No.123074

ミルクティー

BLOさん

けいおん! より 澪×律 です。

素直な人格、抑圧された望み
それらは時として、爆発する

2010-02-08 07:40:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:932   閲覧ユーザー数:899

 

「律ー」

「あれ? どうしたんだ、澪」

音楽室へと続く廊下、その途中で澪に抱きつかれてしまった。

う~む、いつもなら恥ずかしがって、手すら握ってこないのに。

「あのね、部室でね。あのね……」

あはは……コレは聞き出すのに苦労しそうだな。

いつもはしっかり者なのに、怖いモノでも見たのかな?

でも、今は昼間だし、私もおどかした覚えがない。

「むぎが……むぎと……」

むぎが――いや、むぎと、か?

はぁ、何でこうまでなっちゃうかな。少し落ち着けば良いのに。

「澪」

「な、何っ?」

いや、私相手に驚かれても困るんだけどさ。

まぁ、いいや。そこまで、悩むことじゃないし。

「落ち着けって、ホラ」

混乱している澪への特効薬。

私と澪の間だけの特効薬。

「あっ……う、うん」

くっ~! 真っ赤になった澪は本当に可愛いなぁ。

このまま小脇に抱えて、持って帰りたいよ。

「その、ありがと」

そして、突然冷たくなるこの態度。

もう見慣れたけど、何度見ても面白いぞ?

「気にすんなって、いつものことだろ?」

「そうかもしれないけど、学校では止めて欲しい」

ふぅ、我侭なお姫様だなぁ。

ま、そんな澪も可愛いんだけどさ。

「何で? 髪にキスしただけじゃん」

「キ、キスとか……そんなに大きな声で言うな、バカ!」

変わらないな~。

何回やっても真っ赤になるし、文句だって言われる。

ちょっとだけ変わる表情に気付くことがなければ、こんな関係にはなれなかったのだろう――

 

 

     ◇

 

 

「で、ムギがどうしたって?」

いちゃつく為だけにやったわけではないし、ちゃんと聞いとかないとな。

後で、また文句を言われる。

「そ、そうだった!」

今の反応、忘れてたな。

まったく、これならもう少しの間、抱かせてくれてても良いじゃんか……。

「あのね、音楽室で唯が!」

ムギじゃなかったのかよって、ツッコミ入れちゃ駄目だよな。

きっと、ダメなんだよな?

「でね、その。むぎと唯がね……」

ほうほう、むぎと唯がいたわけか……。

軽音部の部室だし、別に驚くようなことでもないよな。いつものことだ。

「でね、でね。その、音楽室で、唯と紬が……」

あー、話がループしちゃってる。

落ち着いたと思ったけど、甘かったか。仕方ない。

「だから、唯がね」

「落ち着けって……」

再び、髪にキス。唇にすれば、一発で落ち着いたのかな?

そんな思いが、頭をよぎる。

ん~、髪の毛から良い匂いがする。澪らしい、落ちついた匂いだ。

「あわわ……大丈夫、大丈夫だから、もう離して」

全然大丈夫そうに見えないけどな。

まったく、澪は照れ屋さんだなぁ。

「えーとね、音楽室でキスしてたの」

「はい?」

音楽室でキスしてた?

いや、誰と誰が?

「むぎと唯がキスしてたの!」

「なんだって!?」

むぎと唯がキスしてた?

ん、音楽室でか?

「だから! 音楽室でむぎと唯がキスしてたの!」

――なんでそんなことになってるんだ?

あー、確かに、ムギに聞けとはいったけど……ムギが危ない趣味を持ってそうな気もしたけど。なんで、キスしてるんだ!?

私が言ったのは友情であって、愛情じゃない。勿論、キスのやり方を聞かれたわけでもない。どこかで間違えたのかなぁ。

まぁ、それにしても2人が恋人になったのか。

うん、別に2人がそういった関係になっていたとしても、それは本人達の自由だし。私が口を出すことでもないよな。

末永くお幸せに、だな。

「律?」

「えっ? 何、澪」

「ズルいんだよ!」

何が、と聞く程私も野暮ではない。

でも、澪がこうなってしまうと、手に負えなくなってしまうのは事実だ。

いつものことながら、困るなぁ。

「むぎと唯はズルいんだよ!」

そんなことを言われても、本人達は困るだけだ。

もちろん、私だって困るけど……これも澪の可愛いところだと思えば、気にならない。

実際、可愛いしOKだ。

「学校の、それも私の前でキスするんだぞ!」

いや、気づいてないだけだろう。

唯はともかく、むぎは周りに配慮できるぞ?

それにしても、あまりキスキスと連呼するのはヤバいよな。

誰かに聞かれたりしたら、後が大変だ。

「私だって律としたいのに……」

「分かってるって。落ち着けよ、澪」

まずは澪を落ち着けること。

見ている分には可愛いんだけど、こうなてる間は話を聞いてくれないし、結構大変なんだよな。

「ホ、ホント? 律」

「だから、落ち着けって! 大丈夫、澪の気持ちは全部分かっているから」

どんな理由があるにしろ、むぎと唯がキスをしていたのは事実なんだろ。

自分達以外に、女の子同士のカップルが誕生するなんて考えてなかったけど、祝福してやらないとな。

「ホント? 律は私を受け入れてくれるの?」

「いつでもいいぞ。私の胸に飛び込みたまえ――受け入れる?」

澪の話を聞き流していたせいで気付かなかったけど、一体どんな流れになってるんだ?

受け入れるとか、飛び込むとか、私は何を言っているんだ?

「うん、やっぱりそうだよね。律だってしたいよね」

ホント、話はちゃんと聞いていないと駄目だな。いつの間にか、不思議な方へと流れていく。

それでも、澪の性格は把握しているし、ある程度ならコントロール出来るさ。

「私は良いけどさ。まだ学校だぞ?」

恥ずかしがり屋の澪相手なら効果抜群。すぐ引き下がってくれるだろう。

ふっふっふ。だてに長く付き合ってない。

「うん、まだ学校なんだ。ココは学校なんだ。誰かに見られちゃうかもしれないし、そんなことになったら恥ずかしいし……」

やっぱりな。どんなに暴走しても、澪なら止まるしかないよな。

学校でキスするなんて、澪には無理だ。

「学校……でも、やっぱり」

我慢出来なくなったとしても、恥ずかしさには勝てない。それでこそ、澪だ。

私はソレをよーく知っている。

「うん、バレたって平気だよね。だって律との関係だもん」

さて、熱愛中のカップルに冷やかしを入れますか。

「ほら、澪。音楽室へいこうぜ」

真っ赤になる2人を見るのも、楽しいだろう。

「律っ!」

「は、はいっ!」

足を進めようとした私に、釘を刺したのは澪。

普段では考えられない叫び。その迫力に、思わず気をつけの姿勢をとってしまった。

何かあったのか?

「やっぱり駄目だよ」

「だよな。澪だったら、恥ずかしさが上回ってそんなこと出来ないよな」

ソレで良い。ソレでこそ、私の知っている澪だ。

「ううん、違うよ。もう、無理なんだよ!」

「えーと、我ムリって何が?」

まさかと思うけど、キスしたいとか言わないよな?

我慢出来なくなったなんて、言わないよな?

「律とキスしたい!」

「いや……ココ、学校だぞ?」

「分かってるよ、そんなこと」

おいおい、よりにもよって――外れて良い時は、外れてくれよ。

こんなところまで、分かってなくて良いってば。

「誰かに見られちゃうかもしれないんだぞ?」

ムダかもしれない。

そう思っても、抵抗だけはしてみる。

澪の気持ち、変わってくれないかな?

「別にそんなの構わないよ」

私が構うんだよ!

澪の評判とか、澪への偏見とか……その、色々とな。

「えーと、澪さん? 本気ですか?」

「本気も本気。今すぐキスしないと納まらないの」

「いや……ちょっと待てよ。さすがにマズいって!」

私の心配なんて、知るわけもない。

私の心の叫びが、伝わるわけがない。

「律は、私のこと嫌いなの?」

「好きだけどさ。ソレとコレとは、話が別だろ?」

私だって、我慢しているんだ。

私だって、我慢しているのに……。

「だって、ズルいんだもん。私だって……私だって律と手を繋ぎたいもん。キスだってしたいもん」

「その気持ちは嬉しいんだけどさ。その、誰かに見られたら恥ずかしいよな?」

「私と律は恋人なんだもん。見せつければ良いんだよ!」

でも、澪はどんどんと迫ってくる。

私の心の葛藤なんて知らないまま、迫ってくる。

ホント、どうしろって言うんだ?

「いや、でもな、節度ってもんがあるだろ?」

「そんなの知らない。私は今、ここで律とキスがしたいの」

いつもの澪にはない魅力。ソレにあてられて、クラクラしそうだ。

あー、もう、可愛いな。襲いそうになるから、頑張ってくれよ。

「……いつも消極的な澪が誘ってくれるのは、魅力的なんだけどな。その、やっぱり帰ってからにしないか?」

「うぅ……律は私とキスしたくないの?」

ギリギリのところで踏みとどまっているのに、ソレは販促だぞ?

「律は私が嫌いなの?」

「好きだけどさ……」

好きだよ。大好きさ。

「律は私を愛してないの?」

「愛しているよ。愛しているけどさ……」

愛しているよ?

愛しているからこそ、マズいんだよな。

「だったら、良いよね? もう、我慢出来ないんだ」

「はぁ、しょうがないなぁ」

澪の我侭。こんなの滅多に見られないし、私だって限界だ。

誰かに見つかってしまうかもしれないけど、諦めますか。どうせ、いつかはバレし。

「うん、ありがとう。そ、それじゃぁいくよ?」

「お、おぅ」

この時の私は甘かった。

澪だから軽いので済むだろうとか、やっぱり恥ずかしくて出来ないんじゃないかとか、あまいコトを考えてた。

暴走した澪は、加減なんて出来なかったのに――

 

 

     ◇

 

 

「はむ…ちゅ。――ぁっ!」

背筋を駆け上がった電流が、脳内でスパークする。

そのまま続く、花火みたいな快楽に酔ってしまいそうだ。

何、これ? 本当に澪とキスしてるのか?

付き合いの長い私が戸惑う程、澪は変貌した。

熱く。そして、激しい。いつもとは、正反対な彼女。

今までにない激しさで口内が蹂躙され、舌を吸い尽くされる。

くっ、油断すれば、押し倒されてしまいそうだ。

「律……律。大好きだよ」

長いまつげをそっとあわせ、私を求めることに一生懸命な彼女。

私を抱きしめる腕の力は凄く、痛い程。

「澪、強すぎるって。もう少し、加減してくれよ」

「むー、分かった。でも、意地悪した分、しっかりね?」

ははは……バレてたか。しょーがないな。お姫様にお付き合い致しましょう。

どうせ、今更止めることは出来ないんだ。

 

 

重なる影と影。

それを邪魔しようとする無粋な者はいない。

それを揶揄しようとする無粋な者はいない。

チャイム1つで、学生から恋人へと変身する時間。

長い永い口付け。

甘く甘美な口付け。

 

――恋人達の放課後ティータイム

 

 
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