No.100913

ささっとさん
恋姫†無双 終わらぬループの果てに
第17話 21週目 その9
目的を果たした反董卓連合は解散し、それぞれの領地へと戻っていく諸侯達。
漢王朝の権威が完全に失墜した今、大陸の覇権を賭けた戦いが勃発するのはもはや必然だった。
と言ってもいきなり戦いが始まる訳ではなく、しばらくの間はどこも内政に励む事となる。
それは反董卓連合を経て一気に名声を高めた俺達も例外ではなかった。
戦争への備えや民の暮らしを考えた政策の立案・実行、さらに賊の討伐など毎日が大忙しだ。
加えて俺の場合、私的な面での忙しさも今まで以上の過密スケジュール状態。
『一刀。今から街へ視察に行くからついてきなさい………私と二人は、い、嫌なの?』
『お兄さ~ん。申し訳ありませんが、お手伝いをお願いしてもよろしいですか~?』
『……かずと。セキト達と一緒におさんぽ、いこ?』
『一刀様。お時間がお有りでしたら、組み手の相手をしていただけないでしょうか?』
『一刀さ~ん。社錬の新作が発売されたんだけどぉ、一緒に買いに行こ~なの!』
『一刀はん。新しいカラクリの事でちょっとお願いがあるんやけど……だめ?』
この6人を筆頭に暇さえあれば誰かが訪ねて来る状況なので、いついかなる時も気が抜けない。
また、捕虜として捕まった後に将として加わった2人とも既に顔を会わせていた。
『アンタが北郷 一刀やね。よろしゅうな! 早速やけど、どや?』
霞はいつもの如く俺の武に興味を持ったらしく、顔を合わせるたびに勝負を挑んでくる。
しかも一騎打ちの後は必ずと言っていいほど酒に付き合わされるため、
予定が詰まっている日の朝なんかに遭遇するとマジで洒落にならない。
それなら断ればいいじゃないかと思うかもしれないが、
あそこまで気持ちの良い笑顔で誘われたら断れるものも断れない。
ついつい勢いでOKしてしまうのだ。
『お前が北郷 一刀……よくもねねの大切な恋殿を傷モノにぃぃぃーーーーー!!!』
そしてもう一人の陳宮だが、こちらはわざわざ語るまでもないだろう。
前回のループと比べれば意味は異なるが、やはり印象は最悪だった。
とりあえず、顔を合わせるたびに妙な言い掛かりをつけるのだけはやめて欲しい。
誤解のないように言っておくが、俺はまだ恋とそういう関係にはなっていないのだ。
虎牢関の時だって本当に一緒に『寝た』だけなんだからな。
そうそう、陳宮と言えば何故か桂花と一緒にいるところをよく見かける。
ただ、その時々で両者の態度に大きな違いがあった。
『お前が恋殿を唆してあの男に差し向けたのですね! この雌狐めぇぇぇーーーーーー!!!』
『主君の幸せを願うのが従者の務めではなくて? ふん、見た目通り考えも子供なのね』
例えば一方的に怒鳴り散らす陳宮を桂花が軽々といなしていたり、
『この間恋殿と一緒にお風呂に入った時など、恋殿がねねの髪を優しく洗ってくれたのですよ。ふふん♪』
『一緒にお風呂ですって?! クッ……だ、だから何だって言うのよ!』
陳宮の自慢話?を桂花が何故か悔しそうに聞いていたり、
『そういう考えもありますね。しかし恋殿には……』
『なるほど、それは思いつかなかったわ。なら呂布には……』
軍議の場かと錯覚してしまいそうなくらい真剣な眼差しで意見交換していたり、
『恋殿! こちらの肉まんもどうぞなのです!』
『ありがとう……はむはむ……』
『こ、この春巻きもなかなか美味しいわよ!』
『ん、食べる……もぐもぐ……』
『『………はぁ~』』
食事する恋の様子を二人揃って悦に入った表情で眺めていたりと本当に様々だ。
仲が良いのか悪いのかイマイチ判断しにくいが、全てにおいて恋が関係している以上問題ないだろう。
三国随一の癒しの力は伊達ではないのだ。
ちなみに遠征で負ってしまった俺の怪我だが、こっそりと妖術で治療しておいた。
でも、あれだけの怪我がこんな短期間で治ったのに誰からもツッコミ無しだったのはなんでだろう?
とにもかくにも、俺はこんな環境に身を置きながら多忙な毎日を送っていたのだった。
「そんな訳で日々の激務に疲れた俺は、息抜きを兼ねてみんなと張三姉妹のライブを見に来たのであった」
うん、さすがに話が飛び過ぎているので詳しい経緯を説明しておこう。
事の発端は数日前、華琳当てに届いた一通の手紙だった。
『やっほー。地和だぴょーん。みんなげんきー? 地和はとってもとってもとーっても元気だよー』
こんな砕け過ぎの文面から始まっていた手紙の送り主は地和。
一部の人間しか読めない地和語で書かれているこの手紙は、
今度開催される彼女達の興行への招待状だったのである。
ちなみに今回のループでは俺は彼女達の世話役を華琳から仰せつかっておらず、
俺の代わりに沙和がその立場に就いていた。
『招待を断るのも礼儀に反するでしょうし、一度見に行ってみましょうか』
招待状を送られた華琳は特に迷う事もなく招待を受けた。
そんな彼女に追従するように春蘭以下のメンバーが名乗りを上げて話が膨らんでいき、
最終的には魏の首脳陣ほぼ全員が参加することに。
全員と言うのは勿論そのままの意味で、本来見に行かない風やそもそもいない恋と陳宮も含まれている。
さすがに警備担当の凪達や警備の応援を頼んだ霞までは一緒に行けないが、それでもかなりの大所帯。
まぁ、ここの所みんな働き詰めだったので気分転換にはちょうど良いだろう。
コレで本当に気分転換になるかどうかは謎だけどな。
ともかく俺達は三姉妹のライブを見に行くことになり、今日がその当日なのである。
「なんだこの人ごみは!」
「…歩きにくいわね」
「すごいですね~」
「……人、いっぱい」
ライブ会場へと続く道は案の定大混雑。
少しでも気を抜けば一瞬で人ごみに呑みこまれてしまうだろう。
中でも標準より小柄な体型の風や陳宮などはマジで洒落にならない。
そのため華琳の周囲をガードしつつ、俺はこの2人に対して特に気を配っていた。
そういう意味では桂花も同じなのだが、華琳にピタリと張り付いているので大丈夫だろう。
さらに人ごみに関係なく迷子になる可能性が高い恋からも当然目が離せない。
「いい加減に下ろすです! 何故ねねがお前なんかに担がれなくてはならないんですか!」
「わっ、こら! 人の上で暴れるんじゃない!」
気付けば俺は両手で風、恋の手をそれぞれ握り、陳宮を肩車して背負っていた。
すっかり保護者的な立場である。
「ねね、暴れたらダメ。一刀の迷惑」
「そうですよ、ねねちゃん。お兄さんからそんな羨ましい事してもらってるのに、贅沢言わないでください」
「うっ……仕方ないですね」
恋は当然として、陳宮は何故か風に対しても従順だった。
この2人から窘められた陳宮は素直に抵抗を止めて大人しくなる。
しかし風の奴、一体いつの間に陳宮と打ち解けたんだろうか。
「………………」
「……ん? どうかしたのか、華琳」
陳宮が大人しくなったところで再度体勢を整える。
と、ここで前を歩いていた華琳が振りかえり、俺をじっと見つめているのに気がついた。
何となく怒っているような気がするのはどうしてだ?
「………人ごみに乗じて私のお尻を触るなんて、いい度胸してるじゃないの、一刀」
「はぁ?!」
そんな華琳の口から飛び出した言葉に俺はビックリ仰天。
いやいやいや、さっきから俺の両手は恋と風によって塞がれてますから。
おまけに陳宮を肩車してるせいで自由に動けませんから。
こんな状態でどうやって華琳の尻を触れるって言うんだよ!
しかし、俺の心の叫びが声となる前に事態は最悪の方向へと突き進んでいた。
「北郷ッ! 貴様、よりにもよって華琳様に……許さん!!!」
周囲の人ごみなんてなんのその、自身の得物を盛大に振りかぶる春蘭。
「ついに本性を現したわね、この変態男! 春蘭、ひと思いにやってしまいなさい!!!」
その春蘭を煽りたてるかの如く、ここぞとばかりに大声を張り上げる桂花。
もはや説得が通用する状況ではない。
仕方ない、ここは真剣白刃取りで防御…って両手ふさがってるから無理じゃん!
それならしゃがんで回避…したら陳宮が真っ二つじゃないか!
いかん、あまりにも突発的過ぎて頭の中がごちゃごちゃだ!?
「覚悟しろ、北郷ッ!!!」
「ちょ、待てって、春蘭! 冤罪、冤罪ですから………アッーーーーーー!!!」
単純に風と恋の手を離せばいいだけだというのに俺が気付いたのは、春蘭の一太刀を浴びた後だった……
「………ふん、私の事をほったらかしにしてる一刀が悪いんだから」
「やれやれ、何とか着いたな」
あわや本当に天の国逝きかと焦ったものの、どうにか目的地にたどり着くことが出来た。
開演までまだ時間があるにも関わらず、ファン達の熱気は既に異様なほど高まっている。
その光景に若干引いている様子の華琳達を先導し、受付で教えられた席の場所へと移動。
「ここが俺達の席だな」
凄まじい数の人間がひしめき合うなか、その空間だけポッカリと穴が空いていた。
最前列のステージ真正面という特等席。
普段から三姉妹と普通に顔を合わせている華琳達にはありがたみが解らないだろうけど、
彼女達のファンからすれば正真正銘のプレミアチケットだ。
実は受付でこの席の値段をこっそり聞いたのだが、苦笑いしか出来ない金額だった。
何と言うか、アイドルオタクって凄まじいよな。
「あれ、誰か出てきたわよ……?」
「あ、会長だ」
「……会長?」
その後、張三姉妹応援団による恒例の声だしが行われていよいよ準備万端。
完璧なお膳立ての整った舞台上に銅鑼の音が鳴り響き、観客の期待通り張三姉妹が姿を現した。
「はーいっ! みんな、元気ーーーっ!? みんなの歌姫、地和ちゃんだよーーーーーーーっ!!!」
「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「ぜんぜん、きこえないよーっ! 元気ーっ!?」
「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「こっちは元気かなーーーっ!?」
「ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
三姉妹のマイクパフォーマンスに合わせ、それぞれ客席の左側、中央、右側が反応して激しく咆哮。
事前の声だしを遥かに上回る声量で会場全体を揺るがせる。
「「………………ふぅっ」」
「むぅ……しっかりしろ、桂花。死ぬな、傷は浅いぞ」
「……ねね、寝ちゃダメ」
なお、この時点で我が陣営の軍師2名が脱落。
「戦か! これは、戦なのかっ! 華琳様、この春蘭がついておりますゆえ、ご安心を! ご安心をーっ!!」
「ま、まずはあなたが落ち着きなさい。春蘭」
武将1名が錯乱状態に陥った。
まぁ、耐性のない人間ならこんなもんだろう。
「ほわーっ! ほわーっ!!」
「ほ、ほわー!」
「お前らは楽しみすぎだ」
「ほわぁ…」
そして無邪気にはしゃいでいる季衣と流琉は少し自重と言う言葉を覚えような。
一応華琳の護衛が最優先なんだから。
ちなみに恋と風はその迫力を前に驚いていたが、それでも普通に楽しんでいる様子だった。
意外にこういうのが好きなのかもしれないな。
「じゃあ一曲目、いっくよーーーっ!!!」
そうこうしている間にライブは本格的にスタートし、地和の掛け声と共に一曲目が始まった。
現代風のまさにアイドルと言った感じの曲調は観客達に大ウケ。
地和の妖術によって音楽やら特殊効果やらが追加された舞台は元の世界のライブと何ら遜色がない。
いや、客の盛り上がり具合を考えたらそれ以上かも。
「……これが、舞台……」
「大丈夫か、華琳?」
戦とはまた違う熱気に満ち溢れているこの特殊空間を前に、さすがの華琳も少し青ざめていた。
しかし不謹慎ながら、こんな感じで怯えている華琳は非常に可愛らしかったりする。
普段の俺に甘えてくる時とはまた違う……こう、保護欲をかき立てられるのだ。
「え、ええ……けど、何と言うか……ちょっと怖いわね」
「なんであれ、理解できないものは怖いもんな」
温もりを求める華琳の手をそっと握りかえし、安心させるように優しく微笑む。
「一刀………」
そして手をつないだ華琳はちょっと恥ずかしそうに、だけど何処か嬉しそうに笑みを返して……
「……む」
「……え?」
……くれてたのだが、急に不機嫌顔になってこちらを睨みつけてきた。
いや、視線の方向からして俺をというか俺の左腕の方を睨みつけているような……あ。
「風、いつの間に…」
「お兄さんが華琳様を気遣い始めた頃からですよ~。二人の世界に入ってて全然気付いてくれないんですから」
目線を下げると、実はかなり前から俺にしがみついていたらしい風がそこにいた。
先程まで普通にライブを楽しんでいたはずの風は、僅かに頬を膨らませて不満を訴えてくる。
「何だか風もこの熱気に当てられて少し気分が悪くなってきました」
「えっ?」
「このままお兄さんに抱きついていれば楽になると思いますので、お気になさらないでください~」
こちらの返答を待つつもりなど初めからなく、身体ごと寄りかかって来る風。
それは間違いなく俺に抱きつきたいだけの口実だろうが。
そう言おうとした直前、背後から伸びてきた何者かの腕が俺の首に回された。
背中に密着してくるこの柔らかな感触は……
「……どうしたんだ、恋?」
「恋も、少し気分が悪くなった。だけど、かずとと一緒だったらすぐに良くなる」
風の行動に触発されたらしい恋が背後からしがみついてきた。
思いっきり嘘だと解ってはいるが、肩越しに囁かれると何だがこのままでもいいような気がして……
………………ブチッ!
これまでで最大規模となった張三姉妹のライブは大成功。
観客と一体となって盛り上がったこの舞台を足がかりに、彼女達はますます人気を高めていくだろう。
ただ、残念なことに俺は途中から一切舞台を見ていられなかった。
『我慢の限界ね。一刀、覚悟はいいかしら?』
風と恋の行動を目の当たりにした華琳が今回のループで初めてキレてしまったからである。
………そう、本当にキレてしまったのだ。
『いや、まて華琳、これはごか…んむぅ?!』
こんなところで破壊神になられたら洒落にならんと決死の説得を行おうとした俺。
しかし再び華琳の方を向いた瞬間、いきなり華琳に唇を奪われてしまったのだ。
そこから先はただひたすらにキス、キス、キスの連打。
反論どころかまともに喋る余裕すらなく、俺は息継ぎするのだけで精いっぱいだった。
『『………………』』
このとんでもない行為を目の当たりにしてはさすがの風もただ唖然とするばかり。
恋もまた華琳の迫力に押されて俺から離れ、あとは棒立ちでただ眺めるだけであった。
当然この光景を見たのはこの2人だけでなく、周囲にいる春蘭達も同様である。
意識を取り戻した桂花はまたもや意識を失って卒倒。
春蘭、秋蘭の姉妹は風や恋と同じくただ唖然と立ち尽くすだけ。
季衣、流琉、そして復活した陳宮は両手で顔を覆いながら恥ずかしがりつつ、指の隙間からバッチリ見学。
ライブに集中している三姉妹のファン達の一角に、あっという間に異次元空間が形成されてしまったのである。
そうそう、そう言えば舞台の上の三姉妹もこれに気付いていた。
しかし3人がこちらに何か言おうとするよりも早く華琳が反応し、
(邪魔したら………わかってるわね?)
という意味合いの殺気を込めた視線で三人に脅しをかけていた。
この最後通告に3人が逆らえるはずもなく、そこから先は俺達の事を極力無視しながら舞台を続けていた。
『これで邪魔者はいなくなったわね。さぁ一刀、続きを楽しみましょう』
こうして障害を排除した華琳の凶行は結局ライブ終了時まで続けられ、
全てが終わった頃には俺の意識は快楽と驚きによる混乱で朦朧としていた。
そんな精神状態の中でも、最後の最後で華琳が放った言葉と表情はしっかりと脳に焼き付いている。
『あんまり私を放っておくからこんな事になるのよ、一刀。これからは気をつけなさいね?』
獲物を貪り尽くして満足した肉食獣の目をしながら、聖母のような笑顔でこう告げた華琳。
やっぱり、この世界の華琳は…とんでも、ない………な………………ガクッ。
ちなみにこの日の夜、
「あ、ああああんな場所でわた、わた、私はなんて真似を………~~~~~~~っ!!!」
溜まりに溜まったストレスを発散して我に返った華琳は、
己の行動を思い返して一晩中ベッドの上で悶えていたそうな。
あとがき
どうも、『ささっと』です。
今回はページ数、内容ともにかなり短めの箸休め的な位置づけです。
21周目登場時はそのまま風を喰ってしまうのではという程の勢いを見せていながら、
恋登場ですっかり影の薄くなってしまった華琳様。
このままではいかんと憂慮した作者のテコ入れによって、再び奮起していただきました。
番外編にしても良かったのですが、本編でも微妙にフラグが立ってたので本編扱いに。
原作ではまだ先のイベントですが、気にしてはいけません。
しかし原作の華琳様から考えると、こっちのキレ方のほうが自然かな?w
なお無印の愛紗のようになってしまった桂花ですが、物語の進行にはあまり影響しませんのであしからず。
次回は袁紹との決戦! もしかしたら一気に22周目ラストまで行くかも……
コメント、および支援ありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。
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P.S.風……風の出番はまだなのか……OPとEDだけでは足りん、足りんぞ~(アニメ的な意味で)
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負傷した一刀が戦線から退いたものの、これまでと同じように勝利を収めた反董卓連合。
漢王朝の権力失墜が明確となった今、大陸はいよいよ乱世の時代に突入していく。
果たして大陸の覇権は誰の手に? そして、我らが一刀の命運はいかに……
2009-10-14 09:24:35 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:17106 閲覧ユーザー数:11311