます、春蘭様、霞様!」

 

「あぁ」

 

「おぅ!」

 

 

凪たちが話している時、季衣がきょろきょろしながら首を傾げた

 

「華琳様、兄ちゃんはどこか行ったんですか?」

 

「えぇ、鈴々がいなくなったっていうから探しに行ったのだけど・・・」

 

華琳が言葉を続けようとした時、会場に審判の声が響き渡る

 

「次は第4試合なのですが・・・・・・少し変更があります!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「・・・変更?何かしら?・・・」

 

「えぇ~第4試合に出場予定だった張飛将軍が、急遽体調不良の為、欠場することになりました!!!!!」

 

「「「「「「「「「「「えぇーーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「・・・結局、出れなかったのか・・・」

 

「しかし!!呉軍、黄蓋将軍とあるお方の希望により、代わりといってはなんですが、特別試合を行いたいと思います!!!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「なんや盛り上がるやんけ!ええぞーー!!」

 

「なお、特別試合ですので、試合の勝敗に関係なく、黄蓋将軍は準決勝進出は確定しておりますので、よろしくお願いします!!!!」

 

そこまで言い切り、審判は大きく息を吸った

 

「それではまずは!!東!呉軍、黄蓋将軍!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「はっはっはっ、ほれっ!もっと盛り上げんか!!!!」

 

観客を煽りながら舞台に上がる祭・・・

 

 

「それでは続いて!特別試合の発案者であり、黄蓋将軍のお相手・・・」

 

1人の男が舞台中央へと歩みを進める・・・

 

「「「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」」」

 

魏の陣営が・・・会場全体が驚きに包まれる

 

そう・・・

 

 

鈴々に代わる祭の相手

 

それこそ・・・

 

「西!魏に舞い降りた天の御遣い、北郷一刀様!!!!!!」

 

「・・・(ニコ)」

 

微笑みを浮かべた・・・

 

北郷一刀・・・その人であったから・・・

 

 

各陣営でも混乱が生じる・・・

 

蜀の陣営では、紫苑と桔梗の2人以外は驚きのあまり、開いた口が塞がっていない・・・

 

呉の陣営では、雪蓮が1人盛り上がり、舞台に進んだ2人を煽っている

 

冥琳も興味深げに感心するように舞台を見る

 

他の者も驚きが隠せない様子・・・

 

その中で、孫権と甘寧は厳しい視線を向けていた

 

 

 

~魏~

 

「な、なななな何をやっているのだ、あ奴は!?」

 

誰よりも驚きを表したのは春蘭・・・

 

「・・・一刀・・・何を考えている・・・」

 

秋蘭が訝しげに舞台上の一刀を見る・・・

 

それもそうだろう・・・

 

鈴々が欠場ということは、祭は不戦勝で自動的に準決勝に勝ち上がることができる

 

しかし・・・

 

先程、審判は言った・・・

 

一刀が特別試合の発案者である、と・・・

 

「(・・・・・・分からぬ)」

 

考えることをやめた秋蘭はただ首を振るだけだった・・・

 

他の者もそれぞれの反応を示す・・・

 

「あはははっ!一刀やるやん!」

 

霞は笑い・・・

 

「な、なんであいつがあそこにいるのよ!」

 

「・・・一刀殿」

 

「・・・お兄さん・・・」

 

軍師たちは心配そうな表情で見つめ・・・

 

「た、隊長!?」

 

「な、何やっとるんや、あん人は!?」

 

「何がなんだかわからないの~」

 

「「に、兄ちゃん(様)!?」」

 

今着いたばかりの3羽烏や季衣・流琉は思わず声をあげた・・・

 

しかし、1人だけ・・・

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

華琳だけは黙って見つめていた・・・

 

「(・・・・・・一刀)」

 

もちろん心配にはなる・・・

 

胸がざわつく・・・

 

しかし・・・

 

一刀が無意味にこんなことをやるとは思えなかった・・・

 

「(・・・・・・何があるというの?・・・・・・一刀・・・・・・)」

 

感情を押し込み、武器を構える一刀を見る・・・

 

 

試合はもうすぐ・・・・・・始まる・・・・・・

 

 

 

 

 

「本当によいのか、北郷?やめるなら今のうちじゃぞ?」

 

舞台で見合いながら、一刀に問う・・・

 

「・・・あぁ、もう決めたことだからね。祭さんこそいいの?祭さんって弓じゃなかったっけ?」

 

そう・・・

 

祭の本来の武器は”多幻双弓”という弓である

 

しかし、今、祭が持っている武器は・・・・・・剣

 

「構わん、心配するな。わしはこれでも策殿たちに武芸を教えてきておる。剣であろうと槍であろうと弓であろうと、そう変わるものではない」

 

「・・・そっか。じゃあ、俺も全力でいかしてもらうよ・・・」

 

背中の長刀に手をかける

 

「ふふっ、北郷、お前がどれほどかは知らぬが・・・遠慮なぞいらん・・・・・・来い!!」

 

ゆっくりと剣を構える

 

 

そして試合開始を告げる声が・・・

 

「・・・それでは・・・・・・・・・始めッ!!!!!!」

 

「「ッ!!」」

 

今、響いた・・・・・・

 

 

「「・・・・・・」」

 

今までの試合とは違い、まずはお互いにゆっくりと動き、相手の出方を見る

 

 

じりじりと・・・・・・・・・

 

 

距離が少しずつ詰まる・・・

 

「!はっ!!」

 

最初に仕掛けたのは一刀・・・

 

一気に地面を蹴り出し、間を詰めてからの抜刀

 

ヒュンッ!

 

「ふっ!」

 

しかし、祭は事も無げにそれを避ける・・・

 

「(・・・さすがにこれだけ長いと抜刀も遅れるか・・・・・・)」

 

一刀は冷静に長刀を構え直す

 

「(どうやら北郷の動きに、明命の魂切は向かんようじゃな・・・)」

 

祭も冷静に判断する

 

 

「(抜刀術は使えない・・・・・・なら)」

 

「はあぁーーー!!!!」

 

間合いを詰めてからの急所を狙っての剣撃

 

ギンッ、ガンッ、キンッ・・・

 

「らあぁーーー!!!!」

 

「(・・・ほぉ・・・)」

 

キンッ、ギンッ・・・・・・

 

剣速がどんどん上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~魏~

 

「・・・速いわね・・・」

 

「・・・はい」

 

予想を超えた動きに魏の将も驚きを隠せない様子でいた

 

「少し武器に振り回されているように感じるが・・・」

 

「あぁ・・・でも、使いこなしてる方やろ?一刀の持っとったやつより長いからな・・・」

 

「兄ちゃん・・・・・・凄い・・・」

 

「兄様・・・」

 

口々に驚きを表す

 

「まだ速くなってる・・・」

 

「ほ、ホンマに隊長か!?」

 

「絶対おかしいの~」

 

驚きを通り越して疑う者・・・

 

「・・・なるほど・・・考え無しに挑んだわけではないようですね・・・」

 

「お兄さんもやりますね~」

 

「・・・・・・」

 

冷静に見るものや黙り込む者までも・・・

 

 

それほど目の前の状況が信じられない

 

 

3年前の彼とは明らかに違う、と感じることが出来るから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~呉~

 

「へぇ~、やるじゃん♪」

 

「わぁ・・・」

 

「・・・凄い・・・」

 

「御遣い様もなかなかやりますね~」

 

呉では孫尚香、明命、亞沙、穏が感嘆の声を上げる

 

「「・・・・・・」」

 

甘寧、孫権の2人は変わらずに、厳しい表情のまま、舞台上を見つめている

 

そして、雪蓮と冥琳の2人は微笑を浮かべながら・・・・・・

 

「ふむ・・・北郷もなかなかやるようだな・・・・・・。戦時中は一般兵程度だと聞いていたが・・・」

 

「えぇ、そうね。確かに速くて強いわ・・・・・・・・・・・・でも・・・・・・」

 

「・・・・・・あぁ」

 

雪蓮の微笑が余裕の笑みへと変わる

 

「あれじゃあ祭には勝てないわ・・・・・・」

 

 

「はあぁーー!!」

 

「!甘い!!」

 

ギーンッ!!

 

「くぁ!?」

 

優勢に進めていたと思いきや、祭からの攻撃で一気に寸断された

 

それも・・・

 

たった一撃で・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

一刀は目に見えて疲労している・・・

 

それを見逃す祭ではない

 

「今度はこちらの番じゃ!」

 

今度は祭が一気に間合いを詰める

 

「ぐぅっ!!」

 

ギンッ、ガンッ、ギンッ・・・

 

先程の一刀の攻撃よりも鋭く、手数も多い

 

 

そしてついには・・・

 

「!そこじゃ!!」

 

ドゴッ!!!!

 

「ぐぁッ!?」

 

一刀の防御をなぎ払い、空いた胴に一閃

 

「ぐぅぁっ!!」

 

ズザーーーーーー!!!!

 

一刀の体が舞台に転がる・・・

 

 

 

「!?」

 

それを見て、審判がカウントを取ろうとする

 

 

が・・・

 

 

「くっ!!」

 

ガキンッ!

 

長刀を杖代わりに一刀が立ち上がった

 

「・・・・・・ふむ」

 

その様子を見て、祭は再び構え直す

 

「・・・まだ転がっていたほうがいいのではないか?」

 

余裕の笑みを浮かべた祭の言葉

 

その言葉に一刀も笑みを浮かべ答える

 

「・・・そうかもね。でも・・・俺は立つよ」

 

強い眼差しを向ける

 

「・・・そうか・・・ならば・・・ゆくぞ!」

 

「!はあぁーーーー!!!!」

 

祭より少し遅れて一刀が飛び出す

 

ガキーーーン!!!!

 

長刀と剣との衝突・・・

 

しかし・・・

 

「ぐぅ!!」

 

一刀が力負けし、よろめく

 

「はっ!!」

 

この機会を逃さず、よろけた一刀の脇腹へ蹴り

 

 

ボフッ!!!!

 

「ぐはっ!!」

 

ズザーーーー!!!!

 

再び地面に転がる

 

「(やはり、一発目は効いておったようじゃの・・・・・・ん?)」

 

祭はなにか確信めいた表情を向けるが、すぐに驚きの表情に変わる

 

「・・・ほぉ・・・」

 

なぜなら・・・

 

「くっ!!・・はぁ・・・はぁ・・ッツ!?」

 

一刀が直撃を受けた脇腹を抑えながら・・・

 

「!!うあぁーー!!!!」

 

再び長刀を構え、立ってきたから・・・

 

 

 

 

 

 

「ほぉー、まだやるか・・・」

 

「あ、あぁ・・・・・・もちろん・・・ッツ!」

 

脇腹を抑えてた手を離し、両手で構え直す

 

「・・・面白い・・・。そうこなくてはな・・・」

 

祭も笑って答える

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

一刀は一度大きく息を吸って・・・

 

「行くぞ!!!!」

 

再び立ち向かった

 

~魏~

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

魏の応援席は黙り込んでいた・・・

 

いや、正確には違う・・・

 

魅入っていた、という表現が正しい

 

 

中には、一刀が吹き飛ばされるその度に顔を歪ませるもの、顔を背けるものもいた

 

それが一番顕著に表れていたのは・・・

 

「・・・隊長」

 

凪だった・・・

 

 

ギーンッ!!!!

 

舞台上から激しい音が聞こえ、一刀が吹き飛ばされる・・・

 

「隊長!」

 

傷だらけになる自分が敬愛する男の姿を・・・

 

もう見ていられないと思ったのだろう・・・

 

凪は周りが見えなくなり、応援席を飛び出そうとした

 

 

が、その直前、

 

 

「凪ッ!!」

 

「!?」

 

凪自身、予想もしなかった人物・・・

 

「凪ッ!!座れッ!!」

 

“魏武の大剣”夏侯元譲の声が周囲を震わせた

 

 

 

 

「春蘭様・・」

 

さすがの凪も体を震わせるが・・・

 

「し、しかしこのままでは隊長が!!」

 

どうにか言いたいことを搾り出した

 

しかし、春蘭の迫力は衰えない

 

「これは、あ奴が望んだ戦いだ!お前が止める資格なぞない!!」

 

「!?」

 

今度こそ凪は黙り込む・・・

 

そんな凪を一蹴してから、春蘭は周りの者にも叫ぶ

 

「貴様らもだ!目を逸らすな!!」

 

「「「「!?」」」」

 

顔を俯かせていた季衣、流琉、沙和、真桜がビクッ、と体を震わせる

 

しかし、戸惑いがあるようでなかなか顔を上げようとしない

 

その時、

 

「・・あなたたち!」

 

「「「「!?」」」」

 

凛とした、華琳の声が響いた

 

「春蘭の言う通り、一刀の戦いから目を逸らすことは許さないわ!」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

華琳の声に反応して、少しずつ顔を上げる

 

4人の目に映ったのは・・・

 

 

祭に吹き飛ばされ・・・

 

 

地面を転がり・・・

 

 

ボロボロになりながらも立ち上がる姿・・・

 

 

「「「「っ!!」」」」

 

思わず息を呑んでしまう・・・

 

 

----------目を逸らしたい・・・

 

----------目を覆いたい・・・

 

 

それほど衝撃的な現実・・・

 

 

「焼き付けなさい・・・・・・一刀のあの・・・・・・姿を・・・・・・」

 

 

覚悟を決めた4人の耳に届いたのは華琳の優しくもどこか厳しい言葉だった・・・

 

 

 

 

舞台上では、もう何度目かは分からないほど、一刀が吹き飛ばされ・・・

 

そして、また・・・

 

ガキンッ!!

 

「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

立ち上がっていた・・・

 

 

「・・・はぁ・・・ふぅ・・・」

 

さすがの祭も少しだけ呼吸を乱れさせる

 

「(まったく呆れた奴じゃ・・・。いつ倒れてもおかしくはないほど喰らわせているというのに・・・)」

 

そして、疑問に思い始める・・・

 

「(何が北郷をああさせるのじゃ?・・・)」

 

と・・・

 

 

こう思うのは当然のことだろう・・・

 

 

祭も自分自身、納得のいく攻撃が出来ている

 

 

実力差でいっても祭にとっては問題にならない程度だ・・・

 

 

ましてや、ボロボロの状態からの逆転などもうありえないことだ・・・

 

 

しかし、それでも・・・

 

 

一刀は立ってくる・・・

 

 

何かを”支え”として・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・北郷」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

祭の問いかけに一刀が顔を上げる

 

「これ以上やっても意味はなかろう?・・・なぜ諦めん?」

 

剣を下ろして語りかける祭の言葉に反応して、目を閉じ薄く笑う・・・

 

「諦める・・・・・・か・・・・・・」

 

そして、思い出すように・・・・・・静かに語りだす・・・

 

「・・・・・・俺はね・・・祭さん・・・」

 

「・・・・・・」

 

祭も黙って見つめる・・・

 

「昔・・・・・・一番大切なことを諦めて・・・・・・凄く後悔したことがあるんだ・・・」

 

「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」」

 

一刀の声は聞こえないものの、雰囲気に呑まれ、会場全体も静けさに包まれる

 

 

そして、一刀の想いが・・・・・・

 

紡がれる・・・・・・

 

 

 

「大切な・・・・・・人たちとの・・・・・・」

 

 

----------華琳たちと・・・・・・

 

 

「・・・約束を・・・・・・破ったんだ・・・・・・」

 

 

----------ずっと一緒にいるって言ったのに・・・・・・

 

 

 

一刀の独白は続く・・・・・・

 

 

「だから・・・・・・今度は・・・・・・」

 

 

----------その眼差しに強い決意を込め・・・・・・

 

 

「・・・誓ったんだ・・・・・・」

 

 

----------腕に力を込め、刀を持ち上げる・・・・・・

 

 

「もう・・・・・・あの娘たちと・・・・・・共に歩んでいくことを・・・・・・」

 

 

----------足にもしっかりと力を込め・・・・・・

 

 

「あきらめない・・・・・・って」

 

 

----------しっかりと祭を見据え・・・構える・・・・・・

 

 

「・・・・・・」

 

 

祭も感じる・・・

 

 

一刀の想いを・・・・・・

 

その強さを・・・・・・

 

 

そして同時に・・・・・・

 

納得する・・・

 

 

----------彼を支えているものが伝わってきたから----------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからこれは・・・」

 

大きく息を吸い・・・吐いた・・・

 

「誓いに対する俺の覚悟・・・」

 

視線をキッ!っと強める

 

 

----------「どんなことだって諦めない・・・・・・どんなに惨めでも・・・俺は最後まで足掻き続ける!」----------

 

 

「!?」

 

あまりにも強い想いが・・・・・・

 

その視線によって伝わってくる・・・・・・

 

それは祭自身が先程まで予測していたものよりも・・・・・・

 

ずっと強い想い・・・・・・

 

 

 

驚く祭を見て、一刀が表情を少し緩める・・・

 

「もし、俺のこの覚悟があの娘たちに少しでも届くなら・・・・・・」

 

そして笑みを浮かべ・・・

 

----------「俺はこの姿を・・・・・・誰に馬鹿にされたって・・・・・・誰に笑われたって構わないよ」----------

 

そう・・・・・・言った・・・・・・

 

 

「・・・・・・」

 

祭も一瞬唖然としたが、

 

「・・・くっ・・・くっくっくっくっくっ」

 

込み上げる笑いを我慢できなくなった・・・

 

 

しかし、これは馬鹿にしているものではなく・・・・・・

 

 

自分が認めた相手が予想以上のものだったことに対する嬉しさで・・・

 

 

「・・・くっくっくっ・・・よかろう、北郷!この黄公覆、貴様のその覚悟に免じて、全力で行こう!」

 

剣を構え直し、迎え撃つ体勢を整える

 

「あぁ・・・・・・俺も・・・・・・全部ぶつけるつもりでいくよ・・・」

 

一刀も呼吸を整え、切っ先を祭に向ける

 

「「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」」

 

会場中も今だ沈黙が続いている・・・

 

ただ・・・・・・

 

その一瞬を見逃さないために・・・

 

 

----------そして、その時は訪れる

 

 

「・・・・・・・・・ッ!うおぉぉーーーー!!!!」

 

全ての力を振り絞るような一刀の突進

 

そして、

 

「はあーーーー!!!!!!」

 

それを阻むかのような祭の脇腹への攻撃

 

「!!」

 

祭の全力の一撃

 

まともに喰らえば確実に試合は終わる・・・

 

一刀にもそれぐらいは容易に想像できた

 

だからこそ・・・

 

「うあぁーーー!!!!」

 

ガキーンッ!!!!

 

刀で受け止めた

 

「なっ!?」

 

いや、刀だけではない・・・・・・

 

両手に持っていた長刀を右手だけに持ち替え、脇腹の前に構え、自分の体ごと受け止めた

 

「ぐぅッ!!!まだだぁーーーー!!!!」

 

一瞬で空いていた左手で魂切の鞘をとり、祭の首元に振り下ろす

 

「くっ!!」

 

この最終局面・・・

 

一瞬、祭が焦りの表情を見せる

 

 

自分が振りぬくほうが先か・・・

 

 

それとも・・・

 

 

「!はあぁーーーー!!!!」

 

「うおぉーーーー!!!!」

 

両者全力の一撃・・・

 

 

 

 

そして勝敗は・・・・・・

 

 

バキーーンッ!!!!

 

 

下された・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガッ!ドシャーーーー!!!!ドンッ!!!!!!

 

「・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・・・ふぅ」

 

舞台上には、祭・・・・・・

 

そして・・・

 

砕けた『魂切』・・・

 

 

対して・・・

 

 

場外には大の字になった一刀の姿・・・

 

 

 

「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」」

 

 

沈黙の後・・・

 

 

「き、き、決まりましたぁーーー!!!!この特別試合!しょ、勝者は黄蓋将軍!!」

 

「「「「「「「「「「「ッ!?わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

驚きと共に、歓声が辺りを包み込んだ

 

 

「ほれっ!何しとる、早く担架をよこさんか!!」

 

祭が舞台上から、舞台脇に控えていた衛生兵に呼びかけると、衛生兵は慌てた様子で一刀の元に向かった

 

「「「隊長!!!!」」」

 

「「兄ちゃん(様)!!!!」」

 

魏の応援席からも何人かが飛び出していく

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

祭は、担架で運ばれる一刀を見た後、自軍の応援席へと引き返して行った・・・・・・

 

 

~呉~

 

「お疲れ様、祭♪一刀どうだった?」

 

祭が応援席に戻り、最初に声を掛けたのは雪蓮と・・・

 

「最後は危なかったようですね?」

 

少し意地の悪い笑みを浮かべた冥琳だった

 

「まぁ、確かに危なかったがの・・・・・・実力的にはまだまだじゃ」

 

顔に笑みを浮かべ、続ける・・・

 

「じゃがの?・・・・・・男としては・・・・・・なかなかのものじゃ」

 

そう満足そうに答える祭に、雪蓮と冥琳も笑みを浮かべ頷いた・・・

 

 

 

 

 

 

~魏~

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

一刀が運ばれた後、魏の応援席では2人の将が黙って立ち上がった

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

それは次の試合を控える、春蘭と霞・・・・・・

 

「・・・姉者、霞」

 

秋蘭の言葉に2人が振り向く

 

「私は・・・どちらに勝って欲しいとは思わん・・・・・・・・・ただ・・・」

 

一度言葉を区切り、柔らかな笑みを浮かべ伝える

 

「一刀が我らに見せてくれたように・・・・・・戦ってほしい・・・」

 

と・・・

 

そして、それに・・・

 

「そうね・・・。私もそれを望むわ。春蘭、霞・・・・・・全力で臨みなさい!」

 

 

華琳も続いた・・・

 

「「・・・・・・」」

 

2人は黙っていたが、やがて・・・

 

 

「「(コクッ)」」

 

と、頷いて答えた・・・

 

 

 

~準決勝~

 

「それでは準決勝第1試合、選手入場です!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

再び、審判の声が会場に響き渡る・・・

 

「東!魏軍、夏侯惇将軍!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「・・・・・・」

 

1回戦とは違い、静かに舞台上へと上がる・・・

 

「西!同じく魏軍、張遼将軍!!!!」

 

「・・・・・・」

 

霞も静かに集中して、舞台中央へと向かう・・・

 

 

 

「・・・惇ちゃん」

 

「・・・何だ?」

 

「ウチな?今、めちゃくちゃ燃えとるんよ・・・」

 

「・・・そうか」

 

両者共に武器を構える・・・

 

「一刀が伝えたかったこと・・・・・・惇ちゃんにも届いたやろ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

少し沈黙があったが、やがて

 

「・・・・・・・・・・・・あぁ」

 

と、短く答え、殺気をみなぎらせた・・・

 

「・・・それでこそや・・・・・・それでこそ、おもろい試合ができるわ・・・」

 

霞は顔に笑みを浮かべる・・・

 

その笑みは心の底から戦いを楽しんでいるからこその笑み・・・

 

 

「最初から全力で行くで?」

 

「・・・・・・来い!」

 

春蘭の言葉を合図に・・・

 

「それでは・・・・・・・・・・・・始めッ!!!!!!」

 

試合開始の声があがった・・・

 

 

 

 

 

 

 

----------大好きな女の子たちがいる・・・・・・

 

 

 

----------大切な約束をした女の子たち・・・・・・

 

 

 

----------「「・・・・・・・・・」」

 

 

 

----------えっ?当たり前だよ・・・

 

 

 

----------「「・・・・・・・・・」」

 

 

 

---------忘れたことなんてないよ・・・

 

 

 

 

 

----------だって、あれは・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

----------あの約束は・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~医務室~

 

「うっ・・・・・・うぅん・・・・・うっ・・・」

 

重たい瞼を開ける・・・

 

「・・・・・・一刀?・・・気がついたか?」

 

横に誰かの気配を感じる・・・

 

まだ視界はぼやけていたが、とりあえずそちらの方に視線を向けた・・・

 

「・・・一刀?私が分かるか?」

 

「・・・・・・しゅう・・・らん?・・・・」

 

発した言葉に秋蘭が、あからさまに安心した様子が窺えた

 

「・・・・・・ここは?」

 

はっきりとはしない頭で考える・・・

 

「ここは医務室だ。お前は祭殿に負けて、気絶したのだが・・・・・・覚えているか?」

 

「・・・・・・あ~・・・うん。・・・なんとなく」

 

一刀の頭に吹き飛ばされた瞬間の映像がよぎる・・・

 

「・・・・・・そうだ・・・・・・他の試合は?・・・・・・」

 

「・・・・・・もう次は決勝だ。お前が眠っている間に準決勝は終わったぞ?」

 

「えっ!?・・ッツ!!」

 

「馬鹿者・・・無理をするな」

 

あまりにも意外な言葉に驚いて起きてしまったが、すぐに体中からの痛みによって寝台に戻される

 

「・・・ッつ!あ、じゃあ決勝は?」

 

「決勝は・・・・・・姉者と呂布だ」

 

「春蘭が!?本当に?」

 

「あぁ、本当だぞ・・・・・・なぁ、姉者?」

 

「へっ?」

 

秋蘭が振り返った向こう・・・扉の近くに体にいくつもの痣をつけた春蘭が壁を背に立っていた

 

「春蘭・・・どうしたの、それ?」

 

「むっ、これか?これは霞との一戦でな・・・」

 

春蘭にしては大人しい対応に少し疑問を抱く・・・

 

「ってか、決勝は?まだ大丈夫なの?」

 

「あぁ、それなら大丈夫だ・・・。今は決勝前の休憩時間だからな。他の者も先程までいたが、華琳様に言われて、応援席に戻っていったぞ・・・」

 

春蘭の代わりに秋蘭が答える

 

「・・・そんなことよりもだ、北郷?」

 

「ん?」

 

春蘭が厳しい表情のままに聞いてくる

 

「・・・・・・貴様、あれ程の動きをいったいどうやって学んだのだ?」

 

「それは私も聞きたいな・・・。荒削りとはいえ、昔とは別人のようだったぞ」

 

魏の誰もが思っていた疑問・・・

 

少なくとも一般兵では相手にならないほどの腕前・・・

 

祭相手だったからこそ、厳しかったが、おそらく並みの将程度の実力は十分にある

 

3年あったとしても考えられない成長だった・・・

 

 

「・・・・・・」

 

一刀は目を閉じて、黙っていたがやがて目を開け、語りだした

 

「・・・・・・約束・・・・・・・」

 

「「!?」」

 

約束と言われ、2人は体を震わせる・・・

 

そんな2人の様子に気づきながらも一刀は続ける・・・・・・

 

「俺たち3人は華琳をずっと支えていく・・・・・・・・・確か・・・最終決戦前だったかな?・・・・・・覚えてる?」

 

2人は何も答えられない・・・

 

 

ただ体を震わすのみ・・・

 

「忘れてても無理はないかもね・・・・・・話してる途中に突然だったし・・・・・・」

 

「っく!?」

 

秋蘭は違うと言いたかった・・・

 

覚えてると言いたかった・・・

 

しかし・・・・・・

 

一刀が覚えていてくれたのが嬉しくて・・・・・・

 

今、口を開けば泣いてしまうと思ってしまった・・・・・・

 

春蘭も同じなのだろう・・・

 

ただ黙っているようには見えるが・・・・・・

 

その目には涙が浮かんでいる・・・・・・

 

 

そんな2人をよそに、一刀は続ける・・・

 

「・・・でもね・・・・・・俺にとったら、その約束が救いだったんだ・・・・・・」

 

独りで元の世界に戻され絶望した時、いつでも前を向く華琳の姿が自分を救ってくれた・・・

 

しかし、それでもいつかは限界がくる・・・

 

剣術を学んでも・・・・・・

 

いくら勉強しても・・・・・・

 

あっちの世界に帰れないんじゃないか?・・・・・・

 

そう思ったのも一度や二度ではない・・・・・・

 

 

しかし、その度に・・・・・・

 

春蘭、秋蘭と交わした約束が自分と向こうの世界との繋がりを認識させてくれた・・・・・・

 

だから・・・・・・

 

----------「その約束が・・・・・・唯一の”絆”だったんだよ・・・・・・」----------

 

 

一刀の顔に笑みが浮かぶ

 

「だから頑張れた・・・。どんなに厳しくても・・・どんなに可能性が低くても・・・。約束を果たすまでは諦めない・・・そう、思えたんだ・・・・・・」

 

「!?」

 

秋蘭にとって、もう限界だった

 

「し、秋蘭!?えっ?どうかした!?」

 

秋蘭の頬を伝う一筋の涙・・・

 

「ふふっ・・・ばか・・・ものぉ」

 

秋蘭は単純に嬉しかった・・・

 

そして、同時に悔しかった・・・

 

自分自身、先日、姉から言われなければ思い出すことは出来なかったこと・・・

 

正直に言えば、自分にとっては何でもないようなことだったのだろう・・・

 

しかし、一刀は・・・・・・

 

それを”救い”だったと言ってくれた・・・・・・

 

“絆”だと思ってくれていた・・・・・・

 

嬉しいと感じると同時に、覚えていなかった間の自分が悔しい・・・・・・

 

そんな想いが溢れ・・・

 

涙となっていたのだ・・・・・・

 

「そんなことを言われては・・・・・・泣いてしまうだろう?・・・」

 

「・・・秋蘭」

 

涙を流しながらも微笑みかけてくれる秋蘭・・・

 

そんな秋蘭に一刀も微笑みかけた・・・

 

 

「・・・・・・」

 

ガチャ

 

「春蘭!」

 

「!?」

 

黙って部屋を出ようとした春蘭にも声を掛ける・・・

 

「春蘭・・・少しこっちに来てもらっていいかな?」

 

「・・・・・・」

 

春蘭は黙ったまま天井を見上げた

 

「いい・・・かな?」

 

もう一度だけ問いかける・・・

 

すると、目の周りを真っ赤にした春蘭が寝台の横まで歩いてきた

 

「・・・なんだ?」

 

少し強がっていることが一刀には分かった・・・

 

秋蘭も分かったのか、少し笑いを堪えているようだ・・・

 

「大したことじゃないんだけど・・・・・・」

 

ギュッ、と春蘭の手を握る・・・

 

「なっ!?」

 

急な出来事に声をあげてしまうが・・・

 

「ホントにちっぽけだけど・・・・・・・・・・・・頑張って・・・」

 

「・・・・・・北郷・・・・・・」

 

真剣な表情・・・・・・

 

真剣な言葉から想いを感じた・・・・・・

 

 

春蘭は手をはずし、後ろを向く

 

そして、部屋を出る直前・・・

 

「お、お前はゆっくり休んでいろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・一刀」

 

「えっ?」

 

一刀が聞き返そうとするも、春蘭はすでに部屋を出て行った後だった・・・

 

「ねぇ、秋蘭?」

 

「なんだ?」

 

「今、春蘭、俺のこと名前で呼んだよね?」

 

「ふふっ、うむ、そうだな」

 

特別な時にしか呼ばれない呼び名・・・

 

普段であれば、呼ばれる状況ではない・・・

 

むしろ馬鹿にされてもおかしくない状況なのだ・・・

 

だからこそ・・・

 

「・・・ははっ・・・そっか・・・・・・そっか!」

 

嬉しくて笑う・・・

 

何か認めてもらえた気がして・・・

 

 

 

笑う間も体中が軋む・・・

 

それでも・・・・・・

 

込み上げる嬉しさを抑えることは出来なかった・・・・・・

 

 

~春蘭~

 

ガチャ

 

「・・・・・・ふぅ」

 

医務室を出て、入場口へと歩き出す

 

「・・・・・・一刀」

 

あやつが約束を覚えていた・・・・・・

 

それだけなのに・・・・・・

 

秋蘭と同じように涙を流してしまうところだった・・・・・・

 

 

 

カツ、カツ、カツ・・・・・・

 

「・・・ん?」

 

入場口の手前・・・・・・誰かがいた・・・・・・

 

「・・・春蘭」

 

「・・・華琳様」

 

それは愛しの主・・・・・・曹孟徳・・・・・・

 

その華琳様が私の顔を見て、ふっ、と笑った・・・

 

「・・・いい顔をしてるわね、春蘭」

 

「・・・そう・・・でしょうか?・・・」

 

「えぇ」

 

それだけ言って横を通り過ぎようとしたが、横に並んだ時に、さらに声を掛けられた

 

「・・・春蘭・・・」

 

「・・・・・・」

 

ただ黙って聞く・・・

 

「春蘭・・・・・・勝ちなさい」

 

「!?」

 

たった一言・・・

 

“勝て”と言った・・・

 

それがあなたの命ならば・・・・・・

 

「・・・・・・お任せください」

 

私はこう答えるのみ・・・・・・

 

 

~決勝~

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

決勝開始前から、会場は異様な盛り上がりを見せていた

 

そんな中・・・

 

ついに審判が舞台中央へと向かう

 

「大変お待たせいたしました!!これより、天下一品武道大会決勝戦、選手入場です!!!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

最高潮の盛り上がりの中、最強を求める2人の将が舞台に歩を進める・・・・・・

 

「東!魏軍、夏侯惇将軍!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「・・・・・・」

 

異様な空気を纏ったまま、舞台に上がる

 

「西!前回、前々回優勝者!!蜀軍、呂布将軍!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

「・・・・・・」

 

こちらはいつも通りの無表情・・・

 

 

 

「・・・・・・恋よ・・・」

 

「・・・・・・?」

 

「今回は・・・譲らんぞ?」

 

不敵な笑みを浮かべ、武器を構える春蘭・・・

 

「・・・今日の春蘭・・・・・・違う」

 

恋もゆっくりと構えだす・・・

 

「だから・・・恋・・・」

 

視線を強め、戦闘態勢に入る

 

「今日は・・・・・・全力で行く!」

 

「・・・あぁ・・・・・・望むところだ!」

 

2人の気迫がぶつかり合う・・・

 

「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」

 

会場も2人の出す空気にのまれる・・・

 

 

そして、ついに・・・・・・

 

 

「それでは・・・・・・・・・・・・・・・・・・始めっ!!!!」

 

 

最強決定への合図が出された

 

 

「だらぁーーーー!!!!」

 

「・・・・・・ッ!!!!」

 

ガギーーーーーンッ!!!!!!

 

今までの試合以上のぶつかり合い・・・

 

舞台中央で繰り広げられているのは・・・

 

技術など関係ない・・・・・・

 

単純な力勝負

 

 

「はあぁーーーー!!!!」

 

「ふっ!!はっ!!」

 

ギーン!、ガーン!・・・

 

打ち合いの中に互いに隙を見つける・・・・・・

 

「!はっ!!」

 

「!ッ!!」

 

ドガッッ!!!!

 

「「くっ!?」」

 

2つの炸裂音と同時に、2人の声があがる・・・

 

「くっ・・・うらぁー!!」

 

「っ・・・・・ふっ!!」

 

しかし、2人とも倒れずに、再び中央で打ち合う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~蜀~

 

「恋ちゃ~ん、頑張れーーー!!」

 

「恋殿ぉ~そんな奴早く倒して下され~!!」

 

「はわっ、恋さーん頑張ってくだしゃい」

 

「あわっ、頑張ってくださ~い」

 

蜀軍では武官以外の者が恋に声援を送る・・・

 

その間、武官は・・・

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

完全に魅入っていた

 

確かに技術など存在しない単純な戦い・・・

 

しかし、武官であれば誰もが一度は考えるであろう・・・

 

単純な力の強さの勝負・・・・・・

 

それが今、自分の目の前で行われている・・・・・・

 

 

だからこそ・・・

 

 

誰一人口を開くことなく戦いを見つめていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~呉~

 

「なんか楽しそうね~♪」

 

「うむ!やはり一対一の勝負はこうではないとな!!」

 

「・・・はぁ~」

 

呉では血気盛んな雪蓮と祭がキラキラとした目で舞台上の戦いを見つめ、その横で冥琳はため息をついていた

 

「うわぁ~凄い・・・」

 

「・・・・・・凄すぎて・・・」

 

「言葉が見つかりません・・・」

 

孫尚香、明命、亞莎は圧倒され

 

「・・・・・・恋ちゃんも春蘭ちゃんも本気ですね・・・」

 

「・・・・・・あれが・・・真の武官の戦い・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

穏、孫権、甘寧の3人はただただ、魅入っていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~魏~

 

「「「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」」」

 

魏では誰も口を開こうとはしない・・・

 

ただただ、この試合の行方を見守るのみ・・・

 

その時・・・

 

「・・・どうなっている?」

 

秋蘭が医務室より戻ってきた・・・

 

「五分五分・・・といったところでしょうか?」

 

答えたのは凪・・・

 

「今のところは・・・・・・やけどな・・・・・・」

 

さらに霞が続く・・・

 

「・・・・・・そうか」

 

舞台上に視線を移す

 

 

派手な炸裂音・・・

 

互いに一撃入れては、また中央で打ち合う・・・

 

そんなことを繰り返していた・・・

 

「・・・まずいわね・・・」

 

華琳が呟く

 

「そう・・・ですね・・・長期戦は厳しいかと・・・」

 

隣にいた稟も頷く・・・

 

「ど、どうして!?春蘭様、ちゃんと戦えてるじゃん!」

 

季衣が反論する・・・

 

「恋ちゃんはまさに野生ですからね~。おそらく単純な力勝負なら、恋ちゃんがわずかですが・・・・・・」

 

そんな季衣を諭すように、風がゆっくりとした口調で語りかける

 

「・・・そ、そんな・・・」

 

季衣が慌てて春蘭を見る・・・

 

春蘭は・・・

 

恋の一撃によって・・・

 

なぎ払われていた・・・

 

「くっ!!」

 

春蘭の口から悔しさを表す声が漏れる・・・

 

「まだ・・・・・・いく!!」

 

そして、恋がそんな春蘭に追い討ちを掛ける

 

「くっ・・・はっ!!」

 

ギンッ、ガンッ・・・・・・

 

どうにか受け止める・・・

 

互いに疲労のせいで威力はだいぶ落ちてはいるが、それでも恋の攻撃は防御ごしに響く

 

「!はあーー!!」

 

春蘭が体ごとぶつかり方天画戟を弾き、一閃を放つ・・・

 

「ッ!!」

 

恋も一瞬で体勢を立て直し、打つ・・・

 

ドゴッッ!!!!!

 

ズザーーーーー!!!!!

 

両者ともに吹き飛ぶが、2人の状態は両極端になる・・・

 

恋は打たれた箇所をおさえながらも、立ち上がるが・・・・・・

 

春蘭は地面に手をつき、肩で息をしている

 

 

審判もカウントをとりにいく

 

 

春蘭はまだ・・・・・・立ち上がれない・・・・・・

 

 

 

 

 

~医務室・一刀~

 

「・・・・・・はぁ~」

 

秋蘭を見送った後、一刀は暇を持て余していた・・・

 

「・・・寝てるだけってのも・・・辛いなぁ・・・」

 

秋蘭が言うには、見た目ほど深刻な怪我ではないようだが、頭を打ってしまったから念のためらしい・・・

 

「・・・霞は平気だったらしいのになぁ」

 

霞も春蘭から結構やられたらしいが、応急処置だけ済ませて応援席に戻ったらしい・・・

 

「・・・・・・決勝・・・・・・どうなってるかな・・・・・・」

 

春蘭のことを考える・・・

 

春蘭なら問題ないと思いながらも・・・

 

3年前に見た呂布の強さに身震いしてしまう・・・

 

ゾクッ

 

「!!」

 

何だろう・・・

 

嫌な予感がする・・・

 

春蘭・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・よしっ!!」

 

体中からの痛みを我慢しながら、体を起こし立ち上がる・・・

 

「ッツ!!」

 

少しだけ・・・・・・

 

 

少しだけ見に行こう・・・・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

痛む体を引きずりながら、俺は部屋を出た・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・なっ!?」

 

体を引きずりながら、どうにか会場までやってきた俺は信じられない光景を目にした・・・

 

それは・・・

 

春蘭が吹き飛ばされ、地面に手をついている姿・・・

 

審判がカウントをとりにいく姿も見えた・・・

 

「・・・春蘭」

 

見るからにボロボロ・・・

 

体についている痣は先程よりも増えていて、さらに悪化していた・・・

 

 

肩で息をしている・・・

 

体力的にも限界なのだろう・・・

 

 

「(・・・・・・でも・・・)」

 

----------春蘭のあんな姿・・・・・・

 

「(それでも・・・)」

 

----------見たくない・・・・・・

 

「(立って欲しい・・・)」

 

----------これは・・・・・・

 

「(春蘭が勝って・・・)」

 

----------俺の我が侭・・・・・・

 

「(笑う顔を見たいんだ・・・)」

 

 

だから・・・

 

 

気づけば・・・・・・叫んでいた・・・・・・

 

 

「しゅんらーーーん!!がんばれーーーー!!!!」

 

 

って・・・・・・

 

 

 

 

~春蘭~

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・」

 

私は・・・また負けるのか・・・・・・

 

こやつに・・・・・・

 

恋には勝てんのか・・・・・・

 

 

そう思った瞬間・・・・・・

 

 

今まで我慢してきた痛みが、疲労が一気にふきだしてきた

 

「くそっ!!」

 

どうにか七星餓狼を支えに立ち上がろうとするが上手く立てない・・・

 

周りが何か言っているのが聞こえる・・・

 

おそらくは魏軍の応援席から・・・・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

応援してくれているのだろう・・・

 

それでも・・・

 

その声ははっきりと届かない・・・・・・

 

 

足が震えだす・・・

 

「(もう・・・無理か・・・・・・)」

 

 

 

----------諦めかけたその時・・・

 

 

 

「しゅんらーーーん!!がんばれーーーー!!!!」

 

「!!」

 

----------聞こえるはずのない声が・・・聞こえた・・・

 

 

「勝ってくれーーーー!!!!しゅんらーーーーん!!」

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

間違えようのない声・・・・・・

 

一度は失った声・・・・・・

 

それでも・・・・・・

 

やっと取り戻せた声・・・・・・

 

「・・・・・・」

 

その声が・・・

 

自分の背中の方から聞こえた・・・・・・

 

 

「(・・・・・・そうか・・・)」

 

不思議と足の震えが止まる・・・

 

「(勝て、と・・・・・・そう言うんだな・・・)」

 

しっかりと前を向く・・・

 

「(一刀!!)」

 

ガキンッ!

 

「!?」

 

剣を地面から引き抜き、足だけで立つ・・・

 

横にいた審判が驚くのが分かる

 

 

「まだ・・・・・・やれますか?」

 

審判から声が掛かる

 

当然・・・

 

「あぁ・・・」

 

そう、答えた・・・・・・

 

 

「・・・・・・」

 

恋も冷静に構え直す・・・

 

「・・・・・・ふぅ・・・」

 

もう先程までの疲労感はなく・・・目の前の恋に集中する

 

「(しかし、おそらくは次が最後だろうな・・・)」

 

冷静に自分の状況を判断する・・・

 

「(一刀・・・・・・お前もこう感じたのか・・・)」

 

一刀の試合を思い出し、笑みがこぼれる・・・

 

「(ならば・・・私も見せよう・・・)」

 

ゆっくりと息を吐き、集中力を高める

 

「(私なりの・・・・・・)」

 

そして一気に・・・・・・

 

「(覚悟を!!)」

 

駆け出した

 

 

 

「はあぁーーー!!!!」

 

今まで以上の気迫

 

「うっ!!」

 

恋が気迫で押される・・・

 

その為・・・

 

「らあぁーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

ガキーーーーーーーーーーンッ!!!!!!

 

「あぁッ!!」

 

春蘭の攻撃を、ただ受けることしかできなかった

 

 

「はあぁーーーーーー!!!!」

 

春蘭の攻撃・・・

 

その剣に自分の想いを・・・

 

覚悟をのせ・・・

 

振りぬいた

 

 

バキーーーーーンッ!!!!!

 

 

「がッ!!!!!」

 

ドゴッッ!!!!

 

 

そして、その剣は・・・・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

方天画戟を砕き・・・・・・

 

「ぐっ・・・うッ!?」

 

恋の体を吹き飛ばした・・・・・・

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

目の前の出来事をいまいち把握しきれない春蘭・・・

 

しかし・・・

 

「き、ききき決まりましたぁーーーーーー!!!!!!今年度の天下一品武道大会を制したのは!!!!魏軍、夏侯惇将軍!!!!!!!!!!」

 

「「「「「「「「「「「わああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

審判と観客の声に気づかされる・・・

 

「・・・・・・ッッッ!!!!!」

 

 

---------自分が勝ったのだと・・・----------

 

 

魏の応援席から人が飛び出すのが見えた・・・

 

 

「!!そうだ!一刀ッ!!!!」

 

慌てて後ろを振り向き、観客席を見る

 

「!!」

 

そこで春蘭が見たのは・・・

 

 

両手を上に突きあげ・・・

 

 

満面の笑みで崩れる一刀の姿だった・・・・・・

 

 

 

 

 

~医務室~

 

「・・・いつつッ・・・ははっ・・・体中が痛いや・・・」

 

「・・・まったく・・・無理をするなと言ったであろう・・・」

 

「この馬鹿者が!」

 

春蘭の優勝が決まり、表彰式を終えた後、春蘭と秋蘭の2人は観客席で倒れた一刀の様子を見るために、再び医務室を訪れていた

 

他の者たちも来ようとはしたのだが、なぜか華琳から止められ、しぶしぶ帰っていった

 

「いや~なんか嫌な感じがしてさ・・・・・・行ってみたらアレだったし・・・」

 

「なんだと!」

 

「・・・姉者、落ち着け・・・」

 

「むむむっ・・・」

 

秋蘭に諭される春蘭の様子がおかしくて一刀の顔に笑みが浮かぶ

 

「あはは・・・・・・うん、でも・・・・・・本当におめでとう」

 

「なっ!?//////」

 

「ふふっ、そうだな・・・・・・おめでとう、姉者」

 

「うっ//////」

 

一刀から突然の言葉に顔を真っ赤にさせ、秋蘭の追い討ちに顔を俯かせるが・・・

 

やがて・・・

 

「おぅ・・・」

 

と、だけ答えた・・・・・・

 

 

春蘭とのやり取りがあった後、一刀が何かを思いついたように話し出す・・・

 

「あ、そうだ2人とも、もうちょっとこっちに来てくれない?」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「な、なんだ?」

 

 

秋蘭は寝台の右、春蘭は左側に腰掛ける

 

「・・・・・・秋蘭・・・(ギュッ)」

 

「か、一刀!?」

 

一刀が秋蘭の手を握る・・・

 

「・・・春蘭も(ギュッ)」

 

「!!な、ななな何をする!?」

 

もう一方の空いた手で春蘭の手を握る

 

「誓いをしよう・・・」

 

「「何?」」

 

2人が少し顔を赤くして、反応を返してくれる

 

「3年前の約束・・・・・・あの時は会話の途中で急だったし・・・今度は3人でちゃんと誓いたいんだ・・・」

 

「「・・・・・・一刀」」

 

一刀は一度目を閉じ、決心したように目を開ける・・・

 

「俺は、これから何が起ころうとも華琳を支え続ける!!そして、そのことを絶対諦めない!!・・・・・・・・・2人は?」

 

2人は一瞬、キョトンとした顔を見せたが、すぐに笑みを浮かべ答える

 

「無論、私もだ!我が身、我が剣、我が心!全て華琳様の為のものだ!!」

 

「うむ!私が引く弓も全ては華琳様をお守り差し上げるためのものだ!」

 

3人の心が再び1つになる・・・

 

 

 

 

 

----------「「「オレ(私)たち3人は華琳(様)をずっと支えていくんだ!!!」」」----------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------3年間・・・

 

 

 

 

----------彼と彼女たちの歩んできた道は・・・

 

 

 

 

 

----------決して交わることはなかった・・・

 

 

 

 

 

----------しかし、それでも・・・

 

 

 

 

 

----------諦めずに運命を手繰り寄せるものがいた・・・

 

 

 

 

 

----------ただひたすらに・・・

 

 

 

 

 

----------いつかはつながる道だと信じて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------そして今・・・

 

 

 

 

 

----------その瞬間は訪れた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

----------これから先、何が起こるかは分からない・・・

 

 

 

 

 

----------しかし、彼と彼女たちがした誓いは・・・

 

 

 

 

 

----------永遠である・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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