No.160439

こまりこまりまくる

屋上が恭介にばれないように、機転を利かせて小毬を昼食に誘った理樹。だがリトルバスターズの濃いメンツにあてられて彼女は……

2010-07-25 01:35:42 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3498   閲覧ユーザー数:3451

「なあ理樹、あれ」

 恭介が指さした先に、小毬さんがいた。

「神北がこんな所にいるなんて珍しいじゃないか」

 僕は言葉に詰まる。

 小毬さんが昼休みに最上階にいることはそんなに

珍しくない。いつも屋上でご飯を食べてるからだ。

 今日たまたま、僕が三年の教室まで恭介を迎えに

来たのが、普段と違うところだった。

「あ、あー、そうだね、ドーシテダロネ」

「どうしてそんなに棒読みなんだ……お、階段昇っ

ていくぞ」

 小毬さんを追いかける気マンマンの恭介を、僕は

慌てて追いかける。

 小毬さんは屋上への踊り場で鞄を漁っていた。

「あれ? あ、あぁ~っ」

 しばらくもぞもぞした後に泣きそうな顔でうなだ

れる小毬さん。こんな時になんだけど、あんまり動

くと、その、下からだから……って今はそんなことはどうでもいいよ!

「なにしてんだ? おおい、神北」

 小毬さんはびくりとすくみ上がると、おそるおそる僕たちに顔を向ける。

「きょ、恭介さん。理樹くん」

「どうしたお前。屋上に上がりたいのか?」

「え、えーと、そ、ソンナコトナイデスヨ?」

「どうして神北まで棒読みなんだ」

「ね、ねえ、小毬さん! お昼まだだよね!? 今日は一緒に食堂で食べようよ!」

「え? うん、いいよー」

 あ、小毬さん、僕が必至に話題をそらそうとしてるのに気づいてない。素だ。

 

「というわけで、今日は神北を含めて親睦会みたいなものを開催する。いつもと席が違

うが気にするな」

 小毬さんが僕の隣に座ったので、鈴が反対側に隠れた。なので席順は、左から順に小

鞠さん、僕、鈴。むかって左から謙吾、恭介、真人となっている。

「いまさら親睦会っても、放課後いっつも練習してるじゃねーか」

「もっともだ。だが、一緒に昼食を食べてはいけないこともないだろう」

「その通りだ謙吾。それに俺たちはまだ神北がメシを食うところを見たことがない!」

「はっ!?」

 なぜかそこに反応する小毬さん。

「今日は思う存分見ることができるぞ、目を離すなよ」

「おお、なるほど」

「なんかいいことあるのか、それ」

「う、うわあんっ! ご飯食べるだけなのにすっごい嫌だぁ」

「あんまり小毬さんをいじめちゃダメだよ……」

 僕の隣で、鈴の耳が反応した。

「いじめてるのか」

 ずかずかと真人に近寄り、蹴る。

「いでぇっ! 俺はなにもしてねぇだろうがよっ!」

「ごめんね、小毬さん。みんないつもこんな調子で」

「ええ!? いつも蹴られてるんだ。痛そう……」

 ううん、なにかおかしい。反応するところがおかしい気がするけど、小毬さんの本気

で心配そうな顔を見てると、どうでもよくなってくる。

「大丈夫だよ。真人はあれで喜んでるんだから」

「喜んでねぇよっ!」

「確かに真人は、自分で蹴られるようにしむけてる傾向があるな」

 お、謙吾がノってきたぞ。

「お前、痛いのが嬉しいのか」

「なんでだよ!」

「特に女子に蹴られるのが好きらしい」恭介もノってきた。

「そうらしいな。じゃあ、ちょっと神北に蹴ってもらったらどうだ」

「え、ええ!? ……ええと……」

 な、なんか展開が怪しくなってきたな。

「……蹴るときはかかとを張って、まっすぐにねじ込むんだ」

 鈴が僕の後ろでアドバイスを出しはじめた。鈴ばっかりは素で本気だ。

「や、やだなぁ棗さん。蹴ったりなんかしないよぉ」

「蹴らないのか?」

「うん。棗さんも、あんまり蹴っちゃダメだよ」

「どうしてだ?」

 恭介のヤツ、きっと場を和ませるためにあんなこと言ったんだろうけど。僕はしどろ

もどろに説明しようとする小毬さんに同情するしかなかった。

  


 
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