No.1010918

女として死んでいる 3

女は健常者だった。
しかし、女として欠落していた。
何がかと言われると、はっきり言葉には出来ないが、何かが、欠落していた。

2019-11-23 14:09:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:278   閲覧ユーザー数:278

新たな1日の始まり

私はカニワ。

冒険者の仕事を生業にしている。

朝、目が覚めた。

ストップウォッチ兼懐中時計によると朝5時らしい。

起きて身支度をする。

そのうち、ヨッカガイが起きる。

「おはようございます。カニワさん。」

「おはよう、ヨッカガイ。」

「ヨウカさんは寝たままですね。」

「そのようだね。かわいいから、しばらくそのままでいいんじゃないかな。」

私とヨッカガイはヨウカの寝顔を見始めた。

ヨウカの顔は切れ目に高い鼻、そしてピンクの唇と、美少女の要件を満たしていた。

そのうちヨウカが目覚めてキョトンとして私とヨッカガイの顔を交互に見る。

「どうした?」

ちなみに、私は身長170cm程あるが、ヨウカは頭1つ分くらい小さい。

それでいて男っぽい口調なのだが、それがとても、かわいい。

「何でもないよ?」

「何でもないですわ?」

?マークを2人が2人とも語尾に付ける。

この?マークがどんな意味があるのか、私達にも分からない。

「朝食でも摂ろう。」

「分かった。」

「分かりましたわ。」

こうして1日が始まるのだった。

 

 

朝食の段になって

私の部屋は朝食付きである。

だから自分の部屋で食事が摂れる。

いきなりだが、私は

「今日は仕事を休もうと思う。」

と言い出した。

「何故?」

「何故ですの?」

「なんとなくだ。」

「そうですか、何か考えあっての事ですか。」

「分かった。」

私は

「妙な反応だな、あれっ。」

と思った。

何かしら反論があると思ったのに。

「良いですわ。私達3人で街を巡りましょう。」

「朝食の段になって」、言い出した事なのにあっさり了承を得られてしまった。

「そうか。」

と1人納得するのだった。

 

 

街巡り

街と言えば、武器屋とか道具屋である。競争が激しく最も盛んな処(ところ)である。

さらに付け加えるならば、素材売買を専門としている処である。

他には、お菓子屋などである。

つまり、まずは武器屋、次に道具屋、そのまた次に素材売買を専門としている処、最後にお菓子屋という事になる。

「武器屋と言えば、私は買うべきものがないのですけど、お2人は何を買われるんですか?

大体予想はつきますけど。」

「両手剣だ。」

「片手剣を買おうと思っている。」

「そ、そうですか。あ、武器屋に着きましたよ。」

早速だが、私は手頃な片手剣を取った。

向こうでは、ヨウカが適当な両手剣を取っている。

そして、ヨッカガイは遠距離系の武器を見ている。

「これ、ください。」

と私が注文する。

ヨウカが私に続いて並ぶ。

ヨッカガイが遠目で見ている。

「女の剣使いとは、珍しいね。」

「はあ。」

どうにもこういった話題で会話を続けるのは苦手だ。

 

「さあ、次は道具屋です。お2人は何を買われますか?」

「買うものあるか?」

「いや、ないよ。」

「そうなんですか。」

ヨッカガイが張り切っている。

「見えてきましたよ?道具屋。」

私とヨウカの2人は外野でキョロキョロしている。

ヨッカガイはと言うと、色々と薬を買っていた。

どうにも道具屋は苦手だ。

 

「次は”素材売買を専門としている処”ですが、何か売り買いしたいものあります?」

「ない。」

「ないけど、気になるものならある。」

「なんですか?」

「ドラゴンのうろこ。」

「そうですか。私はスライムの欠片を買って枕に入れたいです。あ、着きましたよ。」

宣言通り、ヨッカガイはスライムの欠片を買った。

一方で、ドラゴンのうろこがなかった私はヨウカと一緒に近くをうろついていた。

ちょうど裏市がやっているのを見て、ヨッカガイに

「寄りたい処があるから、先にお菓子屋行っていて。」

と伝えておいた。

裏市をうろついていると、良い魔術書があった。

召喚術を記した本で「ソロモンの小さな指輪」という題名。

「そろそろ時間だ。決めろ、自分の意志で。」

一緒のヨウカが口を出す。

迷った末、買う事に決める。

しかし、”素材売買を専門としている処”もどうも苦手だ。

素材を探すのが難しい。

ヨッカガイが待っていたので、合流してお菓子屋に向かう。

お菓子屋はケーキやらドーナツやらが所狭しと置かれていた。

私が得意とする場所だと思った。

まずはチョコレートを盆に載せた。

次にケーキ、その次に和菓子そしてアイスクリーム。

と、色とりどりの組み合わせとなった。

食べる段になってコーヒーを淹れる。

そして、完食。

ここは他人に気をつかう必要がなくて良い処だ。

暗くなって来ていたので、これが夕食となる。

「いやあ、食べた食べた。」

おなかをポコポコしながら、2人とともに歩く。

「女として死んでいる、とはこの事でしたか。」

「カニワ、下品だ。」

「え、まずかった?」

「いえ、お菓子はおいしかったですけど。」

いやあ、また行きたい。

素直にそう思った。


 
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