No.1093315

動物好きと獣の皇子

砥茨遵牙さん

2のトラン共和国との同盟後。ルカ主の奇跡の始まり。
うちの2主くんはアニマル大好き小悪魔です。
2主→ヒエン

2022-05-31 11:35:57 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:251   閲覧ユーザー数:251

初めてルカ・ブライトに会ったのは、ユニコーン少年隊に奇襲をかけられた時。

『ほう、自分の国の皇子の顔も知らんとはな……』

あの時はただ怖かったけど、狂気の中に潜んだ悲哀が見えて。あの目が忘れられなかった。

傭兵砦でピリカちゃんを助けようとした時に、ルカが放った一言がずっと引っ掛かっている。

『この世には強い者と弱い者がいる。強い者は全てを奪い、弱い者は死ぬ。それが、この世のしくみだ。』

動物の世界における弱肉強食。けど、こんな言葉、皇子であるルカ・ブライトが言えるのが不思議だったんだ。何不自由なく暮らしてきたはずの皇子である、ルカが。

彼は一体、何を奪われたんだろう。

どうして、そこまで都市同盟の全ての人間を殺そうとするのだろう。

僕は、彼が知りたい。狂皇子と呼ばれる彼のことが知りたい。気高くも傷付いた獣のような彼が知りたい。

 

 

 

 

 

 

「あ~もう!!モクモク~!ど~こ~!?」

同盟軍軍主ヒエン、彼は今、ムササビ探しにグリンヒルの森の奥に来ていた。ついこの間トランと同盟を結びに行って来て早々書類仕事に追われ、サボってこうしてムササビを探しに来たのである。

現在、パーティーメンバーはヒエンのみ。

ムササビ5の残るはあと1匹、モクモクだけ。

何故こんなに躍起になって探しているのかというと、ヒエンが無類の動物好きだからだ。

 

同盟軍の名前はアニマル軍

城の名前はムツゴロウ城

 

天才軍師シュウも頭を抱えるほどヒエンの動物愛は果てしない。

『獣みたいな人に恋したいなー。コボルトじゃなくて。獣。』

『馬鹿か?』

と言われた。本気なんだけど。

獣みたいな人と言ってもビクトールさんみたいな野生丸出しの人じゃない。

僕が知る限り、理想に当てはまるのはあの人だけなんだよな。

気高い獣のような目をした、狂気に満ちているはずなのに、どこか虚しさを感じるあの人。

気を取り直して、ヒエンは再びモクモクを探し始める。

「モクモク~、モクモク~、モクモク~。」

その時、茂みがガサガサと音を立てた。モクモクかな?と思っていると。

「……ふっ、こんなところで都市同盟の豚に会うとはな。」

「なっ!?ルカ・ブライト!!」

ハイランドの狂皇子、ルカ・ブライトが茂みから現れたのだった。

「同盟軍の豚がこんなところで何をしている?」

「何だっていいじゃん!」

「ふんっ、まあいい。貴様を殺せば同盟軍は総崩れだ。死ね!!!」

「嫌だ!!」

ルカが剣を振り下ろしたと同時にヒエンが避けて逃げ出した。逃げるヒエンをルカが追いかける。

「ふははは!!逃げろ逃げろ!!俺はどこまでも貴様を追うぞ!!!」

「追わなくていいってばー!!」

とその時、

「ムムムムーッ!!」

「っ!?」

どこか慌てたような叫び(?)が聞こえて、それに驚愕したヒエンは、目にも止まらぬ速さで直角に曲がって去っていった。

一方、追いかけていた同盟軍軍主がいなくなり、ルカは珍しくぽかんと口を開ける。

一瞬呆気にとられたルカはブンブンとかぶりを振り、ヒエンが去っていった方向へ走っていくのだった。

 

 

「モクモクー!!今助けるからねー!!」

先ほどの叫びは、助けてーという叫びだった。モクモクが危機的状況と察知したヒエンは動物的感覚で森を進む。

愛すべき動物!至高のモフモフ!スベスベ!ザラザラ!ムササビ5のため、至高の動物王国のためにヒエンは走る。

そうしてたどり着いた川には、なんとか岩に必死でしがみつくモクモクの姿があった。急流で今にも流されそうだ。

ヒエンは岩場をピョンピョンと渡り、目的の岩に乗ると、びしょびしょになってしまったモクモクを引き揚げる。

「大丈夫?モクモク?」

「ムムムー!」

モクモクがブルブルと振るって毛についた水を落とす。良かった、怪我はなさそうだ。

と安堵していたら、ツルッと岩の上から足を滑らせる。

バッシャーンと落ちて、岩に捕まる間もなく流されてしまった。

「ゴボッ、ゲホッ…っぷ……!」

落ちた拍子に足がつって思うように動けず、もがくことしか出来ない。

川の先を見ると、そこは滝になっていた。勢いよく水が流れ落ちる音が辺りに響いている。

やばい、落ちる!!

もがき疲れて、意識を手放そうとしたその時、誰かが川に飛び込むのが見えた気がした。

 

 

 

パチパチと燃える音がする。

ここは、何処?

「ん……っ……」

ヒエンは目をゆっくりと開ける。視界に飛び込んできたのは、たき火の明かりと、周りの木々。僕の隣にはモクモクがいて。たき火のそばに誰かがいる。

「あ、あの………」

「ふんっ、ようやく気がついたか。同盟軍の豚め。」

「!!?」

何と、たき火のそばにいた人影は、さっきまで自分を追いかけ回していたルカ・ブライトだった。

ルカは今、あの白い鎧を脱いでいる。

「んな、なっ………!?」

「随分間抜けな顔をしてるな。この俺がいるのがそんなに不思議か。」

「あ、当たり前でしょ!何で僕とお前が一緒にいるのっ!?」

「…全てはこのためだ、小僧。」

そう言うと、ルカは鞘から剣を抜き、ヒエンに突き付けた。

「!!?」

「貴様は俺がこの手で殺すと決めている。貴様の首を都市同盟の豚共の前に掲げるため、溺れ死になどさせてたまるものか。貴様の恐怖に怯えた首を晒せば奴等はどんな顔をするだろうな?」

「な……!?」

そうルカが言い放つと、モクモクがヒエンを守るように立ち塞がる。

「ハッ、豚は毛玉に守られるのか。滑稽だな。」

「待って!モクモクに手を出さないで!」

そう言ってモクモクを抱える。至高のモフモフを斬られてたまるか!

「ならば貴様を先に殺してやる。毛玉の血よりはいいだろう。」

って、あれ?

自分の手で殺すって言ってるのに。

何で、そんな目をしてるの?

「………」

「ふはははは!!恐怖のあまり声も出ないか!!まあいい、死ね!!!」

ルカが剣を振り上げる。が、ヒエンの目は恐怖の色をしていない。その目は真っ直ぐルカの目を見つめていた。

その眼差しに、ルカは剣を振り降ろすのを躊躇う。

「……貴様、何故そんな目で俺を見る?死が恐ろしくないのか?」

「何で、そんな警戒してるような目をしてるの?」

「!!!?」

ヒエンの言葉に、ルカは動揺を隠せなかった。

こいつ、何を言っている?

この俺が、警戒しているだと?

「何を……」

「警戒して、威嚇してるような目、してる。」

「………ッ!!」

しばらくそのままで睨み合っていたが、ルカは振り上げていた剣を下ろし、鞘に納めて、不機嫌そうに座った。

ルカの突然の行動に、ヒエンは驚く。

「……僕を、殺さないの?」

「……ふんッ、貴様がおかしなことを言うから殺る気が失せた。」

「??」

僕、そんな変なこと言ったっけ?と首を傾げる。

ただ、ルカの目が警戒して威嚇してるように見えただけだったのに。

「……ッ、くしゅん!!」

急に肌寒くなったヒエンは大きなくしゃみをした。濡れた服をそのまま着ていたせいだろう。このままでは風邪を引いてしまう。

「……こっちを向け。」

「え?って……わぷっ!?」

ルカがヒエンに何か投げつけた。顔に

投げつけられたのは、ルカがいつも着ていたマントだった。

「えっ………、これ……?」

「着ていろ。」

「へ……?」

「無いよりはましだろう。」

「あっ、う、うん。」

ヒエンが羽織ったルカのマントは濡れていなくて、暖かかった。

もしかして、わざわざ鎧を外して、泳いで僕を助けてくれたの?殺すために?律儀すぎない?

寒いと言ったヒエンにモクモクが寄り添って。モクモクありがとうと言うと。

「こいつ名前があるのか。」

「えっ、うん。他にもマクマクミクミクムクムクメクメクがいるよ。」

「……。」

えっ何その猜疑心に満ちた目。狂皇子もこんな顔するんだ。

あ、もう警戒して威嚇してる感じしない。

「あのさ、隣、座ってもいい?」

「……勝手にしろ。」

「うん。」

ヒエンとモクモクはルカの隣に移動して座った。

「……貴様は……」

「?」

「貴様は、こんなに近くに来て、この俺が恐ろしいと思わんのか?今すぐ貴様を殺すこともできるんだぞ。」

「う~ん…、でも、殺すならさっき殺されてるはずだし…。それに、ルカってなんだか獣みたいで。」

「ほう?獰猛な獣か。」

「ううん。警戒して威嚇して今にも噛みつきそうなキツネリス。」

「なんだその生き物は。」

「今は、怖くない。ほら、怖くない。それに、ルカの隣暖かいし。」

そうして首を傾けてニコッと笑うと、ルカが呆気にとられた顔をしていた。

笑いかけられたのは、随分と久しぶりだった。あの事件が起こる前の、母の笑顔以来。

「………貴様は変わってるな。」

「そう?」

「怖くないなどと、俺の隣が暖かいなどと言う奴は、貴様が初めてだ。」

「えっ嘘。参ったなぁ、僕ルカの初めて奪っちゃった?」

「……馬鹿なことを。」

ルカはヒエンの言葉に首を傾げ、ふんっと反対側を向いた。

よく見ると、ルカの耳が赤いのが分かる。

照れてるのかな?なんか、可愛いかも。

ヒエンはルカの体に寄りかかり、焚き火の炎を見つめた。

本来のルカならば寄りかかった時点で怒鳴るところだが、何故かヒエンの行動に何も言わずに焚き火を見つめる。

 

 

「………貴様、俺が警戒して威嚇していると言ったな。」

「えっ、うん。」

「…俺は都市同盟の豚共が憎い。我が父が憎い。……子供だった俺の目の前で、我が母を陵辱した豚共と、命乞いをして母と俺を豚共に差し出した父が憎い。」

「っ!?」

え、今何て言った?陵辱!?僕みたいな可愛い子にする話かこれ?

でも。そうか、弱肉強食を語る理由がこれか。ルカは、大事なお母さんを、奪われたんだ。都市同盟の人間と、よりによってお父さんに。だから、命乞いをする者を殺すのか。他ならぬお父さんを重ねて。そんな事情なら、都市同盟を憎むのも仕方ない。

ふと、ルカの手が震えてるのが見えた。子供の頃にそんな壮絶な経験をして、フラッシュバックというやつが起きているのかもしれない。小さく、母様、と呟いてるのが聞こえて、苦しそうに息をして。たまらずルカの手に自分の手を重ねた。

「…っ、何のつもりだ。」

「ルカこそ、どうして僕にその話をしたの?」

何故?自分でも分からない。けれど、この目の前の少年の眼差しが、手から伝わる温もりが、どこか遠い日の母を思い出させた。

そういえば、こいつはユニコーン少年隊にいなかったか。それが何故、都市同盟に。

「お前は何故都市同盟の旗頭になった?」

「えっ。」

「ユニコーン少年隊にいただろう。仲間を殺した俺への復讐か?」

「ううん。成り行き。」

「は?」

ルカが呆気にとられた顔をした。今日は初めて見る顔ばかりだなと思って、僕のことを語る。ゲンカクじいちゃんに拾ってもらって、キャロにいたこと。そのゲンカクじいちゃんが都市同盟の英雄で、ゲンカクじいちゃんの孫という立場で祭り上げられてしまったことを。

「…それなら、血なぞ繋がってないだろう。何故逃げ出さん。」

「うーん、何でかなぁ?でもね、僕も今までの都市同盟は嫌いなんだ。」

「何っ?」

「議会は亡くなったミューズ市長以外は腐ってたし、その前の市長のせいでゲンカクじいちゃんは追い出されたし。だからね、どうせ祭り上げられたんなら、今までの都市同盟をぶち壊しちゃおうかな~っと。」

「は?」

「ルカが言うような腐った豚を一掃して、動物だけの国を作ろうかなって。」

「動物。」

だから最近付けられた都市同盟軍の名前がアニマル軍なのか。あれは本気で付けたのか。

「…コボルト族では駄目なのか。」

「モフモフするの躊躇う。リドリーさんは毛が短い犬種だからスベスベだし、いい大人だから触らせてなんて言えない。ゲンゲン隊長触らせてくれないし。グリフォンは仲間にしたし、ユニコーンも仲間にした。ムササビはモクモクで全部で5匹。」

「ムム!」

「…ふっ、ふはははは!」

ルカが心底おかしいというように笑いだした。えっ、そんなに変?

「そうか、動物の国か!ははははは!」

笑いすぎてお腹痛くなってるのか、お腹を押さえて。そんなに笑うところかな?真面目なんだけど。シュウにも馬鹿って言われたけど大真面目です~。

でも、良かった。ルカの震え、止まってる。やっぱり、

「僕の理想だなぁ。」

「はっ?」

「えっ、あ、口に出てた?」

「理想、だと?」

「あー…、えっと、その、」

僕の理想。獣みたいな人と恋したいという理想を話したら、呆気にとられた顔をした。

「つまり、お前の理想が俺だと?」

「う、うん。」

「分かっているのか?お前と俺は敵だぞ。」

「分かってるけど~、僕の好きなタイプ。ドンピシャ。」

「お前を殺そうとしているのにか?」

「獣ってそういうものじゃない?敵に警戒して噛み付いて。ルカって気高い獣みたいなんだもん。」

「…気高い?俺は狂皇子だぞ。」

「その狂気の理由を知ったからかな。今は怖くないし。」

「…。」

「ルカはどう?僕のこと憎い?」

「…お前は都市同盟の、」

「それを抜きにして。」

「……分からん。」

本当に、分からない。何故こいつに過去を話したのかも分からない。こいつは都市同盟の旗頭のはず。ただ、眼差しが、明るい笑顔が、かつての母を思い出す。全く似ていないのに。今まで、こんな風に笑いかけてくれた者はいなかったから。

ルカが頭を抱えて混乱していると、隣のヒエンは重ねていたルカの手をギュッと握る。

「っ!?」

「僕はね、今日、ルカが好きになったよ。」

「なっ!?」

「理想だったのもあるけど。さっきの話聞いたら謎が分かって。好きになった。」

「同情なぞいらん!!」

「同情じゃないよ!ほら!」

そう言ってルカの腕を引っ張って、抱きしめて、自分の胸に顔を当てさせる。ドキドキと早くなってる心臓の音、聞こえてるかな?あっ、でもこの状況だと簡単に殺されちゃうな。

そうしていたら、ルカが腕をヒエンの背中に回した。あっヤバい殺される?と思ったら、そのまま腫れ物を触るみたいに弱い力で抱き締められて。

まずい。キュンってした。

「…聞こえたな、今、お前の心臓の音。」

「うん、ときめいた。もうキュンキュンした。」

「…落ち着くな、お前の心臓の音は。」

「えっそう?ドキドキしたりキュンキュンしたり煩くない?さっきからキュンキュンしてるよルカにときめきすぎて。」

「…少し、黙れ。」

そうしてヒエンの胸に顔をすり寄せるルカが可愛く見えて。慰めるみたいに、ルカの頭をヨシヨシと優しく撫でてあげた。

ゲンカクじいちゃん、ナナミ。

僕、完全に理想の人に恋に落ちました。

 

 

 

二人はしばらくそのままでいたが、ふと、ヒエンが空を見上げると、そこにはオレンジ色の夕空が広がっていた。

「うわ、もうこんな時間だったんだ。ヤバい、シュウとナナミに怒られる。」

パッとルカを離すと、不機嫌そうにルカが起き上がって。ふと、ルカがヒエンの腕を掴んだ。

「?何?」

「……貴様が川に流されたせいで今いる場所が分からん。出口を教えろ。」

「へ?」

あ、ひょっとして、この森に一人でいたのって。

「迷ってたの?」

「ッ!!」

「なぁんだ、そういうことなら早く言ってくれればいいのにー。」

「戯れ言はいい!さっさと教えろ!」

「この森のことならモクモクが詳しいから案内してもらおっ。モクモクお願いっ!」

「ムムムー。」

鎧を着たルカを連れて、ヒエンはモクモクと森の出口へ向かって歩き始める。

やがて、森の出口へ着いたが、そこにはルカを探すクルガンやシード、王国兵達がウロウロしていた。

「ここでいい。貴様は早く豚共の元に帰れ。」

「えっ、捕まえないの?」

「貴様は捕まえるよりももっと派手な場所で首を跳ねたくなった。だから逃がしてやる。」

うわ、物騒。でもありがたい。

「あ、マント……」

「いらん。替えなどいくらでもある。」

「ん、ありがとう。」

ルカは王国兵の所に行こうとしたが、急に立ち止まった。

ヒエンはルカの行動の意味が分からなくて、首を傾げる。

「どうしたの?行かないの?」

「…戦場ではなく、個人的に会ったら生かしてやる。」

「え?それって…。」

ヒエンの問いかけに何も答えずに、ルカは王国兵の所へ戻る。

ルカが戻るのを確認し、ヒエンは瞬きの手鏡をかざして城へと帰っていった。

 

 

「ルカ様!!何処へ行っておられたのですか!!」

「ふんっ、何でもない。森の奥地に入り込んだだけだ。」

「森の奥!!?ルカ様、よく戻ってこれましたね!!」

「……何?シード、貴様まさかこの俺が獣にやられるとでも思っていたのか?」

「い、いえ!!とんでもないです!!ただ……」

「ただ、何だ?」

シードが言いづらそうにしていると、クルガンが口を開いた。

「ルカ様、近隣の住民の話によりますと、この森は迷いの森と呼ばれています。奥に入るほど、抜け出すのは不可能になるそうです……。」

「何……?」

ルカは眉間に皺を寄せて考える。

ではあの小僧は、何故森の抜け方を知っていたのだ。まさか本気で動物と話せるのか。

「何はともあれ、ルカ様が無事に戻って下さって良かった。グリンヒルに戻りましょう。」

「………」

「ルカ様?」

「……戻るぞ。」

「はっ!」

「あっれ?ルカ様、マントはどうしたんですか?」

シードは、ルカがいつも鎧につけている青いマントが無いことに気付いた。

ヒエンのことを言えるはずがないので、ルカは適当な嘘をつく。

「……ふんっ、気にすることではない。破けたから捨てただけだ。」

「あ、なんだ。そうだったんですか。」

「戻るぞ!!」

「はっ!!」

グリンヒルに戻る最中、ルカの頭を占めていたのは都市同盟に対する復讐ではなく、敵の大将であるはずのヒエンの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

終わり。

 


 
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