No.1007461

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第45話

2019-10-18 23:27:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1900   閲覧ユーザー数:1633

メンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント決起軍による”エレボニア征伐”はまず、クロスベルから進軍してクロイツェン州を占領する事になった為、メンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント決起軍がクロスベルから進軍した際のクロイツェン州最初の砦でもある”双龍橋”に向かっている中、リィンはリフィア達から聞いた作戦内容を伝える為にリィン隊の全員を招集して作戦内容を伝えていた。

 

1月20日、同日AM9:30――――――

 

~ヴァリアント・ブリーフィングルーム~

 

「――――――以上が作戦内容だ。」

「”本隊”が砦を守る領邦軍と戦っている隙に砦の背後に回った私達を含めた別働隊が挟み撃ちにし、砦へ続く道を守る領邦軍を撃破した後砦に侵入、そして砦内にいる領邦軍の撃破ですか。」

「さすがはメンフィルとクロスベル、それぞれが誇る”総参謀”が考えた作戦だけあって、初戦からえげつない作戦だねぇ。」

「はい。戦力はこちらが圧倒的であるにも関わらず、味方を最小限の被害で抑えようとしている合理的な作戦です。」

リィンの説明を聞き終えたステラは静かな表情で呟き、苦笑しながら呟いたフォルデの感想にアルティナは真剣な表情で頷いた。

「…………それにしても皮肉な話ね。”双龍橋”をわたくし達が再び攻める事になった事もそうだけど、作戦内容も”紅き翼”の時と似ているし…………」

「ええ…………しかも相手は以前と同じ、クロイツェン領邦軍でもありますし。」

一方アルフィンとセレーネは複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「少佐、今の話を聞いて一つ気になる事があるのですがいいでしょうか?」

「ああ、何でも言ってくれ。」

「ありがとうございます。先程の説明で少佐は今回の敵対象はクロイツェン領邦軍と仰いましたが、帝国正規軍は双龍橋の防衛についていないのですか?」

「そう聞いている。クロイツェン州はクロスベルでの迎撃戦で領邦軍の主力が壊滅した為、アルバレア公爵家の暫定当主であるユーシスの要請によって正規軍がクロイツェン州の治安維持を担当しているとの事だが…………帝国正規軍は今回の侵攻を知っても、双龍橋に援軍を向けるような事は行っていないとの事だ。」

「おいおい、正規軍はメンフィル・クロスベル連合(俺達)の”エレボニア征伐”が本格化した事を知ったにも関わらず、迎撃をしないとか何考えているんだ?」

「”双龍橋”はクロイツェン州では”オーロックス砦”に次ぐ大規模な砦であるにも関わらず、その”双龍橋”を利用して侵攻を食い止めようとしない事には違和感を感じますね。」

クルトの質問に答えたリィンの答えを聞いたフォルデは呆れた表情で溜息を吐き、ステラは真剣な表情で考え込みながら呟いた。

 

「…………もしかしたら正規軍――――――いえ、帝国政府はクロイツェン領邦軍を万全な迎撃態勢を整える”時間稼ぎ”として利用する為に、敢えてオーロックス砦に援軍を送らないのでは?」

「そ、それはまさか帝国政府はクロイツェン領邦軍を…………」

「正規軍に万全な迎撃態勢を整えさせるための”捨て石”にするという事ですわね。(そして更に最悪なパターンは…………ふふっ、オズボーン宰相達は一体どこまで”非情”になる事ができるのやら。)」

エリゼの推測を聞いてある事に気づいたクルトは信じられない表情をし、ミュゼは静かな表情で続きを口にした後ある推測をして一瞬だけ意味ありげな笑みを浮かべてすぐに表情を戻した。

「…………ああ。ゼルギウス将軍閣下達もそうだが、メンフィル・クロスベル連合の参謀達もエレボニア帝国政府は内戦での統括領主であるアルバレア公の逮捕、クロスベル迎撃戦でのアルバレア公の跡継ぎであるルーファスさんの戦死と主力の壊滅で士気・戦力共に最悪になっている領邦軍は”戦争では使い物にならない”と判断して、メンフィル・クロスベル連合の進軍ルートで必ずぶつかる事になる双龍橋の防衛に彼らを置いてケルディック・バリアハート方面の迎撃態勢を固める事に集中すると想定しているとの事だ。」

「そんな…………内戦では敵対していたとはいえ、同じエレボニアを守る役目についているクロイツェン領邦軍をそのように扱うなんて…………」

「敵である俺達も”哀れ”に思えるようなあんまりな扱いだねぇ。――――――ま、初戦は楽な戦いである事は俺達からすればラッキーな話だがな。」

静かな表情で答えたリィンの答えを聞いたアルフィンは悲痛そうな表情をし、フォルデは疲れた表情で溜息を吐いた後気を取り直して指摘した。

 

「ええ。その為、今回の作戦では義勇兵達の実戦経験を増やす事や運用開始(ロールアウト)したばかりの機甲兵を”実戦”で試すちょうどいい機会との事なので、”本隊”であるリフィア殿下やゼルギウス将軍閣下達は予備の部隊として後方に控えているとの事です。…………以上の事から、俺達の部隊も運用開始(ロールアウト)したばかりの機甲兵を早速実戦運用する事になりました。――――――そういう訳でクルトとミュゼには早速機甲兵を操縦して、俺と共に敵戦力の制圧をしてもらおうと思っているが、二人ともいけるか?」

「「はい…………っ!」」

作戦内容を説明したリィンに確認されたクルトとミュゼは力強く頷き

「”ドラッケン”を担当しているマークとクロム、ケインも俺達と共に敵戦力の右翼の制圧を、フォルデ先輩は残りの機甲兵を率いて敵戦力の左翼の制圧を、ステラは歩兵達を率いて砦内への突入する地点を守る兵達の撃破、並びに機甲兵や戦車の部隊を撃破した俺達の到着までの突入地点の確保と維持を。」

「「「イエス・サー!!」」」

「おうっ!」

「はいっ!」

リィンの指示に名指しされた部下の三人とフォルデ、ステラはそれぞれリィンに敬礼して返事をした。

 

「兄様、今回の作戦でエル・プラドーとヴァイスリッターさんは運用しなくていいのでしょうか?」

「ああ。今説明したように、今回の作戦の目的の一つは運用開始(ロールアウト)したばかりの機甲兵の”実戦運用”だから、今回は彼らは運用しないとの事だ。」

「…………まあ、ただでさえこちらが戦力過剰のような状況でしょうから、そこに更に金の騎神と神機まで参戦すれば運用開始(ロールアウト)したばかりの機甲兵に積ませる”実戦”の経験が減る事が目に見えていますものね。」

エリスの質問に答えたリィンの答えを聞いて事情を察したアルティナはジト目で指摘した。

「ハハ、そういう事だ。――――――とはいっても、二人が危機的状況に陥れば躊躇う事なく呼んでくれ。まあ、俺が傍にいるんだからそんな状況には陥らせないがな。」

「兄様…………」

「…………兄様のお気持ちは嬉しいですが、皆さんがいる場でそういった事を言うのは控えるべきかと。」

リィンの気遣いにエリスが頬を赤らめて嬉しそうにしている中、その様子を見守っていたフォルデ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、エリゼは気まずそうな表情で他の面々を見回してリィンに指摘し

「あ”。…………コホン。敵の士気は低く、また戦力もこちらよりは劣っているとはいえ、機甲兵の操縦経験は敵の方が上だ。決して油断せず、常に味方との連携を取るように気を配れ!」

指摘されたリィンは表情を引き攣らせた後咳払いをして気を取り直してその場にいる全員に忠告と号令をかけ

「イエス・サー!!」

リィンの号令にその場にいる全員は力強く答えた。

 

 

1時間後、ついにメンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント決起軍は双龍橋に本格的な攻撃を開始した。

 

 

同日AM10:30――――――

 

 

エレボニア帝国、クロイツェン州・双龍橋――――――

 

 

戦いは最初からメンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント決起軍の優勢で、連合と決起軍の猛攻に領邦軍は次々と後退していた。

 

 

~クロイツェン州領邦軍拠点”双龍橋”周辺~

 

「お、おのれっ……メンフィル・クロスベル連合め!」

「ヴァイスラント決起軍も、俺達と同じ領邦軍でありながら、敵国につくとは貴様らには”帝国軍人”としての誇りはないのか!?」

機甲兵達を後退させ続けているクロイツェン領邦軍の軍人達は目の前のメンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント決起軍を睨んで叫んだ。

「フッ、かつては前カイエン公の下で戦っていた私が言うのもなんだが、軍人でありながら、”本来軍人が守るべき存在”――――――ケルディックを焼き討ちし、民達からも犠牲者を出した貴様らにだけは”帝国軍人の誇り”云々を語る”資格”はない!」

「ぐあっ!?」

「ががっ!?」

クロイツェン領邦軍の言葉に対してオーレリア将軍が操縦する黄金のシュピーゲルは相手がかつては自分達と同じ貴族連合軍の一員であったにも関わらず、何の躊躇いもなく剣を振るって機甲兵達を破壊して操縦している領邦軍の兵士達の命も奪い

「オォォォォ…………ッ!」

「うわああああぁぁっ!?」

「ぐふっ!?」

黄金のシュピーゲルに続くようにウォレス准将が操縦するヘクトルも凄まじい槍さばきで次々と敵軍の戦車や機甲兵を撃破し、二体の猛攻に続くように決起軍の機甲兵達も敵軍の機甲兵達を圧倒していた。

「将軍閣下、幾ら何でも飛ばし過ぎなのでは?まだ作戦は始まったばかりですよ?」

「そうか?”彼ら”と比べれば私の動き等”準備運動”のようなものだと思うが?」

通信で苦笑しているウォレス准将の言葉に対して静かな笑みを浮かべたオーレリア将軍はクロスベル帝国軍やメンフィル帝国軍に視線を向けてウォレス准将に指摘した。

 

「だぁっはっはっはっ!どうした、どうしたぁっ!?この機甲兵(てつくず)の扱いはお前達の方が上なんだろう!?」

「ハッ、生身でも弱っちい癖に、そんな機甲兵(おもちゃ)を振り回すあんた達にあたし達を止めようなんて絶対に無理なんだよっ!」

「ぐぎゃあああああっ!?」

「がああああああっ!?」

「さすがギュランドロス陛下とパティルナ将軍!」

「最高ですっ!」

「俺達もお二人に続け――――――ッ!」

「オォォォォォォ―――――ッ!!」

オーレリア将軍達とは離れた場所ではギュランドロスが操るヘクトル弐型とパティルナが操るドラッケンⅡはそれぞれ機体のスペックでは出せないはずのありえない動きで敵軍の機甲兵達を圧倒し、二体の猛攻に士気を高めたクロスベル帝国軍の部隊は二体に続くように連携して敵軍を圧倒し

「右翼!先行し過ぎです!一端下がりなさい!」

「左翼は味方機との間隔を空け過ぎよ!もう少し互いの距離を詰めて行動しなさい!」

それぞれシュピーゲルSを操縦しているエルミナとミレイユはクロスベル帝国軍に次々と指示を出してギュランドロス達が広げた敵軍の傷口を更に広げていた。

 

「切り裂け、炎よ――――――集炎!!」

「十六夜――――――”斬”!!」

「切り刻む――――――エクスヴェングス!!」

「死んじゃえばぁっ!?アン・セルヴォ!!」

「そ~れ♪パワフルスイング!!」

「うああああああああっ!?」

「あ、ありえない!生身で機甲兵や戦車を破壊する――――――がふっ!?」

「ば、化物…………ッ!」

クロスベル帝国軍が左翼、ヴァイスラント決起軍が右翼を担当している中最も戦闘が激しくなる中央を担当しているメンフィル帝国軍を率いているプリネ、ツーヤ、レーヴェ、エヴリーヌ、竜を駆って空から奇襲するレンはそれぞれ生身で機甲兵や戦車を破壊して敵軍を圧倒し、メンフィル帝国軍もプリネ達に続くように領邦軍を圧倒していた。

 

「ハハッ、クロスベル帝国軍もそうですがメンフィル帝国軍も凄まじい強さを見せつけてくれますね。もしメンフィルがもっと早く開戦すれば、俺達も彼らと刃を交える事があったかもしれない事を考えるとゾッとしますね。」

「フッ、クロスベルもそうだが、メンフィルは”英雄王”どころか”英雄王”に次ぐ使い手である”空の覇者”や”戦妃”すら出陣していないにも関わらず、世間では温厚な性格で知られているプリネ皇女達であれ程の強さとは、我らもそうだが”鉄血宰相”達も”井の中の蛙”である事を思い知らされるな。――――――まあ、だからと言って我ら”領邦軍の誇り”が”その程度”であるとメンフィル・クロスベル連合、鉄血宰相達の双方に勘違いしてもらっては困るがな。――――――――そろそろ我らも”領邦軍の誇り”を敵と味方、双方に見せつけてやるぞ、ウォレス!」

メンフィル・クロスベル連合の強さに苦笑しているウォレス准将の感想に同意したオーレリア将軍は不敵な笑みを浮かべてウォレス准将に指示をし

「イエス・マム!」

オーレリア将軍の言葉に力強く頷いたウォレス准将はヘクトルを操縦して黄金のシュピーゲルと共に敵軍に突撃してメンフィル・クロスベル連合に負けないかの如くの猛攻でクロイツェン領邦軍を圧し始めた。

 

一方その頃、リィン達を含めたメンフィル帝国軍の別働隊を乗せた”ヴァリアント”が戦闘が起こっている地点とは正反対の地点に回り、甲板に待機していたリィン達を魔術師の部隊による転位魔術で地上へと転位させた。

 

 

~双龍橋~

 

「なっ!?別働隊――――――挟み撃ちだと…………!?」

「しかも何もない所にいきなり現れるとか、一体どうなっているんだ!?」

「クッ…………2度もこの双龍橋を落とさせてなるものか!総員、迎撃態勢!」

突然現れたメンフィル帝国軍の別働隊に領邦軍の兵士達が驚いている中、中隊長が迎撃の指示を出した。

 

「メンフィル帝国軍リフィア皇女親衛隊所属、リィン隊一同――――――作戦を開始する!」

「外の戦いをとっとと終わらせて砦に突入するぞ、お前達(ら)!」

「C分隊!私達は敵軍の機甲兵や戦車は味方軍の機甲兵達に任せ、砦内への突入地点の制圧が最優先です!作戦開始(オープンコンバット)!!」

「イエス・サー(マム)!!」

リィン、フォルデ、ステラはそれぞれ号令をかけ、三人の号令に力強く頷いたリィン隊はそれぞれ行動を開始し

「私達も行きますわよ、エンネア!遅れるんじゃありませんわよ!」

「はいはい。――――――そっちは任せるわね、アイネス、オリエ殿。」

「うむ。」

「ええ。」

デュバリィとエンネアもリィン隊の地上隊に続くように行動を開始し、ヘクトル弐型を操縦するアイネスとシュピーゲルSを操縦するオリエはリィン達のように敵軍の機甲兵達へと向かい始めた。

 

「き、貴様は”灰色の騎士”…………!?」

「おのれ…………エレボニアを裏切ってメンフィル帝国に寝返った挙句、多くの仲間達の命を奪い、ルーファス様を討ち取った貴様だけは絶対に許さん!」

「行け!!今度こそ”灰色の騎士人形”を討ち取り、亡きルーファス様の仇を討つのだ!」

ヴァリマール達と対峙した領邦軍の機甲兵達はヴァリマールに憎悪を向け

「…………俺は元々メンフィル帝国所属だから、”エレボニアの裏切り者”呼ばわりされる筋合いはないが…………俺達の前を阻むなら、容赦はしない!行くぞ、ヴァリマール!A分隊、戦闘開始!」

「任せるがいい!!」

「イエス・サー!!」

領邦軍の言葉に対して静かな表情で答えたリィンは号令をかけ、リィンの号令にヴァリマールとクルト達はそれぞれ力強く答えて戦闘を開始した。

 

「「死ねっ!!」」

敵軍のドラッケン達はそれぞれ剣と棍棒でヴァリマールに襲い掛かったが

「お熱いのはいかが?――――――ファイアッ!!」

「喰らえっ!!」

「「うおっ!?」」

ミュゼが操縦するケストレルと銃を装備しているドラッケンによる遠距離攻撃を受けて怯み

「フンッ!」

「そこだっ!」

「「がっ!?」」

それぞれの機体が怯むと棍棒を持つドラッケンとクルトが操縦するシュピーゲルが追撃を叩き込んで敵の態勢を崩した。

「止めだ!」

「もらった!」

「がふ…………っ!?」

「ぐあっ!?」

そこに剣を装備したドラッケンが敵の操縦席があるヘッド目掛けて剣で突き刺し、シュピーゲルは双剣で振るって追撃し

「止めですわ♪」

「があ…………っ!?」

更にケストレルはシュピーゲルが追撃した機甲兵のヘッドを狙撃して操縦席にいる兵士の命を奪った。

 

「な――――――」

一瞬で部下達がやられた事にシュピーゲルを操縦する領邦軍の部隊長が絶句したその時

「四の型――――――紅葉斬り。」

「ぁ――――――がふっ!?お、おの…………れ…………」

ヴァリマールが一瞬でシュピーゲルの背後を駆け抜けて無数の斬撃をシュピーゲルに叩き込み、操縦席ごと切り裂かれた領邦軍の部隊長は口から大量の血を吐いて絶命した。

「敵機甲兵3体の撃破を確認。この調子で残りの敵機を制圧していくぞ!」

「イエス・サー!!」

リィンは静かな表情で呟いた後再び号令をかけてクルト達と共に他のクロイツェン領邦軍の機甲兵や戦車との戦闘を開始した。

 

リィン達機甲兵の部隊が領邦軍の機甲兵や戦車を圧倒している一方、ステラ達歩兵部隊も砦内へ突入する地点を守る領邦軍の兵士達を圧倒していた。

 

「七色の光の矢よ――――――プリズミックミサイル!!」

「全てを漆黒で包み込め――――――崩壊のディザイア!!」

「全てを焼き尽くす古の炎よ――――――メルカーナの轟炎!!」

「フラガラッハ――――――滅!!」

「「「「ぎゃああああああっ!?」」」」

セレーネが放った七色の光の矢は敵兵を貫いて七色の爆発を起こし、エリスが放った暗黒魔術による漆黒の霧は敵兵を包み込んで致死性も含まれている猛毒を発生させ、リィン達との性魔術によって魔術師としての才能が目覚めたアルフィンが放った火炎魔術を受けた敵兵は骨まで焼き尽くされ、アルティナの指示によって巨大な刃と化したクラウ=ソラスに一刀両断された敵兵はそれぞれ一瞬で絶命し

「そこっ!」

「ハッ!」

「うっ!?」

「ぐあっ!?」

ステラとエンネアによる狙撃はまさに百発百中を表すように二人が狙撃をすれば、その標的となった領邦軍は次々と討ち死にした。

「二の型・改――――――雷鳴剣!!」

「行きますわよ――――――斬!!」

「「ぐああああああっ!?」」

前衛であるエリゼとデュバリィはそれぞれ電光石火のような凄まじい速さで敵陣に飛び込んで剣技を振るって敵の陣形に新たな傷口を作り、味方の兵士達やステラ達はエリゼ達が作った傷口を更に広げて領邦軍を次々と討ち取っていた。

 

その後エリゼ達が突入地点を守る敵兵たちの殲滅を終え、突入地点を確保すると外の戦闘を終わらせたリィン達がエリゼ達に駆け寄った。

 

「――――――お疲れ様です。その様子ですと外の敵軍の制圧を終えたのですか?」

「おう。相手は雑魚ばっかりだったお陰でセシリア教官達の想定通り、機甲兵の実戦運用にちょうどいい相手だったから、こっちの被害はゼロだ。」

「ステラ、C分隊の被害はどうなっている?」

ステラの問いかけにフォルデが答えた後リィンはステラに状況を確認した。

「C分隊も軽傷者はいますが、重傷者、死者はゼロです。ですが…………」

リィンの問いかけに答えたステラはある場所に視線を向け、ステラに続くようにステラが視線を向けた方向にリィン達が視線を向けるとそれぞれ顔色を悪くしているアルフィンとアルティナ、アルフィン達の様子を心配しているエリス達がいた。

 

「…………これが相手の命を奪う感覚…………きっと、内戦で別行動していたお兄様達もこんな想いを何とも抱えたのでしょうね…………」

「…………わたしはわたしが理解できません…………かつて貴族連合軍の”裏の協力者”であった時は、任務の関係で敵勢力の命を奪う事もあったのに何故、震えが止まらなく、胸に痛みを感じるのでしょう…………?」

「姫様…………」

「アルティナさん…………」

それぞれ顔色を悪くして身体を震わせているアルフィンとアルティナの様子を見たエリスとセレーネはそれぞれ心配そうな表情を浮かべ

「…………なるほどな。早速、”戦場の洗礼”を受けたみたいだな。よく考えてみればあの二人が加入したのはクロスベルでの迎撃戦後だから、実際に”互いの命を奪い合う戦場”には参加していなかったな。」

「ええ。太陽の砦やカレル離宮での戦い、二人ともどちらも実際に相手の命を奪う事はしていませんでしたから、二人にとっては厳しい話になりますが、今回の作戦はちょうどいい機会だったかもしれませんね。」

「……………………そうだな。――――――ステラ、君はC分隊、A分隊と俺と共にこのまま砦の制圧をする。ただし、制圧部隊からはアルフィンとアルティナもそうだがエリゼとセレーネ、エリスは除く。フォルデ先輩はエリゼ達とクルト達、それとB分隊の隊員たちと共にここの防衛をお願いします。」

アルフィン達の状況を見てすぐに事情を察したフォルデの推測に頷いたステラの話を聞き、複雑そうな表情でアルフィン達を見つめながらステラの言葉に同意したリィンはすぐに気を取り直してステラとフォルデに指示をした。

 

「わかりました。」

「ま、状況を考えれば敵の援軍がこっちに来ない可能性が高いだろうから、アルフィンちゃん達を休ませてエリスちゃん達に元気づけられる為にもちょうどいい采配だな。」

リィンの指示に二人はそれぞれ頷いたが

「――――――待ってください!僕はまだ戦えます!ですから、どうか僕も制圧部隊に入れてください!」

リィン達の会話を見守っていたクルトが真剣な表情で申し出た。

「――――――クルトの申し出はありがたいが、アルフィンやアルティナのように”戦場の洗礼”を受けたばかりの新人である君を現状戦況はこちらの優勢であるこの状況でこれ以上無茶させるような事は上官として認められない。」

「僕は”ヴァンダール流”の剣士の一人です。”人を斬る覚悟”でしたら、幼い頃より父上達から散々叩き込まれています!」

リィンの指摘に対してクルトは真剣な表情で反論したが

「その割にはクルトもそうだが、ミュゼちゃんも隠しているようだが身体が震えているぜ?」

「…………っ。これは…………その、武者震いです。」

「ふふ、私は上手く隠していたつもりですが、やはり”本職”の方には見抜かれますか。」

苦笑するフォルデに無意識に震わせている自分の身体を指摘されると気まずそうな表情を浮かべて答えを誤魔化し、必死に身体を抑えている事で身体を僅かに震わせているミュゼは苦笑しながらフォルデの指摘に反論せず受け入れていた。

 

「無理をしなくていい。俺やステラだって、訓練兵の頃に賊の討伐で相手の命を奪った時は今のクルト達のようになったんだからな。それどころか、仲間の中には後で吐いたりした仲間もいたから、クルト達はまだマシな方だ。」

「ええ。それに戦争に参加するからには”戦場の洗礼”は誰もが必ず通る道ですから、今の自分の状況を情けなく思う必要はありません。…………それにこんなことは言いたくありませんが、一度”戦場の洗礼”を受けておけば、次に”戦場”に出て相手の命を奪った時はよほどマシになりますよ。」

「リィン少佐…………ステラ大尉…………」

「…………ちなみにエリス先輩達は平気な様子ですが、エリス先輩達はクロスベルでの迎撃戦で”戦場の洗礼”を受けたお陰で私達と違って平気なのですか?」

リィンとステラのフォローの言葉にクルトが呆けている中、ミュゼはリィンに訊ねた。

 

「まあ、厳密にいえばエリス達は迎撃戦以前に”戦場の洗礼”を受けているんだが…………それはともかく、クルトはアルフィンの護衛が本来の目的でメンフィル帝国軍(俺達)に協力しているんだろう?そのアルフィンをここに残すんだから、俺達の部隊に同行したら本末転倒になるぞ?ミュゼも自分の事で精一杯かもしれないが、できればアルフィンの為にもアルフィンと親しい間柄である君にはここに残ってアルフィンを慰めてあげて欲しい。」

「あ……………………」

「ふふ、姫様を出されるとクルトさんもそうですが私も反論できませんわね。」

リィンの指摘にクルトは呆け、ミュゼは苦笑しながら答えた。

「…………それにどうせこの先、嫌と言いたくなる程”戦場”を経験して、場合によっては無理をする事もあるんだから、この戦争を生き抜く為にも休める時は周りの者達に遠慮せずに休んだ方がいい。――――――わかったな?」

「「イエス・サー!」」

そしてリィンの言葉にクルトとミュゼはそれぞれ敬礼で答え

(リィンの奴、どっちかというと”上官”じゃなくて”教官”に向いているんじゃねぇか?)

(ふふ、昔から面倒見がいい方ですから、その推測は当たっているかもしれませんね。)

リィン達の様子をフォルデとステラは微笑ましそうに見守っていた。

 

その後リィンはステラ達と共に砦内に突入し、自分達同様砦内に突入した味方軍と共に砦内の領邦軍を殲滅した後、アルフィン達の元へと戻った。

 

「…………もう大丈夫のようだな。」

「あ…………リィンさん。作戦中であったにも関わらず、わたくし為に気を遣って頂き本当に申し訳ございませんわ。」

リィンに声をかけられたアルフィンは申し訳なさそうな表情でリィンに謝罪し

「リィン少佐達を守ると決めたにも関わらず、そのリィンさん達に気を遣ってもらうなんて、使用人として失格です…………」

「――――――」

アルティナは辛そうな表情で自身を反省し、クラウ=ソラスはアルティナに続くように謎の機械音を出した。

 

「気を落とさないでください。むしろ私は今のアルティナさんの方がいいと思いますよ?」

「え…………何故でしょうか?」

しかしエリスの指摘を聞いたアルティナは驚いた後困惑の表情でエリスに訊ねた。

「ユミルで私達を拉致した時のアルティナさんは”人形”のように何の感情も表しませんでしたが…………今のアルティナさんは私達のように普通に感情をさらけ出してくれて”人間らしく”なっているのですから、アルティナさんとの仲を深めたい私達としてもその方が親しみもあっていいと思っています。」

「フフ、そうですわね。最初の頃のアルティナさんと比べると雲泥の差ですわ。」

「人造人間(ホムンクルス)である私が”人間らしい”…………」

エリスとセレーネの指摘を聞いたアルティナは呆けていた。

 

「それにしても、結局”双龍橋”は何の想定外もなくあっさり落とせた訳だが、さすがにこの先にある町――――――ケルディックでは正規軍による万全な迎撃態勢が整っているのかねぇ?」

「内戦で”焼き討ち”を受けたとはいえ、ケルディックはクロイツェン州の物流を担う町の上、公都であるバリアハートとも隣接している事からクロイツェン州にとってもそうですが、エレボニア帝国にとっても重要な町なのですから間違いなく万全な迎撃態勢が整っているのでしょうね。」

「…………そうですね。それこそ叔父上が率いる”第三”か、正規軍の中でも”最強”を誇るクレイグ中将率いる”第四”あたりが出てくるかもしれませんね。」

「フフ、という事は今回の戦いは”前菜(オードブル)”のようなもので、次からの戦いが”主菜(メイン)”になりそうですわね。」

フォルデとステラの推測を聞いたクルトは叔父ゼクスと早速戦う事になるかもしれない事を予想して複雑そうな表情で二人の推測に同意し、ミュゼは苦笑しながら指摘した。するとその時リィンのエニグマが鳴り始めた。

 

「――――――こちらシュバルツァー。…………お疲れ様です、副長。ええ…………ええ…………――――――何ですって!?それは本当なんですか!?」

通信を開始したリィンは通信相手――――――シグルーンの話を聞くと血相を変えて声を上げ

「…………了解しました。ご指示通り、一端ヴァリアント(そちら)に帰還します。」

「兄様、通信相手はシグルーン様のようでしたが、何か不測の事態が起こったのでしょうか?」

リィンが通信を終えるとエリゼが真剣な表情で訊ねた。

「…………ああ。とはいっても副長達軍の上層部もそうだが、セシリア教官達参謀陣もその可能性も想定はしていたらしいんだが…………みんな、落ち着いて聞いてくれ。先程クロイツェン州に潜伏して諜報活動を行っている諜報部隊からの報告で判明した事なんだが――――――」

エリゼの質問に重々しい様子を纏って頷いたリィンはシグルーンとの通信内容をステラ達に伝えた。

 

「「「「え――――――」」」」

「そ、そんな…………っ!?」

「…………なるほど。”時間稼ぎ”の目的は迎撃態勢の準備ではなく”そちら”でしたか。」

「やれやれ…………エレボニアの戦争相手である俺達が言うのもなんだが、クロイツェン州の連中もそうだが、その目的の為に”時間稼ぎ”に使われた領邦軍の連中も”哀れ”だねぇ。」

「幾らエレボニアが劣勢とはいえ、そこまで…………そこまでするのか、オズボーン宰相――――――いや、エレボニア帝国政府は…………っ!」

「…………どうやら”最悪の予想”が当たってしまったようですわね。」

リィンの話を聞いたエリゼ、エリス、セレーネ、アルティナが呆けている中アルフィンは悲痛そうな表情で声を上げ、ステラは静かな表情で呟き、フォルデは疲れた表情で溜息を吐き、クルトは両手の拳を握りしめて怒りの表情を浮かべて呟き、ミュゼは複雑そうな表情で呟いた。

 

リィンがステラ達に伝えたシグルーンとの通信内容…………それはクレイグ中将率いる”第四機甲師団”がクロイツェン州全土の町や都市から食料を含めた様々な物資に加えて一定の年齢の男達をクロイツェンの民達から”強制的に徴収し”、更にそれぞれの町にある様々な施設だけでなく、家まで焼き払う”焦土作戦”を実行しているという信じ難いメンフィル帝国軍の諜報部隊による報告であった――――――

 

 

次の話はまだ一文字もできていませんので、更新はいつもよりかなり遅くなるかもしれません。ちなみに次回の話はヴァリマール&ベルフェゴール達リィンの使い魔達、そしてリウイ達によるメンフィル陣営の英雄達による虐殺戦の話にしようかなと思っています(黒笑)なのでリウイ達に加えてヴァリマール&ベルフェゴール達、更にエクリアというかつてない豪華メンバーによる敵の虐殺戦が実現すると思います(ガタガタブルブル)なおリィン達が戦争による作戦を実行している際のイベント、戦闘BGMは閃シリーズの”Atrocious Raid”、”solid as the Rock of JUNO”、ファイアーエムブレム風化雪月の” 野望の地平”のどれかだと思ってください♪

 


 
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