No.1091936

鬼滅の恋姫 伍話

『さようなら……、愛していたよ……』

本来の歴史をねじ曲げてまで愛する人を守った"天の御遣い"は最愛の人の前で消滅する……。

はずだった。

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2022-05-17 16:11:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:551   閲覧ユーザー数:526

 

 

「そう言えば華琳はどうやって"この世界"に来たんだ?」

 

 

一刀はかつての最愛の女性、『曹操孟徳』、真名を『華琳』との再開を果たした後、その帰り道で華琳がこの世界に来た経緯を聞いた。

 

 

「確かあれは、一刀が消えた四年後のことだったわ…」

 

 

華琳が言うには、一刀が消えてから四年後、一人で城壁で月見酒をしていると、『貂蝉』と名乗る紐パン一丁の筋肉達磨が目の前に現れたとのことだった。その達磨曰く、

 

 

『"奉山"と言う山の頂上にある神殿に向かいなさい。そこにある鏡を新月の夜に割れば、"あの人"に会えるわ』

 

 

と言われたそうだ。そして『誰にも言わず』奉山へ向かい、言われた通りにすると、光が華琳を包み、気が付いたらあの森の中におり、鬼に襲われたので応戦するも、愛用の鎌『絶』が折れてしまい、命からがら逃げていた所に一刀と出会ったそうだ。

 

 

「………」ポカーン

 

 

一刀は華琳の説明に呆然としていた。二人は喋りながら歩いていたので、話し終わって数分で蝶屋敷に着いた。

 

 

「華琳、ここが俺が今お世話になっている蝶屋敷だよ」

 

 

一刀は華琳に蝶屋敷を案内し、華琳と共に門を潜る。

 

 

「ただいま~」

 

 

ドタドタドタ

 

 

「「「兄様、お帰りなさ~い!」」」

 

 

一刀の帰りをなほ、すみ、きよの三人娘が出迎えた。

 

 

「なほ、すみ、きよ、ただいま。カナエさんとしのぶはいるかい?」

 

 

一刀はカナエとしのぶがいるか三人娘に聞く。

 

 

「申し訳ありません。カナエ様は現在買い出しに、しのぶ様は任務に行かれてまして…」

 

 

なほが申し訳なさそうに答える。一刀はアオイがどこにいるか聞こうとすると

 

 

「でも、アオイさんは今洗濯物を干しに中庭にいますよ?」

 

 

きよが一刀が聞こうとしていたことを先に答える。

 

 

「ありがとう。それじゃ一緒に来てくれるかい?」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

一刀は華琳と三人娘を引き連れて中庭に向けて移動した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

中庭に到着した一行は洗濯物を干しているアオイを見つけた。

 

 

「アオイ!」

 

 

「…? 一刀さん!」

 

 

一刀がアオイに声をかけると、アオイは振り返り、洗濯物を干していた手を止めて一刀に抱きつく。

 

 

「一刀さん、お帰りなさい」

 

 

「ただいま、アオイ。洗濯物、ありがとうね」

 

 

一刀はアオイの頭を撫でながらアオイを労う。

 

 

「いえ、これ位全然平気です。…? 一刀さん、そちらの方は誰ですか?」

 

 

アオイは気持ち良さそうに顔を緩めていると、華琳に気が付いたようで、一刀に質問をする。

 

 

「あぁ、彼女は「待って一刀」…華琳?」

 

 

一刀が華琳を紹介しようとすると、華琳がそれを遮る。

 

 

「自分のことは自分で言いたいの。…駄目?」

 

 

華琳は上目遣い(若干涙目)で一刀を見る。

 

 

「まぁ…、華琳がしたいならいいけど…」

 

 

一刀は華琳の表情にタジタジになりながら自己紹介を譲る。

 

 

「はじめまして、私は一刀の『恋人』の、性は曹、名は操、字《あざな》は孟徳、真名は華琳よ。よろしく」

 

 

華琳は"恋人"の部分を強調しながら自己紹介をしながら手を差し出す。

 

 

「ご丁寧にありがとうございます。私はこの蝶屋敷を任されている一刀さん『に助けられた同期』の神崎アオイと言います。こちらこそどうぞよろしく」

 

 

一刀から離れたアオイも負けじと一部分を強調しながら自己紹介をし、華琳の手を握る。二人の目から火花が散っているかのような感じがした。

 

 

「「(この人には絶対に負けない!)」」

 

 

華琳とアオイは互いに対抗心を出していた。

 

 

バサッ バサッ

 

 

「一刀、疲れている所申し訳ないが、新しい任務だ」

 

 

するとそこに一刀の鎹鷲のイーグルが一刀の前に現れ、彼の腕に止まった。

 

 

「何だまたか。それで、どう言った内容だ?」

 

 

一刀はこの忙しさの余りちゃんとした睡眠を取ってはいなかったのだ。前回の任務も、本当は丸一日休みのはずだったのに駆り出されたのだ。

 

 

「そうぼやくな、鬼殺隊も人手が足りなくて大変なんだ。それで任務の内容だが、"那田蜘蛛山"と呼ばれる山に"十二鬼月"がいると噂になっている。しかも調査に向かった隊士からの連絡も悉く途絶えてしまっている」

 

 

「そこで一刀は水柱、蟲柱の両名と共に調査、討伐に向かって欲しいとお館様は仰っておられた」

 

 

イーグルは任務の内容を一刀に伝える。

 

 

「委細承知した。因みにそこにはカナヲはいるのか?」

 

 

「蟲柱と共に現在那田蜘蛛山に向かっている。今から出れば追い付くだろう」

 

 

一刀はカナヲのことをイーグルに聞くと、イーグルはすんなり答えた。

 

 

「分かった、今すぐ出立する。案内を頼む。アオイ、悪いが華琳のことを頼む」

 

 

一刀はイーグルを腕に乗せたまま屋敷の門まで向かう。

 

 

「分かりました。では門前で少々お待ち下さい、切り火をしますので」

 

 

アオイは華琳から手を離し、そそくさと切り火の準備を行うため中庭から離れた。

 

 

「なほ、すみ、きよ。悪いが洗濯物の残り、頼めるか?」

 

 

「「「お任せ下さい!」」」

 

 

三人娘は元気良く返事をする。そして門前でアオイに切り火をされた一刀はイーグルの案内で那田蜘蛛山へと走った。その様子をアオイと華琳はじっと見ていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

"???サイド"

 

 

私は竈門炭華《すみか》、炭焼きを営んでいた竈門家の"長女"!よろしく!

 

 

えっ?"炭治郎"じゃ無いのかって?炭治郎って誰?"竈門家の長男"?私の家族は死んだお父さん以外は皆"女性"だよ?

 

 

まぁそんなことはさておき、私は今、絶体絶命の危機に瀕しています。何故なら、私の前に私の"兄弟子"の義勇さんと、もう一人の方が何故か戦っているんです!怖いです!

 

 

えっ?何でこうなっているのか?私は妹の禰豆子と同期の『我妻善逸』って人と同じく同期の『嘴平伊之助』って人と一緒にこの那田蜘蛛山に来たの。えっ?"禰豆子は鬼じゃ無いのか"って?確かに禰豆子は鬼よ。けど、義勇さんから聞いていたのとは違うみたい。

 

 

だって禰豆子は"太陽の下を平気で歩いて"いるもの。義勇さんたちの話では、『鬼は太陽の光を嫌う』って言ってたのに、禰豆子は全然へっちゃらだったもの。それで鬼であることを隠して最終選別に参加して見事合格したの!凄いでしょ!

 

 

話を戻すけど、私と禰豆子は我妻君と嘴平君と離れ離れになっちゃったんだけど、そこに"十二鬼月"がいたの!私は禰豆子の血鬼術である『爆血』とお父さんから教わった『ヒノカミ神楽』を使ってその鬼を倒したんだけど、水の呼吸からヒノカミ神楽の呼吸に"急に"変えた反動で動けなくなっちゃったの。

 

 

しかもその鬼を倒せてはいなかったの!そこに義勇さんが来て鬼を倒したのだけど、いきなり義勇さんはこっちを向いて刀を抜いて構えたの。そしたら蝶の髪飾りをしている女性と戦い始めちゃったの!

 

 

"???→炭華サイド end"

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

一刀が那田蜘蛛山に到着し散策をしていると、刀がぶつかり合う音がしたのでそこに向かうと、そこには義勇としのぶが戦っており、義勇の後ろには『二人の少女』が寝そべっていた。

 

 

「あの~…、これは一体」

 

 

一刀は義勇としのぶが離れた時を見計らい、二人に声をかける。

 

 

「これはこれは一刀さん、丁度良い所に。一刀さんも"私に"力を貸して下さいな」

 

 

「一刀、胡蝶では無く"俺に"力を貸してくれ」

 

 

一刀はしのぶと義勇に"力を貸せ"と言われ困惑していた。すると

 

 

「伝令、伝令!竈門炭華並びに竈門禰豆子、この両名を拘束せよ!繰り返す、竈門炭華、禰豆子両名を拘束せよ!」

 

 

イーグルが一刀たちの頭上を飛び回りながら仲間の鴉からの連絡を伝えていた。

 

 

「え…っと、イーグル。その『炭華』と『禰豆子』って…、誰?」

 

 

一刀はイーグルに質問をする。

 

 

「炭華と禰豆子は俺の後ろにいる二人のことだ」

 

 

イーグルの代わりに義勇が一刀の質問に答えた。

 

 

「成る程」

 

 

一刀は納得して義勇の後ろにいる炭華と禰豆子に歩み寄った。

 

 

「聞いていたと思うけど、今から君たちを拘束する。大人しくしていてくれるかい?手荒な真似はしたくないからね」ニコッ

 

 

「「コクコク」」/////

 

 

一刀は微笑みながら二人に言うと、二人は顔を赤くしながら頷いた。

 

 

「(また恋敵が増えた!)」

 

 

しのぶは仏頂面になりながら刀を鞘に納めた。それを見た義勇も自分の刀を鞘に納めた。そして炭華と禰豆子は刀を没収され、手に縄を縛られて隠に連行された。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

明くる日、産屋敷家の中庭に、炭華は腕を縛られた状態で寝かされていた。

 

 

そして無理矢理起こされると、"六人"の柱が炭華を見下ろしていた。

 

 

炭華は見下ろしている柱に怯え、少しずつ後退る。そこに

 

 

「炭華、安心しろ。お前は俺が守る」

 

 

義勇が禰豆子と一緒に現れ、炭華の前に立つ。

 

 

「冨岡さん、何故彼女を庇うのですか?彼女は鬼を連れて鬼殺をしていたのですよ?それにその鬼の少女も、自分を偽って最終選別に参加していたのですよ?これは立派な"隊律違反"なのですよ?」

 

 

しのぶが皆を代表して義勇を問い詰める。

 

 

「全て承知している。禰豆子が鬼であること、炭華が鬼を連れて鬼殺していること。それにこのことはお館様にも報告して承諾されている」

 

 

「禰豆子は今まで俺たちが出会った鬼とは違う。この"姉妹"は俺たち鬼殺隊に『新しい風』を吹かす。そう思っただけだ」

 

 

義勇は淡々と竈門姉妹について説明をする。

 

 

「おいおい、何だか面白ぇことになってんなぁ」

 

 

するとそこに実弥が義勇たちの後ろから現れた。

 

 

「いいかァ、鬼が鬼を殺すなんて…、あり得ねェんだよ!」

 

 

実弥は刀を抜刀し、禰豆子の髪を掴んで刺そうとする。すると

 

 

「いや~!変態!痴漢!女の敵!触らないで~!」

 

 

「んなっ!?」

 

 

禰豆子が涙目になって暴れ出した。しかし、腕を縛られているので思うように動けないでいた。実弥は禰豆子に言われたことが余程ショックだったのか、刀を落とし、髪を掴んでいた手を離す。

 

 

「お姉ちゃ~ん(泣)」

 

 

禰豆子は姉の炭華のそばに座る。

 

 

「不死川さん、最低です」

 

 

「不死川さん、女の子には優しくしないと駄目ですよ?」

 

 

しのぶと蜜漓が実弥を冷たい目線で睨む。

 

 

「おい冨岡ァ、今のは俺が悪ィのかァ?」

 

 

実弥は呆然としながら義勇に聞く。

 

 

「今のは十中八九不死川が悪い。俺でさえ会った当初はあそこまでの暴力はしなかったぞ?」

 

 

義勇に正論を突き出され、実弥は膝から崩れ落ちた。

 

 

「「お館様のお成りです」」

 

 

すると耀哉の娘二人が耀哉が来たことを伝える。

 

 

「炭華、禰豆子。今からお前たちの縄を切る。じっとしていろ。その後は頭を下げて平伏するんだ」

 

 

義勇は自分の刀を鞘から少しだけ出して炭華と禰豆子の縄を切った。そして炭華と禰豆子は義勇の言う通りに平伏した。

 

 

「おはよう皆。今日もいい天気だね。空は青いのかな?半年に一度の柱合会議を迎えられたこと、嬉しく思うよ」

 

 

「お館様におかれましても御壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

 

 

「ありがとう義勇」

 

 

耀哉が挨拶をし、それを義勇が返し、耀哉はそれに対して礼を言った。

 

 

「そう言えばさっき、何か騒がしかったようだけど…」

 

 

「そこにいる不死川が竈門禰豆子に粗相を行いまして…」

 

 

耀哉の質問に義勇が答えると、耀哉は"見えていない"目を細めた。

 

 

「実弥、鬼が赦せないのは分かるが、女の子に乱暴をしてはいけないよ?」

 

 

「…御意」

 

 

耀哉に叱られた実弥はバツが悪そうな顔をしていた。

 

 

「さて、今回の会議の内容だけど、そこにいる炭華、禰豆子のことについてなんだ。普通、鬼は太陽の光を浴びると灰になる。けど禰豆子は鬼になってから陽光を浴びても灰にはならなかった。それはつまり、太陽を克服していると言うこと」

 

 

「これを無惨が知ったら、血眼になって禰豆子を吸収しようとするだろう。けど、無惨にそんなことはさせない。そこで皆には禰豆子のこと、強いては炭華のことを了承して欲しいんだ」

 

 

「禰豆子は"自分が人を喰わない"ことを証明するために鬼殺隊に入隊した。そして今まで一度も人を食べてはいない。けどこれから先、禰豆子が人を襲う保証が無い。そこで"ある実験"をしたい。実弥、こちらにおいで」

 

 

耀哉は実弥を呼び寄せると、耳元で囁く。すると実弥は耀哉から離れ、禰豆子の前に立つ。炭華と禰豆子は顔を上げると実弥がいたので思わず後退る。

 

 

実弥はお構い無しに自分の左腕を刀で斬りつける。そしてその切り口から血が滴り落ちる。

 

 

「ぐうぅっ!?」

 

 

すると禰豆子は口を押さえて苦しみ出す。

 

 

「猫にマタタビ、鬼には稀血。俺の血は稀血の中でも更に希少でな、"匂い"だけでも酔わせることができる。俺の血で酔いしれなァ!」

 

 

実弥は血が落ちている腕を禰豆子に近づける。

 

 

「や…、止め…、気持ち…、悪い…」

 

 

禰豆子は口を押さえてその場に蹲る。思った行動とは違う行動を取った禰豆子を心配したのか、実弥は刀を手離し、傷口を布で押さえ、義勇と炭華は禰豆子のそばに寄る。

 

 

「お姉…ちゃん、吐きそう…」

 

 

禰豆子は顔を青ざめており、今にも吐きそうだった。

 

 

「お館様、失礼仕る!」

 

 

ヒュバッ

 

 

義勇は禰豆子を連れてその場を離れた。

 

 

「どうしたのかな?」

 

 

「禰豆子様は風柱様の血を嗅いだ瞬間気分を悪くされ、今しがた水柱様が何処かへお連れしました」

 

 

そのことを聞いた耀哉は驚いた表情をした。

 

 

「これは驚いた、稀血を欲しがるんじゃ無くて拒絶するとは」

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

しばらくして、顔色が多少良くなった禰豆子を連れた義勇が戻ってきた。

 

 

「お館様、先程は失礼しました」

 

 

「禰豆子は大丈夫かい?」

 

 

「まだ顔色は優れませんが、とりあえずは」

 

 

戻ってきた義勇に耀哉は禰豆子の容態を聞くと、義勇は完全では無いことを伝えた。

 

 

「そうか…、ならこれ以上の無理は禁物だね。けど、これで禰豆子は人を襲わないことが証明された。炭華、禰豆子。さっきは申し訳無かったね」

 

 

「君たちはこれから蝶屋敷で治療をしておいで」

 

 

耀哉は二人に謝罪をし、蝶屋敷に向かうことを提案した。

 

 

「お館様、少々失礼仕る」

 

 

実弥は耀哉に一言断りを言って禰豆子の前に座る。

 

 

「さっきは酷いことして、申し訳無かった。後で詫びの品を持っていく」

 

 

実弥は禰豆子の前で土下座をして謝罪した。

 

 

そして炭華と禰豆子の二人は女性の隠によって蝶屋敷へと運ばれた。

 

 

 


 
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