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呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第041話

どうも皆さんこんにち"は"。
最近小売店からマスクが消えていますね。
どうやらメルカリなどで転売している人がいるみたいですね。

転売ヤーは否定しませんが、人の不安に付け込んで、転売する様な行ないは止めましょう。

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2020-02-12 19:39:10 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:843   閲覧ユーザー数:658

 呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第041話「紅き目」

 行脚での一件で、劉備達は一刀に抗議した。何故この様な行ないをするものかと。一刀はそれを黙って聞いて、そして劉備達に告げた。「その理由はこれから判る。今はただ黙って付いて来ればいい」っと。

呂北軍は西扶風国境ギリギリのとある村に到着した。その村は一刀が西扶風を治めるまでは、国境沿いの関所としての役割があった村であり、中華大陸が廃れた現在でも、他の村よりはまだ栄えていた。殆どが中央役人の懐に入っていく為に、日々の食い扶持を稼げるか稼げないかで、時たま僅かな口減らしを行なうことでなんとかなっていた村であったが、一刀が西扶風治める様になってから、一刀は独自の発明にて『紙』を作り出し、それを扶風の名産品とした。井戸を掘り、草木を集めて紙の量産を成功させた。

安く買える紙を求めて、商人はこぞって西扶風に集まりだし、関所があるこの村も栄えるかと思いきや、一刀は領内全土の関所を廃止した。これによりこれまで村に落ちてきていた銭も落ちなくなり、村は徐々に廃れていった。

さらに東扶風の一刀の養父である丁原が中央に移ったことで、一刀は扶風全土を統治することになり、東扶風の関所も廃止された。

こうなれば人は人口の少ない村を捨て、人の集まる街へと歩を進める。村は荒廃していく一方で、このままでは近いうちに崩壊する。

そこで問題となるのが別の勢力からの扇動である。後ろ盾になると言って唆して、決起を起させ領内を乱す。戦国の世での常套手段である。一刀の現在いる村もその例の一つである。そして現在、一刀はその村の者達を全員捉えさせて縛り、少し肥えた村長らしきもののみ自由な状態にて隴の部下に囲まれて動けない状態にされていた。

隴は地面から生え出てかのような手頃な岩に座り、村長を凝視しており、村長は蛇に睨まれた蛙の如く体を丸くして平伏していた。

やがて整地されていない地面を歩きながらやって来る一刀の気配に気付くと、隴は音もなく下がり、村長の前に一刀が尻を付けない様にしゃがみ込んだ。

村長は卑屈さを醸し出しもって、地面に頭が擦れる程に平伏をした。

「.........村長。何故この様な事態に置かれているか、貴様にはわかっているな?」

「へ、へへ、へぇ~、一体何のことか?わ、わってにはわかりかねまする」

よくわからない文法の謙譲語にて答える村長は、より遜りつつ一刀に頭を下げた。

「ほぉう。お前にはこの辺り一帯の道の舗装を命じた筈だがな.........どういうことだこれは?随分と綺麗じゃないか」

一刀は乾いた砂を手で掬うと、村長の頭に被せる。村長はせき込みながらも未だに遜りを醸し出す土下座に近い平伏を続けている。

「それだけではないよなぁ。貴様はあろうことか他領の諫言に惑わされて、この辺り一帯の村を拐かして、あげくこの俺に反乱を企てた。これについてはどう言い訳をする」

「な、、、何のことd「惚けるな」」

一刀はそういうと村長に数本の竹簡を投げつけて、一つは村人に見せつける様にして、竹簡を掲げて見せる。

「これらの竹簡には、貴様ら村長共の俺を貶める計画が書かれている。『扶風の民は呂北の恐怖政治によって統治されている。なればこそ我らが扇動すれば、周りの村や町も我らに乗じるに違いない』と」

そう言って一刀はその竹簡も村長に投げつけた。

「しかし残念だったな。他はお前が思っているほどまわりは馬鹿ではなく利口らしい。俺に歯向かえばどういう末路になるか。逆に言えば、俺に付き従ってさえいればどういう利益が自らに降り注ぐか。その辺をよく弁えていた様だ」

証拠の全てをさらけ出された村長の額には脂汗が流れだし、恐怖にて体も小刻みに震えだした。

「さてさてさて、村長、何か言い訳はあるかな?」

村長は徐々に体を震わせ、そして勢いに任せて体を起こし、一刀に指差し罵倒は始める。

「りょ、りょりょりょ、呂北様がいけないのですよ。我々は関所で落ちる銭で暮らせていたのに、廃止などにするから」

「そうだな。確かに関所は廃止した。だからこそこの辺り一帯の舗装を任せた筈だが?」

「そ、そんなもの、今までやったことが無い‼やったことが無いことなどどの様にして行えば」

「やり方に対する手順はこの村に来た俺の部下から聞いている筈だ。それにお前は言ったよな。無償で行なうとなれば、他の者の反発を買う。だから作業員を雇い入れる為に銭がいると。だからこそ俺は経費を捻出した。だがどうだ――」

一刀は村長の頬を片手で掴みあげて言った。

「なんだこの顔は?他の村人は痩せこけてしまっているというのに、お前はどうした?随分とふくよかな成りをしているじゃないか。それにこれはお前の家で見つけた隠し酒だ。俺発案の清酒だな。廃れた村の村長が都からの評価高い酒を持っているなんて、随分とおかしな状況じゃないか」

一刀の指摘する通り、村長の家には幾つかの秘蔵酒が隠されており、その他にも保存用の干し肉など、幾つかの保存食が隠されていた。

「こうなると簡単だな。.........貴様、俺からの経費を着服したろ。ホントに村人には酷い話だよなぁ。今まで役人の着服で苦しめられていた経験を共有した村長が。同じ思いを共有していたと思っていた奴が今度は自分達を苦しめていたなんてなぁ」

「そ、それは――」

「もういい。逝け」

そう言って一刀はその辺に散らばっていた木の枝で村長の喉元を刺すと、村長は途端に呼吸困難に陥った。やがて村長は息を絶え絶えにして息絶えて絶命した。

 「劉備、関羽、張飛」

一刀に呼ばれ、三人は咄嗟の呼び出しで体を震わせる。

「わかるだろう。これがこの国の実情だ。中央の腐敗がこんな所にまで。人間の身体で言えば、脳に住み着いた毒が、足の先にまで侵食している感じだ。腐った肉体は切り落とすしかない。しかし体全部を切り落とすわけにもいかない。残された選択肢は浄化しかない。毒を抜き、薬を処方し、徐々に回復を早めるしかないのだ。その過程では完全に腐り果てて、手に負えない肉体があるかもしれないだろうが、それは切り捨てるしかない。生き残る為に。もしそこで手を抜けば、今度は治療者の肉体にまでこの毒は侵食を開始するからだ」

仁徳を説き、民に安らぎを与える為に立ち上がった三人は、一刀のその考えを否定したかった。だが出来なかった。三人もそんな時代の犠牲者だからだ。劉備の父親は州郡の官吏ではあったが、早世してしまった。その後は碌な弔慰金(ちょういきん)も無かったため、劉備と母親は土豪でありながら貧しい暮らしを強いられた。関羽も幼女期に賊に兄を殺され、張飛も戦争孤児同様であった。

だが一刀の切り捨て論は、彼女達の掲げる皆で笑って暮らすという理想とは違う。だからこそ彼の事を肯定は出来ないが、否定も出来なかった。

「さて、それでは次は貴様らの罪を裁くとしようか」

一刀は落ちている剣を拾い上げて、軍に縛られた村人たちを指してみせる。

「な、ななな、何故でございましょう呂北様‼‼今回の黒幕は村長であって、わっしらは関係ないですじゃ‼‼」

「そ、そうだ。何故あたいたちも処罰するんだい‼‼」

「そりゃお前たちの流儀では、この屑に罪を擦り付ければそれで終わりかも知れない。だがな、世間はそういうわけにもいかんのだよ。忘れたか?俺がまず貴様らに行なった行動を。俺はまず降伏勧告をした。しかしお前たちはそれを無視して、近隣の幾つか村を潰した。その時点で裁かれる対象が、村長から、村長を含むお前たちこの件に関わったすべてが罪人なのだよ」

一刀は絶命した村長の死体を軽く蹴った後に、村人の言い分を一蹴するが、村人はさらに反発する。

「そんな......俺たちは騙されたんだ‼‼俺たちは悪くない‼‼全てそいつが‼‼そいつが――」

縛られながらも身を乗り出してきた村人は、突如隴によって抜剣(ばっとう)で首を叩き落とされる。その手並みと斬られた断面は鮮やかな物で、村人も一瞬自分が斬られたものと気付かずに、自身の頭の無い体を凝視して絶命した。

「どうした隴?」

「いえ、聞くに堪えなかったので、自己判断にて誅殺しました。何かお気に障りましたか?」

「なるほど」

彼は隴との会話を終えると、再び村人に向き直る。そのやり取りで意気消沈したのか、村人は子供たちの助命を懇願しだす。

「お願いします呂北様。せめて子供達、子供達だけでもお救いを願えませんか」

その一言を皮切りに、他の村人も次々と自身の子供の助命を懇願しだす。

「いいだろう。助けてやる。だがな、救うのは子供ではない。逆だ。お前たち大人を救ってやろう」

「そ、それはどういう?」

「お前たちは助命を懇願した。救ってやる。だがお前たちの罪が消えるわけではない。だから自ら自分たちの宝を壊せ。それが奪われた者への贖罪になり、お前たちが出来る最後だ。俺はここで見ている」

そう告げた一刀の言葉に、劉備達三人は意を唱えようとするが、張飛は白華に。関羽は郷里に止められ、劉備は一刀の眼光で止められた。

呂北兵は子持ちの者だけを選別し、一刀の前に引き釣り出した。親は縄を解かれて子は未だに縛られている。親には短剣が投げ渡された。

4組のうち2組は短剣を手に取り1組は震えながら遅れて手にし、1組は顔を覆って触れようともせずに泣き続けている。新米の呂北兵が催促をしたが、一刀はそれを制止させ黙って見過ごさせる。

「さぁ、始めてもらおうか。お前たちの行動が遅れれば遅れるほど、一人一人と誰かが消え去ると思え」

それを皮切りに、呂北兵は村人をまず一人斬殺する。その恐怖に耐えかねて、周りからは「殺せ」と強い強迫観念の言葉が何度も投げつけられる。幾人かは押し黙っては目を伏せている。子供は泣き叫んで親に必死に助命を求める。阿鼻叫喚の最中、一人は「ごめんね」と言いつつ短剣を振りかざして切りつけ、また一人は未だに震えながらも子供に短剣を突き立て、一人は短剣を投げ捨て完全なる拒否を示し、未だに短剣を持たずに震える者もいる。

一刀は指に含んだ石礫(いしつぶて)を親の額にぶつけると、親は仰け反って子供の殺害を制止させられる。

 

 「なるほど。それがお前たちの考え方というわけか......おい、お前とお前は子供を連れてこっちにこい。郷里――」

一刀は終始短剣を持ち震えていた者と、短剣を投げ捨て殺害を拒否した者は自分の手元にやってこさせ、残りは村人達の中に返した。

一刀は郷里に耳打ちすると、郷里は兵士に指示を与えて、村人を二つのグループに分けた。右に殺害を強要した者と、左にただ静観を決め込んだ者だ。

一刀は左に向かって指を指すと兵に指示を与える。

「この村には口減らしの習慣があると聞く。どれ程苦しくとも、自らの骨身を削り最後まで子の面倒は見る。それが親の役目だ。そもそも口減らしをするぐらいなら、子作りするな。貴様ら全員の罪は子殺し。そんな暴挙を俺は断じて認めない。左の奴らはただ黙して流れに身を任せた。だったらこれよりの人生はただ流されるままに、死ぬまで任せてもらおうか。連れていけ」

一刀の言にて、村人は連れていかれ、残ったのは殺害を強要した者のみ。

「後の奴らは言うに及ばん。撫で斬りだ」

その一言で呂北兵による村人の撫で斬りが行なわれ始めた。

大人も子供も老人も関係なく行われ、終始阿鼻叫喚が響き渡り、人々は呂北を罵り、罵倒しながら絶命していく。その光景を一刀は黙って見ており、後ろに控える白華も郷里も同じくただ黙って見ており、時折脱出してきた村人が一刀に襲い掛かったが、それは隴が撲殺する。劉備は見るに堪えなくなって顔を逸らして泣きながら頭を抱え震えていたが、一刀はそんな彼女の髪を掴んで目を見開かせる。

「いいか小娘、二度は言わんぞ。目を逸らすな。これが統治の失策における罪だ。俺の罪であり、貴様もこれから背負うであろう業だ」

向き直させられた劉備は、目の前の光景に対して何度も目を逸らそうとしたが、一刀の言葉に反強制的な意を感じ、目を逸らせられなかった。

やがて民の撫で斬りが終了する。

「隴、業軍中に何か問題があったと聞いたが、それはどうした?」

「......失礼しました。わざわざ主のお手を煩わせるまでも無いと思い、こちらで内々に処理する予定でした。簡略して説明しますと、主の旗を汚す不届き者がいたので、見せしめで誅殺しようと考えていたところです」

一刀を前にしてのやはりいつもと違う隴の言葉使いに、郷里などは疑問符を浮かべながらも、一刀に提案をする。

「ご主人様、良い機会ですので、その者を実験に用いて見せしめを行ないましょう。新兵の者に規律を守らねばどうなるかを知らしめられます」

「そうだな。隴、俺は白華と逢引きしてくる。郷里はこいつらの面倒を見てやれ。処分は追って知らせる」

一刀は軍の一隊を引き連れて白華と何処かに向かい、指示された郷里と隴はその言に答えると、言葉通りに郷里は家族達を丁重に保護し、隴は両手足を落とされた兵士を担いで、帰還の際にとある場所に向かった。

そこは森林であり、草木が生い茂っている場所にて、身動きの取れない兵士を投げ捨てた。投げ捨てた場所は蟻の巣の前であり、半刻も経つと徐々に蟻が兵士の体に登って来て、兵士の体を食潰していく。最初こそは体を這われる嫌悪感のみであったが、それが徐々に痒みに変わり、さらに肉を食潰される痛みに変わり、ひいては激痛へと変貌していき、そんな光景を新兵はただ黙って見させられる。

人が壊れていく様を目の前にして、あるものは目に涙を溜めて、あるものは失禁を催したりもした。それからというもの、暴動鎮圧に参加した新兵の中に、規律違反の末路が刷り込まれ、以降彼らの中に規律厳守の考えが改めて認識された。

また、今回の呂北の行ないは後に、『彼の者が通った後には草木も残らない。まるで死の神降りて来たかの様』と言われ、巷では『紅眼の死神』と畏れられるようになる。

ただ一点を除いて判っていないことがある。その噂を拡げたのが一体誰かということであったが、後日その事実を知った一刀は、小さく笑って見せたのだった。

 


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