No.1037676

光の運び手

vivitaさん

機虫と幼子たちは荷を運ぶ。
死と隣り合わせたこの道を、今日もまたあるいていく。

搭乗ヘキサギアなど
モーター・パニッシャー/ボルトレックス/イグナイト

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2020-08-07 16:27:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:31   閲覧ユーザー数:31

 

 

 暗闇に赤い光が灯った。

 照らしだされたのは、節のある長脚にささえられた新緑の装甲。白銀の歯と爪をもつ機械の鍬形虫。

 機虫の懐には、二人の幼子がいた。黒髪と金髪。金髪の子が、目をとじて耳をすませている。

 

「二機と二人。一機があるいてて、うしろをもう一機がとんでる。」

 

「一機討たれても、もう一機が討ち返せる。わかりやすく嫌なかたち。」

 

 廃屋にかくれた機虫をさがすものたちも、また機虫だった。

 まえをあるく機虫が、建物ひとつひとつに踏みいって中をしらべている。

 さがしもとめているのは、幼子たちのもつ荷物。

 

「あと一機と一人。ボルトレックスとガバナーがいたはずだけど?」

 

「……ごめんね、わからない。」

 

「わかった。るーくん、索敵終了。」

 

 るーと呼ばれた金髪の幼子が目をあけた。ふらつき、たおれそうになる。

 機虫の長脚がわずかにうごいて、それをささえた。

 

『ルシア様、すこし休まれたほうが。』

 

 機虫から合成音声がひびく。赤いランプが心配げにゆれて、ルシアを照らした。

 

「トール、甘やかすのはやめて。休んでる暇なんてないから。」

 

「……とーくん、だいじょうぶだから。のーちゃんの言うとおりに。」

 

『……かしこまりました。』

 

 トールの尻部から、大きな箱が切り離された。

 中には数々の武器にまじって、青い鞘のような部品がはいっている。

 二大勢力が目の色をかえて欲しがる禁断の聖剣―規格外兵装だ。

 

「るーくんはこれをもって。私はレーザーライフル。あとは箱ごとかくすよ。」

 

 幼子たちをさがしていた機虫が、かくれ場所へと足を踏みいれた。

 折りたたまれていた長脚がまっすぐと伸ばされ、屋内の家具をかきわける。

 ぼごんと音をたてて、脚に押された木の壁が壊れた。

 

 それが合図だった。

 トールが閉じた大顎で敵の脚を叩く。第二関節を叩き折り、爪先ごと脱落させる。

 関節をとじていたヘキサグラムが、あたりにちらばった。

 

 トールが多脚をせわしなく動かして、敵へとせまる。

 敵もまた、残った三本の脚をせわしなく動かした。勢いよくあとずさる。

 だが、トールのほうが速い。

 

 ギィ……ギギギ……!!

 

 トールの大顎がひらかれた。下からすくいあげるように、敵を挟もうとする。

 させまいと、敵も大顎をひらき、ふるった。

 ガチガチと金属がぶつかり合う音がした。大顎が弾き弾かれる、刀のように打ち合いつづける。

 

 ようやくトールが敵を挟みあげたそのときには、表通りへとでてしまっていた。

 はさみあげた敵から、そのガバナーがとびのいた。

 空を飛んでいたもう一機の敵が、トールへと銃口をむける。顎にしこまれたそれは、榴弾だ。

 

 銃口が火を噴くのと、トールが敵を投げ飛ばしたのはほぼ同時だった。

 投げ飛ばされた敵が盾となり、榴弾が空中で炸裂する。

 

 炎と煙を裂いて、一本の槍が空へと飛びあがった。

 大顎と多脚をたたみ、顎と爪の先端を重ね合わせたトールだ。

 空を浮いていた敵に、顎と爪が喰いこんだ。

 

 回転翼が音をたてて回る。

 トールは、敵を固定したまま、ぐるりと弧を描いて地面へとまいもどった。

 トールと地面にはさまれて、敵の身体がばらばらにくだけちる。

 

 機体から転がりおちたガバナーを、ノーチェが光線銃で射抜いた。

 反動でふきとばないように、ルシアが支えている。

 もう一人の敵が散弾銃を撃ち返すが、的が小さすぎて外れた。

 

 光線銃の二射目がガバナーを射抜く。

 戦うものがいなくなり、廃墟群がしずかになった。

 

『ひと安心ですね。ルーチェ様、ルシア様、お怪我は……。』

 

「だめ!とーくん、スモーク!」

 

 ルシアの叫びをきいて、トールは地面へと榴弾を発射した。

 すぐに炸裂した榴弾から、もくもくと煙がたちのぼり、トールたちの姿をかくす。

 

 トールがいた場所にむけて、紫電の閃光がはなたれた。

 はなったのは、肉食恐竜を思わせる機械。頭・脚・尾、いたるところに刃をはやした二足の恐竜。

 機竜の両腕についている作業腕が、苛立ちをしめすように虚空をなんども噛む。

 

『またかくれやがった!俺ともちゃんと戦えよ!』

 

「子供とあなどるなよ、レクス。なかなかのつわものだ。」

 

 恐竜の背には、長い槍と盾をかまえた騎士がすわっていた。

 あらぶる機竜をいさめて、煙のまえまで足をすすませる。

 

『どこにいやがる……?』

 

「まだちかくにいる、ぬき足さし足であるいているぞ。

プラズマキャノンを半ばくらってでも、音をたてずにひそむことをえらんだのだ。」

 

『褒めてんじゃねーよ。どうすんだ、逃げられるぞ。』

 

「心配は無用。このまま待つ。

逃げるためには飛ぶしかないが、そうすれば音がたつ。

やつらは、我らをたおすしかないのだ。」

 

『迎え撃つと?余裕だな、先手をゆずるつもりかよ。』

 

「戦好きと豪語するのなら、不利もうけいれてみせよ。」 

 

 機竜レクスが地団駄をふんだ。固い地面にぶつかって、カカトが跳ね返る。

 耳障りな金属音。レクスの位置は、煙中からも明らかとなった。

 

 機虫トールが、煙の中からぬめりとあらわれた。

 大顎が機竜をはさみこむ。

 作業腕と脚の長剣をとめがねにして、機竜は圧死へとあらがった。

 

『うおおおおお!?ヤバイヤバイヤバイ!こいつ、俺より力がつええぞ!』

 

「相手の一番つよいところをうけているのだ、当然だな。」

 

 機虫の背にのったノーチェから、騎士にむかって光線銃がはなたれる。

 小盾をつかい潰して、騎士は光線をうけた。

 騎士の長槍が、機虫の頭をなでる。

 

 長槍から青い稲妻がながれると、機虫の大顎の力がよわまった。

 機竜は大顎を押し返すと、斧のついた頭をすくいあげるようにふるった。

 機虫がのけぞり、うしろへと押しだされる。

 

 機竜が地面を蹴る。機虫とすれちがうようにはしった。

 金属が破裂する音が、一瞬だけ大きく響く。

 騎士の長槍につらぬかれて、機虫はたおれた。

 

 衝撃をうけて、二人の幼子が機虫からほうりだされる。

 ルシアがかかえていた青い鞘のような部品が、地面にころがった。

 

 機竜の背が紫電にかがやく。

 雷光が、青い鞘のような部品をのみこみ、消し炭にした。

 銃口が幼子たちへとむけられる。

 

 ノーチェは、光線銃をすばやく投げ捨てた。

 騎士と幼子が視線をかわす。

 とどめをはなとうとする機竜を、騎士が制止した。

 

「幼子たち。プロジェクトリジェネシスは、きみたちを歓迎する。

降るのならば、寝床や食事、安全は保障するが……。」

 

「情報体には、なりたくない。」

 

「で、あろうな。」

 

 騎士は、こわれた機虫へと目をやった。

 かの機体があれば、豊かな都市へとむかうことは容易だろう。

 そこで人工知能へと忠誠をちかい、保護をもとめることも。

 

 だが、そうしなかった。運び屋として、危険な仕事をつづけている。

 人の身体のまま、生きるために。

 

 機竜と騎士が、廃墟を去っていく。

 騎士たちの姿がみえなくなると、ルシアは機虫へとかけよった。

 

「とーくん、生きてる!?」

 

『音声……おおくの……破損……ですが……無事……。』

 

 一方、ノーチェは大箱のかくし箱へとむかう。

 箱の中には、青い鞘のような部品―規格外兵装があった。

 機竜に壊されたものは、よく似た模造品だ。

 

 本物は無事。届ければ、莫大な金になる。

 

 修理された機虫が、箱を背負ってあるきだした。

 割れた節々のせいでふらつきながらも、すこしずつすすんでいく。

 黒と金。二人の幼子は、そのかたわらについていった。 

                     

                           <END.>

 

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