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真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第18話

ささっとさん

溜まりに溜まった鬱憤を晴らし、身も心もリフレッシュ?した華琳。
そんな彼女を中心とした魏の国はいよいよ大陸の覇権を賭けた戦いに参戦。
そんな時、一刀と風はある場所へと赴いていた。

2009-11-04 10:36:25 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:30221   閲覧ユーザー数:21227

 

袁紹が公孫賛を破り、そして河北四州を手に入れた。

 

たったの一文で事足りるほど簡潔な内容だが、それが持つ意味は限りなく大きい。

 

この情報がもたらされた直後から俺達は当面の敵を袁紹と定め、戦争への備えに力を入れていた。

 

幸い一周分の記憶を持った風がこれまでよりも遥かに早い段階で魏の首脳陣に加わっていたため、

現時点で魏の国力は過去のループの同時期と比べてより充実したものとなっている。

 

もし予期せぬ事態が起こったとしても、余程の事でない限りはまず対応しきれるだろう。

 

 

「にしても、まさかこの世界でこの城に来る事になるとはな」

 

 

それはさておき。

 

袁紹が河北四州を手中にしてすぐ、俺と風は華琳の命によってとある場所にやって来ていた。

 

そこは袁紹の領地との国境沿いに建てられている出城の一つ、鄄城。

 

そう、俺達は現在ここの責任者となっている稟をスカウトしに来たのである。

 

と言っても華琳が稟の事を知ったのはつい最近であり、その存在を知らせたのは風だったりするのだが。

 

 

「稟ちゃんは大切な友達ですからねー。出来るだけ危険な目には遭って欲しくないのですよ」

 

 

風がいきなり稟の事を華琳に推挙した当初は首をかしげた俺だったが、

改めて考えてみるとおかしい話ではない。

 

例え稟一人でもあの策を思いつくことは難しくないだろう。

 

しかしあの策はあくまで限定的な状況でしか使えず、状況が整わなければ確実に万事休す。

 

それにもし状況が整っていたとしても、確率は高いが絶対に成功する訳でもない。

 

これまでさほど深く考えていなかったが、本来ここで稟や風が死んでしまう可能性は十分にあったのだ。

 

 

「……袁紹如きのために稟を死なせるわけにはいかないもんな」

 

 

武を手に入れ、妖術を会得し、自らの死に慣れ、幾度も同じ世界を繰り返してきた為に薄れていた感覚。

 

予め筋書きの決まっているゲームや漫画の世界とは違う。

 

これは俺にとって紛れもない現実であり、風達もまた同じ現実の中で生きているということ。

 

……これまで俺が行動の指針として来た『基準』はもはや通用しない。

 

僅かな差異はあれども一貫していた19周目までの流れは、20周目を境にして完全に崩壊したのだから。

 

全ての物事が過去のループと同じように進行する絶対の保障などありはしないのだ。

 

 

「何だが難しい顔をされてますけど、考え事ですか?」

 

「ん、まぁな」

 

「なるほど。稟ちゃんに会ったらどうやって口説こうか今のうちから検討しているんですね~」

 

「………………」

 

 

人が真面目に考え事してるっていうのにこいつは……はぁ。

 

久しぶりの2人旅だからもっと構って欲しいってのは解るが、さすがに空気を読んで欲しい。

 

いや、これもまたある意味空気を読んだ発言か。

 

前の世界でもそうだったけど、一緒にループしたおかげか風の洞察はさらに鋭くなってる気がする。

 

ただ俺が解りやすい奴なだけかもしれないけど、俺に関する事については特にそれが顕著だ。

 

 

「まったく……あとでさ、ちょっと相談に乗ってくれ」

 

「うふふっ。はい、お兄さん」

 

 

やれやれ、ホント風には頭があがらないよ。

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第18話 21週目 その10

 

 

鄄城に入った俺達は早速この城の責任者である稟と面会した。

 

 

「お久しぶりですねー、稟ちゃん」

 

「ええ、久しぶりね、風」

 

 

久しぶりの再会を心から喜び合っている風と稟。

 

考えてみれば、今回2人は黄巾の乱が勃発する以前から別行動を取っていたのだ。

 

親友同士、互いの安否も解らぬまま過ごすのはやはり不安だったのだろう。

 

 

「初めまして。北郷 一刀です。よろしくお願いしますね、郭嘉さん」

 

「こちらこそ。御目にかかれて光栄です、天の御遣い様。私の事は稟とお呼びください」

 

「えっ! いきなりだけど、真名で呼んでもいいの?」

 

「天の御遣い様の御高名はかねがね伺っております。

 そして風がそれほど信を置いた方ならば、何の問題もありません」

 

 

風達の再会がひと段落してから俺も挨拶を済ませ、そのまま3人でしばしの間雑談に興じる。

 

この世界ではまだ初対面なので稟の態度が若干硬かった気がしたが、まぁ仕方ないか。

 

建前とは言え華琳の側近である俺と稟ではまだ立場が違うし、天の御遣いの名もあるしね。

 

そう言えば、風が天の御遣いを支える天女だと知った時の稟は傑作だったな。

 

言い方は悪いけど、あんな間の抜けた顔をした稟を見たのは初めてだ。

 

俺=天の御使いだって事はこの制服の効果もあって結構知られてるけど、

風=天女だって事は意外に知られてないんだよな。

 

 

「…と言う訳で華琳様が稟ちゃんを是非軍師にと仰られたため、風達が稟ちゃんを迎えに来たんですよー」

 

 

その後、適当な所で今回俺達がここに来た目的を伝える。

 

 

「そ、曹操様が私を?! ああ、そんな……ぶはっ!!!」

 

 

華琳から突然のラブコールを受けた稟の反応だが、盛大に鼻血を噴き出して倒れてしまった。

 

そして復活後には二つ返事で承諾。

 

見事なまでに予想通りの展開である。

 

ともかく、これで表向きの目的は達成された訳だ。

 

 

「後任の者に引き継ぎをしなければなりませんので、出発は少し待っていいただいてもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、構いませんよ。と言うより、出発はおそらく数日後になると思いますから」

 

「他に何かご用がお有りなのですか?」

 

「袁紹さんの動向、稟ちゃんも既に掴んでいるのではないですかー?」

 

「……なるほど。では、そちらに関しても指示を出しておきます」

 

 

風の言葉に納得した様子の稟だったが、いささか緊張を増したようだった。

 

国境に位置している城だけあって情報収集は欠かしていないらしく、

稟自身にもここに袁紹達がここにやって来る事はある程度予想がついていたのであろう。

 

とりあえず、何が起きてもいいように今夜はゆっくり休んで疲れを抜いておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀様、少しよろしいでしょうか?」

 

「ふぅ……ん? どうぞ」

 

「このような時間に申し訳ありません。実は少々御相談したいことが、ありま……し、て………ぶはっ!」

 

「ちょ、稟?! 何でこっち向いた途端にいきなり鼻血……あ」

 

「……はぅ……ふぇ? どうして稟ちゃんが鼻血を噴き出して倒れているんですか?」

 

「どうしても何も、俺達の格好をみたら一目瞭然だろ」

 

「おおっ、言われてみればそうですねー」

 

 

 

 

万が一の事態を想定して鄄城を訪れた俺と風。

 

そんな俺達の前に袁紹軍は予想通り現れた。

 

総大将である袁紹を筆頭に文醜、顔良という主力そろい踏みの総勢三万。

 

普通ならば勝つどころか生き延びる事すら至難の業となるであろう圧倒的な戦力差。

 

しかし、袁紹軍のこの編成は俺達がもっとも望んでいたものだった。

 

 

「何とか戦わずに済んだな」

 

「ええ、上手くいきました」

 

「作戦成功ですねー」

 

 

撤退していく袁紹軍の動向を城壁の上から眺める俺達。

 

袁紹と文醜の性格を利用した策は無事成功し、事態は戦わずして決着したのである。

 

にしてもいくら勝算があるとはいえ、あれほどの危機的状況下であんな大胆な策は普通出来ない。

 

俺みたく自分の死に慣れて感覚が薄れてるような奴ならともかく、

大概は死ぬかもしれないという恐怖に呑まれて自滅するのが当たり前なのに。

 

改めて風と稟の凄さを思い知らされた感じだ。

 

傍から見たら2人とも普通…よりもかなり可愛くて美人な女の子なのにな。

 

 

「それでは事後処理にかかります」

 

「あっ、それは風がやっておきますから、稟ちゃんは今のうちに支度を済ませておいてください」

 

「支度?」

 

「ええ。直に華琳様の所からお迎えが来るでしょうからねー。

 お兄さん、風達の荷物も今のうちに纏めておいてください」

 

「……ん? ああ、そうだな」

 

 

そう言えば、もうすぐ春蘭が少数の兵士を率いてこの城にやって来る頃か。

 

いつまでも風達に見惚れてないで、さっさと準備を済ませておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀! 一刀は無事なの?!」

 

「……かずと、平気?」

 

「か、華琳に恋? 何で2人がここに?」

 

「「「私(ウチ)の事も忘れないでください、一刀様(さん)(はん)!!!」」」

 

「凪達まで?! 仕事の方は大丈夫なのか?」

 

「………お兄さんの事が心配だったのは当然の事ですし、風達なんて眼中にないのも理解できます。

 ただ、ここぞとばかりにお兄さんに抱きつくのは我慢できませんねー」

 

「こ、この御方が曹操様……ああっ、生の曹操様をこの目で見られるなんて………ぶはっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鄄城での一件を境に俺達は袁紹軍と本格的な戦争状態に突入した。

 

しかし、いざこれからという時になって袁紹が標的を変更。

 

袁術と手を組み?徐州の劉備達を攻め始めたのである。

 

 

「この辺の行動は相変わらずというか、さすが袁紹だよな。全然褒められたもんじゃないけど」

 

「可能性としては確かに考えられたけど、まさか本当にやるとは思わなかったわ」

 

 

軍議に集まった面々は一様に呆れた様子だったが、ともかく方針転換を迫られた。

 

新たに華琳の軍師となった稟が袁紹を叩くべきだと進言し、古参の桂花は劉備を叩くべきだと主張。

 

そんな両者の意見を風が身も蓋もない物言いでバッサリと切り捨て、最終的には静観する事で落ち着いた。

 

この辺り、そしてここから先の流れは20周目も含めてこれまでの世界と大差ない。

 

袁紹達から逃れるために領土を横切りたいと頼んできた劉備達との再会。

 

劉備を逃がした後に袁紹軍を少数の兵で翻弄して迎撃。

 

そして袁紹・袁術の連合軍を官渡の戦いで破り完全決着。

 

さほど見所もなかったし、ダイジェストで十分だろう。

 

という訳で一気に大陸最大勢力へとのし上がった俺達だったのだが、ここで予想外の事態が発生した。

 

 

「えっ、賊の討伐?」

 

 

袁紹から奪い取った領地の混乱を収めている最中、俺は華琳から直々に頼みごとを受ける。

 

なんでも隣国から流れ込んで来た複数の盗賊団が結託し、ちょっとした勢力になっているらしいのだ。

 

しかも連中の行動が思いのほか速く、既に出城の一つが落とされているという。

 

袁紹達との決戦に力を注いでいたため、事態の把握が遅れてしまったようだ。

 

 

「それで、連中の討伐を俺に?」

 

「ええ。私が直接出向こうかとも思ったのだけど、この情勢ではね」

 

 

確かに大きな戦いを終えたばかりというこの状況で華琳が動くのは得策ではない。

 

ちなみに討伐軍の編成だが、俺を総大将に据え、副官の恋と軍師の陳宮。

 

さらに配下の将として季衣と流琉まで同行させるという。

 

動員する兵士の数もかなりのものであり、それだけ苦戦を強いられるという事だろう。

 

 

「……人使い荒いな」

 

「うふふっ、だけど退屈するよりは良いでしょう?」

 

「違いないな。それじゃあ準備が終わったらすぐにでも出発………ん?」

 

 

そんな感じで賊の討伐に赴く事となったのだが、ここで俺はとんでもない事に気が付いてしまった。

 

 

「どうかしたの?」

 

「……華琳、今城に残っている将は春蘭と霞と真桜の3人だったよな」

 

「……ええ。けれど春蘭と霞には別命を頼むつもりだから、城の残るのは真桜だけになるわね」

 

 

そこでニヤリと意味深な笑みを浮かべる華琳。

 

全てを語るまでもなく、俺がそれに気付いた事を察したようだ。

 

 

「せめて、俺か恋のどちらかを残しておいた方が良くないか?」

 

「大陸最強の武を誇る天の御遣いと、その天の御遣いに敗れたとはいえ飛将軍の名を冠する人中の呂布。

 どちらも大物を釣り上げるには最高の餌ではなくて?」

 

「確かに餌としては最高だが、そっちに気を取られ過ぎて肝心の仕掛けが疎かになったら本末転倒だぞ」

 

「全てを決めるのはそれらを操る者の腕次第よ、一刀」

 

「しかしだな、華琳……」

 

 

それから出発までの間に何度か華琳を説得してみたのだが、残念ながら効果はなかった。

 

恋と陳宮が敵にいない分確かに楽だろうけど、それでも不安は尽きない。

 

 

「俺達が戻るまで頼むぞ、風」

 

「お兄さん達が戻られるまで、必ず持ちこたえてみせます。華琳様の事も任せておいてください」

 

「………無茶だけはしないでくれよ」

 

 

結局俺に出来た事と言えば、俺と同じくこの戦いの顛末を知る風にあとを託すだけだった。

 

 

 

 

賊の討伐に出撃した俺は迅速な行動を心掛けるよう全軍に指示を出し、

通常の行軍速度よりもかなり速いペースで進軍。

 

そして今回の標的である賊の一派を見つけるや否や、有無を言わさず殲滅にかかった。

 

しかし連中は数だけでなく個々の質もそれなりの水準に達しており、予想以上の苦戦を強いられてしまう。

 

正直、俺か恋のどちらかがいなければ危なかったかもしれない。

 

そのため俺が当初予定していたよりも時間がかかってしまい、

事後処理の完了まで含めてギリギリの帰還となってしまった。

 

戦いは既に野戦から籠城戦へと移行しており、一刻の猶予もない。

 

 

「総員、突撃ぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」

 

 

一旦集結した俺達は手早く作戦を決め、春蘭の号令を合図に劉備軍へと仕掛けた。

 

俺と春蘭の隊が敵を背後から強襲し、それによって崩れた敵を霞と秋蘭の隊が各個に撃破。

 

強行軍で疲労しているにもかかわらず、全員がこれ以上ないほどの闘志を漲らせている。

 

この状態の俺達を止められる奴等なんて何処にもいない!

 

 

「恋、一気に突っ込むぞ!!!」

 

「…ッ!」

 

 

小さく頷いて答えた恋とともに敵軍のド真ん中を突っ切る。

 

勝利を目前にしながら突然の奇襲を喰らった格好の劉備軍は混乱の極みにあった。

 

一部の将兵が立て直しに躍起になっているが、その将兵を狙い討てば混乱はさらに加速していく。

 

人様の留守を狙った火事場泥棒なんぞに情けは無用。

 

とは言え華琳のいる本隊の余力を考えたら殲滅は不可能だ。

 

もう少し暴れて早々に撤退して貰おう。

 

 

「一刀様! 敵が撤退を開始しました!!」

 

「って、もうかよ!? よし、凪は秋蘭達と合流して敵を追撃してくれ。

 ただし深追いはするなよ? あくまでも追い払う事が目的だからな」

 

「承知いたしました!」

 

 

疲れなど微塵も感じさせない声をあげ、秋蘭達の所へ向かっていく凪。

 

彼女が通った後には氣弾によって吹き飛ばされた哀れな劉備軍兵士達が転がっていた。

 

 

「………相変わらず複数相手の戦いだと無敵だな、凪」

 

 

少し鍛え過ぎたかも…などとちょっぴり後悔しつつ、俺は城に向かって再び走り出す。

 

ここまでくれば春蘭達に全部押しつ…ゲフン、任せても大丈夫だろう。

 

 

「抜け駆けみたいで申し訳ないけど、早く風や華琳達の顔が見たいからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、一刀」

 

 

城に戻った俺を出迎えたのは、

まるでこの世の終わりを前にしたかのように沈んだ華琳からの謝罪だった。

 

そんなに野戦で負けたのがショックだったのかな。

 

なんか、今まで見たことがないくらい落ち込んでる。

 

 

「……別に華琳が謝る必要なんてないさ。

 確かに少し無茶なやり方だったかもしれないけど、結果的に華琳は生きてるだろ?

 華琳が無事でいる以上、俺達には何の文句もないよ」

 

 

華琳の予想外の態度に驚きつつも、彼女を励ますように声をかける。

 

野戦の負けがどうしても気に入らないのなら、次の機会に100倍くらいの利息を付けて返してやればいい。

 

今はとにかく無事に生き延びた事を素直に喜んでおけばいいじゃないか。

 

しかしそんな俺の言葉にも華琳は大した反応を見せず、暗い表情のまま謝罪を繰り返すだけだった。

 

 

「おいおい、いくらなんでも気にし過ぎだぞ。まったく………あれ?」

 

 

一向に立ち直る気配のない華琳の態度を少し不審に思った俺だが、

ふとここにいるべきはずの人物がいない事に気がついた。

 

 

「なぁ、華琳。風は何処にいるんだ?」

 

「っ……」

 

 

籠城戦で指揮を執ってたんならここにいる筈だけど、もしかして休憩中かな?

 

それとも城内にいる兵達の収拾にあたってるとか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………風は、死んだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………え?

 

 

 

 

死んだ? は? 誰が? 風が、どうなったって?

 

あれ? 何かおかしい単語が聞こえたような気がするけど………聞き間違い、だよな?

 

 

「華琳。悪いけど、今のもう一度言ってくれないか?」

 

「………………」

 

 

俺の言葉に華琳は一瞬身体を震わせたものの、僅かに俯いただけで何も言い返してこない。

 

………なぁ、どうして何も言ってくれないんだ?

 

たださっきの台詞をもう一度言ってくれと頼んだだけなのに、それがそんなに難しい事なのか?

 

つい何秒か前の事を忘れたって訳じゃないだろう?

 

 

「華琳? おい、華琳!」

 

「風は死んだ……華琳様はそう仰ったのよ」

 

 

何故か俺の言葉を無視する華琳に代わり、傍にいた桂花が口を開く。

 

そして俺が彼女の言葉から聞き取れたのは、先程華琳が言ったと思われる台詞と同じものだった。

 

あれ? 俺の聞き間違い………じゃ、ない?

 

だけど、でも、それだとおかしくないか?

 

だって、聞き間違いじゃないってことはつまり華琳の言った事が本当って訳だから………

 

 

「………………冗談、だろ?」

 

「………………味方の死を、私達が冗談で口にすると思うの」

 

 

自分でも意図せず漏れた呟きに対し、再び華琳が答えた。

 

そんな事言われなくたって解ってる。

 

魏の王たる華琳もその軍師である桂花も、冗談で仲間の死を口にするような奴じゃない。

 

仮に何らかの作戦で必要な嘘だったとしても、

それを今俺に言わなければならない理由なんてないはずだ。

 

だったらなんで今俺にそんな事を言うんだ?!

 

 

「……ついてきなさい、一刀」

 

 

何が何だか分からなくなった俺は、華琳に言われるまま城壁を後にする。

 

そしてふらつきながらも連れられて来られたのは、先程の戦いで戦死した兵達を埋葬している場所。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一角に、彼女は静かに横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………風?」

 

 

何故か一段と重くなった足を引きずるように動かし、俺は彼女の下へ歩み寄る。

 

今まで何度も目にしてきた綺麗な顔のまま目を閉じている風。

 

どう考えてもただ眠っているようにしか見えない。

 

………身につけている服の胸の部分がドス黒く染まっていなければ、だが。

 

俺はその場に崩れ落ちるようにしながら片膝立ちになり、何故か震える手を彼女へと伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやって抱き上げた彼女の身体は、信じられない程に冷たくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、風? 目をあけてくれよ……………なぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

握りしめた彼女の手は、いつまで待っても握り返される事はなくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ……風、風……ふう………ふ、う……っ………風ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ名を呼び続けても、彼女が目を開けてくれる事はなくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………風は、死んだのよ。一刀」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ははっ、なんて夢だよ」

 

 

賊から奪い返したばかりの城で迎えた一日は、最悪の目覚めから始まった。

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうも、お久しぶりの『ささっと』です。

 

久しぶりに風邪ひいたと思って病院に行ったら新型インフルだったの巻。

 

そこまで重度の症状ではなかったのですが、結構寝込む羽目になってしまいました。

 

そして休んでた分を取り戻すべくここ最近働き詰めだったので、まともにPC触ってませんでした。

 

次回からはまた通常のペースに戻ると思いますので、ご安心ください。

 

 

それはさておき小説の方ですが、今回はやはり夢落ちが最大の見所ですね。

 

とりあえず『釣られた奴ざまぁwwwwww』と言っておきましょう。

 

本当は夢落ちにせずこのままいく案もあったんですけど、主に2つの理由から却下しました。

 

まず、過去のあとがきにも書いた通り、当小説は風をメインとした恋姫ヒロイン達とのイチャラブ話です。

 

なのでヒロインの死亡なんてシリアス展開、当小説には無用の存在。

 

皆様には『うはwww風タソテラモエスwww』とか『厨二病乙www』とか『一刀wwwもwwwげwwwろwww』とか、

そんな感じで気軽に読んでいただければいいのです。

 

シリアスの織り交ぜられた素晴らしい小説は他の作者様にお任せします。

 

そしてもう一つの理由なのですが、どちらかというとこっちの比重が大きいですね。

 

そう、物語上の演出なんて免税符如きで嫁を殺せるわけがなかろうこの馬鹿ちんがぁぁぁぁぁ!……です。

 

正直、夢落ちでも血反吐を吐きながら書き上げました(リアル話)。

 

もし本当に風が死んでしまう展開にしていたら、

私はきっと投稿した後でTINAMIから失踪していたでしょう。

 

 

そんな訳で次回、果たして一刀君は風を救う事が出来るのか!? (ネタバレ:出来る!)

 

 

コメント、および支援ありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

友達登録もお気軽にどうぞ。

 

 

P.S.アニメ版風タソキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!! テンションあがって全裸待機したら熱がまた40度超え…orz

 

P.S.2.17話へのコメント・応援掲示板の書き込みへの返事はなしとさせていただきます。ご了承ください。

 

 

 


 
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