No.1009749

フレームアームズ・ガール外伝~その大きな手で私を抱いて~ ep19

コマネチさん

ep19『タケルと量産型フレズヴェルク&源三と量産型バーゼラルド』(後編)

2019-11-09 19:39:18 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:74   閲覧ユーザー数:74

 

「よかった。じゃあ退院しても山には戻らないでいいわけか」

 

 退院が近い健の病室にて、携帯ゲームで対戦をしていた黄一が、対戦相手の健に聞いた。丸椅子で座る黄一に対して健はベッドで上半身を起こしながらゲームを操作していた。

 

「はい。最近は調子も良くて、この状態が続いてくれて良かったですよ。また黄一さん達と一緒に遊べるなんて嬉しいです」

 

 言ってる事は温厚な子供だったが、ゲームのボタン捌きは容赦がない。今お見舞いに来てるのは黄一とヒカル、そして大輔、それの相棒であるFAG達だ。ヒカルと大輔はアーキテクトがお茶を淹れたいからと、その付き添いで今病室を離れていた。

 

「ちょっと2人とも、早く退院したいんだったらゲームを病室でするのは感心しないわね」

 

 2人の反対側でリンゴの皮をむいて切っていたスティレットがぼやいた。当然ながら個室とはいえ病室ではゲームは禁止とは言わずとも控えて欲しい所だ。

 

「ごめんねスティレット。でも定期的にゲームで鍛えておかないと腕が鈍っちゃうからさ」

 

「その謙虚さは必要ない位君は強いって……あ」

 

 黄一が言い終わらない内に、対戦は健の方が勝利を収めた。病弱と言う本人とは裏腹にゲームでは暴君と言った所だ。「やられた……」とぼやく黄一。そうこうしてる内にヒカルと大輔が戻ってきた。

 

「黄一、対戦どうだった?」

 

「おーヒカル、惨敗だよ。本当に小学生とは思えない強さだわ」

 

「これ位しか取り得ありませんので」

 

 自虐ではあるがあっけらかんとした風に言う健。ヒカルに続いて大輔とアーキテクトが病室に入ってくる。

 

「健君……ハーブティ淹れてきた。お医者様に見せた上で許可は貰ったから飲んで……」

 

 大輔の持つトレイの上に乗ったポットと複数のティーカップ、植物が好きなアーキテクトにとっては最高のおもてなしだった。本当は鉢植えの花を持って来たかったアーキテクトだが、縁起が悪いと言われているので断念したところだったりする。

 

「まさか入院中に自家製のハーブティーが飲めるとは思わなかったよ。有難うアーキテクト」

 

「山の診療所生活では野菜とか漬物ばっかりもらってたよねマスター。周りお年寄りばっかりだったし」

 

 大輔の肩の上に座ったアーキテクトはお礼を言われて満更でもなさそうだった。しかし相変わらず表情は変わらず、大輔以外に表情は解らないだろう。

 

「皆の分も淹れて来たから飲んで欲しい……」

 

「といっても男だらけのお茶会ってのも変な感じだな」

 

「どーせ人形よ私達は」

 

「悪い。スティレット」

 

 失言だったな。そうヒカルは思いながらスティレットに謝る。

 

「なんてね。冗談よ。リンゴ切ったからこれも皆で食べて」

 スティレットは舌を出しながらウィンクする、そして皿に盛りつけたリンゴを健たちによこした。切る作業はフレズヴェルクも手伝ってはいたが、スティレットの手捌きにただ感心しながら見ていた位しか出来なかった。

 

「スティレットってこういう時本当にうまいよね。ボクもこういうの出来ればなぁ……」

 

「やってみる?健君喜ぶわよ」

 

 と、そんなやり取りをしてると、

 

「邪魔をする。フレズヴェルクはいるか?」

 

 病室に入ってくるFAGが一人。バーゼラルドだ。フレズ以外のFAGにとっては初対面となる。

 

「あれがフレズの言っていたバーゼラルドですか」

 

「あれバーゼ?どうしたんだよ」

 

 意外に思ったフレズだった。マスターがこの病院に通ってるとはいえ、どうもお見舞いに来る印象が無い。

 

「……私の服を作りたいんだ」

 

 

「つまり、マスターの奥さんが着ていた服を再現して、それを着た貴方がマスターに見せたいって事ね」

 

「そう言う事だ。理解が早くて助かる」

 

 スティレットにそう答えたバーゼラルドは、持っていた一枚の額縁を皆に見せた。中に納まっていたのは写真だ。立ち姿の正装の男性と椅子に座ったバーゼに似た正装姿の女性。

 

「あなたのマスターの若い頃ですか」

 

「人間が年を取って姿が変わるって言うのは知ってるけど、随分変わるもんだなぁ。髪の量は変わってないけど」

 

 普段老人だらけの集落で生活してるフレズも、年長者の若い頃の姿は写真でも見慣れてない。見たとすれば精々健の祖父の若い頃の写真位だった。

 

「隣は奥さんですか?」

 

 バーゼに似てる。写真を見る轟雷達もそんな印象を抱いていた。

 

「あぁ、私に似てるらしい。お見合いで知り合って、その後に婚約したらしい。今は離婚しているが……」

 

「離婚て……大丈夫なんですかそれ?」

 

 轟雷の指摘に「ん?」と首を傾げるバーゼ。どうやら意味を理解してないらしい。

 

「いやだって、奥さん別れた人なんでしょ?マスターにその格好をして欲しいとか言われたんですか?」

 

「いや?私の独断だが」

 

 バーゼの反応に彼女の世間知らずっぷりを痛感したFAG達だった。

 

「あのですね……。そんな離婚した相手の格好をして現れるって、普通ショック受けるリスクの方がどう考えても高いでしょ」

 

「そうなのか?」

 

「お前、なんでそんな事しようとしたのさ」

 

 轟雷に続いてフレズが会話に割って入る。少なくともフレズが一番バーゼと付き合いが長い。

 

「それは……私にしか出来ないと思ったからだ」

 

「そりゃ奥さんに似てるとは思うけど……」

 

「マスターは過去に家族を失う経験をした。私を家族と重ねていると言ってくれた。私と言う存在を以て過去の苦い思い出を払拭できるかもしれない。私としてもそれが存在意義になるなら喜んで受け入れよう」

 

 確かにバーゼとしてはそれが買われた理由である以上。それも一つのやり方かもしれない。そんな風に思えるが、やはり納得できるものではない。

 

「それで……最終的にどうするのさ」

 

 最初に言葉にしたのは健だった。

 

「む?そうだな……私がマスターの新しい妻と娘となる」

 

『は!?』

 

 その場にいた全員が固まった。打って変わって頓珍漢な発言となる。

 

「それが私のマスターにしてあげる新しい使命だ。その為にもいずれは妻や子供らしい立ち振る舞いというのを覚えなければいけないと私は思ってる」

 

「……それ、間違ってないか?」

 

 フレズがまず口を開く。全員が思っていた事だが、彼女が一番にそれを指摘した。

 

「なんだと」

 

 水を刺されたと言わんばかりに面白くなさそうな反応をバーゼは示す。

 

「マスターとお前の一緒にいるきっかけが、お前の家族だとしても、別にお前が家族の代わりになる必要なんてないよ」

 

「お前がそれを否定するのか?確かフレズヴェルクの開発チームは言っていたな『FAGは無限の可能性がある。何にでもなれる。何でもできる』と」

 

「言ったね……。同時に人間の真似事なんかするなともね。人間だろうとFAGだろうと、自分は自分にしかなれないんだよ。……誰かの真似をしたって、それがどんなに似ていようがそれは偽物。心が……魂が違うんだから本物にはなれないよ。必ず無理が出る」

 

 フレズの言葉にその場にいた全員が驚きを見せていた。この間同様あまり彼女らしくない理知的な一面だったから。

 

「心……。興味がないな。あるかどうかも解らない不確かな物。口で言うのはたやすい。私には戦いの歴史しかないんだ。マスターにそれを見せたとしても、戦ってるだけの私など面白い物でもないだろう。それ以外の物を知らない以上、他から模倣するしかないんだよ」

 

「……可哀想。1人ぼっちで戦いしか知らないなんて……」

 

 アーキテクトの口からポロッとこぼれる。が、バーゼはムッとした顔で返す。

 

「……聞き捨てならないな。私にはそれが歴史であって栄光だった。それを同情で否定されるのは不愉快だ」

 

「あ……すいません」

 

 アーキテクトが謝罪する。機械的ではある為、バーゼが尚更不快にならないか不安だったが、どうも謝罪の態度は気にしなかったらしい。

 

「……戦いの歴史はあるんだな?」

 

 そこで健が初めて口を開いた。

 

「健君?」

 

「戦いがお前の得意な事だったら、見せてあげればいいんじゃないか。それだってまさしくお前の一部なんだから」

 

 マスターが自分の味方をしてくれた。そう思ったフレズはバーゼに向き直る。

 

「バーゼ……今週末、この間みたいなサバイバルのバトルの大会がある。そこでボクとのリベンジをしろ。お前のマスターを呼んで立会人になってもらう」

 

 フレズは神妙な顔で悩むバーゼに指を示しながら言い放った。

 

「……マスターを立会人に?それは……」

 

「バトルはお前にとっては全てって位にのめりこんでいたじゃないか」

 

 初めてバーゼに会った時を思い出す。フレズに挑発をしつつも圧倒された時の事を、絶対の自信を以てバトルに望んでいた事、それは紛れも無くバーゼの一部といっていい物だった。

 

「それを見せた上でマスターがどういった反応を見せるかは解らない。でもそれを知ってもらえた上でどう振る舞うかを決めても遅くないと思うよ」

 

「……マスターに話してみる……」

 

 

 そして病院の休憩所にてバーゼはマスターである源三に話を付ける。

 

「あの、というわけなんです。マスターでよろしければ見て頂きたいな。と……」

 

 初めてする提案に源三は興味深そうに聞いていた。ソファに座った源三は、日差しの逆光で皺に覆われた顔からはあまり表情が読み取れない。

 

「そういえば、お前達はバトルする事も作られた理由だったんだっけか」

 

「えぇ。バトルの方は安全性はしっかりしてるので危険はないです。だから……」

 

 バーゼとしては不安だった。駄目だと言われるかもしれないから

 

「……娘の運動会は碌に応援をしてあげられなかったな」

 

「え?」

 

「そして何が好きかも得意かも解らないまま、離婚して会わなくなってしまった。……お前は娘ではなくとも……それこそ応援位しか出来ないが、見せて欲しいな。お前のその戦いぶりを」

 

 頭を動かした事により源三の表情がようやく解った。少しではあるが笑っている。さっき言った通り、参観日に出られなかった事による反省点を活かす事が出来るからだろうか。

 

「マスター……任せて下さい!私の栄光は戦いの栄光ですから!」

 

 その発言に健達は胸を撫で下ろす。もし危険な事は駄目だと反対されたらどうしようと思っていたからだ。

 

「話はまとまったな。バーゼ、今度は負けないから」

 

「フレズ……、いいだろう。格の違いという物をお前に見せてやる」

 

――

 

 そしてその週の日曜日はすぐにやってきた。

 

「今の玩具屋も昔とあまり変わらないな」

 

「どうも当時の事は解りませんので私にはどうも……」

 

 バーゼを引きつれて源三は店内を案内されていく。健とフレズが案内役だ。昭和と平成時代でしかこういった物に馴染みの無い源三には今の玩具店の内装は興味が沸くところだ

 

「いらっしゃい。今日はよろしくお願いします」

 

 出迎えたのは黄一とヒカル、大輔、そしてそれぞれのパートナーのFAG達だった。目上の人が相手なのだろうか、若干控えめに二人は話しかけてくる。

 

「あぁ、こちらこそ。こういったのは全然馴染みが無くてね。うまく操作出来るか不安ではあるね」

 

「大会での操作はいりませんよ。私が1人で片づけます。マスターはそれこそ参観日の感覚で見て頂ければ問題ありません」

 

「そうですよ。こいつら普段から暴れっぱなしなんですから」

 

 ヒカルがスティレットを示して言う。

 

「なーんか含みがある様な言い方ねぇマスター?」

 

 スティレットが怪訝そうな表情で聞き返した。

 

「そう言ってくれると助かるよ。どうもこういうのはファミコン以来だからね。フフフ」

 

 源三なりのジョークだった。が、ヒカル達の方の反応は……

 

――……なぁ大輔……ファミコンて?――

 

――?いや僕も聞いた事は……――

 

――学習モード……データ取得完了。ファミコン……1980年代前半に発売されたファミリーコンピューターの略称。初めて普及した家庭用ゲーム機で……――

 

「いや……いい。うん」

 

 検索中のアーキテクトを源三が止める。皆と距離間を詰めようとした源三なりのジョークだった。しかし感じたのはジェネレーションギャップだけであった。なんだかギャグを説明された様で若干気まずくなる。

 

「あ!そ!そういえば大会手続きはしましたか?!FAGの操作はせずともそこの所はやっておかないと!」

 

 それを若者達も察したのだろう。別の話題に黄一が切り替えた。

 

「あ、そうだね。どこへいけばいいのかな?何か身分証明とかは?」

 

「大丈夫です。大会参加の手続きと、セッションベースがあれば問題ないですよ」

 

 セッションベース。事前にバーゼから持つように指示された六角形のベースだ。

 

「案内しますよ」とヒカル達に案内される源三だった。

 

 

 かくしてバトル大会が始まる。

 

「これは……凄いな」

 

 手続きを済ませて、会場で現れたバトルフィールドを間近で見た源三はその圧巻のフィールドに声を失う。眼の前に広がるのは月面の宇宙空間、これが今回の大会用のバトルフィールドだ。

 

「今の子が羨ましいな。こんなSFの様な遊びが簡単に出来るんだから」

 

「では映画感覚で私の戦い方をご覧くださいませ」

 

 マスターに自身の戦いを見せようと、源三に目線を合わせていたバーゼラルドは戦場へと振り向いた。さも当たり前の様に宇宙空間を浮かぶバーゼに源三は違和感を感じる。

 

「宇宙空間なのに平気で飛べるんだな」

 

「所詮はそういう設定のフィールドです。いざ!」

 

 そう言いながらバーゼラルドは先手必勝とばかりに戦場に飛び込んでいく。手ごろな相手を見るや否やバーゼラルドは早速相手に襲い掛かる。

 

「っ!?このぉ!」

 

 気づいたFAGは対応しようと手に持った重火器をバーゼに撃つが、バーゼは意に介さずに相手の懐へもぐりこんだ。そして手に持ったセグメントライフルですぐさま相手を撃ち抜く。

 

「まずはひとつ!見ててくださいマスター!」

 

 

「頑張れバーゼ」

 

 なおも暴れていくバーゼを見ながら、源三は静かにだが応援をする。

 

「どうですか?間近で見たFAGのバトルというのは」

 

 それに大輔が話しかけてきた。肩にアーキテクトを乗せている。彼とアーキテクトはこの大会に出ていないのだ。

 

「凄い迫力だね。ただ、ちょっと女の子を撃つと言うのは見てみるとちょっと怖い、かな」

 

 やや尻ごみをする様に言う源三。戦場にメカニカルなロボットが戦ってるわけではなく、女の子が飛んで撃ちあうと言うのは少々怖さもあった。

 

「まぁゲームではあるんですけど、やっぱり合わない人には合いませんよね……。僕も酔いやすいので、こういうのは」

 

 

「さてね。歯ごたえがないな。常に戦いに身を置いてない奴らはこんな物か?」

 

 一方のバーゼ、周囲は破壊した武装の残骸等が煙を上げる。カジノで戦っていた方が手ごたえのあるバトルだったなとバーゼは思った。と、次の相手のFAGがこちらに向かってくるのが見えた。紫髪で片目隠れの姉妹、アント型の姉妹、毎度おなじみのレーフとライの二人だ。

 今回の姉妹は龍装具という東洋龍を模した装備をつけていた。

 

「轟雷から聞いたわ!あなたが例のバーゼラルドね!」

 

「アーキテクト型か!?」

 

 飛びながらのバーゼは見下ろす様に姉妹を見た。

 

「轟雷お姉ちゃん以上の大物だね!疲れているであろう今がチャンスだよ!」

 

「そういう事!覚悟してもらうわよ!」

 

「フン。小物に限ってそういう手を使う」

 

「言ってなさい!!」

 

 そう言って龍装具、アギトを装備したレーフは大型ライフル『龍機砲』を上空のバーゼに向かって撃つ。難なく回避するバーゼだが、そこへ龍装具、リュウビを装備したライが大型クロー『双龍牙』で切りかかる。月面ステージな為に、高高度への跳躍は容易い。

 

「にゃーお♪」

 

 猫の様な動作で、しかし素早くバーゼに襲い掛かるライ、ライフルで撃ち返すバーゼだが、ライは双龍牙のシールド部分で防御。

 

「何発も防げるものか!」

 

「甘いわ!」

 

 そんな時、レーフが『双龍剣』を投げる。大小のナイフをワイヤーで繋いた武器だ。大型のナイフを重しとして投げつけ、ワイヤーの部分がバーゼにグルグルと巻き付いた。

 

「何!?」

 

「マスター!アレを!」

 

 レーフの指示に、彼女のマスターがある物をフィールドに転送する。四本足の大型タンク、ムーバブルクローラーだ。

 

「逃がしはしないわ!」

 

 レーフはそれに跨り全速力で走らせる。バーゼを地面に引きずりおろす算段だ。必死にブースターを噴射させて抵抗するバーゼ、

 

「おのれぇぇっ!!」

 

「ヒステリーはみっともないよ!ウサギのお姉ちゃん!」

 

 挑発する様にライが方天戟状の武器『長龍刀』で切りかかる。サブアームのクローで受け止めるバーゼラルド。そこへレーフの方も援護として龍機砲でバーゼを狙う。姉妹の連携に焦りを覚えるバーゼ。

 

「アッハハ!マスターは助けてはくれないよ!」

 

「貴方のマスターはFAGに全然馴染みの無いお爺さん!サポートでの形勢逆転は心配ないね!」

 

 が、その発言がバーゼのプライドを傷つける。

 

「っ!私がそんな物に頼ると思っているのか!」

 

 怒りを見せたバーゼ、フレズの時に撃ったホーミングビームを姉妹に放つ。任意の方向に放たれたビームはそれぞれレーフとライの二人に向かい、二人を撃ち抜いた。

 

「なっ!?おねえちゃーん!!」

 

「そんな!!?あぁっ!」

 

 撃墜扱いとなり光と共に消えていくライを見ながら、クローラーの爆発に巻き込まれるレーフ。そのまま月面に投げ出され倒れこんだ。

 

「お前のマスターを交えた浅知恵だったが、後一歩だったな」

 

「つぅ……浅知恵とは随分ね。あなたにもマスターはいるでしょうに」

 

「そのマスターが見てるんだ。マスターの手助けなくとも十分に戦える!」

 

「あら、バトルジャンキーかと思いきや、私達と変わらないのね……」

 

 同情する様な目付きのレーフがバーゼには不快だった。そのままバーゼはレーフにトドメを刺そうとするも、その前にレーフは光と共に消えた。

 

「……これしかないんだよ!私には!」

 

 カジノで戦っていた時と感触の違いがバーゼの心に引っ掛かった。口直しとばかりに次の相手を探しに飛び立った。

 

 

 バーゼのバツの悪そうな顔は源三も確認できた。自分のFAGとして大会登録した為、自分のスマホからコンディション確認用のモニターやパラメータが確認できる。……最もこういった細かい操作は大輔がやっていて、源三は見ているだけだった。

 

「バーゼの奴……。ちょっと機嫌が悪そうだな」

 

「こういったバトルには慣れてないでしょうから」

 

「……でもあんなに、のめり込みながら、活き活きとしたバーゼを見るのは初めてだ……」

 

 バーゼは高揚した笑みを浮かべながら、次々と敵機と交戦しては相手を撃ち落としていく。いつものかしこまったバーゼとは違う。檻から解き放たれた獣の様に、戦いの世界を肌で満喫しているかの様に源三は感じた。

 

「カジノでバトル漬けだったらしいですからね。彼女にとっては生き甲斐だったんでしょうね」

 

「生き甲斐か……なんだか仕事に打ち込んでいた俺の様だ」

 

 ついそんな言葉がポロッとこぼれた。家族の為という理由はあれど、なんだかんだ言って仕事が自分の居場所だったと源三は思う。

 

「アイツと俺……似てる所があるんだな……」

 

 暫くしてサバイバル大会も決着が付きつつあった。最初はそこかしこでバトルが勃発していたフィールドも、勝ち続けたFAG達の決闘場へと変貌していく。

 

「だいぶ減って来たな。さてフレズは?」

 

 そう言いながらバーゼはフレズを探す。自分を誘っておきながら大会ではまだ会ってない。もうやられてしまったのか?と周囲を見回す。ふと、近くで戦ってるFAGが見えた。

 

「!轟雷か」

 

 黄一の連れていた轟雷がリナシメントアーマーを付けて戦っているのが見えた。が、どうにも押されている様に見える。

 

「相手は……知らない顔だな」

 

 膨らんだ肩と白いボディ、そしてツインテールが特徴の白虎型だ。口元を覆う装甲は若干の異形さを持たせていた。

 

「このっ!このぉっ!」

 

 デモリッションナイフを振り回すも、白虎は軽やかな動きでかわし続ける。

 

「気に入らない態度ですね!さっきから無視って!」

 

「……」

 

 轟雷が叫ぶ。白虎の方は眼中にないとばかりに黙っていた。大方この態度の所為でこじらせたのだろうとバーゼは思う。

 

「何とか言いなさいってば!!」

 

「……ウゼェな」

 

 初めて白虎が口を開く。ダウナーな不良と言った口調だった。背部の黒い刀、『黒碩剣』を持つと轟雷に斬りかかる。ダウナーな態度とは裏腹に力強く素早い動作だった。

 

「ぐぅっ!!」

 

 大剣の所為で、武器の取り回しは轟雷の方が不利だ。何度か斬り合って距離を取ったと思うと、白虎は黒碩剣を投擲、デモリッションナイフを握っていたサブアームの付け根に命中し腕ごと切り落とす。

 

「あっ!!」

 

 そのまま追い打ちをかけるべく白虎はレーザーライフルを撃ちながら突っ込んでくる。

 

――白虎型なら空は飛べないはず!――

 

 そう思った轟雷はバスタードチョッパーを白虎の眼の前にブン投げる。前に迅雷戦でやった戦法だ。火薬式のダインスレイブを地面に打ち込み隆起させ。上空に吹き飛ばされた瞬間に狙う。狙い通りに白虎の眼の前にチョッパーは突き刺さり点火、月の大地を隆起させ白虎を吹き飛ばした。重力の関係か、幾つもの岩盤が大きく舞う。

 

「あん?」

 

「今です!」

 

 手に持ったバズーカを白虎に狙い撃ちをしようとするも、白虎は表情を変えなかった。そして直後、バーニアで轟雷の射線から移動、吹き飛ばされた月の岩盤を飛び移りながら轟雷の真上に移動。白虎の背部に備え付けられていたレーザーキャノンが、真上から轟雷を撃ち抜いた。

 

「えっ!?」

 

 白虎は全身のバーニアで制御し、轟雷を狙っていたのだ。

 

「喧嘩すんなら相手を選びな」

 

「そんな!私がっ!?」

 

『轟雷っっ!!』

 

 黄一の叫びが虚しく響く。自分の敗北に驚愕しながら轟雷は光を放ち消えていった。

 

「轟雷が!?あの白虎型……楽しめそうだな!」

 

 友人への弔いのい意味も込めて、興味を持ったバーゼは白虎に対してライフルで奇襲をかける。黒碩剣を回収していた白虎もそれに気付いたようだ。

 

「あ?」

 

「お前!私と戦ってもらおうか!」

 

 上空からのバーゼの連続射撃を難なく回避する白虎。この機種は派手さは無い物の、滑らかな運動性能と高火力が特徴であり、堅実な作りとも言えるFAGだった。さっきの岩盤を飛び移る動作からもそれは窺い知れるものだった。

 

「またウゼェのが来たよ……」

 

 心底付き合ってられないと言った反応の白虎だった。

 

「そう言うな。本命は別にいるが、その前の準備運動というわけだ」

 

「オレがかませってか?あいにくこっちにもぶっとばしてぇ女がいるから出てるんだよ。テメェなんぞに構ってられるか」

 

「お前にも本命が?……ん?」

 

 と、高速でこっちに向かってきているFAGが二体。健のフレズヴェルクと、キマリスアーマーを付けたヒカルのスティレットだ。

 

「バーゼ!待たせたな!」

 

「遅かったなフレズ!スティレットも一緒か!」

 

「この間のルフスのトリオと戦っていたんだよ!ボクとマスターのコンビの敵じゃなかったけどね!」

 

「それより轟雷がやられたんですって!?あの白虎型!」

 

 身構えるスティレット。自分と互角の実力を持ったライバルがやられたと言うのは警戒すべき情報だった。

 

「スティレット。悪いが仇討なら私にやらせてもらおうか、私が先に目をつけていたんでな」

 

 そのまま白虎と戦おうとするバーゼ、しかし……

 

「スティレット……そのアーマー……テメェがスティレットだな……!!」

 

 白虎はスティレットを見た途端に目の色を変えた。口元は見えずとも目つきから、並々ならぬ怒りを感じた。

 

「!?何よアンタ!」

 

「オレと!!戦えぇぇっっっ!!!!」

 

 黒碩剣で切りかかる白虎。突然の事ながらスティレットも慌ててドリルランスで対応。

 

「なんだってのよぉぉ!!アンタ誰よぉっ!!」

 

『スティレット?!』

 

 ヒカルの叫び虚しくバトルは進む。この展開にバーゼとフレズはそれを茫然と見ていた。

 

「どういう事だ……?アイツは一体?何故スティレットを?」

 

「バーゼ……でもボクとしては都合がいいや。……戦ってもらうよ。ボクと……ね?マスター」

 

『勿論だよフレズ』

 

 それに応じる健、元々今日のバトルの目的はバーゼとフレズのリベンジも含まれていた。

 

「マスター……見ててください。……勝負!!」

 

 バーゼは源三に見せつけようと気合いを一層入れる。そして二人はぶつかり合う。

 

「接近戦用の装備も持たないくせに!」

 

 そう言ってフレズはランチャーの銃身を振り回してバーゼを切り裂こうとする。が、大振りなのでバーゼにとってはかわすのは容易い。

 

「必要ないな!」

 

 そう言ってライフルを連射するバーゼ。フレズは後方に下がりつつもランチャーを撃ち続ける。

 

「くぅっ!」

 

「フン!防戦一方じゃないか!何を大口を!」

 

 と、バーゼの方もライフルが弾切れになったらしい。ライフル攻撃が途切れる。セグメントライフルは弾切れを起こし易い。こうした時はライフルを両肩部のスラストアーマーに接続して再充電する必要がある。予備のライフルを手に持つバーゼ。が、同時に攻めていた時にこれは非常に大きな隙だ。

 

「今だ!」

 

「馬鹿め!」

 

 フレズがランチャーを撃とうとする瞬間。チャージしていたサブアームのビーム砲をフレズに向かって撃つ。再装填時に隙が生まれるのはバーゼ自身承知の上だった。

 

「っ!」

 

 直後にそのエネルギーの濁流はフレズを飲み込む。そして爆発を起こし爆風を巻き上げる。

 

「あっけないな。……いや」

 

 直後、TCSを張った物体が爆風を突き破ってこちらへ突っ込んできた。凄まじいスピードだ。フレズとバーゼは判断。

 

「そうでなくてはな!」

 

 バーゼはあえて受け止めようとABSAを展開、が、ぶつかる寸前にTCSは解除、と、同時にエアバイク形態になっていたフレズは座席から飛び上がった。その両手にはランチャーがそれぞれ握られていた。

 

「受け止めるなんて油断が過ぎるんじゃない!?」

 

 上空からフレズがバーゼ目掛けてランチャーで狙いをつける。かわそうとしたが突っ込んできたエアバイクを受け止めた為、大きい身動きが取れない。

 

「っ!調子に!」

 

 バーゼはとっさにスラストアーマーをフレズの方へ向け、接続していたライフルを発射、フレズもとっさに身をひるがえして回避、と同時にランチャーを発射、狙いのずれた弾丸は片方のスラストアーマーを破壊するも本体に命中はせず、

 

「クソッ!」

 

「しまった!スラストアーマーが!?」

 

 悔しがるフレズだが、バーゼも慌てる。何故ならブースター内臓のスラストアーマーを破壊したのだ。切り裂かれたスラストアーマーを切り離そうとしていたバーゼを巻き込みアーマーは爆発。バーゼの態勢を崩しABSAへの集中が途切れ出力が弱まる。そこをエアバイクが強引に突っ込む事により突破、バーゼは大きく弾かれて月面にバウンドした。

 

「グァァッ!!……クッ!受け止める事さえしなければ!」

 

 致命傷へは至らなかったものの、バーゼは自分の行動を後悔する。

 

「本当は追いかけるつもりだったけど手間が省けたよ。マスターの作戦のおかげだね」

 

「っ!またマスターか……!」

 

 イラついた様にバーゼが呟く。フレズがエアバイクと合体し元の武装形態へと戻っていった。

 

「所詮他人に頼った力だろう!」

 

「それの何が悪いって言うのさ。ボク達FAGはマスターとの協調あってこそだろう」

 

「……私は私だけの力で勝って見せる!ずっとそうしてきたんだ!」

 

「ならさ!マスター!」

 

 フレズの呼びかけに健はガンブレードランスを転送させる。

 

「見せてみろよ!一人の力!」

 そうして二人は再びぶつかり合っていく。

 

「そんな大振りな武器で!」

 

 バーゼはそれにライフルを連射しながら対応するが、

 

『フレズ!下がって!』

 

 フレズは健の指示に従ってうまくかわし、

 

「この!」

 

『サブアームのビーム砲が来る!撃って!』

 

 ビーム砲の最大出力にはライフルモードの最大出力で対応される。こうした流れで徐々にバーゼは押されつつあった。そして暫く経って……。

 

「うぁっ!」

 

 バーゼはその場に倒れこむ。ビーム砲のサブアームは破損し、もう片方のスラストアーマーも破損、ボディの各部に損傷も見られた。

 

「悪いけどボク達の方が上だったみたいだな!」

 

「まだ!まだだ!」

 

 なお諦めないとばかりにバーゼは起き上がる。バーゼより損傷の少ないフレズは再び身構える。

 

「私は今までマスターに頼らずに戦ってきた!ぬるま湯に浸かっている様なお前たちに!私の誇りを理解出来る物か!」

 

 今まで一人で勝ち続けていたバーゼにとって、精神的にも押されていた。故に出た言葉だがぬるま湯という言葉にフレズはカチンと来る。

 

「そういう風に見ていたわけ?違法行為を誇りっていうお前が言うか!」

 

 売り言葉に買い言葉、フレズの言葉もバーゼのプライドを傷つける。

 

「っ!貴様ぁっ!!」

 

『……そう言わないでやってくれないか』

 

 その時だった。ある人物の声が響いた。源三の声だ。ビクッとその場の二人が止まる。

 

「マスター……?」

 

『バーゼはな、そうせざるを得ない環境で生きてきたんだよ。戦って勝ち続けて見世物にされて、でもそれが彼女にとって、唯一許された居場所だったんだ』

 

 バーゼとフレズは茫然とその言葉を聞いていた。激昂するバーゼを落ち着かせる。

 

「でもバーゼのは違法行為だったじゃないか!」

 

『直接人を傷つける事はしてこなかったとは言っていたんで許してくれないか。それにお客さんは喜んでくれたって話だ。バーゼにとってはかけがえのない歴史だ。それをどうか否定しないでほしい』

 

「マスター……」

 

『バーゼ、お前は戦いが誇りだって言ってたな。……俺もそうだよ。家族の為ではあったけど、仕事は俺の誇りだった……。居場所だった。でも結果家族には逃げられたけど……』

 

「……」

 

『なぁバーゼ、お前は変わろうとしていたな。俺の妻子になりきろうと……』

 

「……気づいていたんですか」

 

『家族の代わりのつもりでお前を迎え入れたけど、やっぱりお前はお前のままがいい。やってきた事が違法だったとしても、俺は認める。お前は今までしてきた事は間違ってはいない。変わる必要もない。お前の生きてきた歴史は、きっと間違っていないんだ。……ただ少し、冷静になってみてくれ、周りにも目と耳を傾けてくれ、そうするだけできっと、俺みたいに後悔はしなくなる筈だから……。俺から言えるのはこれ位だ』

 二つの意味のある言葉だった。このバトルで冷静さを欠いてはいけない事、そして周りを見渡せる視野を持たなければ、いずれ自分の様になってしまうという事。……バーゼの頬を涙が伝う。

 

「……」

 

「泣いてる?バーゼ……」

 

「あ……れ……?……初めてだ……こんな気持ちになったの……」

 

 バーゼの胸に熱い物がこみ上げる。違法行為をしていた故に同情してくれた人は多くいながらも、認めてくれた人はいなかったから。

 

「いけ……ないな……今はバトル中なのに……こんな事は」

 

 ……だがすぐに拭うとバーゼはフレズに向き直りライフルを向ける。だが尚も涙は止まらない。視界が若干ぼやけながらもバーゼは戦う意思をやめなかった。

 

「……本当、いいマスターじゃないか」

 

「そうだな。会えたのが彼でよかったよ……さぁ!やろうか!」

 

気を取り直す様に身構え突っ込んでくるバーゼ、飛び交いながらぶつかる二人。

 

「だぁぁっ!」

 

 ランスで横に薙ぎ払おうと振るうフレズ。バーゼは上空に飛び上がって下のフレズにライフルを発射。

 

「っとぉっ!」

 

 太もも部のイオンブースターで後ろに下がるフレズ、追い打ちが来ると身構えるフレズだが、

 

「ん?アイツ連射してこない?!」

 

『スラストアーマーが壊れて再充電が出来ないから、慎重になってるんだろう』

 

「泣き続けてるってのに動きは冷静ってわけ?!変な奴!」

 

 バーゼはジグザクな高速起動で迫ってくる。これでは狙いがつけられない。

 

『でも動きはさっきよりキレが増してる!油断は出来ないぞ!』

 

「解ってるよ!」

 

 ランスをライフルモードで撃つフレズ、バーゼはそれを軽やかに回避。フレズはそこをすかさずランスで貫こうとバーゼに突っ込む。

 

「これで!」

 

「っ!」

 

 バーゼは全身のフォトンブースターを使い回避、そしてランスの刃の上に移動、そのままブースターを使って急降下、真下のランスを踏んづける。月面にランスの刃がめり込みフレズも無防備となってしまう。そのままバーゼはライフルをフレズに向けた。

 

『切り離すぞ!フレズ!』

 

 健はランスの踏みつけられていたライフル部を切り離しアックスモードへ分離。フレズはすかさず上へ切り上げる。

 

「おりゃあっ!!」

 

「なっ!」

 

 バーゼの頬をアックスが掠めた。そのまま後方へ下がるバーゼだがライフルを左右それぞれ発射しフレズの腰のマウントラックへ命中させ破壊、

 

「っ!ベリルショットランチャーが!!」

 

「こっちも必死なんでな!」

 

「このぉっ!」

 

 そしてぶつかり合いは続く。マスターも、自分の生きてきた環境もまるで違う二人だったが譲れない物があるのは変わらない。だがどんな物も終わりがある……。健は支持を出し続け、フレズは従い協力しバーゼに対応していく。そして数分後……

 

「強いね!でもめっちゃ楽しいよマスター!」

 

『そうだな……でも……早くケリを……ぅっ!』

 

 弱々しい声で呟くと、突然健がうずくまる。

 

「っマスター!?」

 

 身体の弱い健は長時間のバトルが難しい。ずっと見てきたフレズはそれにいち早く反応する。と、同時に自分が楽しむ事に夢中になってしまい健のコンディションに気を配れなかった事を激しく後悔。

 

『バカ!よそ見するな!!』

 

「え?」

 

「隙あり!」

 

「あっ!くっ!」

 

 バーゼはフレズに向かって発砲、とっさにアックスで受けようとするも、一つの銃弾は防ぎきれず拳に受ける。その衝撃でアックスを取り落してしまう。

 

「つぅっ!」

 

 致命傷にはならないがバーゼはこのままサブアームのヒートクローを構えて突っ込んでくる。ライフルは今ので弾切れになっていた。

 

「あと一歩だったな!このままもらうぞ!」

 

 バーゼとの距離は近い、アックスを拾おうにもダガーを受けようにもその前に貫かれる。

 

『フレズ!サイドワインダーだ!』

 

「!うん!」

 

 フレズは健の言う通りにサイドワインダーに形態を変形。せり出した槍状の鋭利な機首部分が、突っ込んできたバーゼの腹部を貫通した。

 

「がっ!」

 

『今だフレズ!ブースター全開!!』

 

「そうかっ!了解!!」

 

 そのままフレズは真っ直ぐにイオンブースターを点火。バーゼを串刺しにしたまま一直線に飛ぶ。

 

「このまま後方の岩山へぶつける!!」

 

「マ!マスターが……!マスターが見てるんだ……!こんな私を認めてくれたマスターが……!」

 

 まだバーゼの闘志は消えてはいない。弱々しくも残ったサブアームのヒートクローを構える。抜き手の要領でフレズを突き刺そうと言うのだ。

 

「負けられ……ないんだ!」

 

 そのままバーゼはフレズの胸目掛けて抜き手を放つ。このままじゃ逆転されるとフレズは焦る。

 

――ヤバイ!受ける物!受け止める方法!――

 

 一瞬で思案するフレズ、白羽取りしようにも片手はまだ使えない。と、とっさにある事を思いついた。そして放たれるクロー、が、それはある物で挟み込まれてフレズの身体に届かなかった。それは……。

 

「な……ふざけるな……なんで胸の谷間で受け止められる!!」

 

 ドン引きする様な反応のバーゼ、クローはフレズが左右の手で思いっきり寄せた胸の谷間で受け止めていた。

 

「毎晩ボクがマスター(の体力つけさせる為のリハビリでマスターと運動をVR空間で)しごいてる事を思い出したんだよ……!ボクの胸でマスターの(たまたま投げたボール)を挟み込んだ夜の事をな!」

 

 なおドヤ顔で言ってるが、フレズの発言がセクハラ全開だった為に、

 

――あれ……?何か周りの目が痛い?――

 

 周囲の健を見る目が白い目だらけになったのはこの際おいておくとして……健はまだ知らない事の多い小学生です。

 

「……熱い……やけどしちゃう……ってホントにあっちぃ!!!」

 

 ヒートクローを挟んだ乳から黒い煙がブスブス上がる。熱さに思わず手を放すフレズ。そのまま投げ出されたクローはフレズを貫く事は適わなかった。そしてそのままサイドワインダーは岩山に激突。バーゼはこれが完全に致命傷となった。

 

「がぁっ!!馬鹿な……そんなくだらない方法で、マスターに頼り切った方法で……」

 

「ふーっ!ふーっ!そのくだらないのがいいんだろ!マスターとの思い出があったからボクは勝てた!ボクはマスターを信じていたから!!」

 

 虫の息のバーゼに対し、涙目で必死に胸に息を吹きかけながらフレズは答えた。実際はバーゼが瀕死だった事、エネルギーの残り等で受け止める事が出来た程度だったが。

 

「本当に……こっちのバトルはぬるいな……」

 

 そう言ってバーゼは撃墜扱いとなり光と共に消える。

 

『やったなフレズ……大丈夫か?』

 

 変形を解いたフレズに対して健が心配をする。が、心配なのはフレズの方だった。

 

「マスター、自分の心配をしてよ。もう棄権しよう。マスターが心配だよ」

 

『……ん?』

 

「どうしたのさ」

 

 何か気付いたようだ。健は今スマホに接続した操作用のディスプレイから残り人数と、フィールドのアナウンスのモニターを見ていた。

 

『さっきの白虎。スティレットに勝ったみたいだけど、棄権したみたいだ』

 

「え?」

 

 ……少し離れた場所で、少し時間を巻き戻して、

 

「そんな……」

 

「こんなもんかよ。轟雷共々大したことねぇな」

 

 月面でうずくまるスティレットに対して、白虎の方は余裕で立っていた。ボロボロになったスティレットを白虎がレーザーキャノンで吹き飛ばす。

 

「っきゃぁぁっ!!」

 

 それが決め手となりスティレットは大敗する。光となって撃墜扱いとなった。

 

「スティレット!大丈夫か?!」

 

 ヒカルが慌ててスティレットの傷を確かめようと、フィールドから移動した彼女を両手ですくい上げた。スティレットが驚きの声を上げる。

 

「キャッ!マスターったらもう、大丈夫よ。バトル中の損傷はこっちでは反映されないって知ってるでしょ?」

 

「あぁそっか。悪い」

 

 撃墜扱いとなったFAGはバトルフィールドから弾かれる。バトル中の損傷は反映されない為スティレットは無傷だ。ただ敗北の屈辱は残るだろうが、

 

「馬鹿ね……でも有難う」

 

『……はっ!おいスティレット型、随分マスターに大事にされてるな!』

 

満更でもないスティレットに対して鼻で笑う白虎、水を刺す様な挑発にスティレットは不快感を露わにする。。

 

「何よ!何か文句あるっていうの!」

 

『まるで恋人気取りかよ?!くだらねぇ!』

 

「そ!そんなんじゃないわよ!」

 

 顔を真っ赤にして否定するスティレット。それすらもフィールド内からの白虎にとっては不快の元だった。

 

『そうだよなぁ。人間とFAGじゃ恋人にはなれねぇよな!』

 

「っ!」

 

 そう言われては、スティレットにとって何も言えない。ASの何処かでは理解していた。でも目を背けていたかった現実ではあった。

 

「お前!それ以上やめろよ!そう言う事言ってると自分のマスターの品位も落とす事になるって解らねぇのか!」

 

 ヒカル自身もそう言われては黙ってはいられなかった。スティレットに言いたい放題な事に加えて、……ヒカル自身、スティレットの事が好きだから。

 

『……萎えたわ』

 

 そう言うと、白虎は自分からバトルフィールドを出た。棄権という事だ。スティレットとヒカルの隣に白いボディの少女が降り立つ。スティレットにとっては見覚えのある顔だった。

 

「……アンタ、もしかして文化祭の時の……」

 

「お前じゃ何も出来ねぇよ。自分の器ってもんを知るんだな。……あばよ!」

 

 スティレットとヒカルの両方を見ながらそう言うと、白虎は近くに待機してあったドローンへと移動。さっさとその場から飛んで立ち去って行った。

 

「マスターはいなかったのか。アイツは一体……」

 

「何なのよアイツ!」

 

 

 とまぁこんな事があって、白虎は大会を辞退。結果的に残ったフレズの優勝となった。

 

「マスター……申し訳ありません。大会でマスターに勝利を捧げる事は叶いませんでした……」

 

 頭を下げながら申し訳なく謝るバーゼに源三は手を優しく横から置いた。

 

「バーゼ、傷は大丈夫か……」

 

 源三としては心配だった。さっきのバトルであれだけボロボロになっていたのだから。

 

「それは……大丈夫です。バトルでの傷はあくまで仮想空間での傷ですから」

 

「そうか……よく頑張ったな。それだけで俺は満足だよ」

 

「マスター……」

 

 パチパチパチパチ!!!

 

 その時だった。大きな拍手がまき起こる。見てみると色白のイノセンティアを筆頭に、複数人のFAGがバーゼに向かい、全員が拍手を送っていた。カジノでバーゼと共にバトルに参加させられていたFAG達だった。

 

「お前達……」

 

「見てましたよ。さっきのバトル!凄かったです!」

 

「まさかアンタが泣くとはねー」

 

「っ!あ!あれは!」

 

 今になって恥ずかしくなるバーゼ。バトル中に涙を止めようにも止まらなかったわけだが、思い返してみると恥ずかしい。

 

「怒らないでよ。なんやかんやでマスターとの距離も縮まったみたいじゃない?!よかったじゃない」

 

「そうそう。なんか安心したよー。ずっとあのままじゃないかって皆心配してたんだからー」

 

「!……そうかもな、その……有難う……」

 

「バーゼ、変わったね」

 

 礼を言いながら頭を下げるバーゼラルドに、かつて同僚だったFAG達はバーゼの変化を感じていた。そんなバーゼに源三が話しかける。

 

「なぁバーゼ……俺はね、正直に言うと自分のしてきた生き方が間違いだと思っていた。これを無かった事に出来るなら無かった事にしたいと……」

 

「マスター……でもそれは……」

 

「でもその必要はなかったよ。これも含めて俺の歴史。一部だった。そして……お前と言う新しい家族に出会えたんだからな」

 

 自分の責任、後悔、それ一色だった自分の苦い経験が、バーゼという少女を救えたのなら、こんな歴史も何かしら意味があったかもしれない。離れていった家族に申し訳ない気持ちは当然あるがそんな風に思えた。

 

「マスター……これからもマスターの歴史、教えてください!私、これからも変わっていきたい!」

 

「あぁ、バーゼ……俺もこれからも変わっていきたいからな……」

 

「何だか盛り上がってるみたいだね」

 

 そう話してる内にフレズがやってくる。白虎の棄権があった為にフレズが優勝となったわけだ。

 

「フレズ……。マスターは大丈夫か?」

 

「今は休んでるよ。ヒカル達に送ってもらった方がいいかな」

 

「ねぇ、今でも奥さんや娘さんの代わりになりたいって思ってる?」

 

「そうだな……ちょっと今は……私のままで変われるなら、私のままで変わりたい」

 

「変わるなんて当然だろ?ボク達には無限の可能性があるんだ。何にだってなれるし、なんだって出来る」

 

「だといいな……だったらお前は何になりたい?」

 

「え?」

 

 興味があるな。と言うバーゼの問いにフレズは赤面する。ごまかそうかと思ったが……、健もいなかったし何より正直に言いたかった。だからこう言った。

 

「……決まってんだろ?……ボクが……ボクがなりたいのは……マスターのおヨメさんっ!!」

 

 人間同様、それぞれの道を模索しながらFAG達は道を歩んでいく。だが誰もこの時は知らなかった。少女達にとって、そして何よりヒカルとスティレットの二人にとって、試練の幕開けの日だという事を。

 とりあえず最終章へ向けて進めたつもりです。フレズのアニメのイメージに似合わないマスターとして健を作りましたが、どんどんフレズがM化して健が隠れS化していく様な気がする……。

 

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