No.1037676

光の運び手

vivitaさん

機虫と幼子たちは荷を運ぶ。
死と隣り合わせたこの道を、今日もまたあるいていく。

搭乗ヘキサギアなど
モーター・パニッシャー/ボルトレックス/イグナイト

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2020-08-07 16:27:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:142   閲覧ユーザー数:141

 

 

 暗闇に赤い光が灯った。

 照らしだされたのは、節のある長脚にささえられた新緑の装甲。白銀の歯と爪をもつ機械の鍬形虫。

 機虫の懐には、二人の幼子がいた。黒髪と金髪。金髪の子が、目をとじて耳をすませている。

 

「二機と二人。一機があるいてて、うしろをもう一機がとんでる。」

 

「一機討たれても、もう一機が討ち返せる。わかりやすく嫌なかたち。」

 

 廃屋にかくれた機虫をさがすものたちも、また機虫だった。

 まえをあるく機虫が、建物ひとつひとつに踏みいって中をしらべている。

 さがしもとめているのは、幼子たちのもつ荷物。

 

「あと一機と一人。ボルトレックスとガバナーがいたはずだけど?」

 

「……ごめんね、わからない。」

 

「わかった。るーくん、索敵終了。」

 

 るーと呼ばれた金髪の幼子が目をあけた。ふらつき、たおれそうになる。

 機虫の長脚がわずかにうごいて、それをささえた。

 

『ルシア様、すこし休まれたほうが。』

 

 機虫から合成音声がひびく。赤いランプが心配げにゆれて、ルシアを照らした。

 

「トール、甘やかすのはやめて。休んでる暇なんてないから。」

 

「……とーくん、だいじょうぶだから。のーちゃんの言うとおりに。」

 

『……かしこまりました。』

 

 トールの尻部から、大きな箱が切り離された。

 中には数々の武器にまじって、青い鞘のような部品がはいっている。

 二大勢力が目の色をかえて欲しがる禁断の聖剣―規格外兵装だ。

 

「るーくんはこれをもって。私はレーザーライフル。あとは箱ごとかくすよ。」

 

 幼子たちをさがしていた機虫が、かくれ場所へと足を踏みいれた。

 折りたたまれていた長脚がまっすぐと伸ばされ、屋内の家具をかきわける。

 ぼごんと音をたてて、脚に押された木の壁が壊れた。

 

 それが合図だった。

 トールが閉じた大顎で敵の脚を叩く。第二関節を叩き折り、爪先ごと脱落させる。

 関節をとじていたヘキサグラムが、あたりにちらばった。

 

 トールが多脚をせわしなく動かして、敵へとせまる。

 敵もまた、残った三本の脚をせわしなく動かした。勢いよくあとずさる。

 だが、トールのほうが速い。

 

 ギィ……ギギギ……!!

 

 トールの大顎がひらかれた。下からすくいあげるように、敵を挟もうとする。

 させまいと、敵も大顎をひらき、ふるった。

 ガチガチと金属がぶつかり合う音がした。大顎が弾き弾かれる、刀のように打ち合いつづける。

 

 ようやくトールが敵を挟みあげたそのときには、表通りへとでてしまっていた。

 はさみあげた敵から、そのガバナーがとびのいた。

 空を飛んでいたもう一機の敵が、トールへと銃口をむける。顎にしこまれたそれは、榴弾だ。

 

 銃口が火を噴くのと、トールが敵を投げ飛ばしたのはほぼ同時だった。

 投げ飛ばされた敵が盾となり、榴弾が空中で炸裂する。

 

 炎と煙を裂いて、一本の槍が空へと飛びあがった。

 大顎と多脚をたたみ、顎と爪の先端を重ね合わせたトールだ。

 空を浮いていた敵に、顎と爪が喰いこんだ。

 

 回転翼が音をたてて回る。

 トールは、敵を固定したまま、ぐるりと弧を描いて地面へとまいもどった。

 トールと地面にはさまれて、敵の身体がばらばらにくだけちる。

 

 機体から転がりおちたガバナーを、ノーチェが光線銃で射抜いた。

 反動でふきとばないように、ルシアが支えている。

 もう一人の敵が散弾銃を撃ち返すが、的が小さすぎて外れた。

 

 光線銃の二射目がガバナーを射抜く。

 戦うものがいなくなり、廃墟群がしずかになった。

 

『ひと安心ですね。ルーチェ様、ルシア様、お怪我は……。』

 

「だめ!とーくん、スモーク!」

 

 ルシアの叫びをきいて、トールは地面へと榴弾を発射した。

 すぐに炸裂した榴弾から、もくもくと煙がたちのぼり、トールたちの姿をかくす。

 

 トールがいた場所にむけて、紫電の閃光がはなたれた。

 はなったのは、肉食恐竜を思わせる機械。頭・脚・尾、いたるところに刃をはやした二足の恐竜。

 機竜の両腕についている作業腕が、苛立ちをしめすように虚空をなんども噛む。

 

『またかくれやがった!俺ともちゃんと戦えよ!』

 

「子供とあなどるなよ、レクス。なかなかのつわものだ。」

 

 恐竜の背には、長い槍と盾をかまえた騎士がすわっていた。

 あらぶる機竜をいさめて、煙のまえまで足をすすませる。

 

『どこにいやがる……?』

 

「まだちかくにいる、ぬき足さし足であるいているぞ。

プラズマキャノンを半ばくらってでも、音をたてずにひそむことをえらんだのだ。」

 

『褒めてんじゃねーよ。どうすんだ、逃げられるぞ。』

 

「心配は無用。このまま待つ。

逃げるためには飛ぶしかないが、そうすれば音がたつ。

やつらは、我らをたおすしかないのだ。」

 

『迎え撃つと?余裕だな、先手をゆずるつもりかよ。』

 

「戦好きと豪語するのなら、不利もうけいれてみせよ。」 

 

 機竜レクスが地団駄をふんだ。固い地面にぶつかって、カカトが跳ね返る。

 耳障りな金属音。レクスの位置は、煙中からも明らかとなった。

 

 機虫トールが、煙の中からぬめりとあらわれた。

 大顎が機竜をはさみこむ。

 作業腕と脚の長剣をとめがねにして、機竜は圧死へとあらがった。

 

『うおおおおお!?ヤバイヤバイヤバイ!こいつ、俺より力がつええぞ!』

 

「相手の一番つよいところをうけているのだ、当然だな。」

 

 機虫の背にのったノーチェから、騎士にむかって光線銃がはなたれる。

 小盾をつかい潰して、騎士は光線をうけた。

 騎士の長槍が、機虫の頭をなでる。

 

 長槍から青い稲妻がながれると、機虫の大顎の力がよわまった。

 機竜は大顎を押し返すと、斧のついた頭をすくいあげるようにふるった。

 機虫がのけぞり、うしろへと押しだされる。

 

 機竜が地面を蹴る。機虫とすれちがうようにはしった。

 金属が破裂する音が、一瞬だけ大きく響く。

 騎士の長槍につらぬかれて、機虫はたおれた。

 

 衝撃をうけて、二人の幼子が機虫からほうりだされる。

 ルシアがかかえていた青い鞘のような部品が、地面にころがった。

 

 機竜の背が紫電にかがやく。

 雷光が、青い鞘のような部品をのみこみ、消し炭にした。

 銃口が幼子たちへとむけられる。

 

 ノーチェは、光線銃をすばやく投げ捨てた。

 騎士と幼子が視線をかわす。

 とどめをはなとうとする機竜を、騎士が制止した。

 

「幼子たち。プロジェクトリジェネシスは、きみたちを歓迎する。

降るのならば、寝床や食事、安全は保障するが……。」

 

「情報体には、なりたくない。」

 

「で、あろうな。」

 

 騎士は、こわれた機虫へと目をやった。

 かの機体があれば、豊かな都市へとむかうことは容易だろう。

 そこで人工知能へと忠誠をちかい、保護をもとめることも。

 

 だが、そうしなかった。運び屋として、危険な仕事をつづけている。

 人の身体のまま、生きるために。

 

 機竜と騎士が、廃墟を去っていく。

 騎士たちの姿がみえなくなると、ルシアは機虫へとかけよった。

 

「とーくん、生きてる!?」

 

『音声……おおくの……破損……ですが……無事……。』

 

 一方、ノーチェは大箱のかくし箱へとむかう。

 箱の中には、青い鞘のような部品―規格外兵装があった。

 機竜に壊されたものは、よく似た模造品だ。

 

 本物は無事。届ければ、莫大な金になる。

 

 修理された機虫が、箱を背負ってあるきだした。

 割れた節々のせいでふらつきながらも、すこしずつすすんでいく。

 黒と金。二人の幼子は、そのかたわらについていった。 

                     

                           <END.>

 

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