No.1103665

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

西ゼムリア通商会議~ユーシスの覚悟と決意~

2022-10-02 19:44:41 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1384   閲覧ユーザー数:1112

~エルベ離宮・紋章の間~

 

「ええ……ッ!?」

「その話は本当なのですか?」

「はい。シルヴァン陛下、戦争勃発前と比べて領土割譲が緩和されている理由はやはりミルディーヌ君達ヴァイスラント新生軍やアルフィン達のこの戦争での貴国への貢献、そしてリィン君の活躍が関係しているのでしょうか?」

アリシア女王の質問で驚愕の事実を知ったルーシー秘書官は驚き、アルバート大公はオリヴァルト皇子に確認し、アルバート大公の確認に頷いたオリヴァルト皇子は真剣な表情でシルヴァン皇帝に訊ねた。

「簡潔に言えばそうなるな。我が国は”実力主義”。メンフィルに対して”実力”を示し、信頼を勝ち取る事ができれば我らメンフィルはその功績に対して出自関係なく、正当に評価し、相応の礼をする。ヴァイスラントもそうだがアルフィン卿達もそれぞれ理由は違えど、我らメンフィルの戦友として戦争初期から今までも祖国の兵(つわもの)達を自らの手で葬り続け、祖国の領土が占領されることに手を貸したのだから、そんな彼らの努力を無下にする事はできないとメンフィルは判断した為、領土割譲も戦争勃発前より大幅に緩和した。」

「領土割譲に関してクロスベル帝国との話し合いによって、我が国が併合する事になる元エレボニアの領土はレグラム、バリアハート、ケルディックを除いたクロイツェン州全土と”ザクセン鉄鉱山”の鉱業権の内35%、そしてアルバレア公爵家の全財産の80%になっております。」

「当然先程シルヴァン皇帝が口にしなかったこの書面に書かれている残りの領土の併合とザクセン鉄鉱山残りの鉱業権はクロスベルが得る事になっている。クロスベルが戦争勃発前より領土割譲を緩和した理由はメンフィルと同じというのもあるが、何よりもクロスベルがまだ”自治州”だった頃より、長年問題になっていた”クロスベル問題”を少しでも緩和する為にも”不戦条約”を提唱したリベールに対する配慮でもある。先日の”大戦”の件があるとはいえ、リベールにとってエレボニアは”友好国”でもあるのだから、エレボニア自身の因果応報とはいえ”友好国”の領土が他国の領土として併合されることによる国力の低下を可能な限り抑えたいと思っているだろうからな。」

「ちなみに領土割譲の件でメンフィル帝国が併合する領土はクロイツェン州ほぼ全土に対して、クロスベル帝国が併合する領土はノルティア州の一部とラマール州の一部の2州とクロスベル帝国が併合する領土が多いように思われるかもしれませんが、領土の規模という点ではメンフィル帝国の方が上回っておりますので、その代わりにクロスベルはザクセン鉄鉱山の鉱業権をメンフィル帝国より多めに頂いた形になっておりますわ。」

「……………………」

「(なるほど……リベール(私達)の意見があった際の対策として、”予め両帝国が併合する領土として本当に必要な領土を絞る事”で、例え領土割譲の件でリベールによる意見が出たとしても”戦争勃発前と比べて既に緩和している”という理由で私達の意見を封じ込めるつもりだったのでしょうね。)………領土割譲の緩和の件で我が国に対する配慮まで含まれていた事には驚きましたが………クロスベル帝国の寛大なお心遣いには心より感謝しております。」

シルヴァン皇帝、セシリア、ヴァイス、ルイーネの説明を聞いたクローディア王太女が複雑そうな表情で黙り込んでいる中シルヴァン皇帝達の話を聞いてメンフィルとクロスベルの思惑を既に悟ったアリシア女王は静かな表情で答えた。

「シルヴァン陛下、ヴァイスハイト陛下。今回の戦争での両帝国が負った様々な負担を考えると、リベールと違い今回の戦争の件で何の負担も負っていないレミフェリアの我々に領土割譲の件を完全に撤回する代わりに他の条件を考えるべき等と言った厚かましい事を口にする資格がない事は理解しています。ですが、メンフィル、クロスベル共に様々な理由でエレボニアに対して”情状酌量の余地あり”と認めているのですから、戦争によって険悪な関係となってしまったメンフィル・クロスベル両帝国とエレボニア帝国の関係を少しでも緩和する為にもここは寛大な御心を持ってメンフィル・クロスベルの両帝国がエレボニア帝国に少しでも歩み寄る対応をすべきではないでしょうか?」

「フン、言葉を濁しているが結局はメンフィル・クロスベルがそれぞれ併合する領土もそうだが賠償金の金額ももう少し減らせという事だろうが。それは”中立国”としての意見か?それとも”エレボニアの友好国”としての意見か?」

真剣な表情を浮かべて意見をしたアルバート大公に対して不愉快そうな表情で鼻を鳴らしたシルヴァン皇帝は目を細めてアルバート大公を睨んで問いかけた。

「勿論”中立国”としての意見です。カルバードが滅び、独立したクロスベルが大国となった事で新たな時代が訪れる事になるゼムリア大陸全土の平和の為にも、三帝国間の関係を良好化する事が必要だと考え、意見をさせて頂きました。」

「”新たな時代が訪れたゼムリア大陸全土の平和の為にも、三帝国間の関係を良好化すべき”、か………例えそれがレミフェリアの本心としても、メンフィルはこれ以上領土割譲もそうだが賠償金の金額―――――いや、”全ての賠償内容を緩和するつもりは一切ない。”」

「同じくクロスベルもこれ以上の緩和は不可能だな。」

「……ッ!それは何故でしょうか?両帝国はヴァイスラント新生軍やアルフィン皇女殿下達――――――エレボニアを正そうとする方々の働きを評価して、戦争勃発前より領土割譲を緩和したのですから、戦後の三帝国間の関係を良好化する為にもここは寛大な御心を持った対応をすべきではないでしょうか?」

アルバート大公の話を聞いたシルヴァン皇帝とヴァイスはそれぞれ冷たい答えを口にし、二人の冷たい答えを聞いた唇を噛み締めたルーシー秘書官は気を取り直して二人に指摘した。

 

「フッ、どうやらレミフェリアは大きな勘違いをしているようだな。」

「え………」

「それはどういう事でしょうか?」

嘲笑したシルヴァン皇帝の指摘にルーシー秘書官が呆けている中アルバート大公は真剣な表情で訊ねた。

「レミフェリアは戦後の三帝国間の関係を良好化する為にも更なる緩和をすべきという意見を口にしたが………――――――そもそもその前提が間違っている。”メンフィルは自らエレボニアとの関係を良好化する意志はないのだからな。”―――まあ、リィンと婚約を結んだミルディーヌ公女を統括領主としているラマール東部に関しては”例外”だが。」

「同じくクロスベルもユーディット・キュア姉妹の従妹でもあるミルディーヌ公女を統括領主としているラマール東部を除いて”領土併合を更に緩和してまで、エレボニアとの関係を良好化する事は考えていないな。”」

「な……」

「……………………」

「フフ、私に対する気遣いをして頂いた両陛下達の寛大なお心遣いには心から感謝しておりますわ。」

「両帝国自らが我が国との友好関係を結ぶ意志がないのは、やはり今回の戦争の件でしょうか?」

シルヴァン皇帝とヴァイスの答えを聞いたアルバート大公は絶句し、セドリックが辛そうな表情で黙り込んでいる中、ミルディーヌ公女は静かな笑みを浮かべて答え、レーグニッツ知事が辛そうな表情で訊ねた。

 

「その理由もあるが、今回の戦争によってメンフィル・クロスベルは”勝者”、エレボニアは”敗者”という”立ち位置”に別れた。”敗者”であるエレボニアが原因で始まった戦争に勝利した事で得た”利益”を”勝者”である我らが”敗者”であるエレボニアとの今後の関係の良好化の為に捨てる等、戦争の”元凶”にして”敗者”であるエレボニアに対して下手(したて)に出過ぎているとメンフィルとクロスベル、それぞれの国民達が不満や反感を抱くことで、それがそれぞれの政府や皇家に対する不満や反感へと発展するからだ。――――――まさかとは思うが、”ゼムリア大陸全土の平和の為”という理由で自国の国民達が政府や皇家に対して不満や反感を抱かれる事で”自国の平和が乱されるリスク”を負ってまで、エレボニアとの関係の良好化を優先すべきという”本末転倒”になるふざけた意見を口にするつもりではないだろうな?ましてやリベールと違い、一兵の血も流していない上物資一つすらも連合に支援しなかった”傍観者”も同然の”中立国”であるレミフェリアが。」

「……ッ!」

「それは……………」

「…………………」

「……………クロスベルもシルヴァン陛下が今仰った理由と同じなのでしょうか?」

レーグニッツ知事の疑問に答えたシルヴァン皇帝は目を細めてアルバート大公とルーシー秘書官を睨みながらレミフェリア公国に対する皮肉も含めた問いかけをし、シルヴァン皇帝の問いかけに反論できないルーシー秘書官は辛そうな表情で唇を噛み締め、アルバート大公は複雑そうな表情で答えを濁し、その様子を見守っていたクローディア王太女は複雑そうな表情で黙り込み、重々しい様子を纏って黙り込んでいたアリシア女王はヴァイス達に問いかけた。

「クロスベルの場合はシルヴァン皇帝が今言った理由に加えて独立前のクロスベルに対して行った長年のエレボニアの所業が関係している事もある。」

「”独立前のクロスベルに対して行った長年のエレボニアの所業”というと……やはり、”クロスベル問題”の件でしょうか?」

アリシア女王の問いかけに答えたヴァイスの話を聞いてすぐにある事を察したクローディア王太女は悲しそうな表情で訊ねた。

 

「ああ。独立前のクロスベルは”不戦条約”の締結によって沈静化したとはいえ、それまでに起こったエレボニア・カルバードの領土争いによって巻き込まれ、犠牲になったクロスベル市民達の無念は両国の圧力によって『不自然な事故』として片づけられる事で晴らされなかった。クロスベル帝国建国後メンフィルと共に両国に侵攻・武力行使した事でカルバードは滅亡、エレボニアは衰退した事によって彼らの無念はある程度晴れただろうが、だからと言って自治州発足時から両国の圧力によって苦渋を舐めさせられ続けた事によるクロスベル市民の両国に対する怨讐が完全に消えた訳ではない。――――――そんな状況で、”憎きエレボニアとの戦争に勝利して今までの恨みを晴らしたにも関わらず、クロスベルの利益を捨ててまでエレボニアとの関係の良好化を重要視するような見方によってはエレボニアに対して弱腰な政治”を行えば、クロスベル市民が現クロスベル政府・皇家に不満や反感を抱き、それらがクロスベル帝国を乱す原因に発展する可能性がある事は火を見るよりも明らかだ。」

「そ、それは………」

「むう………」

「……………………」

真剣な表情を浮かべて堂々と答えたヴァイスの話に反論できないルーシー秘書官は辛そうな表情で答えを濁し、アルバート大公は複雑そうな表情で唸り声を上げ、アリシア女王は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「あの……ヴァイスハイト陛下は前カイエン公のご息女――――――ユーディット公女をご自身の側妃の一人として迎えられ、更にユーディット公女の妹であるキュア公女が将来のクロスベル側のカイエン公爵家の当主に就任する事を保証されていますが、それらの件は問題にはならなかったのでしょうか?」

「勿論だ。そもそもユーディは俺の側妃として嫁ぎ、キュア嬢は将来クロスベル側のカイエン公爵家の当主として就任して俺達クロスベル皇家に仕える――――――つまり、二人とも現クロスベル皇家に対して”臣従”する事を誓ったのだから、クロスベル市民達も納得し、受け入れている。」

「”臣従”とは言葉通り、主君に対して臣下として従う事――――――つまりは自身の立場は”下”である事を認める事。エレボニアの貴族――――――それも皇家に次ぐ権力者である”四大名門”直系の血縁者である姉妹の身分で人を差別する事を嫌う性格や正しい意味での”貴族の義務”を常に心がけている事もそうですが、”自ら現クロスベル皇家よりも下の立場”である事を認めているのですから、そんな彼女達に対して幾ら”クロスベル問題”によってエレボニアを憎むようになった被害者達であろうとも、溜飲が下がりますわ。」

「つまりは四大名門の一角――――――”エレボニアでは絶大な権力を持つ貴族が自ら自分達の立場は現クロスベル皇家より下である事を認めた事”で、”クロスベル問題”の件でエレボニアを恨んでいるクロスベルの民達の溜飲も下がり、ユーディット公女殿下達の事を受け入れたという訳ですか……」

「……………………」

セドリックの質問にヴァイスは答え、ヴァイスの説明を捕捉したルイーネの説明を聞いたアルバート大公は疲れた表情で呟き、クローディア王太女は複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

~待機室・特務支援課側~

 

「エレボニア・カルバードに対する”クロスベルの怨讐”か………エリィ、ヴァイスハイト陛下の先程の主張、実際の所はどうなんだ?」

「そうね………残念だけど、陛下の仰る通り幾ら今回の戦争で”クロスベル問題”の件での両国に対する今までのクロスベルの恨みが晴れたとはいえ、エレボニアとの関係の良好化の為にエレボニアの領土併合を緩和してしまえば、その件によって現クロスベル政府・皇家にクロスベル市民が不満や反感を抱く事は否定できないし、人によってはクロスベルはエレボニアに対して弱腰の政治を行っているとみられる事も十分に考えられるわ……それらを考えると陛下達の判断は”今のクロスベルにとっては最も適切な判断”だと思うわ。」

「そうか……」

会議の様子を見守っていたロイドは複雑そうな表情でエリィに訊ね、訊ねられたエリィは複雑そうな表情でヴァイスの話に同意しながら説明をし、エリィの説明を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。

「”クロスベルの怨讐”の件もそうですが、今回の戦争でエレボニア人はメンフィルもそうですが、クロスベルも恨む事になるでしょうから、戦後のクロスベルとエレボニアの関係はかつてのカルバードとエレボニアみたいな険悪な関係になるんでしょうか……」

「いや……戦争で勝利している事に加えてエレボニアは今回の戦争で国力もそうだが一番肝心な戦力面で相当な痛手を被ったし、何よりも放蕩皇子達の様子からして、エレボニアがクロスベルと険悪な関係になる事は望んでいないんじゃねぇか?」

「ええ。戦後のオリヴァルト殿下達の方針もそうだけど、クロスベルも”四大名門”の一角であるカイエン公爵家直系の令嬢であるユーディット公女殿下を側妃として迎えている事、後はリベールに対する配慮も考えると恐らく陛下達もクロスベル自らエレボニアとの友好関係を結ぶつもりはなくても、かつてのエレボニアがカルバードのような険悪な関係に発展させるつもりはないと思うわ。」

複雑そうな表情で呟いたティオの疑問に答えたランディの推測に同意したエリィはランディの推測を捕捉する説明をした。

「……………………」

「?ユウナちゃん、どうしたの?」

一方複雑そうな表情で黙り込んでいるユウナが気になったノエルはユウナに声をかけた。

 

「あ……はい。えっと……ヴァイスハイト陛下達は領土併合を緩和したのはリベールに対する配慮と言っていましたけど、レミフェリアに対する配慮はしない所か、むしろシルヴァン陛下達と共にレミフェリアの立場を悪くしようとしている事が気になってまして。レミフェリアもウルスラ病院の件でお世話になっているのに……」

「それに関してだけど……こんなことは言いたくないけど、やっぱり今回の戦争に関してレミフェリアは何の負担も負っていない事でしょうね。」

「実際レミフェリアは今回の戦争に関して一兵も参加していない所か、連合に対する物資の支援一つすらしなかったからな。自分達の命や祖国の存亡をかけて今まで戦い抜いてきた連合からすれば、”戦場”にも参加せず、物資一つも支援していない”傍観者”も同然の国に様々な負担を負った自分達の勝利による”戦果”について口出しするなってのが本音だと思うぜ。」

悲しそうな表情で答えたユウナの疑問にエリィは複雑そうな表情で答え、ランディが疲れた表情でエリィの説明を捕捉した。

「あたしも賠償内容について意見を口にするレミフェリアの立場を悪くしようとするシルヴァン陛下やヴァイスハイト陛下達の気持ちはちょっとだけわかります……”六銃士派”の警備隊の仲間達はディーター元総統による”クロスベル独立国”が建国された時にヴァイスハイト陛下達――――――”六銃士”を信じて”クロスベル独立国”に対するレジスタンスとして活動して、”クロスベル帝国”建国後は実際に二大国との戦争に参加して勝利した事でクロスベルの為にヴァイスハイト陛下達を信じてきた彼らの今までの”想い”が報われようとしているのに、何もしていない人達がその”想い”に意見をするのはちょっとおかしいんじゃないかと思いますし……」

「ノエルさん………」

「”クロスベルの怨讐”もそうだが、自らエレボニアとの友好関係を結ぶつもりがないメンフィル・クロスベルに対する信頼回復はオリヴァルト殿下や”Ⅶ組”の人達もそうだが、エレボニアの人々にとって乗り越えなければならない”壁”になるだろうな……」

複雑そうな表情で答えたノエルの様子をティオは心配そうな表情で見つめ、ロイドは静かな表情で推測した。

「そうね……それこそ、かつての”クロスベルの壁”と同じ……いえ、それ以上に高く険しい”壁”になると思うわ。」

「しかも”壁”に挑む前に内戦と今回の戦争で徹底的に落ちたエレボニアの人々の皇家や政府に対する信頼も回復しなければならない上、その信頼回復の方法としての安易な方法――――――リィンさん達メンフィルの有力者との政略結婚も賠償内容の関係でできないようにされているのですから、わたし達の時以上に厳しい条件で”壁”に挑まなければならないオリヴァルト殿下やⅦ組の人達には同情しますよ。」

(…………”Ⅶ組”…………”本来の歴史のあたしも一員になっていたクラス”、か………)

ロイドの推測にエリィは複雑そうな表情で同意し、ティオは疲れた表情で答え、ユウナは複雑そうな表情で黙ってアリサ達の事を思い浮かべていた。

 

~紋章の間~

 

「―――――”メンフィル・クロスベル自らが我が国との友好関係を結ぶ意志がない”のでしたら、その”逆”――――――”我が国自らがメンフィル・クロスベル両帝国との友好関係を結ぶ事”には応えて頂けるのでしょうか?」

「兄上………」

決意の表情を浮かべたオリヴァルト皇子のメンフィルとクロスベルに対する問いかけを聞いたセドリックは驚き

「それについては今後のエレボニアの外交次第だな。」

「クロスベルも同じだ。――――――念の為に言っておくが、幾らエレボニアが戦争相手であったメンフィル・クロスベル両帝国に対して自ら友好関係を結ぼうとしている意志を示したからと言って、それを理由に領土併合の緩和をするつもりは一切ないぞ。」

「……ッ!」

「……領土併合の件で気になっていた事があります……ミルディーヌ公女。両帝国によるエレボニアの領土併合にはラマール州の一部も含まれているのに、何故ラマール州の統括領主の立場でもある貴女は反論等しないのだ?」

シルヴァン皇帝は静かな表情で答え、ヴァイスはシルヴァン皇帝の後に答えた後レミフェリア側に視線を向けて念押しをし、ヴァイスの念押しにルーシー秘書官が唇を噛みしめている中、アルバート大公は真剣な表情でミルディーヌ公女に問いかけた。

「フフ、両帝国を説得できないからといって私に矛先を変えるとは大公閣下も酷い方ですわね。――――――大公閣下もご存じのように、連合―――――いえ、メンフィル帝国が我が国に求めた賠償内容の一部である領土割譲の件は元を正せば去年の内戦の件での賠償です。本来でしたら内戦の際に内戦とは無関係であったメンフィル帝国にまで多大な迷惑をかけた償いとして賠償内容に記された領土がメンフィル帝国に併合されるべきであったのに、メンフィル・クロスベル両帝国は私達ヴァイスラントや姫様達の今回の戦争での両帝国への貢献を理由にラマール州を含めたエレボニアの領土割譲を当初より大幅に緩和して頂けたのですから、それ以上の緩和を望む等”傲慢”と取られてもおかしくありませんわ。それに戦後の我が国と両帝国の関係回復の為にも、分不相応な事はすべき事ではないと判断し、両帝国の寛大なお心遣いに感謝し、これらの賠償内容を受け入れる事にしたのですわ。」

「それは…………」

苦笑した後静かな表情で答えたミルディーヌ公女の話に反論できないアルバート大公は複雑そうな表情で答えを濁した。

 

「公女殿下は賠償内容を全て受け入れるつもりとの事ですが、公女殿下の祖国であるエレボニアが5000兆ミラという莫大な負債を背負う事についても何も思わないのですか?」

一方ルーシー秘書官は責めるような視線でミルディーヌ公女に問いかけた。

「その莫大な負債は領土割譲を大幅に緩和して頂いた”代償”と考えておりますし、何よりも我が国がメンフィル帝国に対して賠償金の支払いを完遂するまでは我が国に祖国滅亡の危機が訪れた際メンフィル帝国軍が強制的に介入し、助けて頂ける可能性が高い事を考慮に入れれば、戦後殿下達によって変わる事になるエレボニアを長く存続させ続けられるのですから、”5000兆ミラというメンフィル帝国に対する莫大な負債は我が国にとってもメリットになる”と考えていますわ。」

「”エレボニア帝国がメンフィル帝国に対して賠償金の支払いを完遂するまではエレボニア帝国に祖国滅亡の危機が訪れた際メンフィル帝国軍が強制的に介入し、解決する”………――――――第9条の件ですか。」

「あ…………ま、まさかミルディーヌ公女殿下は………!」

「”メンフィル帝国に対する5000兆ミラという莫大な賠償金の支払い”が国力、戦力共に著しく衰退し、更には国民達の信頼も地に落ちたエレボニア帝国を守り、長く存続させ続ける事ができる”盾”になると考えているようだね……」

「だから公女殿下は賠償金の減額の交渉をされなかったのですか……」

「……………………」

ミルディーヌ公女の答えを聞いた事情をすぐに察したアリシア女王は静かな表情で呟き、ミルディーヌ公女とアリシア女王の言葉を聞いてミルディーヌ公女の考えを悟ったクローディア王太女は呆けた声を出した後信じられない表情を浮かべ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、レーグニッツ知事は複雑そうな表情で呟き、セドリックは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「フッ、我が国が決めた賠償内容とはいえ、”莫大な賠償金の支払い義務”を逆手に取って祖国を護る”盾”にした公女の強かさや愛国心は呆れを通り越してもはや”感心”の領域だな。」

「ふふっ、そんな公女殿が後に我が国の領土として併合されたクロイツェン州の統括領主となるシュバルツァー家にとって強力な味方になると考えれば、我が国にとっても心強い話ではありませんか。」

シルヴァン皇帝とセシリアはそれぞれ静かな笑みを浮かべて呟いた。

 

「……ッ!失礼を承知で申し上げますが、ミルディーヌ公女殿下はアルノール皇家やエレボニアという国の”威信”よりも”エレボニアという国の存続”が重要だと考えられているのですか!?」

ミルディーヌ公女の考えを知ったルーシー秘書官は唇を噛み締めてミルディーヌ公女を睨んで問いかけた。

「”アルノール皇家やエレボニアという国の威信”ですか………皇太子殿下達”アルノール皇家”の方々に対して不敬を承知でセイランド秘書官殿に問わせて頂きますが、戦後のエレボニアにアルノール皇家もそうですが国としての”威信”が一欠片でも残っていると本気で考えられているのですか?――――――皇帝陛下が心より信頼を寄せたオズボーン宰相が原因で勃発した内戦、アルスター襲撃、第四機甲師団によるクロイツェン州全土の焦土作戦、そして今回の戦争での敗戦で失った国民達の信頼もそうですが、他国の我が国に対する信頼が。そして”如何なる事よりも、国の存続を最優先”とする私の考えは”間違った考え”なのでしょうか?」

「フフ、それに秘書官殿のその問いかけだと、”国の存続よりも皇家や国の威信の方が大事”のように聞こえますわよ?」

「ッ!!」

「ハハ……耳が痛いね……」

「………シルヴァン陛下。第二条の領土割譲の件で気になっている部分があるのですが……何故、メンフィル帝国はバリアハート、ケルディックの領主をユーシスさんに指定している事もそうですが、ユーシスさんに皇家・政府の要請に対する限定的な拒否権を与えるようにされているのでしょうか?」

困った表情を浮かべた後静かな表情で問いかけたミルディーヌ公女と微笑みながら問いかけたルイーネの問いかけに反論できないルーシー秘書官は辛そうな表情で唇を噛み締め、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、複雑そうな表情で黙り込んでいたセドリックは気を取り直してシルヴァン皇帝に問いかけた。

 

「理由は二つある。一つは国境に関する防衛上の問題だ。」

「こちらが考えていた当初の領土併合にはバリアハート、ケルディックも含まれていました。ですが、バリアハートとケルディックも併合してしまえば、エレボニアの領土であるトリスタ、レグラムと隣接する事でエレボニアとの間にできる国境が二ヵ所も増えてしまう事によって、もしエレボニアの方針がメンフィルへの報復へと変わり、それが最終的に戦争へと発展してしまえば、国境での迎撃の負担が増えてしまうという問題が発生してしまうからです。」

「つまりは国境に配置する戦力の負担を減らす為にクロイツェン州の州都であるバリアハートとエレボニアでも有数の”交易町”として知られているケルディックを手放すという大胆な判断をされたのですか……」

「……………………理由は二つあると仰いましたが……もう一つの理由はどういった理由なのでしょうか?」

シルヴァン皇帝の答えとシルヴァン皇帝の答えを捕捉するセシリアの説明を聞いたアルバート大公は複雑そうな表情で呟き、オリヴァルト皇子はメンフィル帝国が”エレボニア帝国がいつか必ずメンフィル帝国に報復する事を前提に考えている事”に辛そうな表情で黙り込んだ後気を取り直してシルヴァン皇帝達に問いかけた。

「もう一つの理由はリィンだ。」

「え………」

「バリアハートとケルディックの併合を中止したもう一つの理由がリィン将軍閣下とは一体どういう事なのでしょうか?」

シルヴァン皇帝の答えを聞いたセドリックは呆け、レーグニッツ知事は戸惑いの表情で訊ねた。

 

「その件を説明する前にこの場にいる皆に伝えておくべき事実がある。連合とヴァイスラントによるエレボニア侵攻が本格的になる前にエレボニアの士官学院――――――トールズ士官学院に保管されていた”灰の騎神”を徴収した際にリィンの妹にして婚約者の一人でもあり、そして我が娘リフィアの専属侍女長として仕えているエリゼ・シュバルツァーもリィンと我が妹プリネに仕えているツーヤ・ルクセンベールの双子の妹であるセレーネの退学届けを提出する為に”灰の騎神”を徴収する部隊と共にトールズ士官学院を訪れたのだが………その際に、事の次第を知ったユーシス・アルバレアが1度目のユミル襲撃――――――つまり、父親である前アルバレア公が原因でメンフィルとエレボニアの間に戦争が勃発してしまった事に随分と責任を感じ、リフィアの専属侍女長であるエリゼにリフィアや私達に伝えるように頼んだそうだ。『1度目のユミル襲撃の件の責任を取る為に父親や兄の命、アルバレア公爵家の莫大な財産の全てだけではなく、自身の命もメンフィルに捧げる代わりに戦争を止めてくれ』とな。」

「ユーシス君がそのような事を………」

「ユーシス・アルバレアさんはそれ程までに父君の所業に強い責任を感じられていたのですか……」

シルヴァン皇帝の話を聞いたレーグニッツ知事は辛そうな表情を浮かべ、アリシア女王は重々しい様子を纏って呟いた。

「また、普通に考えれば戦争終結後アルノール皇家・新政府共に”アルバレア公爵家”に今回の戦争もそうだが去年の内戦の責任を取らせる為に”爵位剥奪”等と言った厳しい処罰を下さざるをえないだろう。――――――国民達の感情を考えれば、祖国が衰退し、更には祖国から莫大な数の戦死者を出してしまった事による国民達の怒りを鎮めるために内戦の首謀者であった前カイエン公と前アルバレア公もそうだがカイエン公爵家自体を”生贄”にしたかっただろうが、前アルバレア公と前カイエン公は今回の賠償内容の件で”エレボニアではなくメンフィルが処罰する事になる”上今回の戦争でのミルディーヌ公女の”エレボニアへの貢献”もそうだがミルディーヌ公女自身、エレボニアに勝利した我らメンフィル・クロスベル連合から信頼されている事もそうだが内戦を終結させた”英雄”でもあるリィンと婚約した事、更にはクロスベル双皇帝の片翼であるヴァイスハイト皇帝の側妃の一人にしてクロスベル側のカイエン公爵家の当主代理でもあるユーディット側妃の従妹でもある事で”今後のエレボニアにとって決して失う訳にはならない存在”になってしまった事でカイエン公爵家自体にも手出しできなくなった以上、”もう一つの元凶”でもある”アルバレア公爵家”を”生贄”にするしかないからな。」

「………それは…………」

「……ッ!お言葉ではありますが、僕達アルノール皇家はユーシスさん―――――アルバレア公爵家に”爵位剥奪”等と言った厳しい処罰を下すつもりは一切ありません!確かにシルヴァン陛下の仰る通り、国民達の感情や戦後のエレボニアの状況を考えれば、”アルバレア公爵家”に厳しい処罰を下すべきかもしれませんが、ユーシスさん自身は内戦時”紅き翼”の一員としてアルフィンやリィンさん達と共に内戦終結に貢献し、また今回の戦争でも引き続き”紅き翼”の一員として僕や兄上、そしてトールズの皆さんと共に行動した事でミルディーヌさん程ではありませんがエレボニアに対しての”貢献”をしているのですから、そんな僕達にとっても”恩人”の一人でもあるユーシスさんにそのような受けた恩を仇で返すような事はしません!」

「セドリック………――――――シルヴァン陛下。先程バリアハートとケルディックの併合を諦め、更にはバリアハートとケルディックの領主にはユーシス君を就任させることを賠償内容の一つとして指示した理由はリィン君の為と仰いましたがまさか、戦後リィン君にとってもかつてのクラスメイトでもあるユーシス君がエレボニアから下される”処罰”から守る事でそれを恩に感じたリィン君の貴国への忠誠心を高める為でしょうか?」

シルヴァン皇帝が口にした推測に反論できないレーグニッツ知事が複雑そうな表情で答えを濁している中セドリックは唇をかみ締めた後真剣な表情で反論し、セドリックがユーシスを必死に庇おうとしている事にオリヴァルト皇子は驚いた後気を引き締めてシルヴァン皇帝に問いかけた。

 

「そこまで悪辣な事は考えていない。要は今回の戦争で結果的には”アルバレア公爵家”の”全て”を奪ってしまった事によるリィンのユーシス・アルバレアへの”罪悪感”を少しでも減らす為の我らの”細やかな気遣い”と、ユーシス・アルバレアの”覚悟”を示してもらう為だ。」

オリヴァルト皇子の問いかけに苦笑したシルヴァン皇帝は不敵な笑みを浮かべて答えた。

「リィンさんのユーシスさんへの”罪悪感”を減らす為という理由はわかりますが、ユーシスさんにユーシスさんの”覚悟を示してもらう為”とは一体どういう事なのでしょうか?」

シルヴァン皇帝の話を聞いて新たな疑問を抱いたセドリックは不思議そうな表情で訊ねた。

「”ユーシス・アルバレアが1度目のユミル襲撃の件の責任を取る為に父親や兄の命、アルバレア公爵家の莫大な財産の全てだけではなく、自身の命もメンフィルに捧げる程メンフィルもそうだが、リィン達シュバルツァー家に対して相当な罪悪感を本当に抱いている”のだったら、その”覚悟”をメンフィルやシュバルツァー家に示してもらう為に、”ケルディックと故郷にして州都であるバリアハートと引き換えにアルノール皇家や政府の方針がメンフィルへの報復に変わった際、皇家や政府に逆らってでもアルバレア家にメンフィル帝国領と化するクロイツェン州の統括領主であるシュバルツァー家――――――我が国の領土を護る盾”を務めてもらうという事だ。」

「な………っ!」

「そんな………」

「……シルヴァン陛下。幾らアルバレア家に1度目のユミル襲撃の件の責任を取らせる為とはいえ、他国の貴族やその領土を貴国の”盾”にするのはあまりにも道理に反した事ではないでしょうか?」

シルヴァン皇帝の答えを聞いたクロスベルのVIPとミルディーヌ公女以外のその場にいる全員が血相を変えている中レーグニッツ知事は絶句し、シルヴァン皇帝の説明を聞いてユーシスがエレボニアの皇家や政府から”メンフィルと癒着している疑惑を抱かれる可能性があるという問題”が浮上する事にすぐに気づいたクローディア王太女は悲痛そうな表情を浮かべ、アルバート大公は厳しい表情で指摘した。

「ほう?大公のその口ぶりだと、”今のエレボニア皇家や政府がメンフィルとの関係回復に務める”事を宣言しているにも関わらず、”エレボニアはいずれメンフィルに報復する可能性が高い事”を想定しているようなものだと理解しているのか?先程も説明したようにメンフィルがユーシス・アルバレアやその跡継ぎ達に求めているのは、”エレボニアが今回の戦争で併合された我が国の領土を奪還する為に武力行使をしようとした際に我が国の領土と隣接する事になるバリアハートの領主である彼の一家にメンフィル帝国領に対する武力行使関連の要請を全て拒否し、万が一エレボニア帝国軍がバリアハートやケルディックを武力制圧しようとした際はバリアハートとケルディックの守護の為にもエレボニア帝国軍の迎撃をしてもらうだけ”だ。何もユーシス・アルバレアやその跡継ぎ達にエレボニアの貴族でありながらメンフィルやシュバルツァー家に忠誠を誓えと言っている訳ではない。」

「それにメンフィル帝国はユーシス・アルバレアを庇おうとしている皇太子達にとってもある意味”好都合にもなる賠償”を求めているのではないか?幾ら皇太子達がアルバレア公爵家を庇おうと考えても戦後のエレボニアの世論がそれを許さないと思われるのだから、皇太子達は”メンフィル帝国が求める賠償を実行しなければならないというエレボニアの国民達も納得せざるを得ない理由”でエレボニアの貴族達の中で最も先行きが不安なユーシス・アルバレアを領主に返り咲きさせる事ができる上、真にエレボニアがメンフィルへの報復を一切考えないのであればバリアハートとケルディックが”無条件”で返還されるようなものだと思われるが?」

「……ッ!くっ…………」

「……………………」

嘲笑を浮かべたシルヴァン皇帝の反論と苦笑を浮かべたヴァイスの指摘に反論できないアルバート大公は唇を噛み締めた後無念そうな表情を浮かべて唸り声を上げ、アリシア女王は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「―――――聞いているな、ユーシス・アルバレア。今までの私達の話を聞いて既に貴様や周りにいる紅き翼の者達も気づいているだろうが、今回の戦争で最も功績を挙げたリィンに免じて本来ならば戦後のエレボニアの貴族の中で最も先行きが不安だった貴様の未来を保証する事にした。今後はリィン達シュバルツァー家の”仁徳”に感謝して、貴様の祖国であるエレボニアもそうだが、バリアハートと隣接することになるかつ将来リィンが統括領主を務める事になる我が国の領土の為にも自らに課せられた務めを果たし、そして将来”跡継ぎ”ができた際にアルバレア家に課せられた務めを代々の跡継ぎ達にも伝われるようにしっかりと伝えておけ。――――――だが、もし貴様や貴様の跡継ぎ達がシュバルツァー家もそうだがシュバルツァー家の”仁徳”に免じてバリアハートとケルディックを返還した我らメンフィルの”慈悲”を裏切るような事を行えば、その時は我らメンフィルが貴様達アルバレア家を言葉通り”一家郎党皆殺し”にすることを貴様自身や貴様の跡継ぎ達の心の奥底まで刻んでおけ。」

するとその時シルヴァン皇帝は防犯カメラへと視線を向けて全身に覇気を纏って防犯カメラを通してユーシスに念押しをした。

 

~待機室・紅き翼側~

 

「……………………………」

「ユーシス………」

一方その頃、シルヴァン皇帝の念押しを聞いたユーシスは目を伏せて黙り込み、ガイウスはユーシスを心配そうな表情で見つめ

「ちょっ、何で別の場所にいるシルヴァン陛下の視線が僕達に向けられているんだ!?」

「恐らくは会議場に設置されている防犯カメラに視線を向けられたからではないかと。」

「それよりも賠償内容を開示する前にシルヴァン陛下が仰った”リィンさんの活躍による成果”とは、恐らくバリアハートとケルディックの返還、そしてユーシスさんをバリアハートとケルディックの領主就任の件でしょうね……」

「まあ、”人一人の活躍による成果”だけでバリアハートとケルディックが返還されることは”奇跡”のような出来事である事は否定できないね……」

「ったく、どこが”慈悲”だよ。どう考えても”脅迫”の類じゃねぇか。」

表情を引き攣らせたマキアスの疑問にシャロンが静かな表情で答え、エマは複雑そうな表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で呟き、クロウは呆れた表情で溜息を吐いた。

「つーか、冗談でも”一家郎党皆殺し”にするとか、頭がイカレ過ぎだろ、メンフィルの皇帝は。」

「いえ――――――シルヴァン陛下の今の発言は”冗談”ではなく”本気”だと思うわ。」

「ああ。現にメンフィルの”暗部”には”暗殺部隊”のような存在がいるのは戦争前に暗殺された結社の”蛇の使徒”達やエレボニアの情報局の件で判明している上、もしかしたら”黒月(ヘイユエ)”や”斑鳩”に実行させる事も考えられるな。」

「どちらの組織にも”暗殺者”のような存在がいるようですからね……」

「チッ、”遊撃士”の俺達もそうだがエステル達の目の前で堂々と”皆殺し”宣言をするとか、俺達”遊撃士”に対して喧嘩を売るつもりなのかよ。」

「エステルちゃん達にとっても今のシルヴァン陛下の宣言は色々と思う所があるでしょうね……」

呆れた表情で呟いたアッシュの言葉にシェラザードが真剣な表情で否定の答えを口にし、シェラザードの答えにジンは真剣な表情で同意し、エレインは厳しい表情で呟き、アガットは舌打ちをして端末に映るシルヴァン皇帝を睨み、アネラスは複雑そうな表情で推測を口にした。

 

「……リィンはこの件について知っているの?」

「知っているも何も、”バリアハートとケルディックの返還の件に関する最終的な決定権はご主人様だから、ご主人様自身が決めたのよ?”」

フィーの疑問にベルフェゴールが答えるとその場にいる全員が血相を変えた。

「ええっ!?バリアハートとケルディックの件の最終的な決定権はリィンにあったの!?」

「どうしてリィンは幾らバリアハートとケルディックがエレボニアに返還されるとはいえ、ユーシス――――――”アルバレア公爵家”が”メンフィルの盾”にされるかもしれないという条件を知っていて決定したのよ!?」

アリサは驚きの表情で声を上げ、サラは厳しい表情でベルフェゴールに問いかけた。

 

「うふふ、その点については”貴女達も知っているご主人様らしい答えよ♪”」

「それってどういう事なんですか?」

からかいの表情で答えたベルフェゴールの答えが気になったティータは不思議そうな表情で訊ね

「リウイ前皇帝達から、バリアハートとケルディックの返還の件を決定した時に”アルバレア公爵家がメンフィルの盾”にされることが本当にいいのかどうかについてを確認された際にご主人様はこう答えたわよ?”それはエレボニアがメンフィルへの報復や領土奪還を行おうとした時なのですから、ユーシスもそうですがⅦ組やトールズのみんな、そして殿下達はエレボニアが再び我が国に戦争を仕掛けるような事を起こさないようにしてくれると信じています。”ってね♪」

「リィン……」

「確かにアイツらしい答えね……」

「やれやれ、それを言われてしまったら、私達も文句の言いようがないね。」

「というかそういう事を言うんだったら、万が一その時が来たらリィン達もボク達を手伝ってよ~!」

「ふふっ、リィン君達の事だから何らかの形で協力してくれると思うよ。」

ベルフェゴールの話を聞いたアリサは安堵の笑みを浮かべ、セリーヌとアンゼリカは苦笑し、ジト目になって文句を言うミリアムにトワは苦笑しながら指摘した。

「それでユーシスはどうするんだ?」

「―――――知れた事。それがメンフィルから求められるメンフィルやシュバルツァー家に対して犯した父と兄の――――――”アルバレア”の”罪”の”償い”ならば、その務めを果たす事が”アルバレアの義務”だ。」

そしてガイウスの疑問にユーシスは決意の表情を浮かべて答えた――――――

 

 

 

ついに黎の軌跡Ⅱが発売しましたね!ただ、私はその前にドラクエ10オフラインとヴァルキリーエリュシオンをクリアするつもりですから、実際にプレイするのは恐らく早くても10月中旬くらいになると思いますが……(泣)ちなみに私は特典はシズナ、アニエス、エレインの衣装の為にそれぞれ予約で購入し、余ったソフト二つはすぐに売りました。なので、オークションで手に入れるよりは安く手に入れられたと思っていますww


 
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